アスカネットは売り一巡、24年4月期減益予想だが上振れ余地

 アスカネット<2438>(東証グロース)は、葬儀社・写真館向け遺影写真加工のフューネラル事業、写真館・コンシューマー向けオリジナル写真集制作のフォトブック事業を主力として、空中結像ASKA3Dプレートの空中ディスプレイ事業も拡販に向けた動きを加速させている。10月24日にはフォトブック事業において新商品「Photo Note」の販売を開始した。24年4月期は人件費増加などを考慮して減益予想としている。ただし第1四半期が減益ながら計画超だったことや、下期偏重の季節要因などを勘案すれば、通期会社予想に上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。株価は地合い悪化も影響して年初来安値を更新する展開だったが、売り一巡して切り返しの動きを強めている。出直りを期待したい。

■写真加工関連を主力として、空中ディスプレイも推進

 遺影写真加工と写真集制作を主力として、非接触ニーズでも注目される空中ディスプレイ(空中結像ASKA3Dプレート)の量産化・拡販を推進している。セグメント区分は、葬儀社・写真館向け遺影写真加工のフューネラル事業、写真館・コンシューマー向けオリジナル写真集制作のフォトブック事業、空中結像ASKA3Dプレートの空中ディスプレイ事業としている。

 23年4月期のセグメント別売上高(外部顧客への売上高)構成比はフューネラル事業52.1%、フォトブック事業45.2%、空中ディスプレイ事業2.7%、営業利益構成比はフューネラル事業128.4%、フォトブック事業131.9%、空中ディスプレイ事業▲51.4%、調整額▲108.9%だった。

 フューネラル事業は葬儀関連、フォトブック事業はウエディング・卒業・入学イベント関連などが主力市場のため、いずれも下期の構成比が高い季節特性がある。

 なお人工知能搭載ソーシャルロボット「unibo」を開発・製造するユニロボット、全身高速3Dスキャナーおよび3Dデータ処理システム開発・製造のVRC社、AIカメラソリューション開発のAWLと資本業務提携している。22年1月にはベンチャーファンド「XVC1号投資事業有限責任組合」へ出資した。

 23年7月には女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を更新し、目標として女性管理職比率13%以上(23年4月末時点7.9%)、正規雇用労働者の男女賃金差異78%以上(同75.8%)、有給休暇取得率85%以上維持(同93.6%)を掲げた。23年8月にはCSR活動の一環として、同社初の試みとなる本社近隣の小学生を対象とした会社見学会・体験会を開催した。

■フューネラル事業は葬祭市場をIT化する葬Tech推進

 フューネラル事業は、専門オペレーターによるデジタル加工を行い、葬儀社に設置されたハード機器に出力する。収益は加工オペレーション収入、サプライ品売上、ハード機器売上などである。

 1992年に国内初となる遺影写真デジタル加工・出力を開始し、18年11月には累計500万枚を突破した。23年4月期末時点のハード設置件数は22年4月期末比126ヶ所増加の2820ヶ所、23年4月期の遺影写真加工枚数(新規加工枚数)は22年4月期比9.9%増の44万3312枚だった。葬儀は年間約110万件施行されているため推定市場シェアは約3割~4割(1位)となる。

 成長戦略として、葬祭市場における豊富な顧客基盤(葬儀社)を活用し、葬儀社・喪家・会葬者を繋ぐサービス「tsunagoo(つなぐ)」(特許取得済)、ASKA3Dプレートを使用した焼香台、動画やサイネージによる新たな演出ツールの提供など、葬祭市場をIT化する「葬儀×TECH=葬Tech」を推進している。

 21年3月には「tsunagoo」の利用式場が2500ヶ所を突破し、全国の葬儀場約9200ヶ所(20年12月現在、月刊フューネラルビジネス調べ)の4分の1強に浸透している。21年8月にはコロナ禍の影響で報告が遅くなりがちな葬儀の報告をスムーズに行えるサービス「tsunagoo AFTER」をリリースした。

 アライアンス戦略では、22年5月にMARKSと業務提携した。ソリューション拡充に向けて「tsunagoo」とMARKSの「成仏不動産」のサービス連携を開始した。また、AGE technologiesと業務提携した。ソリューション拡充に向けて「tsunagoo」とAGE technologiesの「そうぞくドットコム」のサービス連携を開始した。今後もサービス機能充実に向けて開発やアライアンス強化を推進する方針だ。

■フォトブック事業は写真集製作サービス

 フォトブック事業は、オリジナル写真集をネットで受注・製作するフォトブックサービスである。高度なカラーマネジメント技術やオンデマンド印刷制御技術などを強みとしている。

 全国の写真館・プロフェッショナル写真家向け(BtoB)の「アスカブック」と、一般消費者向け(BtoC)の「マイブック」を主力として、NTTドコモのフォトブック印刷サービス「dフォト」にフォトブック・プリント商品を供給するOEMも拡大している。23年4月期末時点のBtoB契約件数は22年4月期比1193件増加の1万5989件、稼働件数は389件増加の5588件、マイブック会員数は9.8%増の33万9918人となった。

