日本エム・ディ・エムは底打ち、24年3月期減益予想だが為替が円高方向に転換して下期改善基調

 日本エム・ディ・エム<7600>(東証プライム)は人工関節製品など整形外科分野を主力とする医療機器メーカーである。米国子会社オーソデベロップメント(ODEV)社製品を主力として、商社機能と開発主導型メーカー機能を融合した独自のビジネスモデルを展開している。24年3月期は為替の円安影響(下期の想定為替レートは1USドル=150円)による原価率の悪化や販管費の増加などで減益予想としている。ただし為替が円高方向に転換しており、下期以降は収益改善基調が期待できそうだ。株価は軟調展開が続いたが、11月の安値圏から徐々に水準を切り上げて底打ち感を強めている。為替が円高方向に転換していることに加え、1倍割れの低PBRも評価材料であり、出直りを期待したい。

■整形外科分野の医療機器メーカー、米国子会社製品が主力

 人工関節製品、骨接合材料、脊椎固定器具など整形外科分野を主力とする医療機器メーカーである。米国子会社オーソデベロップメント(ODEV)社製品を主力として、商社機能と開発主導型メーカー機能を融合した独自のビジネスモデルを展開している。海外展開として、米国では販売体制強化と人工関節分野新製品導入による2桁成長を目指し、中国では合弁会社設立による米国ODEV社製品の輸入販売拡大と中国現地生産品の製造・販売開始を目指している。

 23年3月期のセグメント別(調整前)業績は、日本国内の売上高が1.9%増の123億56百万円で営業利益が33.2%減の12億31百万円、米国の売上高が17.6%増の127億82百万円で営業利益が22.8%減の6億47百万円だった。地域別・品目別売上高(売上控除前)は、日本の人工関節が0.4%増の47億38百万円、骨接合材料が5.0%増の43億22百万円、脊椎固定器具が1.9%増の31億85百万円、その他(人工骨など)が20.9%減の3億54百万円、そして米国の人工関節が26.5%増の89億10百万円、脊椎固定器具が54.8%増の40百万円だった。自社製品比率は80.6%で1,4ポイント上昇した。

 収益面の特性として、医療機器償還価格の影響や為替変動の影響を受けるほか、整形外科医療機器の販売は下期が繁忙期となる傾向があるため、業績も下期の構成比が高い特性があるとしている。

 なお22年1月に筆頭株主が異動した。日本特殊陶業が保有する株式を三井化学に譲渡(手続として売り出しによる譲渡)し、三井化学が筆頭株主となった。日本特殊陶業との資本業務提携を解消し、新たに三井化学と資本業務提携した。

■新製品の開発・調達拡大

 新製品としては、米国ODEV社との日米共同開発による適応症例拡大に向けたインプラント開発や、新素材インプラントや手術支援システムなど外部調達によるビジネス拡大を推進している。

 21年3月には米国ODEV社が中国WASTONと、中国現地生産品の製造・販売を目的とした合弁会社を設立した。21年5月には米国ODEV社が米国THINK社と共同で、米国ODEV社の人工関節製品を用いた人工関節全置換手術を、THINK社の手術支援ロボットシステムを用いて行うことができるようにした。

 22年7月には、米国ODEV社製造の人工股関節新製品「Promontoryヒップシステム」の日本における薬事承認を取得、米国ODEV社製造の脊椎ケージ「Vusion Ti3D ARCケージ」の日本における薬事承認を取得した。

 22年12月には米国ODEV社が、Materialise社(ベルギー)製の患者適合型人口膝関節手術用器械BKS Total PSIを共同開発し、米国医療施設向けに供給開始した。

 23年3月には米国ODEV社が、人工関節置換手術に使用するNaviswiss社製の人工股関節置換手術用ナビゲーションシステムNaviswiss Hip および人口膝関節置換手術用ナビゲーションシステムNaviswiss Kneeを米国医療施設向けに導入すると発表した。Naviswiss Hipは24年3月期第1四半期に導入予定、Naviswiss Kneeは24年3月期後半に導入予定である。

 23年9月には、インフィックスおよび細胞応用技術研究所との販売提携契約締結を発表した。膝関節早期治療製品PRP-FD(Plate Rich Plasma Freeze Dry)の医療施設向け販売を23年11月(予定)に開始し、再生医療分野(膝関節)に参入する。

 23年11月には、米国THINK社が開発した新型の手術支援ロボットシステムが、米国ODEV社製の人口膝関節「Balanced Knee System」および「BKS TriMax」を使用可能とするFDA承認を取得したと発表している。

■サステナビリティの取り組み強化

 サステナビリティの取り組みも強化している。22年3月にはTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同を表明するとともに、同提言に賛同する企業や金融機関からなるTCFDコンソーシアムに参画した。22年6月には国際連合が提唱する「国連グローバル・コンパクト(UNGC)」に署名し、参加企業として登録された。併せて、UNGCに署名している日本企業などで構成される「グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン」に加入した。

 22年12月には、国際的な環境評価の情報開示システムを運用するCDPから、環境問題によるリスクや影響を管理している企業として、スコアレベル「B-」評価として認定された。

 なお23年7月には、FTSE Russellにより構築された日本株ESG指数「FTSE Blossom Japan Sector Relative Index」の構成銘柄に初めて選出された。

