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ヤマシタヘルスケアホールディングスは目先的な売り一巡、24年5月期1Q減益だが進捗率順調で通期上振れ余地
- 2023/10/10 09:44
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ヤマシタヘルスケアホールディングス<9265>(東証スタンダード)は、九州を地盤とする医療機器専門商社(山下医科器械)を中心に、ヘルスケア領域でのグループ力向上を推進している。24年5月期第1四半期は販管費の増加などで減益だったが、売上面は検査用機器等の設備投資需要が堅調に推移し、医療機器消耗品も回復基調だった。通期は特需の反動や不透明感などを考慮して減収、営業・経常減益予想としている。ただし第1四半期の進捗率が順調だったことを勘案すれば、通期会社予想に上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。株価は地合い悪化も影響し、決算発表を機に戻り高値圏から反落の形となったが、1倍割れの低PBRも評価材料であり、目先的な売り一巡して上値を試す展開を期待したい。
■九州を地盤とする医療機器専門商社
九州を地盤とする医療機器専門商社(山下医科器械)を中心に、ヘルスケア領域でのグループとしての収益力向上を推進している。
事業子会社の山下医科器械は九州を地盤とする医療機器専門商社で、医療機器販売・メンテナンス、医療材料・消耗品販売、IT医療構築・医療設備工事、および医療モールを展開している。イーピーメディックは整形外科領域の体内埋没材料(インプラント)の企画・製造委託・輸入・販売、トムスは人工腎臓関連分野に強みを持ち透析装置・関連消耗品を中心とする医療機器販売およびメンテナンス、アシスト・メディコは医療機関の経営支援や介護施設を含む病床転換・M&A・事業承継などのコンサルティングサービス、イーディライト(21年11月持分法適用関連会社から連結子会社に異動)は医療機関の予約サイト制作取次などのソリューションサービス、エムディーエックス(22年2月設立)はDX新技術を活用した医療・介護施設・在宅向け新製品・サービスの開発、クロスウェブ(23年7月子会社化)は医療機関向け中心にネットワークおよびシステムインフラ構築を展開している。また、超音波を用いた医療用機器開発・販売のマイクロソニックに出資し、持分法適用関連会社としている。
23年5月期セグメント別売上高(内部売上高含む)は、医療機器販売業が580億37百万円(一般機器分野が86億34百万円、一般消耗品分野が240億60百万円、低侵襲治療分野が138億97百万円、専門分野が100億76百万円、情報・サービス分野が13億68百万円)で、医療機器製造・販売業が2億86百万円、医療モール事業が69百万円だった。セグメント別利益(全社費用等調整前営業利益)は医療機器販売業が21億48百万円、医療機器製造・販売業が12百万円、医療モール事業が0百万円、調整額が▲10億04百万円だった。
なお医療機関の設備投資関連のため、第2四半期(9月~11月)および第4四半期(3月~5月)の構成比が高い傾向がある。
■ヘルスケア領域でのグループ力向上を推進
中期経営計画(22年5月期~24年5月期)では、基本方針を「持続成長可能な体制構築を目指し、継続的な収益拡大に向け、ヘルスケア領域でのグループ力の向上を図る」として、目標値には最終年度24年5月期売上高520億円(収益認識に関する企業会計基準第29号適用換算前ベースでは675億円)、営業利益6億20百万円、経常利益6億80百万円を掲げている。
重点施策には、グループの一体化と戦略機能の強化、重点事業領域の拡充、グループ経営管理機能の強化、ダイバーシティ環境の実現、ESG経営への取り組み、戦略的人材マネジメントの確立を掲げている。
医療機器販売業では、電子カルテなどの医療情報システム構築支援、合弁事業の医科向け会員ネットワーク「EPARK」の普及拡大、SPD(Supply Processing&Distribution)事業の推進・収益性向上を推進している。医療機器製造・販売業では、台湾の医療機器メーカーと協力して手術器械の単回使用化に取り組んでいる。
また新規商材による市場開拓として、19年7月にはアイム(福岡県福岡市)と資本業務提携し、医療機関・介護施設向けに自然落下制御式輸液装置「FLOWSIGN 03W」のレンタル事業を開始している。20年1月にはNTT東日本と協業して医療機関向けICTサービスを開始している。さらにソルブ(福岡県春日市)の注射調剤・監査支援システムの取り扱いも開始している。
