マーチャント・バンカーズはモミ合い上放れの動き、マーチャント・バンキング事業が成長

 マーチャント・バンカーズ<3121>(東証スタンダード)はマーチャント・バンキング事業として不動産・企業投資関連などを展開している。安定的収益源の拡大に向けて資産性の高い収益不動産の取得を推進するとともに、新規分野としてNFTなどのブロックチェーン関連や、EV充電器関連などにも積極展開している。23年10月期(決算期変更で7ヶ月決算、8月10日付で売上高、営業利益、親会社株主帰属当期純利益を上方修正)は、新規取得した賃貸用不動産の賃貸収入、販売用不動産の売却が寄与することに加えて、投資先のアーリーワークスが米国ナスダック市場に上場したことに伴い投資有価証券売却益を計上する見込みだ。マーチャント・バンキング事業の成長が牽引し、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は地合い悪化の状況でも徐々に水準を切り上げて、モミ合いから上放れの動きを強めている。上値を試す展開を期待したい。

■マーチャント・バンキング事業とオペレーション事業を展開

マーチャント・バンキング事業(不動産投資事業、企業投資事業、ブロックチェーン・テック事業)、およびオペレーション事業(ボウリング場・服飾雑貨店の運営)を展開している。

23年3月期セグメント営業利益(全社費用等調整前)は、マーチャント・バンキング事業が22年3月期比8.0%増の6億09百万円、オペレーション事業が64百万円の赤字(22年3月期は61百万円の赤字)だった。マーチャント・バンキング事業では、収益の柱である賃貸用不動産から得られる賃貸収入が安定的に推移し、収益用不動産の一部やホテル物件の売却も実行した。収益用不動産の売却は4件、新規取得は4件だった。オペレーション事業はコロナ禍の影響で減収・赤字だったが、収益性改善に向けてホテル物件を売却し、給食業務受託は23年3月末に終了、インターネットカフェ運営は23年5月に終了した。

成長に向けた基本戦略としては、安定的収益源の拡大に向けて資産性の高い収益不動産の取得を推進するとともに、成長ドライバーと位置付けるNFTなどのブロックチェーン関連、EV充電器設置や太陽光パネル設置などにも積極展開している。

なお、23年3月末時点において流通株式比率がスタンダード市場上場維持基準に適合しない状況となったため、23年6月30日付で上場維持基準への適合に向けた計画書を作成・開示した。計画期間を24年3月末までとして、一部大株主が保有する同社株式の売却による保有比率引き下げについて協議するとともに、業績の向上や積極的な情報開示などを推進する方針としている。

■不動産・企業投資関連

マーチャント・バンキング事業では不動産投資関連および企業投資関連を展開している。

不動産投資関連は保有物件売却による売上利益の積み上げと、物件購入による安定的収益力の強化を推進している。主にネット利回り5%以上を期待できる大都市圏の賃貸用マンションなどの優良物件を保有し、年間約7億円の賃料収入を安定的に確保している。さらに年間賃料収入10億円を目標に掲げて優良不動の取得を強化している。23年6月には事業用賃貸マンション3物件(埼玉県北本市、埼玉県上尾市、大阪府八尾市)を取得、23年9月には事業用賃貸マンション1件(大阪府富田林市)を取得、23年9月には事業用賃貸マンション1件(神戸市垂水区)を取得、23年10月には事業用賃貸マンション1件(川崎市麻生区)を取得し、保有物件数は23物件、取得価額合計は120億円程度、年間家賃収入は8.5億円体制となった。さらに25億円程度(4~5物件)の取得により、24年10月期第1四半期には目標としている年間賃料収入10億円体制を達成するとしている。

また新築マンション開発事業に取り組む方針で、第1号案件として大阪府堺市にマンション開発用地を取得し、22年5月には田中土建工業と業務提携した。23年7月には建設業への取組強化をリリースした。業務提携先であるアビスジャパンより1級施工管理技士の資格を持つ萩原茂氏を建築事業部の責任者として招聘し、建設業の許可を受けるために必要な体制を確保する。

