建設技術研究所は利益確定売り一巡、23年12月期増益予想

建設技術研究所<9621>(東証プライム)は総合建設コンサルタントの大手である。成長戦略として、グローバルインフラソリューショングループとしての飛躍を目指すとともに、インフラ整備を通じた「サステナビリティ」の実現にも取り組んでいる。23年12月期は増益予想としている。国内事業において受注が好調に推移していることに加えて、業務単価上昇や業務効率化なども寄与する見込みだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。なお23年8月に発覚した同社社員による不適切取引に関して、10月6日に社内調査委員会調査より調査報告書を受領したとリリースしている。業績に与える影響は軽微だが再発防止策を徹底するとしている。株価は9月の高値圏から反落し、地合い悪化も影響して上げ一服の形となったが、利益確定売り一巡感を強めている。上値を試す展開を期待したい。

■総合建設コンサルタント大手

総合建設コンサルタントの大手である。23年4月に株式会社設立60周年(前身の1945年創立の財団法人建設技術研究所から数えると創業78年)を迎えた。河川・ダム・海岸・海洋、道路、橋梁、トンネル、都市・地方計画などの分野に強みを持ち、22年12月期には環境総合リサーチを新規連結した。海外は、建設技研インターナショナルが東南アジア、英国Waterman Group Plc(ロンドン証券取引所上場)が英国を中心に展開している。

22年12月期のセグメント別の業績は、国内建設コンサルティング事業の受注高が21年12月期比0.8%減の581億91百万円、売上高が8.3%増の581億60百万円、セグメント利益(調整前営業利益)が14.1%増の68億85百万円、海外建設コンサルティング事業の受注高が7.4%増の276億96百万円、売上高が22.3%増の253億25百万円、セグメント利益が18.8%増の11億31百万円だった。

公共事業への依存度が高く、国内の分野別受注高構成比は流域・国土が36%、交通・都市が32%、環境・社会が26%、建設マネジメントが6%だった。新規連結の環境総合リサーチも寄与して環境・社会分野が拡大基調となっている。

海外では建設技研インターナショナルが大型案件を受注(22年3月にクボタ建設、神鋼環境ソリューション、北九州ウォーターサービス、TECインターナショナルと構成するコンソーシアムでカンボジア王国カンダール州タクマウ市におけるタクウマ上水道拡張計画を受注)し、英国Waterman Group Plcの業績も大幅拡大した。コロナ禍の影響がほぼ解消した。

■グローバルインフラソリューショングループ目指す

グローバルインフラソリューショングループとして飛躍することを目指し、CTIグループ中長期ビジョン「SPRONG2030」では、目標数値として30年度の売上高1000億円(単体600億円、主要グループ会社400億円)(国内720億円、海外280億円)、営業利益率9%(単体10%、主要グループ会社7%)、社員数5000人を掲げている。

中長期ビジョン目標達成に向けた第1ステップとなる中期経営計画2024(発注単価上昇と生産性向上によって利益率が改善しているため23年2月14日付で営業利益および営業利益率の目標値を上方修正)では、経営目標値として24年12月期の連結ベース受注高850億円、売上高850億円、営業利益77億円(従来は68億円)、営業利益率9.1%(同8.0%)、ROE10%以上、建設技術研究所単体ベースの受注高550億円、売上高550億円、営業利益64億円(同55億円)、営業利益率11.6%(同10%)、社員数2300人を掲げている。

CTIグループ全体の重点施策として、グループ協業の推進による事業拡大、主要グループ会社の安定経営と収益性の改善、グループガバナンスの強化、グループ全体でのサステナビリティ経営の推進に取り組む。社会の課題に応じた重点事業分野(防災・減災、都市・建築、土壌・地盤・地質、環境マネジメント、エネルギー、PPP事業など)を設定し、その売上高伸長を目指す方針としている。

21年12月にはサステナビリティ委員会を設置した。さらに、健康経営、ダイバーシティ&インクルージョン、従業員の成長と自律を縫合した「CTIウェルビーイング」に取り組むため、社内宣言ならびにCTIウェルビーイング基本方針を策定した。22年1月には、企業活動を通じて次世代育成に貢献するため一般事業主行動計画を策定した。

22年6月には「知的財産に関する基本方針」を策定した。また、インフラ整備を通じた「サステナビリティ」の実現に向けて、さまざまな提案に取り組むための方針として「CTIグループ・サステナブルチャレンジ」を策定した。22年7月にはAIを適切に活用していくことを社内外に宣言することを目的として「CTIグループAI倫理指針」を策定した。また22年7月には、女性活躍推進法に基づく優良企業として、厚生労働大臣から「えるぼし」認定の二つ星(2段階目)を取得した。

22年12月には、22年6月に策定した「CTIグループ・サステナブルチャレンジ」の宣言内容の実現に向けて、具体的な推進計画を策定・公表した。23年1月にはサステナブル事業会社CTIアセンドを設立し、福島県相馬市で子実トウモロコシ栽培・ウイスキー製造販売に取り組むと発表した。

23年7月にはリスクマネジメントを強化するため、リスクマネジメント基本方針を策定し、リスクマネジメント体制を構築したと発表している。また人材力強化を目的に、月例給与の平均6%アップを含む等級・人事考課・報酬制度などを全面的に改革した新たな人事処遇制度を23年4月に導入したと発表している。

