ファーストコーポレーションは調整一巡、24年5月期減益予想だが上振れ余地

 ファーストコーポレーション<1430>(東証スタンダード)は造注方式を特徴として分譲マンション建設などを展開するゼネコンである。将来像である年商500億円企業の実現に向けて中核事業強化の継続、再開発事業への注力、事業領域拡大による新たな価値創出、人材の確保・育成および働き方改革などを推進している。12月15日には吉田組と共同住宅建設に係る請負工事受注に関して業務提携した。24年5月は大型案件の進捗などで大幅増収だが、建築資材価格の高止まりの影響などを考慮して減益予想としている。ただし保守的な印象が強く上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。株価は反発力が鈍く安値圏だが、低PERや高配当利回りなど指標面の割安感も評価材料であり、調整一巡して出直りを期待したい。なお1月12日に24年5月期第2四半期決算発表を予定している。

■造注方式が特徴のゼネコン

 東京圏(1都3県)中心に分譲マンション建設などを展開するゼネコンである。造注方式による大手マンション・デベロッパーからの特命受注と高利益率、品質へのこだわりによる安心・安全なマンション供給を特徴としている。

 造注方式というのは、当社がマンション用地を開発し、マンション・デベロッパーに対して土地・建物を一体とする事業プランを提案し、マンション・デベロッパーから特命で建築を請け負うという受注方式である。入札方式に比べて好条件での請負が可能となる。

 品質に関しては「安全と品質の最優先」を掲げて、施工品質管理標準・マニュアル類の整備、階層別研修会の実施、施工検討会による安全で堅実な施工計画の策定、巡回検査による正確性の担保など、良質で均一な品質を維持するための取り組みを推進している。また第三者機関による検査導入については、施主が第三者機関による検査を実施しない場合でも、建造物の安全性を確保するために重要な杭工事、配筋工事、レディーミクストコンクリートを対象として、当社が自前で第三者機関による検査を導入するなど、安心・安全なマンション供給に向けた体制を整備している。

 20年10月には、東京理科大学の認定ベンチャーであるサイエンス構造と、新たな免震集合住宅の工法として「ジーナス(ZENAS)工法」を開発し、建築構造物の「新構造システム」に関する特許および実用新案を共同出願した。

■年商500億円企業目指す

 23年5月期は建設事業の売上高が197億96百万円で営業利益(全社費用等調整前)が22億42百万円、不動産事業の売上高が49億94百万円で営業利益が6億83百万円、その他(設計業務、不動産賃貸、マンション管理運営など)の売上高が7億52百万円で営業利益が3百万円だった。不動産売上は大型案件によって変動する可能性がある。

 建設事業の受注高は8件合計355億08百万円(うち造注が94億71百万)だった。なお22年11月に受注した仮称:千葉駅東口西銀座B地区優良建築物等整備事業新築工事(26年3月完成予定)については、補助事業として入札手続を経たため一般請負にカウントしている。期末受注残高は366億78百万円で過去最高となった。

 中期経営計画「Innovation2023」の目標値には、26年5月期の売上高372億円(完成工事高245億円、不動産売上102億70百万円、共同事業収入20億円、その他売上4億30百万円)、売上総利益42億28百万円、売上総利益率11.4%(完成工事総利益率10.0%、不動産売上総利益率13.2%、共同事業収入総利益率18.5%)、営業利益26億35百万円(建設事業23億75百万円、不動産事業13億58百万円、その他▲42百万円、調整額▲10億56百万円)、経常利益25億60百万円、親会社株主帰属当期純利益17億50百万円、受注高200億円(うち造注65億円)を掲げている。

 24年5月期は特命工事減少や資材価格上昇の影響により完成工事総利益率の低下を見込むが、25年5月期以降は造注による特命工事の増加により完成工事総利益率の向上を目指す。ROE(自己資本純利益率)は20%以上、自己資本比率は50%以上、配当性向は30%以上を目指す。

