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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】テクマトリックスは16年3月期増益・増配予想、サイバーセキュリティ関連のテーマ性
- 2015/9/17 06:51
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
テクマトリックス<3762>(東1)はシステム受託開発やセキュリティ関連製品販売などの情報サービス事業を展開している。株価は自己株式取得を材料視した8月の戻り高値から急反落したが、売り一巡して切り返す動きだ。16年3月期増収増益・増配予想で指標面に割高感はなく、高値圏を目指す展開だろう。サイバーセキュリティ関連やマイナンバー制度関連のテーマ性も注目点だ。
■システム受託開発やセキュリティ関連製品販売などを展開
ネットワーク・セキュリティ関連のハードウェアを販売する情報基盤事業、医療・CRM・EC・金融を重点分野としてシステム受託開発やクラウドサービスを提供するアプリケーション・サービス事業を展開している。
重点戦略として、ストック型ビジネスの保守・運用・監視サービス関連の戦略的拡大、クラウド関連事業の戦略的・加速度的推進、ネットワーク・セキュリティ関連商材およびサービスの充実、ビッグデータ分析支援サービス、大規模EC事業者向けバックオフィスシステム構築ソリューション「楽楽ECインテグレーションサービス」などを強化している。
■中期成長に向けてM&A・アライアンスを積極活用
中期成長に向けてM&A・アライアンスを積極活用するとともに、グループ再編も推進している。14年2月に子会社の沖縄クロス・ヘッドが台湾のデータセンター事業者eASPNetと事業協力についての覚書を締結、14年3月にクロス・ヘッドを完全子会社化した。
14年7月に日本事務器(NJC)と医療情報クラウドサービス「NOBORI」に関する販売代理店契約を締結、14年8月に沖縄クロス・ヘッドが日本HPと業務提携、14年10月にクロス・ヘッドが仮想化技術の米Pica8(ピカエイト)社に出資、ソフトバンクテレコムなどと3社共同でクラウド型医療情報サービス「地域健康・医療情報プラットフォームサービス(HeLIP)」の提供を開始した。
14年12月にはクロス・ヘッドがエヌ・シー・エル・コミュニケーションの株式を追加取得して完全子会社化し、15年4月合併した。ネットワーク仮想化技術であるSDN市場の本格成長が期待されているため、合併によって技術力強化や業務効率化を推進する。
15年3月には、Apple関連技術の研修サービスを提供している子会社カサレアルが、JetBrains社(チェコ)とトレーニングパートナー契約を締結し、サムライズム(東京都)とJetBrains社製品を利用した研修に関する業務提携を開始した。またスリーゼットに対して医療情報クラウドサービス「NOBORI」を、クリニックを対象としてOEM提供する契約を締結した。
15年5月には、医療サービス事業に特化したベンチャー企業である中国の北京ヘルスバンク・テクノロジー有限公司と、合弁会社(北京ヘルステック医療情報技術有限公司、当社出資比率40%)を設立(15年8月予定)すると発表した。当社子会社の合同会社医知悟が開発した遠隔医療ソフトウェアのライセンスを供与して、中国において遠隔医療事業を展開する。
15年6月にはクロス・ヘッドが、クライアント仮想化ソフトウェア「OVD」の開発元であるカナダのInuvika(イヌビカ)社に出資した。クロス・ヘッドは「OVD」の国内卸・日本語環境対応開発支援を行っており、今後3年間で2万ライセンスの販売を目標としている。
9月7日には、米Parasoft社が開発したソフトウェア開発・テスト管理プラットフォーム「Parasoft DTP」の販売を開始すると発表した。企業のSDLC(ソフトウェア開発ライフサイクル)を加速し、迅速な意思決定をサポートするソフトウェア開発・テスト管理プラットフォームである。
9月8日には沖縄クロス・ヘッドがスプラッシュトップ(東京都)および日本ヒューレット・パッカードと共同で、リモートデスクトップサービス「Reemo(リーモ)」の提供を開始すると発表した。導入企業の従業員は、各種タブレットやスマートフォンを通して「Reemo」に接続することで、遠隔地から業務を行うことができる。
9月16日には、オーストリアのRanorex社が開発したUI(ユーザーインターフェース)テスト自動化ツール「Ranorex」の国内総販売代理店権を獲得して販売開始すると発表した。Windowsアプリ、Webアプリ、モバイルアプリに対応して、テスト対象となるソフトウェアやアプリの操作を詳細に記録・再生できる高性能UIキャプチャ機能を搭載している。
■16年3月期増益・増配予想
なお医療分野では、オンプレミス型(ユーザーがハードウェア、ソフトウェア、データを自分自身で保有・管理)システム提供から、クラウド型(ユーザーがインターネット経由で利用)サービス提供へビジネスモデル変更を推進しているため、14年3月期から医療情報クラウドサービスの売上と利益をサービス期間に応じて按分計上する方法に変更した。このため今後複数年に亘って売上と利益にマイナス影響となるが、他事業の成長でカバーする。
15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)39億49百万円、第2四半期(7月~9月)46億55百万円、第3四半期(10月~12月)43億75百万円、第4四半期(1月~3月)54億38百万円、営業利益は第1四半期63百万円、第2四半期2億87百万円、第3四半期1億92百万円、第4四半期5億88百万円だった。第4四半期の構成比が高い収益構造である。
15年3月期のストック型売上比率(単体ベース)は情報基盤事業で14年3月期比3.5ポイント低下して40.2%、アプリケーション・サービス事業で同3.0ポイント上昇して41.8%となった。ROEは同4.2ポイント低下して9.4%、自己資本比率は同1.5ポイント低下して45.3%だった。配当性向は31.1%だった。
