ラバブルマーケティンググループは下値固め完了、23年10月期(7ヶ月決算)は需要期含まず赤字予想だが中長期成長期待

 ラバブルマーケティンググループ<9254>(東証グロース)は、大企業・ブランド向けSNSマーケティング支援を主力に、成長戦略として小規模でSNS運用する企業・団体向けSNSマーケティング支援、DX支援、東南アジアを中心とする海外展開、サステナビリティマネジメントを推進している。23年10月期(決算期を3月から10月に変更することに伴う経過期間で7ヶ月決算)は、利益の大半を計上する年末および年度末の需要期を含まないため赤字予想だが、前年同期間との比較で増収・赤字縮小の見込みとしている。そして12ヶ月決算となる24年10月期は、12ヶ月決算だった23年3月期との比較で大幅増収増益目標としている。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は上値が重く安値圏でモミ合う形だが下値固め完了感を強めている。モミ合いから上放れの展開を期待したい。

■SNSマーケティング事業を主力としてDX支援事業も展開

 企業やブランドのSNSマーケティングを支援するSNSマーケティング事業を主力とする持株会社である。SNS普及期の08年に設立(コムニコ設立、14年に純粋持株会社へ移行)して培ったSNSマーケティングに関する豊富なノウハウを強みとしている。さらに第2の柱としてDX支援事業も展開している。

 子会社はSNSマーケティング事業のコムニコ、23年4月に設立したジソウ、一般社団法人SNSエキスパート協会、23年4月に子会社化(出資比率49%)したタイのDTK AD、およびDX支援事業のDXディライト(旧24-7が23年4月に社名変更)である。一般社団法人SNSエキスパート協会は、SNSに関する正しい知識の普及と効果的かつ安全にSNSを活用できる人材育成を目的として、コムニコが16年11月に設立した法人である。理事の派遣を通じて実質的に支配しているため子会社としている。

 なお、同社の株式35万4400株(議決権所有割合24.5%)を子会社の日比谷コンピュータシステムを通じて間接保有するHCSホールディングス<4200>が、TOB(23年10月16日終了)によってエル・ティー・エス<6560>の完全子会社となる見込みとなったため、日比谷コンピュータシステム、HCSホールディングスに加えて、エル・ティー・エスが新たに同社のその他の関係会社に該当する見込みとなった。現時点では同社の業績や経営体制への影響はないとしている。

 23年3月期は、SNSマーケティング事業の売上高が22年3月期比19.1%増の15億63百万円で営業利益(全社費用等調整前)が9.2%減の4億67百万円、DX支援事業の売上高が20.0%増の89百万円で営業利益が6百万円の赤字(22年3月期は6百万円の赤字)だった。

■SNSマーケティング事業は運用支援~ツール提供~教育の好循環で成長

 SNSマーケティング事業は、SNSマーケティングに関する運用支援~運用支援ツール提供~人材教育サービスという3つのソリューションで構成されている。企業のSNSマーケティングのオペレーションをフルサポートし、3つのソリューションが相互補完しながら好循環で成長するビジネスモデルを特徴としている。23年7月にはコムニコが、デジタル広告市場の健全化を目的とする認証機構JICDAQより品質認証事業者としての認証を取得した。

 国内ではコムニコが、比較的予算の大きい大企業やブランドを主たるターゲットとして展開している。さらに、中堅・中小企業など小規模でSNS運用する企業・団体向けにSNSマーケティングの自走支援を行う子会社ジソウを設立し、対象市場拡大に向けた取り組みを強化している。ジソウは23年6月の事業開始から2ヶ月で15社からの受注を達成した。SNSエキスパート協会は人材教育サービスを展開している。

 運用支援は、12年12月にサービス開始したSaaS型SNS運用支援(アカウント投稿・分析)ツールcomnico Marketing Suiteや、18年5月にサービス開始したSNSキャンペーン支援ツールATELUを活用し、顧客企業のSNSアカウント戦略策定からアカウント開設、運用支援・代行、投稿コンテンツ制作、コメント対応、キャンペーン企画・運営、広告出稿、レポート作成、効果検証までをワンストップサービスで提供(受託)している。

 運用支援ツールの提供は、SNSアカウントでの投稿管理などに係る作業時間を大幅に削減するcomnico Marketing Suiteや、応募者の収集・当選管理などSNSキャンペーンに必要な作業を効率化するATELUを、SaaS型で提供している。23年3月期の継続契約率はcomnico Marketing Suiteが98%以上、ATELUが97%以上と高水準である。

