【アナリスト水田雅展の銘柄分析】マーケットエンタープライズは16年6月期増収増益予想、ネット型リユース事業の中期成長力を見直し

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 マーケットエンタープライズ<3135>(東マ)はネット型リユース事業を展開している。株価は7月の上場来高値5650円から悪地合いも影響して9月8日の上場来安値2133円まで調整した。ただし高値からほぼ3分の1水準となって底値圏だろう。16年6月期大幅増収増益予想であり、中期成長力を見直す動きが強まりそうだ。

■インターネットに特化したリユース品買取・販売事業を展開

 06年7月設立(事業開始は04年11月)で、15年6月東証マザーズに新規上場した。インターネットに特化してリユース(再利用)品を買取・販売するネット型リユース事業を展開している。

 買取総合窓口サイト「高く売れるドットコム」など自社運営26カテゴリーのWEB買取サイトを通じて一般消費者や法人からリユース品を仕入れ、全国6拠点(15年6月末時点)のリユースセンターで在庫を一括管理し、複数の主要Eマーケットプレイス(ヤフオク、楽天市場、Amazon、Ebayなど)に出店した自社運営サイト「安く買えるドットコム」で一般消費者や法人向けに販売する。

 販売の実店舗を持たずにEC(電子商取引)によってリユース品の売買を行うサービスであり、ITとリアルを融合させて仕入・販売ともにマルチチャネル対応で全国的な仕入・販売網を構築していることが強みだ。なお累計の買取依頼数は14年5月に50万件を突破し、15年3月には月間の買取依頼数が約26千件に達している。

 総合窓口サイトである「高く売れるドットコム」をフラッグシップサイトとして、26カテゴリーの買取専門サイトを自社構築・運営している。自社サイトを運営することで、顧客ニーズに合ったコンテンツマーケティングを行うことが可能になり、ネットサービスを有する大手企業との効果的なアライアンスを展開することも可能になる。

 またコンタクトセンターにおける事前査定サービス、3つのチャネル(出張買取、宅配買取、店頭買取)による買取サービス、全国6拠点のリユースセンター(東京、横浜、埼玉、名古屋、大阪、福岡)での在庫一括管理という、コンタクトセンターからリユースセンターまで一気通貫のオペレーションシステムを特徴としている。そして独自の単品管理ステムと全国販売網により、高い在庫回転率(14年実績で年間14.2回転)を実現している。

 さらに事前査定~仕入~在庫管理~販売のオペレーションに関して、自社開発のITシステムおよびデータベース(複数の買取依頼チャネルや複数の買取手法に対応したマルチチャネル買取システム、査定データベース、商品管理システム、在庫連動システム、受注管理システムなど)によって運営し、効率性の高いオペレーションを実現している。

 15年2月にはヤフー<4689>が運営する「Yahoo!買取」で法人向け在庫買取サービスを開始した。また15年6月にはコープサービスが運営する「ライフなび くらしのサービス」と提携して、関東信越6生協組合員向けに総合買取サービスの提供を開始した。

 なお9月7日に新リユースブランド「ReRe(リリ)」をリリースした。ギフトボックスでの丁寧なラッピング、ブランドマークを印刷したボックスによる梱包など、当社の「安心できるリユースをすべての方に・・・for Real Reuse」との思いを込めたサービスとしている。

■中期成長に向けて事業ドメイン拡大を推進

 中期経営目標としては3~5年の間に売上高100億円、営業利益10億円の達成を目指すとしている。中期成長戦略では収益基盤強化を目指し、事業拠点拡大の水平展開、取扱商品拡大の垂直展開、そして新サービス構築による事業ドメイン拡大を推進する。

 水平展開では仕入基盤のさらなる拡充に向けて、全国主要都市への新規リユースセンターの開設を推進する。3年以内に5拠点のリユースセンターを新設する予定で、出張・店頭買取における人口カバー率の向上や、買取コンバージョン率の向上を目指している。

 垂直展開では取扱商品のさらなる拡大に向けて、比較サイト運営・専門企業などとのアライアンスによって、高単価・低粗利益率帯の車・バイク・不動産など、低単価・高粗利益率帯の衣類・本など「未取扱商材」や「依頼情報」のマネタイズゾーン拡充を図る。そして「シェアードアコノミー」を実現する社会的インフラの一翼を担うべく、積極的なIT投資によって新サービスを創造・拡充させるとしている。

■16年6月期も大幅増収増益予想

 今期(16年6月期)の非連結業績予想(8月7日公表)は、売上高が前期比31.6%増の52億50百万円、営業利益が同34.6%増の3億20百万円、経常利益が同41.3%増の3億21百万円、純利益が同46.3%増の2億円としている。配当予想については無配継続としている。先行投資を積極的に実施しつつも、既存体制のさらなる効率化で成長率と利益水準を維持する。

 新規拠点開設(15年3月開設した埼玉リユースセンターの通期寄与、および15年10月神戸リユースセンター開設予定)、買取・販売における新サービス(15年9月リリース「ReRe」)、大手企業とのアライアンス強化などで買取・販売とも大幅に伸長する。買取件数は同30%程度増加、買取案件単価は前期と同水準で、結果として仕入高は同30%程度の増加を見込んでいる。さらに海外Eマーケットプレイスへのテストマーケティングを実施する。

 増収効果に業務プロセス標準化推進などの効果も寄与して大幅増益予想だ。売上総利益率および販管費比率は前期(前期の売上総利益率は47.6%、販管費比率は41.6%)と同水準を見込んでいる。経常利益と純利益については前期営業外費用で計上した上場関連費用の一巡も寄与する。

■「リユース市場×EC市場」は拡大基調

 リユース市場とEC(電子商取引)市場はともに拡大基調だ。そして環境省調査によると、12年度のリユース品購入経路の54.0%がインターネット経由(インターネットオークション28.7%、インターネットショッピングサイト25.3%)となり、インターネット経由が過半を占める状況になってきた。

 「リユース市場×EC市場」は拡大基調であり、事業拠点拡大の水平展開、取扱商品拡大の垂直展開、そして新サービス構築による事業ドメイン拡大も奏功して中期的に収益拡大基調だろう。

■株価はほぼ底値圏、中期成長力を見直し

 株価の動きを見ると、急伸した7月30日の上場来高値5650円から利益確定売りで反落し、さらに悪地合いが影響して軟調展開となった。9月8日には上場来安値となる2133円まで調整する場面があった。

 9月10日の終値2220円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS78円91銭で算出)は28~29倍近辺、前期実績PBR(前期実績のBPS348円23銭で算出)は6.4倍近辺である。中期成長力を考慮すれば割高な水準とは言えないだろう。なお時価総額は約56億円である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線に対するマイナス乖離率が20%を超えて売られ過ぎ感の強い水準だ。また7月30日の上場来高値5650円から9月8日の上場来安値2133円までほぼ3分の1水準となって底値圏だろう。16年6月期大幅増収増益予想であり、中期成長力を見直す動きが強まりそうだ。

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