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ファンデリーは底値圏、24年3月期は上振れの可能性
- 2023/12/18 09:34
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ファンデリー<3137>(東証グロース)は、健康冷凍食「ミールタイム」宅配のMFD事業、ハイブランド冷凍食「旬をすぐに」宅配のCID事業、および周辺領域のマーケティング事業を展開し、ヘルスケア総合企業を目指している。12月14日にはCID事業の「AI旬すぐ」会員を対象に、累計購入金額に応じた会員ランク制度を新設するとともに送料を改定した。会員への還元やメリット大きくすることで継続利用率向上につなげる。24年3月期は黒字転換予想をとしている。第2四半期累計の利益が計画超だったこと、営業利益の進捗率が高水準だったことなどを勘案すれば、通期会社予想は上振れの可能性がありそうだ。積極的な事業展開で収益回復基調を期待したい。株価は反発力が鈍く水準を切り下げる形だが、ほぼ底値圏だろう。出直りを期待したい。
■ヘルスケア総合企業を目指す
企業理念のビジョンに「豊かな未来社会」の実現を掲げ、健康冷凍食「ミールタイム」宅配のMFD(Medical Food Delivery)事業、20年7月開始したハイブランド冷凍食「旬をすぐに」宅配のCID(Cooking Immediately Delivery)事業、および周辺領域のマーケティング事業(食品メーカー等の企業向けマーケティング支援サービス)を展開している。
23年3月期はMFD事業の売上高が22年3月期比7.8%減の22億56百万円で営業利益(全社費用等調整前)が7.2%減の4億80百万円、CID事業の売上高が39.1%減の1億41百万円で営業利益が7億58百万円の赤字(22年3月期は7億50百万円の赤字)、マーケティング事業の売上高が7.3%減の4億12百万円で営業利益が12.4%減の2億90百万円だった。なお21年4月には、食や健康に関する新たなWEBサービスの提供や収益源の多様化を推進することを目的としてメディア事業部を新設している。
成長戦略としてヘルスケア総合企業を目指し、CID事業の埼玉工場が稼働してSPA(製造小売業)モデルへの事業構造転換を推進している。一人暮らし高齢者、生活習慣病患者、食事制限対象者の増加などで健康食宅配市場は拡大基調だろう。
22年3月には、フードロス削減や一食二医社会の実現など、ESG・SDGsへの取り組みを発信するWEBページを公開した。また女性の活躍を支援し、22年4月には女性役員・管理職の人数が10名(女性役員1名、女性管理職9名、女性管理職比率81.8%)に達したと発表している。
22年10月には、ディップ<2379>が主催する小学生を対象としたキャリア教育「バイトルKidsプログラム」への参加を発表した。子供たちの仕事に対する考え方や価値観の育成に貢献することを目指す。23年3月には低栄養・フレイル・サルコペニアの予防・対策に関して、医師による食と健康法をアドバイスするWebメディアを開設した。
■健康冷凍食「ミールタイム」宅配のMFD事業
MFD事業は、健康冷凍食(冷凍弁当)の通販カタログ「ミールタイム」を医療機関や調剤薬局などを通じて配布し、顧客(個人)から注文を受けて宅配する。製造は外部に委託している。従来の食事宅配サービスと一線を画し、食事コントロールを通じた血液検査結果の数値改善を目指している。
全国の医療機関や調剤薬局など2万ヶ所以上の紹介ネットワークを通じた効率的な顧客獲得、専門性の高い栄養士による「ヘルシー食」「たんぱく質調整食」「ケア食」そして「パワーアップ食」など多様な健康食の開発やカウンセリングを強みとして、栄養士が顧客の疾病・制限数値・嗜好などに合わせてメニューを選び、定期的に届ける「栄養士おまかせ定期便」も提供している。製造は外部に委託している。
23年3月期第4四半期時点のアクティブ会員数(過去1年以内に1回以上購入した会員数)は22年3月期第4四半期比3182人減少の2万6322人、ARPUは1220円増加の1万5938円、定期コース会員数は901人減少の6401人となっている。
コロナ禍に伴う外来患者減少などで病院等の紹介ネットワークを通じた新規顧客獲得が減少しているため、紹介ネットワーク活性化に向けて22年5月に神奈川支社を開設した。営業拠点としては本社(東京都北区)および大阪支社に続いて3拠点目となる。紹介ネットワーク数2万3500箇所(23年3月期末時点で1万9865箇所)に向けてアクションを開始した。
■ハイブランド冷凍食「旬をすぐに」宅配のCID事業
