【アナリスト水田雅展の銘柄分析】うかいは戻り高値圏で堅調、9月末の株主優待権利取りも注目

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 うかい<7621>(JQS)は高級和食・洋食料理店を展開している。株価は悪地合いの影響で急落する場面もあったが、素早く切り返して概ね戻り高値圏で堅調に推移している。悪地合いの影響は限定的のようだ。16年3月期の収益改善基調を評価する流れに変化はなく、9月末の株主優待権利取りの動きも注目される。6月の年初来高値3220円を目指す展開だろう。

■高級和食・洋食料理店チェーンを展開

 飲食事業(高級和食・洋食料理店)を主力に、文化事業(箱根ガラスの森美術館)も展開している。新たな成長ステージに向けた戦略として、商圏1万キロに向けたブランド構築、新業態の定着と新規出店、サービス向上のための人材育成、製菓工房「アトリエうかい」の本格稼働、和食店のお土産品強化、物販における販路開拓、海外へのブランド発信と海外企業との業務提携などを推進している。

 14年4月には、国内で4年ぶりの新店となる新業態の割烹料理店「銀座kappou ukai(呼称:割烹うかい)」をオープンした。海外は13年5月に、台湾・高雄市FIHリージェントグループホテル内レストランのコンサルティング契約を締結して海外初出店を決定し、16年オープンに向けて準備を進めている。

 また8月25日には創業50周年記念本「うかい~その料理表現と味覚世界~」の発刊を発表した。15年9月1日~16年3月31日の期間限定でFAX・メールによる通信販売を開始する。

 中長期経営計画では18年3月期売上高129億51百万円、営業利益6億46百万円を目標値として掲げている。ブランド認知度の向上、圏央道相模原愛川IC~高尾山IC間の開通に伴う商圏拡大などに加えて、訪日外国人旅行客のインバウンド需要や和食ブームも追い風だ。

■第1四半期利益は第2四半期累計予想を超過達成、収益改善基調

 15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)30億66百万円、第2四半期(7月~9月)29億30百万円、第3四半期(10月~12月)34億99百万円、第4四半期(1月~3月)27億39百万円で、営業利益は第1四半期84百万円、第2四半期1億23百万円の赤字、第3四半期3億80百万円、第4四半期85百万円の赤字だった。第3四半期の構成比が高い収益構造だ。

 また15年3月期の配当性向は273.7%だった。ROEは14年3月期比5.4ポイント低下して0.6%、自己資本比率は同0.5ポイント上昇して41.7%となった。15年3月期末の有利子負債売上高比率は31.6%まで改善して目標を達成した。

 今期(16年3月期)の非連結業績予想(5月19日公表)は、売上高が前期比0.6%増の123億02百万円、営業利益が同41.4%増の3億63百万円、経常利益が同65.2%増の3億09百万円、純利益が同6.0倍の1億68百万円としている。配当予想は前期と同額の年間15円(期末一括)で予想配当性向は45.7%となる。

 厳しい事業環境などを考慮して売上高は前期比ほぼ横ばいだが、利益面では前期の減益要因だった新店「銀座kappou ukai」や「アトリエうかい八王子工房」の開業費、創業50周年記念事業費、箱根ガラスの森特別企画展の開催等に係る販促費用が一巡する。さらに営業外費用での保険解約損、繰延税金資産取崩に伴う法人税等調整額も一巡して大幅増益見込みだ。

 第1四半期(4月~6月)は売上高が前年同期比1.0%減の30億36百万円で、営業利益が同20.8%減の67百万円、経常利益が同3.9%増の53百万円、純利益が同20.1%増の21百万円だった。文化事業の減収が影響して減収・営業減益だったが、飲食事業は堅調だった。また経常利益と純利益は、営業外費用での保険解約損一巡や特別損失での固定資産除却損の減少などが寄与して増益だった。

 セグメント別の売上高は飲食事業が同0.7%増の28億14百万円、文化事業が同18.2%減の2億22百万円だった。飲食事業では14年4月開業「銀座kappou ukai」のブランド認知度向上、製菓事業における新商品展開、都心店や観光地域におけるインバウンド需要などが寄与した。文化事業は箱根町大涌谷周辺の火山活動活発化の影響を受けた。

 通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は売上高が24.7%、営業利益が18.5%、経常利益が17.2%、純利益が12.5%と低水準の形だ。しかし第3四半期の構成比が高く期初時点で下期偏重の計画である。そして第2四半期累計(4月~9月)に対する進捗率で見ると売上高が50.2%、営業利益が124.1%、経常利益が176.7%、純利益が1050.0%となり、利益は第2四半期累計予想を超過達成している。

 また飲食事業の月次売上高(前年比、アトリエうかいの店頭販売含む)の動向を見ると、全店および既存店とも15年4月98.4%、5月106.2%、6月97.3%、7月100.2%、8月101.7%と概ね好調に推移している。客単価は15年5月から4ヶ月連続の前年比プラスで推移している。

 消費増税や天候不順の影響が一巡し、株価上昇による高額消費の活発化、企業業績改善や賃金上昇に伴う消費マインドの改善、外国人旅行客のインバウンド需要、一部店舗のコースメニュー改定による客単価上昇、新店「銀座kappou ukai」の収益寄与本格化などが期待される。収益は改善基調だろう。

■株価は年初来高値圏で堅調

 株主優待制度については14年5月に実施時期変更を発表し、毎年3月期末から毎年9月中間期末に変更して14年9月末から実施した。そして14年8月に優待内容変更を発表した。箱根ガラスの森入場招待券1500円×10枚(1万5000円相当)を廃止し、代わりに100株以上所有株主に対して箱根ガラスの森株主限定食事付入場招待券5枚(1万5000円相当)を贈呈する。その他の優待内容に関しては所有株式数に応じた食事優待券または特選うかい牛肉で変更はない。

 株価の動きを見ると、3000円近辺の戻り高値圏から悪地合いの影響を受けて8月25日に2450円、9月7日に2685円まで急落する場面があったが、素早く切り返して概ね戻り高値圏で堅調に推移している。収益改善基調を評価する流れに変化はなく、悪地合いの影響は限定的のようだ。

 9月11日の終値2904円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS32円79銭で算出)は89倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間15円で算出)は0.5%近辺、そして前期実績PBR(前期実績のBPS925円25銭で算出)は3.1倍近辺である。なお時価総額は約152億円である。

 日足チャートで見ると一旦割り込んだ25日移動平均線を素早く回復する動きだ。また週足チャートで見ると、26週移動平均線近辺で下ヒゲをつけて切り返し、13週移動平均線を維持している。サポートラインを確認した形だ。16年3月期の収益改善基調を評価する流れに変化はなく、9月末に向けて株主優待権利取りの動きも注目される。6月の年初来高値3220円を目指す展開だろう。

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