野村総合研究所(NRI)<4307>(東証プライム)は28日、国内大手企業のCIOを対象に「IT活用実態調査(2023年)」を実施し、その結果を発表した。同調査は、2003年から毎年行われており、今回で21回目となる。今回の調査では、従来からの項目に加えて、近年注目されている「生成AI」に関する質問を新たに設けた。同調査の主な結果は以下のとおりである。
■IT投資は増加傾向に
2023年度にIT投資が前年度に比べて増加したと回答した企業は60.9%で、過去20年の調査結果で最も高かった。2024年度のIT投資についても、増加すると予測した企業が51.5%とほぼ半数に上った。IT投資の重要性が高まっていることがうかがえる。
■生成AIの導入率は24.2%、利用意向は高い
デジタル技術の導入状況については、「RPA」の導入率が最も高く、69.9%に達した。「ノーコード/ローコード開発ツール」の導入率は、前回の26.7%から38.8%へと大きく伸びた。「生成AI」の導入率は24.2%で、生成AI以外のAI・機械学習の導入率は28.7%であった。「生成AI」については、「導入を検討中」との回答が30.8%、「今後検討したい」との回答が26.0%と多く、今後の導入進展が期待される。
■生成AI活用に向けて、リテラシー・スキルやリスク対処が課題
生成AIの活用に関わる課題については、「リテラシーやスキルが不足している」との回答が64.6%で最も多かった。次に、「リスクを把握し管理することが難しい」との回答が61.4%であった。生成AIは最近注目されるようになった技術であり、プロンプト・インジェクションと呼ばれる新しい攻撃手法や、偽情報が出力される可能性、著作権との関連など、これまでにない観点でのリスク対処が必要となっていると考えられる。
■デジタル化を担う人材の確保に向けて、スキルの定義・評価や処遇が課題
デジタル化の推進において、各社が直面している課題として、「デジタル化を担う人材の不足」をあげた企業が80.5%に達した。IT・デジタル化人材の採用・獲得においては、「報酬や役職の面で、魅力的な処遇を提示できない」との回答が59.4%で最も多かった。次に、「自社が確保したい人材像やスキル、レベルを定義できていない」との回答が44.7%であった。IT・デジタル化人材の育成においては、「スキルを人材の評価に反映する仕組みがない」との回答が51.8%で最も多かった。次に、「スキル向上・獲得に即したメリット(処遇向上など)を提示できない」との回答が50.5%であった。これらを踏まえると、各社でデジタル化を推進する上で、まず必要な人材像を定義し、従来の処遇や人事制度の枠組みを見直し、必要な人材の確保・育成にあたることが求められていると言える。(情報提供:日本インタビュ新聞社・Media-IR 株式投資情報編集部)