ハイブランド冷凍食「旬をすぐに」宅配のCID事業は、21年3月期第2四半期に開始した自社工場(埼玉工場)で製造する冷凍食の製造小売事業である。健康な身体はバランスの良い食事からという考えのもと、食の安心・安全にこだわり、国産食材100%であること、健康被害の恐れのある67種類の食品添加物を使用していないこと、食材ごとに異なる最適な加熱温度特許技術で1℃単位のコントロールを行っていること、冷凍工学に基づいた究極の特許冷凍技術で-70℃の瞬間凍結を行っていることなど、従来の冷凍弁当とは一線を画すクオリティの高さを特徴としている。
管理栄養士が考えた栄養バランスや、特許加熱・冷凍による美味しさが特徴のメニュー構成である。独自のネットワークを活用して四季ごとの旬の国産食材を使用するため、同じメニューは一度しか作らない「一期一会のメニュー」として、週6種類以上のペースで新メニューを発売している。
コスト面では、全国の生産者で構成する「旬すぐ共栄会」を通して、栄養価の高い旬の食材を収穫量が多く価格が下がる時期に仕入れる。20年12月には大量調理で生じる食品ロスの料理を即時メニュー化して販売する取り組みを開始した。フードロス削減にも貢献する取り組みだ。
商品力強化の面では21年12月に、メニュー評価などでAIが顧客の嗜好を学習し、毎日発売される約250種類のメニューから一人ひとりに最適化したメニューを提案する「AI旬すぐ」サービスを開始した。21年1月にはワンランク上の美味しさを追求した新ブランドPREMIUMシリーズ(498円)を販売開始し、さらに22年12月にはPREMIUMを超えた最高峰ブランド「SUPER PREMIUM」シリーズ(598円以上)を創設して販売開始した。商品構成変化による平均単価上昇も期待される。
知名度向上、拡販、収益性改善に向けた各種取り組みでは、21年3月に新メニューを発表するYouTubeチャンネル「旬チューバー」がYouTubeパートナープログラムに承認された。23年2月には「旬をすぐに」のリブランディングとしてロゴ・パッケージを一新し、さらに女優の河合優美さんを起用した「旬をすぐに」のTVCMを関東エリアで開始した。
また12月14日には「AI旬すぐ」会員を対象に、累計購入金額に応じた会員ランク制度を新設するとともに送料を改定した。会員への還元やメリット大きくすることで継続利用率向上につなげる。
なお、23年3月期第4四半期時点のアクティブ会員数は6132人、ARPUは5875円、AI旬すぐ会員数は1455人となっている。
■周辺領域のマーケティング事業
マーケティング事業は健康食宅配サービスから派生した周辺事業として、食品メーカーなどへの健康食通販カタログ誌面の広告枠販売、食品メーカーからの商品サンプリングや健康食レシピ作成の業務受託、健康食レシピサイト運営などを展開し、収益源の多様化を推進している。
■健康意識を高めるための「らくだ6.0プロジェクト」
日々の食事において塩分摂取量を適正に保つことの重要性を啓蒙し、日本全体の健康意識を高めるための「らくだ6.0プロジェクト」も展開している。20年4月から3年間の活動を予定している。
賛同企業として20年6月ににんべん、エバラ食品工業、はごろもフーズ、ポッカサッポロフード&ビバレッジ、キング醸造、理研ビタミン、20年7月に東洋水産、キッコーマン、ハナマルキ、ヤマキ、紀文食品、日清食品、ミツカン、ひかり味噌、神州一味噌、20年8月にピエトロ、湖池屋、宝酒造、20年9月に田中食品、白鶴酒造、シマヤ、日清フーズ、21年3月に雪印メグミルク、21年4月に三幸製菓、くらこん、エースコック、22年2月に味の素冷凍食品、22年5月に宮島醤油、東京ソルト、22年11月にカネリョウ海藻、23年7月にウメタ、23年10月に全農ビジネスサポートが新規加入し、賛同企業は33社、認定商品は84商品となっている。
■上場維持基準適合に向けた計画書
23年3月31日時点で流通株式時価総額がグロース市場の上場維持基準を充たしていないため、23年6月30日付で上場維持基準適合に向けた計画書を開示した。25年3月末までを計画期間として、3つの事業(MFD事業、CID事業、マーケティング事業)に経営資源を集中し、持続的な企業価値の向上(時価総額の増大)に資する各種施策を実行することにより、上場維持基準の適合を目指すとしている。
■24年3月期黒字転換予想、さらに上振れの可能性
24年3月期の業績(非連結)予想は、売上高が23年3月期比8.1%増の30億37百万円、営業利益が52百万円(23年3月期は2億85百万円の損失)、経常利益が51百万円(同2億84百万円の損失)、当期純利益が50百万円(同2億84百万円の損失)としている。
