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カナモトは上値試す、24年10月期2桁増益予想
- 2023/12/18 09:35
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
カナモト<9678>(東証プライム)は建設機械レンタルの大手である。成長戦略として国内営業基盤拡充、海外展開、内部オペレーション最適化によるレンタルビジネス収益力向上を推進し、環境対策機への資産シフトなどサステナビリティへの取り組みも強化している。23年10月期は人財投資などの影響で減益だった。24年10月期は建設機械レンタル需要の堅調推移を見込み、先行投資による費用増を吸収して2桁増益予想としている。災害復旧・防減災・老朽化インフラ更新など国土強靭化関連工事で需要が堅調であり、積極的な事業展開で収益拡大基調を期待したい。なお自己株式取得を発表している。株価は自己株式取得も好感して年初来高値を更新する場面があった。その後は利益確定売りが優勢の形となったが、1倍割れの低PBRなど指標面の割安感も評価材料であり、上値を試す展開を期待したい。
■建設機械レンタル大手
建設機械レンタルの大手で、海外向け中古建設機械販売、土木・建築工事用鉄鋼製品販売、IT機器・イベント関連レンタル、福祉用具レンタルなども展開している。M&Aも積極活用し、北海道を地盤として全国展開と業容拡大を加速している。営業拠点数は23年4月に太田営業所(群馬県太田市)および東川機械センター(北海道上川)をオープンし、単体ベース231拠点、グループ合計575拠点となった。海外は7ヶ国に拠点展開している。
21年4月には子会社アシストが同じく子会社化のコムサプライを吸収合併した。21年5月にはシステムソリューション商社の岩崎(札幌市)と業務提携した。21年9月には子会社のニシケンが同じく子会社の九州建産を吸収合併した。22年6月には道東・道北を中心に建設機械レンタル・販売を行う子会社のサンワ機械リースを吸収合併した。22年7月には子会社のNEK(岩手県奥州市)がセントラル(岩手県奥州市)から建設機械等リース・レンタル・販売事業を譲り受けて社名をセントラルに変更した。なお23年11月には子会社のニシケンが同じく子会社の第一機械産業を吸収合併した。
23年10月期は、建設関連事業の売上高が22年1月期比4.5%増の1780億87百万円で営業利益(調整前)が10.4%減の103億09百万円、その他事業鉄鋼関連、情報関連、福祉関連の売上高が10.2%増の193億93百万円で営業利益が7.1%減の11億44百万円だった。
建設関連事業の地域別レンタル売上比率は、北海道地区が23.0%、東北地区が22.6%、関東甲信越地区が22.3%、西日本地区が13.1%、九州・沖縄地区が15.3%、海外が3.7%だった。
収益面では建設工事の影響を受けやすく、売上高が第4四半期(8~10月)から第1四半期(11月~1月)にかけてピークとなり、第2四半期(2~4月)および第3四半期(5~7月)は減少する季節特性がある。なお収益認識会計基準適用に伴って建設機械等レンタル基本約款の改定を行い、21年11月から売上認識の始点を従来の出荷日基準から引渡日基準に変更した。
■サステナビリティを意識した事業展開を推進
中期経営計画「Creative 60」の目標値には最終年度24年10月期の売上高2053億円、営業利益141億円、ROE6.1%、EBITDA617億円などを掲げている。さらに2030年ビジョンでは、2030年に売上高2250億円、営業利益200億円、ROE8%以上、総還元性向50%超を目指すとしている。
成長に向けた重点戦略として国内営業基盤拡充、海外展開、内部オペレーション最適化によるレンタルビジネスの収益力向上を推進するとともに、環境対策機への資産シフトなどサステナビリティを意識した取り組みや、さまざまな社会環境変化(トランスフォーメーション)への積極対応による事業のレジリエンスを強化する方針としている。
国内営業基盤拡充では、グループの総力を結集して既存エリアの深掘り、未進出エリア・低シェア領域の開拓、非建設分野への進出を推進している。さらに今後の強化分野として、維持補修分野への参入強化、再生可能エネルギー分野への参入強化、ICT・IoTソリューションの開発、地方再強化などを推進する。
海外展開では、海外戦略2.0(Next Generation)へのバージョンアップによって、グローバルポートフォリオの最適化、カナモト版グローバルプラットフォームの確立、ノンオーガニック戦略(海外でのM&Aの取り組み)、海外売上比率10%への布石を推進している。
内部オペレーションの最適化では、レンタルビジネスの収益性向上に向けた営業戦略とITの融合、商品企画・研究開発への資源投資、工事現場に必要な技術・システムの開発、業務効率向上、原価コントロール、長期的な安定稼働、人財の確保・育成などを推進している。なお従業員の健康確保やワークライフバランスの改善を図り、より働きやすい職場環境を目指すため、23年3月より人事制度を改定して4週8休へ移行した。