23年1月には子会社MBKバイオテックが、おそうじ本舗川崎三田店の事業を承継してMBKハウスマネジメントに商号変更し、おそうじ本舗のFCとしてハウスクリーニング事業を核に不動産関連の受託型サービスを展開すると発表した。23年4月には、MBKバイオテックが業務提携しているアビスジャパン(持分法適用関連会社で病院・介護施設などの内装工事等各種工事を展開、太陽光発電関連でも提携)などの工事業者を窓口に、ホームセキュリティ事業への取組を開始すると発表し、防犯カメラ・防犯セキュリティ機器の開発・製造・販売を行う塚本無線と業務提携した。

23年8月には、法人のITサポートを展開し、セコムの防犯カメラ設置実績も豊富なDコーポレーションと、防犯カメラ設置ならびにIT関連事業の分野で業務提携した。ホームセキュリティ事業において防犯カメラ設置工事をDコーポレーションに委託するとともに、IT関連分野でも協業を推進する。

企業投資関連は、投資先とともに企業価値を創造するハンズオン型の投資を行い、バリューアップによるエグジットを目指す。投資実績としては、ブロックチェーンプラットフォーム開発のアーリーワークス、デジタルマーケティング支援のポイントスリー、ブライダル・ホテル運営のホロニック、見守り型介護ロボット開発のIVホールディングスなどがある。

22年2月には中小型の上場株式を対象とする投資の強化を発表した。第1号案件としてZOA<3375>の株式10万株(議決権総数に対する割合6.88%)を取得した。23年3月には、政府・軍事・航空宇宙・金融など高度な情報セキュリティニーズを持つ顧客をターゲットにセキュリティチップを開発・製造する台湾Enova Technology社に資本参加した。

23年6月には、香港のコングロマリットである新世界発展でグループの投資部門の責任者として活躍してきたチャン・チン氏を取締役として招聘し、香港子会社MBK ASIA LIMITEDを拠点にした投資関連事業を強化すると発表した。また23年8月には、香港の子会社MBK ASIA LIMITEDが、香港で主に法人向けに税務会計サービスを提供するCAC社と業務提携した。香港における投資事業を強化する。

■NFTなどブロックチェーン関連を強化

新規分野としてNFTなどのブロックチェーン関連や、EV充電器関連などにも積極展開している。

ブロックチェーン関連では、STO(Security Token Offering)を活用したサービスとして、20年2月にサービス開始したエストニア暗号資産交換所ANGOO FinTech関連、海外投資家向けを中心とする日本不動産プラットフォームなどの不動産テック関連、医療エコシステムのメディテックプラットフォーム関連、NFT(Non―Fungible Token=非代替性トークン)プラットフォーム関連、娯楽TVメディア・コンテンツなどを展開している。

海外(欧州)では20年10月に子会社BFHへANGOO FinTech運営を移管してエストニアでの事業統括会社と位置付けた。23年7月にはエストニアの子会社EJTCについて、バルト3国で運営する証券取引所Nasdaq Baltic上場(21年3月上場)のメリットを活かし、エストニアを拠点とするEUでの事業展開により、企業価値向上に向けた取組を強化する方針とリリースした。

子会社のMBKバイオテック(MBKブロックチェーンが22年4月に商号変更)は、21年3月にブロックチェーン不動産取引プラットフォーム「MBK Realty」を発表、21年4月にお宝グッズNFT化・売買プラットフォーム「NFTバンカーズ」を発表、21年11月に「NFTバンカーズ」をリニューアルした。子会社ケンテンが運営するショッピングサイト「KENTEN×lafan」内のNFTコーナーも「NFT LaFan」としてリニューアルした。

