日本エム・ディ・エムは売られ過ぎ感、24年3月期増益予想

 日本エム・ディ・エム<7600>(東証プライム)は人工関節製品など整形外科分野を主力とする医療機器メーカーである。米国子会社オーソデベロップメント(ODEV)社製品を主力として、商社機能と開発主導型メーカー機能を融合した独自のビジネスモデルを展開している。24年3月期は日本および米国における症例数の増加などで増収増益予想としている。積極的な事業展開により円安のマイナス影響を吸収して収益改善基調を期待したい。株価は地合い悪化も影響して安値圏だが、売られ過ぎ感を強めている。1倍割れの低PBRも評価材料であり、売り一巡して出直りを期待したい。なお10月30日に24年3月期第2四半期決算発表を予定している。

■整形外科分野の医療機器メーカー、米国子会社製品が主力

 人工関節製品、骨接合材料、脊椎固定器具など整形外科分野を主力とする医療機器メーカーである。米国子会社オーソデベロップメント(ODEV)社製品を主力として、商社機能と開発主導型メーカー機能を融合した独自のビジネスモデルを展開している。海外展開として、米国では販売体制強化と人工関節分野新製品導入による2桁成長を目指し、中国では合弁会社設立による米国ODEV社製品の輸入販売拡大と中国現地生産品の製造・販売開始を目指している。

 23年3月期のセグメント別(調整前)業績は、日本国内の売上高が1.9%増の123億56百万円で営業利益が33.2%減の12億31百万円、米国の売上高が17.6%増の127億82百万円で営業利益が22.8%減の6億47百万円だった。地域別・品目別売上高(売上控除前)は、日本の人工関節が0.4%増の47億38百万円、骨接合材料が5.0%増の43億22百万円、脊椎固定器具が1.9%増の31億85百万円、その他(人工骨など)が20.9%減の3億54百万円、そして米国の人工関節が26.5%増の89億10百万円、脊椎固定器具が54.8%増の40百万円だった。自社製品比率は80.6%で1,4ポイント上昇した。

 収益面の特性として、医療機器償還価格の影響や為替変動の影響を受けるほか、整形外科医療機器の販売は下期が繁忙期となる傾向があるため、業績も下期の構成比が高い特性があるとしている。

 なお22年1月に筆頭株主が異動した。日本特殊陶業が保有する株式を三井化学に譲渡(手続として売り出しによる譲渡)し、三井化学が筆頭株主となった。日本特殊陶業との資本業務提携を解消し、新たに三井化学と資本業務提携した。

■新製品の開発・調達拡大

 新製品としては、米国ODEV社との日米共同開発による適応症例拡大に向けたインプラント開発や、新素材インプラントや手術支援システムなど外部調達によるビジネス拡大を推進している。

 21年3月には米国ODEV社が中国WASTONと、中国現地生産品の製造・販売を目的とした合弁会社を設立した。21年5月には米国ODEV社が米国THINK社と共同で、米国ODEV社の人工関節製品を用いた人工関節全置換手術を、THINK社の手術支援ロボットシステムを用いて行うことができるようにした。

 22年7月には、米国ODEV社製造の人工股関節新製品「Promontoryヒップシステム」の日本における薬事承認を取得、米国ODEV社製造の脊椎ケージ「Vusion Ti3D ARCケージ」の日本における薬事承認を取得した。

 22年12月には米国ODEV社が、Materialise社(ベルギー)製の患者適合型人口膝関節手術用器械BKS Total PSIを共同開発し、米国医療施設向けに供給開始した。

 23年3月には米国ODEV社が、人工関節置換手術に使用するNaviswiss社製の人工股関節置換手術用ナビゲーションシステムNaviswiss Hip および人口膝関節置換手術用ナビゲーションシステムNaviswiss Kneeを米国医療施設向けに導入すると発表した。Naviswiss Hipは24年3月期第1四半期に導入予定、Naviswiss Kneeは24年3月期後半に導入予定である。

 23年9月には、インフィックスおよび細胞応用技術研究所との販売提携契約締結を発表した。膝関節早期治療製品PRP-FD(Plate Rich Plasma Freeze Dry)の医療施設向け販売を23年11月(予定)に開始し、再生医療分野(膝関節)に参入する。