23年3月には公益財団法人カナモト財団を設立した。同社の金本寛中代表取締役会長が21年4月に設立した一般財団法人カナモト財団が、公益認定等委員会の答申を経て北海道知事より認定を受け、公益財団法人として発足した。なお23年9月1日付で営業企画部を経営企画部に改組し、社長直属に移管する。
環境対策機への資産シフトなどによってサステナビリティへの取り組みも強化している。21年7月には、ESG経営に基づくガバナンス強化に向けて、金融安定理事会(FSB)によって設置された気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への賛同を表明するとともに、TCFDコンソーシアムに参画した。21年12月には自社HPにサステナビリティページを開設した。23年9月には、同社が事務局を務める一般社団法人環境ロボティクス協会(ERA)主催「水中ドローンスクール福島いわき校」が開校した。
なお12月8日には、東京証券取引所の要請を踏まえて「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を決議した。2030年ビジョンの達成に向けて各種取組を着実に推進し、持続的な成長と企業価値の向上に取り組む方針としている。
■23年10月期は減益、24年10月期は2桁増益予想
23年10月期の連結業績(12月1日付で下方修正)は、売上高が22年10月期比5.0%増の1974億81百万円、営業利益が9.6%減の119億58百万円、経常利益が9.4%減の124億88百万円、そして親会社株主帰属当期純利益が19.5%減の67億21百万円だった。配当は、22年10月期と同額の75円(第2四半期末35円、期末40円)とした。配当性向は40.5%となる。
売上面は需要が堅調に推移して増収だったが、利益面は将来を見据えた人財投資、グループ内での吸収合併等に伴う減価償却費や販管費の増加などの影響により減益だった。
建設関連事業は売上高が4.5%増の1780億87百万円、営業利益(調整前)が10.4%減の103億09百万円だった。需要面では地域差があるものの、全体として建機レンタル需要が堅調に推移した。中古建機販売についてはレンタル用資産の運用期間延長を進めつつ、適正な資産構成の維持に向けて期初計画に基づいた売却を進めて5.0%増収だった。その他事業は売上高が10.2%増の193億93百万円で、営業利益が7.1%減の11億44百万円だった。鉄鋼関連、情報関連、福祉関連とも概ね計画水準で推移した。
四半期別にみると、第1四半期は売上高495億08百万円で営業利益30億96百万円、第2四半期は売上高477億60百万円で営業利益22億31百万円、第3四半期は売上高478億87百万円で営業利益24億28百万円、第4四半期は売上高523億26百万円で営業利益42億03百万円だった。なお季節要因として、売上高は第4四半期(8~10月)から第1四半期(11月~1月)にかけてピークとなり、第2四半期(2~4月)および第3四半期(5~7月)は減少する傾向がある。
24年10月期連結業績予想は売上高が23年10月期比4.0%増の2053億円、営業利益が17.9%増の141億円、経常利益が14.5%増の143億円、親会社株主帰属当期純利益が23.5%増の83億円としている。配当予想は23年10月期と同額の75円(第2四半期末35円、期末40円)としている。予想配当性向は32.0%となる。
全体として建設機械レンタル需要の堅調推移を見込み、先行投資による費用増を吸収して2桁増益予想としている。レンタル用資産稼働率向上に向けた各種施策を推進する方針だ。災害復旧・防減災・老朽化インフラ更新など国土強靭化関連工事で需要が堅調であり、積極的な事業展開で収益拡大基調を期待したい。
■株主優待制度は毎年10月末対象
株主優待制度(詳細は会社HP参照)は毎年10月末時点の株主を対象として、保有株式数および継続保有期間に応じて優待品(北海道特産品)を贈呈している。
■株価は上値試す
12月8日に自己株式取得を発表した。上限90万株・20億円、取得期間は23年12月11日~24年8月30日としている。
株価は自己株式取得も好感して年初来高値を更新する場面があった。その後は利益確定売りが優勢の形となったが、1倍割れの低PBRなど指標面の割安感も評価材料であり、上値を試す展開を期待したい。12月15日の終値は2706円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS234円34銭で算出)は約12倍、今期予想配当利回り(会社予想の75円で算出)は約2.8%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS3729円73銭で算出)は約0.7倍、そして時価総額は約1048億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)