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フライトソリューションズは調整一巡、24年3月期大幅増収増益予想
- 2023/10/18 09:24
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
n フライトソリューションズ<3753>(東証スタンダード)(旧フライトホールディングスが23年10月1日付で子会社を吸収合併して商号変更)は、マルチ決済装置Incredist TrinityやIncredist Premium Ⅱなどの電子決済ソリューションを主力として、システム開発やECソリューションも展開している。市販のAndroid携帯を使ってカードのタッチ決済を実現する小・中規模事業者向けの新しい決済ソリューションTapion(タピオン)も本格展開する。なお10月10日には、ソニー銀行のSony Bank WALLETの最新テレビCMに、Incredist Trinityが使用されたとリリースしている。24年3月期は拡販を推進して大幅増収増益予想としている。有望案件が目白押しであり、積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。株価は地合い悪化も影響して年初来安値を更新したが、調整一巡して出直りを期待したい。
■電子決済ソリューションが主力
23年10月1日付で、旧フライトホールディングスが子会社のフライトシステムコンサルティングを吸収合併し、持株会社から事業会社に経営体制を再編するとともに、商号をフライトソリューションズに変更した。システム開発・保守などのコンサルティング&ソリューション(C&S)事業、電子決済ソリューションなどのサービス事業、およびB2B(企業間取引)ECサイト構築システムのECソリューション事業を展開している。
23年3月期はC&S事業の売上高が22年3月期比10.1%増の10億09百万円で営業利益(全社費用等調整前)が96.6%増の1億63百万円、サービス事業の売上高が12.2%減の18億81百万円で営業利益が44.5%減の2億29百万円、ECソリューション事業の売上高が37.8%減の1億18百万円で営業利益が41百万円の赤字(22年3月期は75百万円の赤字)だった。収益はサービス事業の大型案件によって変動する傾向が強い。
■サービス事業は電子決済ソリューションを展開
サービス事業は電子決済ソリューション分野で、スマートデバイス決済専用アプリのペイメント・マイスターと、スマートデバイス決済専用マルチ電子決済端末のIncredistシリーズを主力として展開している。
ペイメント・マイスターは、iPhoneやiPadをクレジットカード決済端末として利用する大企業向けBtoB決済ソリューションである。ホテル・レストランなどに幅広く導入されている。
Incredistシリーズでは、戦略製品として据置・モバイル兼用型のマルチ決済装置Incredist TrinityおよびIncredist Trinity Miniの販売を推進している。またIncredist Premiumの後継機として、マイナンバーカード読取に対応した次世代型マルチ決済装置Incredist Premium Ⅱを21年1月から販売開始した。
EMV(接触型ICクレジットカード)決済、コンタクトレスEMV(非接触型ICクレジットカード)決済に対応し、コンタクトレスEMVはMastercardなど国際6ブランドに認定されている。
国内電子マネー決済では、19年7月にSuicaなど10種類の交通系ICカード決済への対応が完了し、19年7月にはディー・エヌ・エー(DeNA)<2432>のタクシー配車アプリMOV(現、Mobility Technologiesが提供するタクシーアプリGO)の車内決済システムとしてincredist Premiumが採用された。スルッとKANSAI協議会が近畿圏を中心に展開しているポストペイ型IC決済サービスPiTaPaにも22年春から順次対応している。
市販のAndroid携帯を使ってカードのタッチ決済を実現する小・中規模事業者向けの新しい決済ソリューションTapion(タピオン)については、自社決済センターを構築し、NTTデータの拡張性の高い決済伝送サービス「GAFIS GlobalGEAR」に接続して運用する。カフェ、カジュアルレストラン、キッチンカー、屋台、朝市など小・中規模事業者のキャッシュレス決済およびタッチ決済の普及拡大に努める方針だ。
23年6月には、共同印刷グループで決済ソリューション事業を行うTOMOWEL Payment Service(TPS)と提携し、決済売上をチャージして翌日以降の仕入に活用できる国際ブランド付法人カード「Tapionカード」(プリペイド式の売掛債権連動型国際ブランド付法人カード)(特許出願中)を、23年後半より提供開始すると発表した。すでにクレジットカード取扱加盟店としての審査が終了しているため短期間での発行が可能である。
本格サービスインに向けて22年11月よりTapionのパイロット運用を行ってきたが、23年7月に一般加盟店の申込受付を開始した。また23年7月にはセブン銀行のATM受取サービスに対応(23年後半を目途に開始予定)するとリリースした。23年8月には、自社クレジット決済センター拡張により、他の電子決済ソリューション全般へサービスを拡大すると発表した。またTapionは23年9月にAmerican Expressのクレジットカードに対応、23年10月に交通系電子マネーに対応した。
自動精算機分野では、米国ID TECH社製VP6800を国内の飲料自動販売機や駐車場無人自動精算機などに接続するため、マルチ決済端末VP6800・IFCを製品化している。19年6月にはGMOフィナンシャルゲート(GMO-FG)と接続開始し、GMO-FGを通じた決済ソリューションとして自動精算機向けVP6800・IFCの拡販を推進している。7月6日には、三菱プレシジョンのパーキングシステムにVP6800が採用され、総合カタログ・WEBサイトに掲載されたとリリースしている。
■電子決済ソリューションはキャッシュレス化や非接触が追い風
