巴工業は調整一巡、23年10月期営業・経常増益予想で24年10月期も収益拡大基調

巴工業<6309>(東証プライム)は遠心分離機械などの機械製造販売事業、合成樹脂などの化学工業製品販売事業を展開している。成長戦略として海外事業拡大、収益性向上、SDGsや脱炭素、迅速な意思決定と効率的な営業活動に繋がるDX、資本効率改善、持続的成長に資する投資、社員一人一人が活躍できる職場環境作りに取り組んでいる。23年10月期は営業・経常増益予想としている。化学工業製品販売事業の好調が牽引する見込みだ。第3四半期累計の進捗率が順調であり、通期会社予想は再上振れの可能性がありそうだ。さらに24年10月期も積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は地合い悪化の影響で上場来高値圏から反落の形となったが、1倍割れの低PBRも評価材料であり、調整一巡して上値を試す展開を期待したい。

■機械製造販売事業と化学工業製品販売事業を展開

遠心分離機械などを中心とする機械製造販売事業、および合成樹脂や化学工業薬品などを中心とする化学工業製品販売事業を展開している。22年4月には欧州市場における各種化学工業製品の卸売を展開する100%子会社としてTOMOE Advanced Materilsを設立した。

22年10月期のセグメント別業績(収益認識会計基準適用のため売上高の増減率非記載、売上総利益および営業利益への影響は軽微)は以下のとおりである。

機械製造販売事業は売上高が113億56百万円(機械30億42百万円、装置・工事11億24百万円、部品・修理71億89百万円)で、売上総利益が21年10月期比1.0%増の40億32百万円、販管費が0.8%増の31億29百万円、営業利益が1.9増の9億03百万円だった。

機械製造販売の売上高の内訳は、官需45億23百万円(機械8億84百万円、装置・工事9億95百万円、部品・修理26億43百万円)、民需28億92百万円(機械5億62百万円、装置・工事1億29百万円、部品・修理22億01百万円)、海外39億39百万円(機械15億95百万円、装置・工事0百万円、部品・修理23億44百万円)だった。

化学工業製品販売事業は売上高が342億32百万円、売上総利益が21年10月期比15.3%増の70億60百万円、販管費が12.0%増の46億64百万円、営業利益が22.5%増の23億96百万円だった。

化学工業製品販売の売上高の内訳は、合成樹脂関連52億74百万円、工業材料関連59億96百万円、鉱産関連49億07百万円、化成品関連81億42百万円、機能材料関連42億07百万円、電子材料関連54億51百万円、その他(洋酒)2億52百万円だった。

収益面の特性として、機械製造販売事業は設備投資関連のため、第2四半期(2月~4月)および第4四半期(8月~10月)の構成比が高い傾向がある。

■25年10月期営業利益40億円目標

22年11月からの3年間を対象とする第13回中期経営計画「For Sustainable Future ~持続可能な未来のために~」の基本方針は、既存の枠組みに囚われない新たな価値創造と持続的成長を目指し、持続可能な未来のために変革と成長を続け、業績拡大と企業価値向上を実現するとしている。重点施策としては海外事業の拡大、さらなる収益性の向上、SDGsや脱炭素等、迅速な意思決定と効率的な営業活動に繋がるDX、資本効率の改善、持続的成長に資する投資、社員一人一人が活躍できる職場環境作りに取り組むとしている。

目標数値としては、最終年度25年10月期売上高500億円(機械145億円、化学品355億円)、営業利益40億円(機械13億円、化学品27億円)、経常利益40億円、当期純利益28億円、ROE(純資産利益率)7.6%を掲げている。

機械製造販売事業では、生産改革プロジェクト推進による採算性向上、海外事業の拡大(中国市場での販売強化、米国市場での営業力強化、新たな市場開拓など)の推進、DX(AIによる遠心分離機の自動運転制御など)の推進、SDGs・脱炭素への取り組み(バイナリー発電装置やマイクロ風力発電装置など再生エネルギー分野への展開)を推進する。

化学工業製品販売事業では、海外事業の拡大(タイを軸とする東南アジアでのビジネス拡大、チェコを拠点とする欧州各国への展開、新たなサプライヤー発掘など)の推進、SDGs・脱炭素への取り組み(風力発電などの再生可能エネルギー分野、EVおよびそれを支えるパワー半導体分野への商材提供など)を推進する。

全社共通の重点施策としては、DXの推進によるビジネス変革、資本効率の改善(ROEの改善、最重要指標である連結経常利益またはEBITDAの極大化)、持続的成長に資する分野への投資・経営資源投入(工場設備の整備・拡充、新製品の研究開発、システムインフラの強化、M&A・アライアンスなど)、社員一人一人が活躍できる職場環境作りへの取り組みを推進する。