■長期ビジョン「マルティプライビジョン2030」
ESG経営・SDGsへの取り組みでは、21年6月に独立行政法人国際協力機構(JICA)が発行するソーシャルボンド(社会貢献債)への投資を実施した。21年8月にはESG基本方針を策定し、地域のヘルスケアに貢献する企業として、医療機器・関連サービスの安定的な供給を通じてSDGsの目標でもある持続可能でより良い社会を目指し、社会課題の解決に貢献できるように努めるとしている。23年3月には山下医科器械が、経済産業省と日本健康会議が選定する健康経営優良法人認定制度において「健康経営優良法人2023(大規模法人部門)」に2年連続で認定された。
22年7月にはサステナブルな成長の実現に向けて、2030年度を目標年度とする長期ビジョン「マルティプライビジョン2030」を策定した。既存の中核事業との連携を図りながら新たな事業ポートフォリオを構築し、企業価値の持続的成長および価値創出を目指すとしている。
22年9月には、乳がん検査デバイスとなるマンモエコーシステムなど超音波を用いた医療用機器の開発・販売を行うマイクロソニック(東京都国分市)に出資した。ESG活動の一環として、超音波を用いた社会性の高い製品の実現化に寄与することを目的に、マイクロソニックが持つ知財や研究開発を支援する。
■24年5月期1Q減益だが進捗率順調で通期上振れ余地
24年5月期連結業績予想は、売上高が23年5月期比6.8%減の542億15百万円、営業利益が44.5%減の6億41百万円、経常利益が43.4%減の6億82百万円、親会社株主帰属当期純利益が111.8%増の4億64百万円としている。配当予想は23年5月期比7円増配の55円(期末一括)としている。予想配当性向は30.3%となる。
第1四半期は、売上高が前年同期比4.1%増の140億21百万円、営業利益が24.4%減の1億96百万円、経常利益が22.3%減の2億13百万円、親会社株主帰属四半期純利益が1.8%減の1億62百万円だった。販管費の増加などで減益だったが、売上面は検査用機器等の設備投資需要が堅調に推移し、医療機器消耗品も回復基調だった。
医療機器販売業は、売上高が4.1%増の139億97百万円で、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が6.5%減の4億55百万円だった。売上高の内訳は、一般機器分野(画像診断機器、放射線診断装置など)が5.0%増の15億07百万円、一般消耗品分野(手術関連消耗品など)が4.4%増の61億59百万円、低侵襲治療分野(内視鏡、サージカル備品など)が0.4%増の34億25百万円、専門分野(整形、理化学、透析など)が7.4%増の26億08百万円、情報・サービス分野(設備保守メンテナンスなど)が9.8%増の2億96百万円だった。
医療機器製造・販売業は売上高が3.0%増の73百万円で利益が47.8%増の7百万円、医療モール事業は売上高が5.6%増の17百万円で利益が1百万円(前年同期は0百万円)だった。
通期予想は据え置いている。特需の反動や不透明感などを考慮して減収、営業・経常減益、親会社株主帰属当期純利益は特別損失一巡して増益、配当は増配予想としている。ただし第1四半期の進捗率が売上高が25.9%、営業利益が30.6%、経常利益が31.2%、親会社株主帰属当期純利益が34.9%と順調だったことを勘案すれば、通期会社予想に上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。
■株主優待制度は5月末の株主対象
株主優待制度は毎年5月31日現在の1単元(100株)以上保有株主を対象に、保有株式数および継続保有期間に応じてオリジナルクオカードを贈呈(詳細は会社HP参照)している。
■株価は目先的な売り一巡
株価は地合い悪化も影響し、決算発表を機に戻り高値圏から反落の形となったが、1倍割れの低PBRも評価材料であり、目先的な売り一巡して上値を試す展開を期待したい。10月6日の終値は1999円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS181円78銭で算出)は約11倍、今期予想配当利回り(会社予想の55円で算出)は約2.8%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS3097円34銭で算出)は約0.6倍、そして時価総額は約51億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)