 新ツール・サービスの開発では、23年3月にInstagramのダイレクトメッセージの自動応答に対応するチャットボットツールautouの提供を開始した。今後の盛り上がりが見込まれるライブコマースやSNSキャンペーンにも利用可能である。autouは23年5月に大手ディベロッパーや大手食品メーカーなど複数企業での導入が決定した。さらに23年7月には、コムニコとジソウが、Meta社がサービス開始したThreads(スレッズ)に関する企業の活用支援サービスを開始した。

 人材教育サービスは、SNSアカウント開設・運用に係るノウハウや、炎上などSNSに潜むリスクに関する内容を体系化した検定講座を開発・提供している。このほかにセミナー、講演、書籍、メディアを通して、SNSに関する正しい知識の普及・啓蒙活動にも努めている。社内人材のプロ化にもつながり、3つのソリューションの相乗効果を高めている。23年10月にはSNSエキスパート協会が青少年向けのSNS教育プログラムの提供を開始した。

 なおコムニコにおいては、18年1月~23年3月にSNS関連記事が外部メディアに掲載された件数は266件、寄稿した件数は117件で、いずれも競合他社を圧倒的にリードしている。また、22年4月~23年3月の自社メディア運営におけるリード獲得数は4117件、自社開催無料ウェビナーへの参加者数は1420名となった。

■海外展開を強化

 海外展開については23年4月にDTK ADを子会社化し、東南アジアを中心にインバウンドプロモーションや海外マーケティング支援の事業展開を開始した。そして23年8月にはタイ、シンガポール、香港、ラオスに続いて5地域目となるマレーシア、23年9月には6地域目となるベトナムでのサービス提供を開始した。

 23年8月には、VIDA Corporationおよびプログレッソ ディレクションとの協業で「お試し出店サービス」を開始した。海外出店を希望する飲食事業者に対し、期間限定で海外に出店するために必要な戦略の策定、テナントの紹介、仕入業者の手配、集客のためのマーケティングソリューションなどを提供するサービスである。23年10月には、マレーシアにおける「お試し出店サービス」の展開促進を目的として、VIDA Corporation、プログレッソ ディレクションおよびザクロスと共同で、マレーシアに合弁会社TASTE FOOD JAPAN SDN.BHD.を設立した。

 今後の海外展開としては、その他のアジア地域にも支援領域を拡大し、東南アジアに進出する日系企業のマーケティング支援や東南アジアからのインバウンド需要の獲得、双方の顧客に対するアップセル・クロスセルにより、海外事業拡大を目指す方針としている。

■大手企業・ブランド向け運用支援

 SNSマーケティング事業の主な収益は、月額課金の運用支援ツール利用料、月額課金の運用支援基本料金、従量課金のコンテンツ制作料金(企画数、原稿作成、撮影数など投稿数によって変動)である。受注は大手広告代理店経由と直接受注がある。23年3月期のソリューション別売上高構成比は運用支援が77.3%、運用支援ツール提供が20.3%、人材教育サービスが2.4%だった。

 同社のSNSマーケティング運用支援は大手企業を中心に銀行、小売、情報通信、飲食サービス、自治体など多種多様な企業・官公庁に幅広く導入されている。多数のブランドを展開する企業がブランド毎にSNSアカウントを運用するケースが増えているため、大型案件の受注が増加傾向となっている。ロイヤルクライアント(年間取引高10百万円以上の顧客)の数は、23年3月期第4四半期時点で22年3月期第4四半期比5社増加して38社となった。comnico Marketing Suiteの複数アカウント契約社数は81社増加して383社(うち4アカウント以上の複数アカウント契約社数は21社増加して81社)となった。クライアント例として大手ITグループ230アカウント、大手出版社42アカウント、独立行政法人38アカウントなどがある。

■主要KPI

 主要KPIとして、23年3月期のSNS運用支援新規受注件数は385件となった。22年3月期の412との比較では27件減少したが、21年3月期の247件に対しては138件増加した。

 23年3月期末時点のSNS運用支援ツール累計契約件数は22年3月期末比93件増加の493件(comnico Marketing Suiteが73件増の374件、ATELUが20件増の112件、その他が増減なしの7件)だった。また、23年3月期第4四半期のcomnico Marketing SuiteのARRは32.8%増の247百万円、解約率はcomnico Marketing Suiteが1.86%、ATELUが2.51%だった。