■サステナビリティの取り組み強化

 サステナビリティの取り組みも強化している。22年3月にはTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同を表明するとともに、同提言に賛同する企業や金融機関からなるTCFDコンソーシアムに参画した。22年6月には国際連合が提唱する「国連グローバル・コンパクト(UNGC)」に署名し、参加企業として登録された。併せて、UNGCに署名している日本企業などで構成される「グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン」に加入した。

 22年12月には、国際的な環境評価の情報開示システムを運用するCDPから、環境問題によるリスクや影響を管理している企業として、スコアレベル「B-」評価として認定されたと発表している。

 なお23年7月には、FTSE Russellにより構築された日本株ESG指数「FTSE Blossom Japan Sector Relative Index」の構成銘柄に初めて選出された。

■24年3月期増益予想

 24年3月期の連結業績予想は売上高が23年3月期比9.3%増の233億円、営業利益が23.5%増の25億円、経常利益が17.4%増の24億円、親会社株主帰属当期純利益が5.4%増の15億円としている。想定為替レートは1USドル=135円(23年3月期実績は1USドル=134.95円)としている。配当予想は23年3月期比1円増配の14円(期末一括)としている。連続増配予想で予想配当性向は24.5%となる。

 重点施策として、日本市場では人工関節・脊椎固定器具分野の新製品の全国展開、大腿骨頚部転子部骨折治療分野の症例獲得、営業体制強化による顧客基盤の強化、人工股関節販売強化・手術支援システム継続運用、三井化学との共同開発、米国市場ではUHKAS(ODEV社主催)による顧客基盤の強化、West地区の営業体制強化、新製品の全国展開による販売強化、手術支援システム運用による人工関節販売強化、製造原価低減などを推進する。

 地域別・品目別売上高(売上控除前)の計画は、日本国内が7.8%増の135億80百万円(人工関節が11.0%増の52億60百万円、骨接合材料が4.1%増の45億円、脊椎固定器具が8.6%増の34億60百万円、その他(人工骨など)が1.5%増の3億60百万円、そして米国が11.7%増の100億円(人工関節が12.2%増の100億円)としている。自社製品比率は81.8%で1.2ポイント上昇の見込みとしている。

 第1四半期(4~6月)は、売上高が前年同期比7.5%増の54億02百万円、営業利益が30.5%減の3億46百万円、経常利益が30.2%減の3億37百万円、親会社株主帰属四半期純利益が47.3%減の1億77百万円だった。

 売上面は獲得症例数が伸長して増収と順調だったが、利益面は為替の円安影響、国内における償還価格引き下げの影響、国内体制強化に伴う人件費の増加、米国売上増加に伴う支払手数料(コミッション・ロイヤリティ)の増加、研究開発費の増加、米国子会社ODEVにおいて隔年で主催している顧客向けセミナー開催などによる販促費の増加、円安に伴う米国での費用(円換算後)の増加などで減益だった。

 セグメント別(調整前)に見ると、日本国内は売上高が4.1%増の30億55百万円で営業利益が7.5%減の2億36百万円、米国は売上高が7.9%増の31億82百万円で営業利益が73.5%減の54百万円だった。なお米国の外部顧客向け売上高は、米ドルベースで4.8%増の16百万円米ドル、円換算後で12.1%増の23億47百万円だった。為替の換算レートは前年同期が1米ドル=129.50円、当期が1米ドル=138.11円だった。

 医療機器類の品目別・地域別売上高(円換算後)は、人工関節は日本が3.2%増の11億70百万円、米国が12.1%増の23億38百万円、骨接合材料(日本)はが8.1%増の10億38百万円、脊椎固定器具(日本と米国の合計)は0.7%減の8億21百万円だった。なお自社製品比率は前年同期と同じ80.1%だった。

 通期の連結業績予想は据え置いている。第1四半期は減益だったが、積極的な事業展開により円安のマイナス影響を吸収して収益改善基調を期待したい。

■株価は売られ過ぎ感

 株価は地合い悪化も影響して安値圏だが、売られ過ぎ感を強めている。1倍割れの低PBRも評価材料であり、売り一巡して出直りを期待したい。10月23日の終値は706円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS57円03銭で算出)は約12倍、今期予想配当利回り(会社予想の14円で算出)は約2.0%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS880円64銭で算出)は約0.8倍、そして時価総額は約187億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)
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