 BtoBではスタジオ写真向けや建築写真向け製品などの拡販、BtoCでは子どもの成長記録やカレンダー・卒業アルバムなど季節製品の拡販、等身大アルバム付き出張撮影サービスなどを推進している。また23年8月には、見開きが180°フルフラットに開くフォトブック「FLAT」に、表紙、本文ともに半光沢タイプにカスタマイズできるサービスを開始した。

 22年1月には「マイブック」が、ワールドスポーツコミュニティ(愛知県名古屋市)が提供するSDGs認定の世界初のスポーツ×教育プログラム「kidss」に参画した。22年12月には、結婚式相談カウンターDXサービス「トキハナ」を中心に結婚式サポート事業を展開するリクシィと資本業務提携(第三者割当増資引受)した。

 10月24日には新商品「Photo Note」の販売を開始した。手作りグッズの1つとして注目されている「推しノート」に最適なアイテムで、スマホで簡単に作成できる。

■ソーシャルVR向けサービス「かえでラボ」

 22年8月には、仮想空間で活動するメタバースユーザーの「おもい」を表現していくソーシャルVR向けサービスとして「かえでラボ」を設立し、仮想空間上で撮影された写真を現実空間でカタチにするテストマーケティングを開始した。

 23年2月には、広島大学を中心に7つの中四国の国公立大学が加入する「ひろしま好きじゃけんコンソーシアム」のネットワークを活用して、メタバースに関心のある学生を対象としたアントレプレナーシップ型インターンシップを開始した。メタバース空間での新たなビジネスアイデアなどを議論・提案・検証することにより、バーチャルラボ「かえでラボ」の今後の運営にも活用する方針だ。そして23年4月にはメタバースに関心のある学生を対象としたアントレプレナーシップ体験型インターンシップ発表会を実施した。

 23年9月には、「ハロー!パソコン教室」を展開するイー・トラックスとの共同プロジェクトとして、法人・自治体向けのメタバース体験&基礎研修を開始した。

■空中ディスプレイ事業は空中結像ASKA3Dプレートの量産化推進

 空中ディスプレイ事業は、サービスブランドをASKA3D、プレート名をASKA3Dプレートに統一して、量産化(ファブレス形態で製造、自社ブランドで販売)を推進している。プレートだけで空中に映像を浮かばせる空中ディスプレイが可能となるシンプルな構造を特色としており、サイネージ分野の他、非接触ニーズも背景として車載、医療、飲食、アミューズメント、エレベータの操作パネルなど多方面の業界・業種から注目されている。

 高品質の空中結像を可能にする小ロット向けの大型ガラス製プレートはサイネージ用途、大ロット向けに低コストでの供給が可能な樹脂製プレートは製品組込用途として開発・製造・販売を進めている。また樹脂製プレートについては従来よりも大きいサイズの開発により、操作パネルとしての用途拡大を推進している。

 生産面では月産3000枚程度の生産能力を有する第1段階の量産化に移行している。一部工程の生産設備を増強することで比較的容易に生産能力を月産1万枚程度に拡大できる。20年6月には技術開発センター(神奈川県相模原市)を設立し、ガラス製ASKA3Dプレートに関する量産技術の内製化と生産体制の確立を推進している。営業面では海外販売体制拡充に向けて、20年11月に米国・UAE・中国で販売代理店契約を締結した。海外販売代理店を通じてサービス網を拡大し、デジタルサイネージや組込システムへの販売を推進する。

 22年1月には、大和ハウス工業およびパナソニックとの「空中タッチインターホン」共同実証実験を発表した。大和ハウス工業が開発中の分譲マンション「プレミスト津田山」(川崎市高津区)のマンションサロンエントランスにおいて、ASKA3Dプレートを活用した「空中タッチインターホン」共同実証実験を行う。22年2月には、セブンーイレブン・ジャパンがセブンーイレブン店舗(東京都内6店舗)において、ASKA3Dプレートを使用した世界初の非接触・空中ディスプレイPOSレジ「デジPOS」実証実験を開始した。

 22年3月には、NTTドコモのリモート接客システム「TimeRep」とASKA3Dプレートを組み合わせた「完全非接触型リモート接客システム」が、NTTドコモ中国支社から広島県庁に導入された。自治体としては全国で初めての導入となる。22年6月には、ASKA3Dプレートを搭載した非接触ホログラフィックエレベータ操作端末が、米国クリーブランド・ホプキンス国際空港に設置された。ASKA3Dプレートの販売代理店である中国のYesar Electronics Technology(Shanghai)がCSA認定を取得し、エレベータメーカーの製品テストをクリアした。

 22年9月には、ASKA3Dプレートの北米地域におけるパートナー企業であるHolo IndustriesがASKA3Dプレートを使用した独自技術の「Holographic Touch」と、Mastercard社のタッチレス決済機能を組み合わせた非接触クレジットカード決済システムを共同開発中とリリースしている。