■24年3月期減益予想だが為替が円高方向に転換して下期改善基調

 24年3月期の連結業績予想(10月30日付で売上高を上方修正、利益を下方修正)は、売上高が23年3月期比10.8%増の236億円、営業利益が11.1%減の18億円、経常利益が9.5%減の18億50百万円、親会社株主帰属当期純利益が19.2%減の11億50百万円としている。下期の想定為替レートは1USドル=150円(前回予想は1USドル=135円、23年3月期実績は1USドル=134.95円)とした。配当予想は据え置いて、23年3月期比1円増配の14円(期末一括)としている。連続増配予想で予想配当性向は32.0%となる。

 前回予想(23年4月28日公表)に対して、売上高を3億円上方修正したが、営業利益を7億円、経常利益を5億50百万円、親会社株主帰属当期純利益を3億50百万円それぞれ下方修正した。売上面は、日本国内では施設限定販売している一部新製品の全国展開遅延の影響、米国では人工股関節の大型新製品のFDA承認取得遅延の影響を受けるが、為替の円安影響により全体として前回予想を上回る見込みだ。各利益については、研究開発費を除く販管費の圧縮などを推進するものの、下期も上期と同様に為替の円安影響による売上原価率の悪化を見込み、全体として前回予想の増益予想から減益予想に転じた。

 第2四半期累計は、売上高が前年同期比9.6%増の109億52百万円、営業利益が33.4%減の6億17百万円、経常利益が31.0%減の6億32百万円、親会社株主帰属四半期純利益が50.1%減の3億59百万円だった。前回予想に対して売上高は1億52百万円上回ったが、営業利益は1億82百万円、経常利益は1億17百万円、親会社株主帰属四半期純利益は90百万円それぞれ下回った。

 売上面は日本国内の骨接合材料の好調や為替の円安影響などで計画を上回る増収となり、上期として過去最高の売上高だったが、利益面はUSドルベースでの米国売上高が計画を下回ったこと、サプライチェーン上の問題を回避するため外部ベンダー活用を拡大して米国製造原価が悪化したことに加えて、為替の円安や日本国内の償還価格引き下げの影響による原価率の悪化、販管費の増加(米国の売上増に伴うコミッション・ロイヤリティの増加、研究開発費の増加、賃上げ実施に伴う人件費の増加、米国子会社ODEVにおいて隔年で主催している顧客向けセミナー開催による販促費の増加、円安による円換算後の米国での費用増加など)の影響で計画を下回り減益だった。

 営業利益の前年同期比▲3.1億円の要因分析は、為替影響▲1.0億円、JMDM粗利増2.5億円、償還価格下落▲0.8億円、ODEV粗利増+2.7億円、その他・原価悪化▲1.3億円、人件費▲1.1億円、支払手数料▲1.6億円、研究開発費▲1.6億円、販管費・その他▲0.8億円だったとしている。

 セグメント別(調整前)に見ると日本は売上高が5.6%増の61億29百万円で営業利益が0.7%増の4億66百万円、米国は売上高が12.8%増の66億44百万円で営業利益が76.4%減の92百万円だった。なお米国の外部顧客向け売上高はUSドルベースでは8.9%増の34百万円USドル、円換算後では15.3%増の48億23百万円だった。米国売上の為替換算レートは前年同期が1USドル=133.47円、当期が1USドル=141.31円だった。

 医療機器類の品目別・地域別売上高(円換算後)は、人工関節は日本が6.1%増の23億61百万円、米国が15.3%増の48億06百万円、骨接合材料(日本)はが7.1%増の20億59百万円、脊椎固定器具(日本と米国の合計)は2.4%増の16億52百万円だった。なお自社製品比率は前年同期比0.2ポイント低下して80.1%となった。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高54億02百万円で営業利益3億46百万円、第2四半期は売上高55億50百万円で営業利益2億71百万円だった。

 通期修正後の地域別・品目別売上高の計画は、日本国内が6.0%増の131億円(人工関節が6.2%増の50億30百万円、骨接合材料が6.7%増の46億10百万円、脊椎固定器具が3.6%増の33億円、その他(人工骨など)が12.8%増の4億円、米国が17.3%増の105億円(人工関節が17.1%増の104億30百万円、脊椎固定器具が72.7%増の70百万円)としている。自社製品比率は80.4%で0.2ポイント低下の見込みとしている。

 下期の重点施策として、日米ともに注力製品の拡販や新製品による売上拡大を目指し、サプライチェーン問題の改善や外部ベンダーの見直しなどにより製造原価低減を推進する。また日本市場では大腿部頚部転子部骨折治療製品や人工関節製品の拡販など、米国市場では新規顧客獲得による顧客基盤拡大、人工股関節新製品の販売開始、人口膝関節BKS Uniの全国展開などを推進する。

 24年3月期は売上原価率悪化で減益予想となったが、為替が円高方向に転換しており、下期以降は収益改善基調が期待できそうだ。

■株価は底打ち

 株価は軟調展開が続いたが、11月の安値圏から徐々に水準を切り上げて底打ち感を強めている。為替が円高方向に転換していることに加え、1倍割れの低PBRも評価材料であり、出直りを期待したい。12月21日の終値は742円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS43円71銭で算出)は約17倍、今期予想配当利回り(会社予想の14円で算出)は約1.9%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS880円64銭で算出)は約0.8倍、そして時価総額は約196億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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