今期(16年3月期)の連結業績予想(5月8日公表)は、売上高が前期比10.8%増の204億円、営業利益が同15.0%増の13億円、経常利益が同14.8%増の13億円、純利益が同43.7%増の8億40百万円としている。配当予想は同2円増配の年間17円(期末一括)で、予想配当性向は24.5%となる。
ストック型ビジネスが拡大し、人件費の増加などを吸収して2桁増収増益予想だ。セグメント別計画は、情報基盤事業の売上高が同14.6%増の138億円、営業利益が同8.9%増の11億20百万円、アプリケーション・サービス事業の売上高が同3.6%増の66億円、営業利益が同78.2%増の1億80百万円としている。
情報基盤事業では、サイバー攻撃に対応した次世代ネットワーク・セキュリティ関連商材・サービスが好調で、セキュリティ運用・監視サービス契約数も順調に増加する。またアプリケーション・サービス事業ではCRM分野、医療分野、インターネットサービス分野におけるクラウドサービスが好調に推移する。医療分野では医療情報クラウドサービス「NOBORI」の引き合いが好調だ。
第1四半期(4月~6月)は売上高が前年同期比22.8%増の48億48百万円、営業利益が同63.8%増の1億04百万円、経常利益が同22.3%増の1億06百万円、純利益が同42.8%減の25百万円だった。純利益は事務所移転費用を特別損失に計上したため減益だったが、アプリケーション・サービス事業の営業損益が改善して大幅営業増益だった。
セグメント別動向を見ると、情報基盤事業は売上高が同26.0%増の33億02百万円、営業利益が同22.3%減の1億32百万円だった。サイバー攻撃関連のセキュリティ対策製品が好調だが、子会社クロス・ヘッドで技術者確保に苦戦して営業的な機会損失が発生しているようだ。
アプリケーション・サービス事業は売上高が同16.4%増の15億45百万円、営業利益が27百万円の赤字(前年同期は1億06百万円の赤字)だった。インターネットサービス分野、ソフトウェア品質保証分野、医療分野、CRM分野とも好調に推移して営業損益が改善した。なお医療分野においては、売上をサービス期間に応じて按分計上する方式に変更したため、売上高が減少する傾向にあったが、契約施設数の増加に伴って売上高が逓増傾向に転じたようだ。
通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は売上高が23.8%、営業利益が8.0%、経常利益が8.2%、純利益が3.0%である。低水準の形だが第4四半期の構成比が高い収益構造であり、通期ベースでも好業績が期待される。
■中期的に年率売上高成長率10%目指す
15年5月発表の中期経営計画「TMX3.0」では、経営目標数値として18年3月期の売上高251億円(情報基盤事業170億円、アプリケーション・サービス事業81億円)、営業利益23億50百万円(情報基盤事業16億円、アプリケーション・サービス事業7億50百万円)を掲げた。
中期的には年率売上高成長率10%で、M&Aや海外展開を含めて事業規模250億円~300億円、ストック売上(クラウド、保守、運用・監視サービス)比率50%超を目指し、売上高営業利益率10%へ挑戦する。
従来のIT産業の労働集約的な請負型ビジネスから脱却し、自らITサービスを創造し、ITサービスを提供する「次世代のITサービスクリエーター」そして「次世代のITサービスプラバイダー」への変貌を継続する。
重点事業戦略は、クラウド関連事業の戦略的・加速度的推進、セキュリティ&セイフティの追求として、コストダウンによる高収益化やパートナーとのアライアンス強化も推進する。
なお株主還元については連結配当性向20%以上を基本方針として、利益水準を踏まえた配当額の引き上げを重視し、株主優待制度の充実も推進する。
■株価はやや乱高下したが売り一巡して高値圏目指す
15年6月に株主優待制度の内容を発表した。15年9月30日現在500株以上保有株主に対して1000円相当の商品5点の中から1点、1000株以上保有株主に対して3000円相当の商品5点の中から1点を選択する。寄付を選択することもできる。
8月20日に自己株式取得(取得株式総数の上限380万株、自己株式除く発行済株式総数に対する割合31.24%、買付価格881円、取得価額総額の上限35億円)を発表し、8月21日に自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)によって取得した。取得株式総数は347万8000株、取得価額総額は約30億64百万円だった。これによって楽天<4755>の議決権所有割合が31.57%から4.16%に低下し、大株主順位は第1位から第3位に低下した。楽天とは今後も良好な取引関係を維持するとしている。
株価の動きを見ると、自己株式取得を材料視する形で8月21日に1031円まで急伸し、6月の上場来高値1040円に接近したが、24日には一転して売り優勢となり、悪地合いも影響して25日に770円、そして9月8日に799円まで調整した。その後は900円近辺まで切り返している。売りは一巡したようだ。
9月16日の終値885円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS69円06銭で算出)は12~13倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間17円で算出)は1.9%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS530円20銭で算出)は1.7倍近辺である。なお時価総額は約110億円である。
8月の戻り高値から急反落してやや乱高下の形となったが、日足チャートで見ると25日移動平均線を回復した。また週足チャートで見ると26週移動平均線近辺から反発してサポートラインを確認した形だ。16年3月期増収増益・増配予想で指標面に割高感はなく、高値圏を目指す展開だろう。サイバーセキュリティ関連やマイナンバー制度関連のテーマ性も注目点だ。