MFD事業の計画は、売上高が23年3月期比3.5%増の23億35百万円でセグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が11.7%減の4億23百万円としている。コロナ禍収束傾向に伴って23年3月期第4四半期後半から事業環境好転の兆しを見せており、さらに紹介ネットワークの新規開拓や振興を推進して売上回復を見込む。なお平均単価については前期比横ばいの前提としている。
CID事業の計画は、売上高が42.3%増の2億01百万円で利益が4億11百万円の損失(23年3月期は7億58百万円の損失)としている。売上面は前期第4四半期に実施した広告宣伝の効果による知名度向上などで増収を見込み、利益面では前期第4四半期に計上した広告宣伝費や包装資材評価損の一巡も寄与する。なお平均単価については前期比横ばいの前提としている。
マーケティング事業の計画は、売上高が21.2%増の5億円で利益が25.5%増の3億64百万円としている。前期からの期ズレ案件も寄与して第1四半期の売上高は四半期ベースで過去最高となる見込みだ。
第2四半期累計は、売上高が前年同期比2.6%減の13億61百万円、営業利益が46百万円(前年同期は17百万円の損失)、経常利益が24百万円(同41百万円の損失)、四半期純利益が23百万円(同41百万円の損失)だった。
売上高は期初計画に対して1億24百万円下回った。MFD事業において新規顧客獲得数が想定を下回った。ただし営業利益は27百万円、経常利益は28百万円、四半期純利益は27百万円、それぞれ計画を上回った。MFD事業の減収、人件費の増加、資源価格上昇に伴うカタログ制作費用増加などがマイナス要因だったが、CID事業における製品ラインナップや送料体系の見直し効果により、売上原価率が想定以上に改善した。
MFD事業は売上高が7.8%減の10億49百万円、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が27.1%減の1億63百万円だった。減収減益だった。医療機関等の紹介ネットワークを通じた新規顧客獲得数が想定を下回り、利益面では人件費の増加、資源価格上昇に伴うカタログ制作費用増加なども影響した。前年同期比で見ると、第2四半期のアクティブ会員数は3727人減少の2万4823人、月間ARPU(3ヶ月平均)は514円上昇の1万5900円、定期コース会員数は556人減少の6349人、紹介ネットワーク数は438箇所増加2万303箇所だった。
CID事業は売上高(セグメント間の内部売上高含む)が58.0%増の1億27百万円、利益が1億55百万円の損失(前年同期は2億20百万円の損失)だった。依然として損益分岐点に達していないが、MFD事業向け商品の製造(内部取引)による稼働率上昇、国産廃ブランド冷食を希望する顧客へのターゲット再設定と高品質・高価格の製品ラインナップ拡充、値引き抑制や送料体系見直しによるARPU上昇などの効果で営業損失が縮小した。前年同期比で見ると、第2四半期のアクティブ会員数は3970人減少の4221人、月間ARPU(3か月平均)は1980円上昇して8125円、AI旬すぐ会員数は429人減少して1212人となった。月間ARPU(3か月平均)を四半期別にみると、23年3月期第3四半期の5556円をボトムとして、第4四半期が5875円、24年3月期第1四半期が6520円、第2四半期が8125円と改善基調である。
マーケティング事業は売上高が43.4%増の2億55百万円、利益が43.8%増の1億82百万円百万円だった。健康食通販カタログの広告枠販売に加えて、紹介ネットワークを活用した業務受託を複数案件獲得し、収益が大幅に改善した。
四半期別に見ると、第1四半期は売上高が6億80百万円で営業利益が3百万円の損失、第2四半期は売上高が6億81百万円で営業利益が49百万円だった。第2四半期に営業損益が大幅改善した。
通期の業績(非連結)予想は据え置いている。第2四半期累計の進捗率は売上高が45%、営業利益が88%、経常利益が47%、当期純利益が46%だった。第2四半期累計の利益が計画超だったこと、営業利益の進捗率が高水準だったことなどを勘案すれば、通期会社予想は上振れの可能性がありそうだ。積極的な事業展開で収益回復基調を期待したい。
■株価は底値圏
株価は反発力が鈍く水準を切り下げる形だが、ほぼ底値圏だろう。出直りを期待したい。12月15日の終値は273円、今期予想PER(会社予想のEPS7円97銭で算出)は約34倍、前期実績PBR(前期実績のBPS53円37銭で算出)は約5.1倍、そして時価総額は約18億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)