なお22年4月にはサステナビリティ経営推進基本方針に基づき、脱炭素・循環型社会の実現に向けて主力のサガミ工場(神奈川県大和市)で使用する電力を100%再生可能エネルギー由来の電力に切り替えている。

■23年10月期営業・経常増益予想で24年10月期も収益拡大基調

23年10月期の連結業績予想(6月7日付で売上高を10億80百万円、営業利益を6億50百万円、経常利益を6億30百万円、親会社株主帰属当期純利益を3億90百万円、それぞれ上方修正))は、売上高が22年10月期比6.3%増の484億60百万円、営業利益が8.8%増の35億90百万円、経常利益が5.2%増の36億円、親会社株主帰属当期純利益が8.6%減の24億30百万円としている。配当予想(6月7日付で第2四半期末12円、期末12円それぞれ上方修正して年間合計では24円上方修正)は、22年10月期比27円増配の80円(第2四半期末40円、期末40円)としている。予想配当性向は32.9%となる。

修正後のセグメント別計画は、機械製造販売事業の売上高が17.1%増の133億円で営業利益が16.4%減の7億55百万円、化学工業製品販売事業の売上高が2.7%増の351億60百万円で営業利益が18.3%増の28億35百万円としている。

機械製造販売事業は一部案件繰延などの影響で期初計画(売上高が19.8%増の136億10百万円、営業利益が販管費の増加で2.6%減の8億80百万円)を下回る見込みだが、化学工業製品販売事業が機能材料関連の好調で期初計画(売上高が好調だった前期の反動で1.4%減の337億70百万円、営業利益が販管費増加も影響して14.1%減の20億60百万円)を上回る見込みだ。

第3四半期累計は売上高が前年同期比9.4%増の358億23百万円、営業利益が29.5%増の28億88百万円、経常利益が24.8%増の29億20百万円、親会社株主帰属四半期純利益が3.8%増の19億86百万円だった。

機械製造販売事業は販管費の増加で減益だったが、化学工業製品販売事業の好調が牽引した。なお営業外では為替差損益が悪化(前年同期は為替差益43百万円、今期は為替差損52百万円)した。親会社株主帰属四半期純利益は前期計上の固定資産売却益4億60百万円が剥落した影響で小幅増益だった。

機械製造販売事業は、売上高が海外の伸長などで5.6%増の79億65百万円、営業利益が販管費増加の影響で42.5%減の2億35百万円だった。売上高の内訳は需要先別には官需が15.5%減の29億17百万円、民需が1.3%増の17億42百万円、海外が39.4%増の33億05百万円、製品別には機械が28.8%増の20億17百万円、装置・工事が15.2%減の7億15百万円、部品・修理が1.9%増の52億33百万円だった。

化学工業製品販売事業は、半導体製造用途の大幅伸長などで売上高が10.5%増の278億57百万円、営業利益が増収効果で45.6%増の26億53百万円だった。製品別売上高は合成樹脂関連が1.8%増の39億57百万円、工業材料関連が4.0%減の43億04百万円、鉱産関連が建材・自動車用途の増加で19.2%増の42億90百万円、化成品関連が塗料・インキ用途材料の増加で5.9%増の64億98百万円、機能材料関連が半導体製造用途の伸長で60.5%増の47億66百万円、電子材料関連が2.2%減の38億45百万円、その他(洋酒)が横ばいの1億95百万円だった。

四半期別にみると、第1四半期は売上高111億28百万円で営業利益5億58百万円、第2四半期は売上高130億27百万円で営業利益15億04百万円、第3四半期は売上高が116億68百万円で営業利益が8億26百万円だった。

通期連結業績予想は6月7日付の上方修正値を据え置いている。ただし第3四半期累計の進捗率は売上高74%、営業利益80%、経常利益81%、親会社株主帰属当期純利益82%と順調である。通期会社予想は再上振れの可能性がありそうだ。さらに24年10月期も積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株主優待制度は毎年10月末の株主対象

株主優待制度(詳細は会社HP参照)は、毎年10月31日現在の1単元(100株)以上保有株主に対してワイン(当社関連会社取扱商品)1本を贈呈する。

■株価は調整一巡

株価は地合い悪化の影響で上場来高値圏から反落の形となったが、1倍割れの低PBRも評価材料であり、調整一巡して上値を試す展開を期待したい。10月27日の終値は2798円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS243円53銭で算出)は約11倍、今期予想配当利回り(会社予想の80円で算出)は約2.9%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS3446円27銭で算出)は約0.8倍、時価総額は約295億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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