【アナリスト水田雅展の銘柄分析】神鋼商事の16年3月期利益予想に再増額余地、3%台の配当利回りも見直し

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 神鋼商事<8075>(東1)は鉄鋼・非鉄金属関連の専門商社である。株価は悪地合いの影響で高値圏270円台から230円台まで急反落したが、売り一巡感を強めている。16年3月期利益予想に再増額余地があり、3%台の予想配当利回りなど指標面の割安感を見直して切り返し展開だろう。

■神戸製鋼所グループの中核商社でグローバル展開を強化

 鉄鋼製品、鉄鋼原料、非鉄金属、機械・情報、溶接材料・機器などを扱う専門商社である。中期経営計画(14年3月期~16年3月期)では、神戸製鋼所<5406>グループの中核となるグローバル商社を目指し、数値目標として16年3月期売上高1兆円、経常利益90億円、海外取引比率40%以上を掲げている。

 14年7月には筒中金属産業が新設分割で設立した国内卸売事業会社(コベルコ筒中トレーディング)の株式70%を取得して子会社化した。

 14年9月にはメキシコにおける線材二次加工拠点となる合弁会社を設立した。出資比率は当社40%、メタルワン25%、神戸製鋼所10%、大阪精工10%、メキシコGrupo Simec10%、米O&k American5%である。

 メキシコは世界の自動車・自動車部品メーカーの進出で自動車関連産業の成長が期待されており、自動車用ファスナーや冷間鍛造部品などの素材となる冷間圧造用鋼線を製造する。15年9月に建屋完成、10月に設備搬入、12月に稼働を予定している。

 15年5月には子会社のコベルコ筒中トレーディングが筒中金属産業から、韓国でアルミ高精度厚板の切断加工・卸売事業を展開している韓国筒中滑川アルミニウムの株式88.89%を取得して子会社化(ケーティーエヌに商号変更)した。

 15年8にはミャンマー・ヤンゴン市に神鋼商事ヤンゴン支店を開設した。同支店を市場調査・情報収集の拠点として、鋼材・非鉄製品・溶接材料など取り扱い製品の拡販や、神戸製鋼グループの進出支援を図るとしている。

■16年3月期減益予想だが利益を増額修正、さらに増額余地

 15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)2140億42百万円、第2四半期(7月~9月)2124億16百万円、第3四半期(10月~12月)2140億78百万円、そして第4四半期(1月~3月)2298億71百万円だった。営業利益は第1四半期14億90百万円、第2四半期15億55百万円、第3四半期18億28百万円、第4四半期19億15百万円だった。概ね順調に推移した。

 また15年3月期の配当性向は17.8%だった。ROEは14年3月期比0.5ポイント上昇して10.2%、自己資本比率は同1.2ポイント上昇して10.2%だった。

 7月29日に今期(16年3月期)第2四半期累計(4月~9月)および通期利益予想の増額修正を発表した。円安による収益改善、受取配当金の増加に加えて、海外子会社の初期投資費用の発生時期を見直した結果、第2四半期累計の各利益が増加する見込みとなった。また第2四半期累計の修正に伴って通期の利益予想についても見直したとしている。

 第2四半期累計の連結業績予想は前回予想(4月28日公表)に対して、売上高は据え置いて前年同期比0.8%増の4300億円、営業利益は8億円増額して同4.8%減の29億円、経常利益は12億円増額して同6.8%増の32億円、純利益は10億円増額して同5.8%増の21億円とした。

 通期の連結業績予想は前回予想(4月28日公表)に対して、売上高は据え置いて前期比1.1%増の8800億円、営業利益は3億円増額して同8.7%減の62億円、経常利益は6億円増額して同4.2%減の63億円、純利益は4億円増額して同1.9%減の39億円とした。

 配当予想は前回予想(4月28日公表)を据え置いて前期と同額の年間8円(第2四半期末4円、期末4円)としている。予想配当性向は18.2%となる。配当については、企業体質の強化と将来の事業展開に必要な内部留保等を考慮しつつ、各期の業績に応じた配当を継続していくことを基本方針としている。

 セグメント別の売上計画(連結調整前)は、鉄鋼が取扱数量の増加で前期比3.3%増収、鉄鋼原料が同17.3%減収、非鉄金属が自動車関連などの好調で同15.4%増収、情報・機械が大型圧縮機や建設機械用輸入部材などの好調で同9.7%増収、溶材が同7.0%増収としている。

 なお第1四半期(4月~6月)は売上高が前年同期比1.1%増の2163億60百万円、営業利益が同14.0%増の16億99百万円、経常利益が同25.0%増の20億49百万円、純利益が同13.8%増の13億48百万円だった。

 セグメント別(連結調整前、経常利益)に見ると、鉄鋼は同7.5%増収、同9.0%増益、鉄鋼原料は同10.8%減収、同8.5%減益、非鉄金属は同15.6%増収、同23.0%増益、機械・情報は同11.2%増収、経常黒字化、溶材は同2.9%減収、同63.4%減益だった。

 鉄鋼は線材製品の数量増加や海外向け価格上昇などが寄与した。鉄鋼原料は輸入鉄鋼原料や鉄スクラップの価格下落が影響した。非鉄金属は自動車向けアルミ部材の数量増加などが寄与した。機械・情報は圧縮機やアルミ加工機械が減少したが、金属成膜装置、製鉄関連資機材、液晶用電子材料、ハードディスク関連装置が増加した。溶材は国内の造船向けが増加したが、中国の造船向けや韓国のプラント向けなどが減少した。

 修正後の通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は売上高が24.6%、営業利益が27.4%、経常利益が32.5%、純利益が34.6%と高水準である。16年3月期については国内人員増やメキシコ新工場立ち上げ費用などで減益予想としているが、7月29日の利益増額修正で減益幅が縮小する見込みとなった。さらに自動車関連やエレクトロニクス関連が好調に推移して再増額の余地がありそうだ。

 メキシコ新工場に関しては、16年3月期には立ち上げ費用負担が先行するが、17年3月期以降の収益寄与が期待される。M&A戦略やグローバル展開の強化で中期的に収益拡大基調だろう。

■株価は売り一巡して切り返し、指標面の割安感を見直し

 株価の動きを見ると、悪地合いの影響で年初来高値圏270円台でのモミ合いから急反落した。8月25日に230円、そして9月8日に231円まで調整した。ただし売られ過ぎ感を強めている。

 9月14日の終値245円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS44円04銭で算出)は5~6倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間8円で算出)は3.3%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS479円84銭で算出)は0.5倍近辺と割安感の強い水準だ。なお時価総額は約217億円である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線、そして52週移動平均線を一気に割り込んで調整局面だが、230円近辺で下げ渋る動きだ。悪地合いの売りがほぼ一巡したようだ。1桁台の予想連結PER、3%台の予想配当利回り、そして0.5倍近辺の実績連結PBRと指標面の割安感は強い。割安感を見直して切り返し展開だろう。

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