 なお23年9月にはcomnico Marketing Suiteの有償契約アカウント数が累計4000件を突破した。1社につき4アカウント以上の複数アカウント契約する顧客が増加基調となっている。また23年10月にはATELUのキャンペーン実施数が累計8000件を突破したと発表している。

 人材教育サービスでは、検定受講者数が23年3月期末時点で累計5077名(リスクマネジメント検定が900名、初級検定が3626名、上級検定が551名)となった。また23年9月末時点では累計5500人を突破した。

■成長に向けてDX支援や新規事業も育成

 同社は成長戦略として、M&A・アライアンスも積極活用し、基幹事業であるSNSマーケティング事業の拡大を加速させるとともに、DX支援事業の基幹事業化、海外や新しいテクノロジーを活用した新規事業の育成も強化する方針としている。

 SNSマーケティング事業は「SNSマーケティングの総合代理店としてのシェアNO.1」を目指し、事業拡大(運用支援数拡大、支援領域拡大、運用支援ツール拡大)に向けた重点施策として、運用支援および運用支援ツール提供では付加価値の高いサービスの提供、サービス品質とコンテンツパフォーマンスの向上、新サービスの開発・拡充、SaaS型クラウドツールのクロスセル、カスタマーサクセスの実現、幅広いSNSプラットフォームへの対応とサービス拡充などを推進する。人材教育サービスではマーケティング強化によるブランディング、検定受講者数の拡大、法人向けサービスメニューの拡大などを推進する。こうした成長戦略を支えるため積極的な人材投資を継続する。

 成長に向けた育成事業と位置付けているDX支援事業は、DXディライトがSalesforceを中心にMA、CRM、SFAなどの導入・運用支援を展開している。12年にHubSpot社のMAツールHubSpotの取り扱いを開始し、20年1月にはSalesforceコンサルティングパートナーに認定されてSalesforce社のMAツールPardotの取り扱いを開始した。さらなる事業拡大に向けてSFA・CRM領域の開発案件新規開拓、SFA領域における事業提携などを推進している。

 新規事業に関しては、SNSに関する豊富なノウハウと新たなテクノロジーを活用し、NFTやメタバースなどWeb3領域における新サービス開発・提供を目指す方針だ。コムニコはWeb3スタートアップ企業のプレイシンクと協業し、秘密鍵の管理不要なNFT保有手段を開発してNFT領域に参入する。一部のデジタルリテラシーの高いユーザーのみが保有していたNFTをより多くのユーザーに届けることができ、これまでのプレゼントキャンペーンよりもさらに強いファン層の参加を促し、かつX(旧Twitter)キャンペーンよりもリアルタイム性のあるキャンペーン設計が可能となる。

 さらにChatGPTなどAIの積極活用にも取り組んでいる。自社内での活用による業務効率化にとどまらず、顧客のSNSマーケティングの業務効率化や品質向上に向けてAIを活用した新サービス開発も推進する。23年9月にはコムニコがギブリー社と販売代理店契約を締結し、ギブリー社が開発・提供するChatGPT活用プラットフォーム「法人GAI」「行政GAI」の代理販売を開始した。

■アライアンスを積極活用

 22年9月にはコムニコが、バーチャルの観光物産や自動車ショールームなどXR技術を活用したソリューションABALシステムを提供するABALと協業した。SNSプラットフォームとバーチャル空間を組み合わせて、Web3時代のSNSマーケティングソリューションに関する新サービスの共同開発・提供を推進する。

 22年11月にはコムニコが、エンファムが運営する子育て支援メディアのリトル・ママとタイアップし、新サービスとして「SNSタイアッププラン#つながる子育てビト」を開始した。このタイアップにより、特にファミリー向け商品・サービスを扱う企業に対して、親和性が高い「子育て女性」という特定の層をターゲットとするSNS施策やイベントの提案が可能になる。また22年11月には、TikTok支援を得意とするmemeに出資して資本業務提携した。この提携により、短尺動画(ショート動画)を活用した幅広い提案を行うことが可能になる。将来的には両社で新サービス開発も推進する。

 23年1月にはコムニコが、note<5243>が22年9月から開始しているnote proセールスパートナー制度のパートナー企業に認定された。noteを活用したSNSマーケティング支援の拡充を推進する。23年3月にはDXディライトがオプロのパートナー企業となり、オプロが提供するBtoBサブスクリプション管理サービス「ソアスク」の企業向け導入支援を開始した。23年7月には、アジアへの越境ECを支援するアジアンブリッジと資本業務提携した。

