- Home
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
- ケンコーマヨネーズは上値試す、24年3月期大幅増益予想
ケンコーマヨネーズは上値試す、24年3月期大幅増益予想
- 2023/10/16 11:29
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ケンコーマヨネーズ<2915>(東証プライム)はマヨネーズ・ドレッシング分野からタマゴ加工品やサラダ・総菜分野へと事業領域を拡大し、4つのテーマ(BtoBtoC、イノベーション、構造改革、グローバル)およびサステナビリティ方針に取り組んでいる。10月16日にはフードサービス業界向けに、プラントベース商品「HAPPY!! wirh VEGE」シリーズとして、たまご不使用のプラントベースのたまご風サラダ「まるでたまごのサラダ」の販売を開始した。24年3月期は価格改定の追加実施、商品統廃合の実施と利益を確保できる商品の販売促進、徹底した効率化などで収益性改善を推進して大幅増益予想としている。積極的な事業展開で収益回復基調だろう。株価は地合い悪化の状況でも年初来高値圏で堅調に推移している。1倍割れの低PBRも支援材料であり、利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。
■マヨネーズ・ドレッシング類、ロングライフサラダの大手
サラダ・総菜類、タマゴ加工品、マヨネーズ・ドレッシング類の調味料・加工食品事業、フレッシュ総菜(日配サラダ、総菜)およびグループ内生産受託の総菜関連事業等、その他(サラダカフェなど)を展開している。ロングライフサラダは国内市場シェア1位である。ショップ事業のサラダ専門店Salad Cafe(サラダカフェ)は、対面の量り売りサラダや弁当の販売を展開し、新たなブランド創出に向けて百貨店など駅近店舗戦略を推進している。
23年3月期のセグメント別売上高は調味料・加工食品事業が636億78百万円(マヨネーズ・ドレッシング類が238億03百万円、タマゴ加工品が204億46百万円、サラダ・総菜類が181億57百万円、その他が12億70百万円)、総菜関連事業が177億33百万円、その他が9億51百万円だった。セグメント別経常利益は調味料・加工食品事業が▲2億35百万円、総菜関連事業が7億20百万円、その他が14百万円、調整額が▲3億29百万円だった。販路別の売上高構成比は、外食が27.2%、量販店が27.1%、CVSが24.8%、パンが11.9%、給食が4.4%、その他が4.6%だった。23年3月期は外食向けが回復傾向となった。
収益面では、食用油、鶏卵、野菜などの原材料価格が変動要因となりやすく、プロダクトミックス、工場操業度、原燃料コストなどの影響を受ける。利益還元については連結ベースでの配当性向20%を意識し、配当の継続性に配慮しつつ、今後の成長と発展にあわせて安定配当水準を高めていくことを基本方針としている。
なお同社は8月24日を「ドレッシングの日」と制定している。ドレッシングは野菜にかけて使用することが多いため、831(やさい)にかける→8×3×1=24で24日を、またカレンダーで見ると野菜の日(8月31日)の真上にあるのが8月24日であることから、野菜にドレッシングをかける様子をイメージして8月24日を「ドレッシングの日」と制定している。
■事業環境変化に対応して変革推進
中期経営計画では、基本方針として4つのテーマ(BtoBtoC、イノベーション、構造改革、グローバル)およびサステナビリティ方針に取り組み、事業環境変化に対応して企業価値向上と持続的な成長へ向けた変革を推進する。
BtoBtoCでは、デザイン変更や簡便性・調理時間短縮など利便性を高めた商品開発による消費者へのブランド認知度向上、新しい生活様式やライフスタイル多様化に対応した小容量・常温商品の拡充・リニューアル、原材料価格高騰に対応した高付加価値・機能性商品の開発強化、ドラッグストアや大手スーパーなど取り扱い店舗増加によるマーケティング強化、WEB・オンライン動画や料理教室の活用による情報発信・販促活動の強化、自社ECサイトによる販売強化、サラダカフェのブランド創出・駅近店舗戦略などを推進している。
商品・ノウハウの発信に関しては、23年2月にサラダカフェの「釜揚げしらすと梅のサラダごはん」が「惣菜・べんとうグランプリ2023」の健康・ヘルシー部門で優秀賞を受賞し、子会社のダイエットクック3社が製造する3商品も入賞した。また23年8月には「薫るトリュフ」シリーズが第27回業務用加工食品ヒット賞を受賞した。
イノベーションでは、賞味期限延長や植物性原料を中心に仕上げたプラントベース商品などSDGsを意識したメニュー・商品の開発、食品ロスの削減、地方創生・活性化につながる郷土料理の商品化や持続可能な農業支援、包装・資材の最適化、生産面でのカーボンニュートラルの実現、構造改革では業務プロセスや生産効率の改善、働きやすい職場環境づくり、人事制度改革、基幹システム再構築、コーポレート・ガバナンスの強化、グローバルでは輸出販売の強化、グローバル対応商品や輸出用長期賞味商品の拡充などを推進している。
23年7月には、フードサービス業界向けロングライフサラダの新シリーズ「FDF(ファッションデリカフーズ) Plus」の発売を開始した。ロングライフサラダで同社最長となる90日の長期賞味期限で、美味しく食品ロス削減に寄与する。
23年9月には新たなプラントベースフードとして、植物性原料を使用した「タマゴ風加工品」を展開すると発表した。プラントベース商品「HAPPY!! with VEGE」シリーズの新たな展開として、植物性たまごの研究開発・販売を行うUMAMI UNITED JAPANと協業し、主力の「タマゴ加工品」の新たなカテゴリーとなる「植物性タマゴ加工品」として商品を開発・展開する。そして10月16日にはフードサービス業界向けに、プラントベース商品「HAPPY!! wirh VEGE」シリーズとして、たまご不使用のプラントベースのたまご風サラダ「まるでたまごのサラダ」の発売を開始した。