電子決済ソリューションはキャッシュレス化の流れが追い風となる。改正割賦販売法施行によって磁気カード対応からICカード対応に移行することが義務付けられ、一般の店舗、タクシーや電車の券売機、屋外に設置されている自動販売機やコインパーキング精算機など、クレジットカードを取り扱う全ての業種で対応が必要となっている。また国策として、非接触クレジットカード決済(正式名称コンタクトレスEMV、通称NFC決済)やマイナンバーカードへの統合等の普及促進が図られている。
こうした状況も背景として、決済種類・ブランドの拡大、電子マネーブランドの拡大、決済端末製品ラインアップの拡充と拡販、決済パートナーの拡大、ストック型ビジネスモデルの拡大など、電子決済ソリューションの展開を加速している。
18年5月には三井住友カードと包括加盟店契約を締結した。三井住友カードの代行として加盟店開拓・契約締結・管理を行い、継続的に手数料収入が得られるストック型収益となる。そして22年3月には三菱UFJニコスとクレジットカード決済における包括的加盟店契約を締結、22年6月にはジェーシービー(JCB)と各種クレジットカード決済および電子マネー決済における包括代理店加盟契約を締結、22年8月にはSBペイメントサービスと包括代理店加盟店契約を締結した。製品販売に加えて決済代行事業も推進する。
また、キャッシュレス決済需要が高まっている中小店舗・商店街への対応として、各地の商店街連合会や各種団体と連携して決済代行事業を行っているJASPASと資本提携し、決済ソリューションの展開を加速している。
22年3月には、電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律の規定に基づき、マイナンバーカードを活用した公的個人認証サービスのプラットフォーム事業者として、主務大臣認定(本認定においては総務大臣と内閣総理大臣)を取得した。22年5月には、iPadとIncredist Premium Ⅱを活用したマイナンバーカード読取によるシンクライアント型公的個人認証サービスmyVerifist(マイ・ベリフィスト)を開始した。23年5月にはmyVerifistシリーズ第2弾「医療エディション」を発表した。マイナンバーカードの健康保険証利用とキャッシュレス決済で医療機関のDX化を支援する。サービス開始は23年7月予定としている。
■ロボット関連も強化
C&S事業は、公共系・音楽配信系・金融系・物流系・放送系などのシステム開発を展開し、サービス事業との融合でロボット関連も強化している。ジエナ社と共同開発したロボットコンテンツ制作サービスScenariaは、簡単にコンテンツ更新できるソリューションとして、ソフトバンクロボティクスの人型ロボットPepperや、NTT東日本のデスクトップ型ロボットSotaに対応している。なお23年4月にはGoogle CloudのServiceパートナー認定を取得した。
ECソリューション事業のEC-Rider B2Bは、卸売・企業間取引に特化したECサイト構築システムである。また伝票処理自動化ソリューションの新製品OCRiderの拡販も推進する。
■24年3月期大幅増収増益予想
24年3月期業績予想(23年5月18日公表の連結業績予想値)は売上高が23年3月期比16.3%増の35億円、営業利益が51.2%増の1億20百万円、経常利益が93.7%増の1億10百万円、親会社株主帰属当期純利益が93.8%増の80百万円としている。
第1四半期は、売上高が前年同期比4.4%減の6億33百万円、営業利益が46百万円の損失(前年同期は24百万円の損失)、経常利益が41百万円の損失(同19百万円の損失)、親会社株主帰属四半期純利益が41百万円の損失(同23百万円の損失)だった。サービス事業における前期の大型案件の反動などで減収・赤字だった。
C&S事業は、売上高が10.6%増の2億61百万円、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が0.7%減の28百万円だった。微減益だったが概ね計画水準としている。事業会社の基幹システム開発や既存顧客向けのシステム開発・保守などが堅調だった。
サービス事業は、売上高が17.4%減の3億34百万円、利益が83.2%減の9百万円だった。前期に電子決済ソリューション「Incredist」の大型納品があった反動で減収減益だった。
ECソリューション事業は、売上高が74.4%増の37百万円、利益が2百万円(前年同期は27百万円の損失)だった。B2B向けECサイト構築パッケージ「EC-Rider B2B」の引き合いが順調で、概ね計画水準だった。
なお第2四半期累計の連結業績予想は9月21日付で上方修正して、売上高が前年同期比27.4%増の16億50百万円、営業利益が40百万円(前年同期は71百万円の損失)、経常利益が40百万円(同75百万円の損失)、親会社株主帰属四半期純利益が30百万円(同78百万円の損失)としている。
従来予想に対して、売上高を2億70百万円、営業利益を2億30百万円、経常利益を2億35百万円、親会社株主帰属四半期純利益を2億25百万円、それぞれ上方修正した。サービス事業において下期に予定していた「Incredist」シリーズの売上計上が前倒しとなることに加えて、新サービス立ち上げに係る開発費が計画を下回ることも寄与する見込みだ。
通期の業績予想は据え置いている。マイナンバーカード対応「Incredist Premium Ⅱ」や無人自動精算機向け決済端末「VP6800/IFC」の拡販、Androidスマホによるタッチ決済ソリューション「Tapion」の本格展開、マイナンバーカードを用いた公的個人認証サービス「myVerifist」および医療機関におけるオンライン資格確認対応「myVerifist医療エディション」に注力して大幅増収増益予想としている。有望案件が目白押しであり、積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。
■株価は調整一巡
株価は地合い悪化も影響して年初来安値を更新したが、調整一巡して出直りを期待したい。10月17日の終値は351円、今期予想PER(会社予想の連結EPS8円46銭で算出)は約41倍、前期実績PBR(前期実績の連結BPS60円22銭で算出)は約5.8倍、そして時価総額は約33億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)
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