【どう見るこの相場】日米金融政策のギャップが拡大するか?植田総裁の「チャレンジング」発言に注目

■「金の変わり目は株の変わり目」で円高メリット株、金利敏感株にチャレンジング可能性

 FRB(米連邦準備制度理事会)の投げたボールは、曲球のようである。前週12日、13日に開催されたFOMC(公開市場委員会)の結果は、3会合連続の政策金利据え置きで、来年には金利引き下げを示唆する内容であった。ところが、その後伝えられた高官発言では、早期利下げ観測の市場の楽観論に冷や水を浴びせており、米長期金利はすんなりと低下とはいかなかった。FRBは、ハト派のふりをしたタカ派なのか、タカ派ぶっているハト派なのか見分けがつかいない。

 一方週明けのきよう18日、19日に開催される日本銀行の金融政策決定会合で、植田和男総裁は、FRBの曲球をどう打ち返すかが焦点となる。確か植田総裁は、過日12月7月の参議院財政金融委員会で「年末から新年にかけて一段とチャレンジングになる」と発言したはずである。市場は、この発言をマイナス金利政策の解除、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の見直しのための地ならしと受け止めて、直後の米国市場では一時、為替相場が1ドル=141円台まで円高・ドル安となった。ところがその後、外国通信社が、日銀は「急ぐ必要はほとんどないとの認識」とする報道をしたことから為替相場も、1ドル=146円台まで円安・ドル高に変わってしまった。

 市場のコンセンサスは、今回の決定会合では現状維持としていて、「チャレンジング」を想定していない。前週末15日も金利復活期待がカラ振りに終わるとガックリしてメガバンク株が軒並み急落した。では次回の新年1月22日、23日に開催予定の同会合は「チャレンジング」に変わるのだろうか?この日銀会合と前後して新年の1月30日、31日にはFRBのFOMCも開催予定である。残り2週間となった師走相場と新春相場は、どうしたってこの日米の金融決定会合イベントが大きなカタリスト(株価材料)となるのは間違いない。

■「アベノミクス」の終焉と「チャレンジング銘柄」の浮上

 これは日米の金融政策が、どこかの時点でタカ派からハト派、ハト派からタカ派への宗旨替えのチャンスを窺っているようなものだ。とくに国内では、政治資金パーティーの裏金問題の追及で、異次元金融緩和策による「アベノミクス」を推進した安倍派が総崩れとなり、日銀が政治プレッシャーなしに政策変更に向かえるとの観測もしきりである。ということは、植田和男総裁の「チャレンジング」が実現すれば、「チャレンジング銘柄」も浮上する。下世話では「金の切れ目は縁の切れ目」といわれているが、兜町では「金の変わり目は株の変わり目」となるからである。

 その有力候補は、まず日米金利差の縮小により為替相場も円安・ドル高から円高・ドル安にトレンドが転換することを背景に、まず円高メリット株となる。さらに金利復活による利ザヤ拡大でメガバンクなどの金利敏感株、さらに財務的に相対的に優位となる無借金企業への注目度も高まることになる。

 円高メリット株は、かつての円高不況時などでは電力株がまず市場をリードした。経済対策として円高差益還元の電気料金引き下げが大きな柱となったことによるが、福島原子力発電所のメルトダウン事故以来、逆風が吹いており、中国電力<9504>(東証プライム)のように、業績上方修正とともに復配幅の増配も発表したら、電気料金を引き上げながら配当の積み増しはいかがなものかと地元の県知事からクレームがついたケースもある。ということで円高メリット株のトップランナーは、SPA(製造小売り)のニトリホールディングス<9843>(東証プライム)とするのが衆目の一致するところである。

 この「SPA」の「A」は、アパレルの「A」である。ニトリHDは本来、「F(家具)」を含意する「SPF」としなくてはならず、このほかSPAには「S(靴)」の「SPS」、「G(雑貨)」の「SPG」などが幅広く含まれることになる。円高メリット株、金利敏感株、無借金経営株にチャレンジングの可能性を期待するところだろう。(情報提供:日本インタビュ新聞社・Media-IR 株式投資情報編集部)

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