10月2日には24年12月期の研究開発投資の基本方針を公表した。事業展開の加速や持続可能な社会の構築を目的に総額を13億円(23年12月期予算から1億円増額)とした。このうち社会のサステナビリティを実現するための投資(グリーン関連研究揮発)の予算をは3.5億円とした。

■新分野・新事業への展開を加速

22年1月には新分野や新事業への展開を加速するため、SBIホールディングス<8473>の子会社SBIインベストメントが運営する「SBI4+5ファンド」に出資した。本ファンドが出資するスタートアップ企業を支援するとともに、スタートアップ企業との連携による技術開発や事業開発に取り組む。また、京成バス、損害保険ジャパン、アイサンテクノロジー<4667>および埼玉工業大学との5者共同で、千葉市未来技術等社会実装促進事業の自動運転車社会実装サポート事業に採択された。22年10月には長野技研コンサルタント(長野県長野市)と業務提携した。

23年1月には同社が参画している「不動産分野におけるレジリエンス検討委員会(D-ismプロジェクト)」において、不動産に関わる新たな認証制度「ResReal(呼称:レジリアル)」が創設された。不動産の自然災害に対するレジリエンスを可視化して認証を行う本邦初の制度である。

23年3月には、フォトンラボとの業務提携、および国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(QST)との共同研究により、道路トンネル内のロボット点検技術として社会実装を進めてきた「レーザー打音検査装置」を国内で初めてトンネル内装曲面タイルパネルの診断支援に活用した。23年6月には、沖縄県伊平屋島において次世代交通システム「空飛ぶクルマ」試験飛行を実施・成功した。23年8月には、AirXおよび一般社団法人MASCと連携し、兵庫県の「空飛ぶクルマ実装促進事業」および神戸市の「神戸市空飛ぶクルマ社会実装促進事業」に採択された。電動、自律飛行、垂直離着陸の特徴を備えた新たなモビリティである「空飛ぶクルマ」の社会実装に向けた環境整備に資する実証を行う。

■23年12月期2Q累計大幅増収増益、通期上方修正して一転増益予想

23年12月期連結業績予想(23年8月14日付で上方修正)は受注高が22年12月期比1.3%増の870億円、売上高が4.2%増の870億円、営業利益が6.0%増の85億円、経常利益が4.4%増の86億円、親会社株主帰属当期純利益が7.2%増の63億円としている。配当予想は据え置いて22年12月期と同額の100円(期末一括)としている。予想配当性向は22.1%となる。

第2四半期累計は、売上高が前年同期比13.8%増の476億23百万円、営業利益が31.2%増の71億66百万円、経常利益が30.1%増の72億87百万円、親会社株主帰属四半期純利益が39.3%増の52億89百万円だった。

国内事業、海外事業とも好調に推移して大幅増収増益だった。特に国内事業の業務が想定以上に進捗した。グループ合計受注高は11.6%増の589億23百万円だった。受注高。売上高。各利益とも第2四半期累計として過去最高だった。

国内建設コンサルティング事業は受注高が6.2%増の406億25百万円、売上高が13.7%増の341億13百万円、営業利益が37.0%増の68億円、海外建設コンサルティング事業は受注高が26.0%増の182億97百万円、売上高が14.2%増の135億10百万円、営業利益が23.3%減の3億77百万円だった。

四半期別に見ると、第1四半期は売上高が247億60百万円で営業利益が37億42百万円、第2四半期は売上高が228億63百万円で営業利益が34億24百万円だった。

通期予想は、前回予想に対して受注高を30億円、売上高を30億円、営業利益を13億円、経常利益を13億円、親会社株主帰属当期純利益を14億円それぞれ上方修正し、従来の減益予想から一転して増益予想とした。

修正後のセグメント別計画は、国内建設コンサルティング事業の受注高が3.1%増の600億円、売上高が6.6%増の620億円、営業利益が13.3%増の78億円、海外建設コンサルティング事業の受注高が2.5%減の270億円、売上高が1.3%減の250億円、営業利益が38.1%減の7億円としている。

修正後の通期予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が55%、営業利益が84%と高水準の形だが、公共投資関連で業務の進捗が年度末に集中するため、第1四半期の構成比が高い季節特性がある。国土強靭化関連で良好な事業環境も背景として、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

なお、同社社員1名による不適切な取引が発生した疑いがあることを認識し、8月4日付で社内調査委員会を設置した。その結果、当該社員が合計1億41百万円の不適切な外注取引を行っていたことを確認した。ただし各会計期間への影響が軽微であるため遡及修正は行わず、23年12月期に不正関連損失3百万円を営業外費用に計上するとともに、過年度に過大計上された仮払消費税の精算としての消費税等および過年度分の法人税等を合わせて47百万円見積計上するが、業績に与える影響は軽微としている。そして10月6日に社内調査委員会調査より調査報告書を受領したとリリースしている。業績に与える影響は軽微だが再発防止策を徹底するとしている。

■株価は利益確定売り一巡

株価は9月の高値圏から反落し、地合い悪化も影響して上げ一服の形となったが、利益確定売り一巡感を強めている。上値を試す展開を期待したい。10月6日の終値は4475円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS453円30銭で算出)は約10倍、今期予想配当利回り(会社予想の100円で算出)は約2.2%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS3360円83銭で算出)は約1.3倍、そして時価総額は約634億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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