22年8月には、娯楽TVが設立した円谷メディア・コンテンツの株式を譲り受けて子会社化し、商号を娯楽TVメディア・コンテンツに変更(22年9月に娯楽TVメディア・コンテンツの株式をエストニアの子会社EJTC社に譲渡し、娯楽TVメディア・コンテンツを孫会社化)し、キャラクターおよびコンテンツビジネスへの展開を開始した。22年10月には娯楽TVメディア・コンテンツが公式キャラクター「マーチャントマン」のテーマソングを完成した。23年2月には「マーチャントマン 誰でもわかる開運・道徳本」が幻冬舎より発売された。

23年7月にはEV充電器設置事業への取組を開始すると発表した。第1弾として自社保有するマンションの駐車場や投資先であるホロニックが運営するホテルの駐車場への設置から着手し、新たな設置場所を確保しながら事業拡大を目指す。

また23年7月には太陽光パネル設置事業への取組を開始すると発表した。自社保有マンションの屋上などへ太陽光パネル設置し、蓄電や売電によって収益確保を目指す。さらにアビスジャパンとの連携によって介護施設・病院などへの設置拡大も目指すとしている。

■オペレーション事業は収益改善を推進

オペレーション事業は、岐阜県土岐市の土岐ボウリング運営、子会社ケンテンの服飾雑貨店運営・ネット通販を展開している。子会社ケンテンは20年4月にラファンと協業してネット販売を強化し、メタバース空間にバーチャルショッピングサイト「KENTEN×LaFan」を出店している。

■24年10月期(決算期変更)予想を上方修正

23年10月期(決算期変更に伴い4月~10月の7ヶ月決算、8月10日付で売上高、営業利益、親会社株主帰属当期純利益を上方修正、経常利益は据え置き)の連結業績予想は、売上高が15億50百万円、営業利益が2億90百万円、経常利益が1億70百万円、親会社株主帰属当期純利益が3億40百万円としている。配当予想は復配の1円(期末一括)としている。

前回予想(売上高15億円、営業利益2億50百万円、経常利益1億70百万円、親会社株主帰属当期純利益1億15百万円)に対して、経常利益を据え置いたが、売上高を50百万円、営業利益を40百万円、親会社株主帰属当期純利益を2億25百万円それぞれ上方修正した。マーチャント・バンキング事業において、第1四半期に取得した賃貸用不動産4物件の賃貸収入が第2四半期から寄与することに加えて、第2四半期に販売用不動産2物件の売却を見込んでいる。また、投資先のアーリーワークスが米国ナスダック市場に上場(23年7月25日付)したことに伴い、第2四半期の特別利益に投資有価証券売却益2億28百万円を計上する見込みだ。なお販売用不動産2物件の売却については8月14日付で名古屋市千種区の物件、9月19日付で京都市左京区の物件の売却をリリースしている。

なお第1四半期(4月~6月)は、売上高が前年同期比3.1%減の3億01百万円、営業利益が62百万円の損失(前年同期は25百万円の損失)、経常利益が86百万円の損失(同37百万円の損失)、親会社株主帰属四半期純利益が82百万円の損失(同40百万円の損失)だった。マーチャント・バンキング事業において賃貸用不動産取得費用93百万円を計上したため赤字だった。

マーチャント・バンキング事業は売上高が65.3%増の2億55百万円、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が46.5%減の16百万円だった。前年度に取得した賃貸用不動産からの家賃収入などで大幅増収だが、第1四半期に取得した賃貸用不動産4物件の取得費用を計上したため大幅減益だった。オペレーション事業は売上高が70.7%減の45百万円、利益が1百万円の損失(前年同期は15百万円の損失)だった。23年5月にインターネットカフェ店舗の運営が終了したため減収だが、赤字縮小した。

マーチャント・バンキング事業の成長が牽引し、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株価はモミ合い上放れの動き

株価は地合い悪化の状況でも徐々に水準を切り上げて、モミ合いから上放れの動きを強めている。上値を試す展開を期待したい。10月20日の終値は311円、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS134円50銭で算出)は約2.3倍、そして時価総額は約92億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)
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