 23年1月には、米国ラスベガスで開催された世界最大級の電子機器・IT展示会「CES2023」に、ASKA3D北米地域パートナー企業であるHolo Industriesと共同出展した。ASKA3Dプレートを使用した大型キオスク筐体、Hyundai自動車のコンセプトカーに搭載された車載エンターテイメントシステム、Holo IndustriesがMastercardと共同開発した非接触端末、セルフチェックアウト筐体「Bora Bora」などを展示し、ASKA3Dプレートを使用した空中ディスプレイの持つ近未来感やエンターテイメント性が高く評価されたとしている。

 23年5月には、広島市並びに広島サミット県民会議の依頼を受け、ASKA3Dを使用した空中ディスプレイインフォーメーションを、G7広島サミット国際メディアセンター内の広島情報センターに展示・実演した。

■24年4月期減益予想だが保守的

 24年4月期の業績(非連結)予想は売上高が23年4月期比5.1%増の73億30百万円、営業利益が15.4%減の4億95百万円、経常利益が18.3%減の5億05百万円、当期純利益が26.7%減の3億53百万円としている。配当予想については23年4月期比2円減配の7円(期末一括)としている。予想配当性向は32.9%となる。

 売上面は、フューネラル事業では2年続いた葬儀件数の増加が落ち着き、フォトブック事業では海外旅行などBtoC事業の戻りを保守的に計画している。空中ディスプレイ事業は拡販により売上拡大を推進する。セグメント別売上高の計画はフューネラル事業が2.8%増の32億40百万円、フォトブック事業が2.9%増の37億40百万円、空中ディスプレイ事業が84.9%増の3億50百万円としている。コスト面では、ベースアップや人員増強による人件費の増加、額や紙・インキなどの値上がりを想定し、各利益は減益予想としている。

 第1四半期(5月~7月)は売上高が前年同期比4.3%増の16億09百万円、営業利益が45.1%減の28百万円、経常利益が38.6%減の34百万円、四半期純利益が40.5%減の22百万円だった。コスト増加の影響で減益だが、葬儀関連のフューネラル事業の売上が想定を上回ったことなども寄与して、社内計画を上回る水準で着地した。

 セグメント別(内部売上・全社費用等調整前)に見ると、葬儀関連のフューネラル事業は売上高が6.6%増の7億18百万円で営業利益が10.0%減の1億19百万円だった。全国的な葬儀件数は高水準だった前期の反動で減少したが、自社営業強化による新たな葬儀社との契約が順調に進展し、主力の遺影写真加工サービスやサプライ品の売上高が想定を上回った。利益面は、人員不足となっていた画像加工部門のオペレーターを積極的に採用(新卒)したことに加えて、前期末にベースアップを実施したため人件費が増加し、営業減益だった。

 写真集関連のフォトブック事業は売上高が1.3%増の8億58百万円で営業利益が6.7%増の1億59百万円だった。売上面は、一般消費者向け「マイブック」とOEMが海外旅行需要の回復遅れやマスク着用の常態化に伴う撮影機会の減少で厳しい状況が続いたが、プロフェッショナル写真家向け「アスカブック」がウエディング関連のコロナ禍影響からの脱却などで堅調に推移した。利益面は、原材料価格上昇や人件費増加の影響があったが、各種コストダウン施策の効果や減価償却費の減少などで営業増益だった。

 空中結像プレートASKA3D関連の空中ディスプレイ事業は売上高が48.0%増の34百万円、営業利益が86百万円の損失(前年同期は76百万円の損失)だった。国内では広島で開催されたG7サミットメディアセンターでのデモ設置や企業受付など、海外では中東代理店経由でのクウェートの銀行などに導入されて増収だが、国内外展示会への出展による広告宣伝費の増加、品質管理体制強化のための人件費の増加などで営業損失が拡大した。

 通期予想は据え置いている。第1四半期の進捗率は低水準の形だが、第1四半期が社内計画を上回る水準だったことに加えて、下期偏重の季節要因があること、フューネラル事業において新卒オペレーターが第2四半期以降に徐々に戦力化することなどを勘案すれば、通期会社予想に上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。

■株主優待制度は毎年4月末の株主対象

 株主優待制度は毎年4月30日現在の株主に対して、所有株式数に応じて自社サービス(マイブック)割引利用券を贈呈している。21年2月には、利用可能商品の選択肢を増やしてほしいとの要望に応え、多くの商品への利用が可能になるよう一部割引利用券の金額を変更(詳細は会社HP参照)した。

■株価は売り一巡

 株価は地合い悪化も影響して年初来安値を更新する展開だったが、売り一巡して切り返しの動きを強めている。出直りを期待したい。10月27日の終値は637円、今期予想PER(会社予想のEPS21円28銭で算出)は約30倍、今期予想配当利回り(会社予想の7円で算出)は約1.1%、前期実績PBR(前期実績のBPS373円19銭で算出)は約1.7倍、そして時価総額は約111億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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