 11月20日にはコムニコは、マンガマーケティングを提供しているシンフィールドと提携し、SNS×マンガのマーケティング支援を開始した。

■サステナビリティマネジメントで人材戦略を重視

 同社は、メンバーが輝くことできる「働きがいのある組織」が全活動のベースとなり、そこから生み出される事業活動によって社会の持続可能な発展に貢献するとの考え方に基づき、この循環の創造を目指してサステナビリティマネジメントを推進している。22年10月には本社を移転した。新しい発見やイノベーションが生まれる基地として多様な働き方を推進し、社員の定着、職場の一体感やエンゲージメントの向上を図る方針としている。

 またコムニコでは人財戦略チームを立ち上げて採用~教育の体制仕組化を進めている。そして23年の新卒入社が10名となり、新卒採用を開始して以降、最多人数となった。23年3月には、経済産業省と日本健康会議が進める健康経営優良法人認定制度において健康経営優良法人2023(大規模法人部門)に認定された。グループ各社を含めて今回初めて申請し、認定された。

 23年5月には、従業員の働き方や成長をサポートする制度の総称を「ララサポ」に決定したと発表している。Lovable Life(ラバブルな人生)をサポートする。環境サポート、成長サポート、健康サポート、出産・育児サポート、介護サポート、休暇制度、コミュニケーション、表彰制度、その他の9つのカテゴリーがあり、現時点で全39項目が定められている。

■23年10月期(7ヶ月決算)は需要期含まず赤字予想だが中長期成長期待

 23年10月期第1四半期の連結業績は、売上高が前年同期比15.2%増の4億06百万円、営業利益が3百万円(前年同期は2百万円の損失)、経常利益が5百万円(同3百万円の損失)、親会社株主帰属四半期純利益が1百万円の損失(同7百万円の損失)だった。2桁増収で営業・経常黒字転換した。新規受注件数の増加、既存案件の積み上げ、運用支援ツールの大型顧客獲得に加えて、コスト見直しなども寄与した。

 SNSマーケティング事業は、売上高(外部顧客への売上高)が16.4%増の3億84百万円、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が7.1%増の93百万円だった。運用支援の新規受注件数は76.3%増の141件、ロイヤルクライアント社数は11.4%増の39社、主力の運用支援ツールcomnico Marketing Suiteの契約社数は19.7%増の371件(1~3アカウントが16.3%増の292社、4アカウント以上が33.9%増の79社)だった。DX支援事業は、売上高が1.5%減の22百万円、利益が0百万円の損失(前年同期は1百万円)だった。

 23年10月期の連結業績予想(決算期変更に伴う経過期間として4月~10月の7ヶ月決算、23年8月2日付で公表)は、売上高が10億円、営業利益が3百万円の損失、経常利益が2百万円の損失、親会社株主帰属当期純利益が18百万円の損失としている。

 従来の3月期決算では需要期(年末および年度末)となる下期に年間の利益の大半を計上(23年3月期実績は上期が売上高7億39百万円で営業損失5百万円、下期が売上高9億14百万円で営業利益85百万円)していたが、23年10月期の7ヶ月決算においては需要期の利益を取り込むことができないため各利益は赤字予想としている。

 ただし、前年同期間(23年3月期4月~10月、売上高8億66百万円、営業利益23百万円の損失、経常利益24百万円の損失、親会社株主帰属当期純利益31百万円の損失)との比較では、新規受注案件の増加、運用支援ツールの大型顧客獲得、コスト見直しなどにより15.5%増収で赤字縮小の見込みとしている。

 また、12ヶ月決算となる次期の24年10月期は、売上高が20億円、営業利益が1億円、経常利益が1億円、親会社株主帰属当期純利益が56百万円の目標としている。同じく12ヶ月決算だった23年3月期実績との比較で、売上高が21.0%増収、営業利益が25.0%増益、経常利益が26.6%増益、親会社株主帰属当期純利益が27.3%増益となる。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株価は下値固め完了

 株価は上値が重く安値圏でモミ合う形だが下値固め完了感を強めている。モミ合いから上放れの展開を期待したい。11月24日の終値は1477円、前々期実績連結PBR(23年3月期実績の連結BPS369円10銭で算出)は約4.0倍、そして時価総額は約21億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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