地域活性化に関しては、22年3月に、鮮魚販売や水産食料品製造販売を行う鮮冷(宮城県女川町)、およびコンサルティング業務を行うくりや(北海道上川郡)と、地方創生に向けた活動を協働していくことで合意した。地域の食材を活かした商品・メニュー開発、食を通じた地域経済活性化など地域密着型の取り組みを推進する。22年12月には子会社のダイエットクックサプライ(広島県福山市)が製造する「福山工場長シリーズ」の商品が、福山市都市ブランド戦略推進協議会主催「第8回福山ブランド」商品・サービス部門においてブランド認定された。
サステナビリティへの取り組みも強化している。21年7月に「食を通じて世の中に貢献する」という企業理念に基づいてサステナビリティ方針を公開し、加工ロス削減による廃棄物削減などの目標を設定した。21年9月には「国連食料システムサミット2021」への支持表明とコミットメント提出を発表した。
22年10月には、マヨネーズ・ドレッシング類の一部商品において環境配慮型包材(バイオマスインキ使用の包材)への切り替えや個装箱の見直しを順次拡大し、資材量とCO2削減を推進すると発表した。23年3月にはTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同を表明し、TCFD提言に基づく情報を開示した。また自社商品サイトにフードロスを減らす「食材使い切りレシピ」を公開した。
23年5月には、関東ダイエットクックが関東圏の量販店バックヤード向けに、アジアン米飯キット2点を発売すると発表した。店舗での人手不足が深刻化するなか、簡単に調理でき、食品ロス削減につながるとしている。
■24年3月期大幅増益予想で収益回復基調
24年3月期の連結業績予想は売上高が23年3月期比6.1%増の874億円、営業利益が11.6倍の12億20百万円、経常利益が7.7倍の13億円、親会社株主帰属当期純利益が17.4%増の5億70百万円としている。配当予想は23年3月期比8円増配の25円(第2四半期末10円、期末15円)としている。予想配当性向は71.3%となる。
第1四半期は、売上高が前年同期比6.6%増の214億02百万円、営業利益が42.0%減の1億99百万円、経常利益が29.5%減の2億44百万円、親会社株主帰属四半期純利益が41.6%減の1億42百万円だった。売上面は外食分野の回復などで増収だが、利益面は原材料価格・エネルギーコスト高騰の影響を価格改定効果などでカバーできず大幅減益だった。
調味料・加工食品事業は売上高が6.8%増の166億97百万円、セグメント利益(調整前経常利益)が88.4%減の22百万円だった。売上面は、タマゴ加工品が高病原性鳥インフルエンザ感染拡大で鶏卵を安定的に確保することが困難だった影響で販売制限を行ったため減収だが、サラダ・総菜類が価格改定効果や外食チェーンのプロモーションへの採用などで増収、マヨネーズ・ドレッシング類が価格改定効果や量販店向け拡販などで増収だった。利益面は、原材料価格・エネルギーコスト高騰の影響を価格改定効果などでカバーできず大幅減益だった。
総菜関連事業等は売上高が6.3%増の44億72百万円、利益が28.3%増の2億31百万円だった。価格改定、高単価品の開発・販売、販売カテゴリー拡大などの効果で増収増益だった。
通期の連結業績予想は据え置いている。セグメント別売上高の計画は、調味料・加工食品事業が7.2%増の682億88百万円(内訳はマヨネーズ・ドレッシング類が19.1%増の283億38百万円、タマゴ加工品が16.4%減の170億96百万円、サラダ・総菜類が17.1%増の212億58百万円、その他が25.7%増の15億96百万円)、総菜関連事業等が2.3%増の181億36百万円、その他(サラダカフェ)が2.5%増の9億75百万円としている。
経常利益11億31百万円増益の要因分析の計画は、価格改定効果で+71億98百万円、販売数量減少(たまご製品の販売数量制限や一部商品体系の影響)で▲2億53百万円、製造原価(工場操業度低下、エネルギーコスト増加、商品統廃合、生産効率改善など)で▲6億91百万円、固定経費等で▲5億67百万円、原材料影響で▲45億56百万円としている。なお6月1日に、老朽化した関東ダイエットエッグ日高工場を閉鎖(23年8月31日に生産終了)すると発表したが、自社および連結子会社に生産移行するため業績への影響は軽微としている。
たまご製品の販売数量制限や一部商品休売を継続し、原材料価格・エネルギーコストも高止まりを見込むが、前期までに実施した価格改定効果に加え、23年7月に実施する追加価格改定(ロングライフサラダ類、和惣菜)の効果、商品統廃合の実施と利益を確保できる商品の販売促進、たまご製品販売数量減少への対応、総菜関連事業の冷総菜売場以外への販路拡大、フレッシュ商品とのコラボによるサラダカフェブランド商品強化、徹底した効率化(生産効率改善、集約生産、管理コスト削減)などで収益性改善を推進する方針だ。第1四半期は減益だったが下期からの回復を見込んでいる。積極的な事業展開で収益回復基調だろう。
■株主優待制度は毎年3月末の株主対象
株主優待制度(詳細は会社HP参照)は毎年3月末日現在の株主を対象として、保有株式数に応じて当社商品を贈呈している。なお5月30日に株主優待品の贈呈時期の変更を発表している。
■株価は上値試す
株価は地合い悪化の状況でも年初来高値圏で堅調に推移している。1倍割れの低PBRも支援材料であり、利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。10月13日の終値は1509円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS35円05銭で算出)は約43倍、今期予想配当利回り(会社予想の25円で算出)は約1.7%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2281円75銭で算出)は約0.7倍、そして時価総額は約249億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)