 将来像である年商500億円企業の実現に向けて、基本方針として中核事業(造注方式、建築事業)強化の継続、再開発事業への注力、事業領域拡大(大規模修繕や収益不動産等の周辺事業、M&A、新たな建築技術開発など)による新たな価値創出、人材の確保・育成および働き方改革を推進し、業容の拡大と利益水準の向上に継続的に取り組む。

 中核事業の造注方式の強化では、東京郊外の好立地アクティブ・シニア向けマンションなどを推進するほか、九州エリアへ進出した。再開発事業への注力では、JR前橋駅北口地区第一種市街地再開発事業に共同施工者として参画し、20年11月に施設建築物新築工事を着工(JV受注、24年完成予定)した。前橋市内初の超高層免震タワーマンションとなる。21年4月に名称を「Brillia Tower」に決定し、販売活動を開始している。

 21年9月には、新ジャンルの分譲マンション「CANVAS」ブランドを立ち上げた。暮らす方々の身体的・精神的・社会的な健康状態がバランス良く調和の取れた状態であることを意味する概念「ウェルビーイング」をブランドコンセプトとして、20年11月設立した子会社ファーストエボリューションが竣工後の管理・販売代理・入居者サービス提供を行う。第一弾として中央住宅および中央日本土地建物との共同事業「ウェルビーイングシティ構想」を始動し、分譲マンション「CANVAS南大沢」(東京都八王子市)が22年11月に竣工した。

 23年9月には小林工業(群馬県前橋市)と共同住宅建設に係る請負工事受注に関して業務提携した。また12月15日には吉田組(群馬県桐生市)と共同住宅建設に係る請負工事受注に関して業務提携した。

 サステナビリティ経営に関しては、業務執行取締役をメンバーとするサステナビリティ委員会、および下部組織として気候変動対策部会、人的資本対策部会などを設置し、取り組みを強化している。

■スタンダード市場を選択だが、将来的にはプライム市場を目指す

 23年4月1日施行の東証証券取引所の規則改正に伴い、23年10月20日付で東証スタンダード市場に移行した。

 22年4月に実施された東京証券取引所の市場再編ではプライム市場を選択し、プライム市場上場維持基準適合に向けた計画書を開示(21年12月21日付)していたが、直近基準日(23年5月31日)時点で流通株式時価総額がプライム市場上場維持基準を充たしていない状況(スタンダード市場の上場維持基準はすべて適合している状況)だったため、同社株主が不安を持つことなく安心して同社株式を保有・売買できる環境を整えることが重要だと判断した。

 スタンダード市場上場会社となった以降も、持続的な成長と中長期的な企業価値向上に資する取り組みを進め、将来、プライム市場への上場を目指すとしている。

■24年5月期減益予想だが保守的

 24年5月期の連結業績予想は、売上高が23年5月期比27.6%増の326億円、営業利益が5.7%減の18億70百万円、経常利益が8.0%減の18億20百万円、親会社株主帰属当期純利益が9.9%減の12億30百万円としている。配当予想は23年5月期比4円減配の31円(期末一括)としている。予想配当性向は30.0%となる。

 第1四半期は売上高が59億40百万円、営業利益が2億11百万円、経常利益が2億03百万円、親会社株主帰属四半期純利益が1億37百万円だった。なお売上総利益は5億56百万円、売上総利益率は9.4%、販管費は3億45百万円、販管費比率は5.8%で、受注高は3件合計132億94百万円だった。

 23年5月期末より連結決算に移行したため前年同期の非連結業績(売上高47億30百万円、営業利益2億57百万円、経常利益2億53百万円、四半期純利益1億70百万円、売上総利益5億58百万円、売上総利益率11.8%、販管費3億円、販管費比率6.4%、受注高は1件・17億円)との比較で見ると、売上総利益率低下や販管費増加などで減益だったが、売上面は大型案件の進捗などで増収と順調だった。受注高は一般請負3件を受注して大幅に増加した。建築資材価格上昇に伴って受注金額も上昇傾向となっている。

 売上高の内訳は完成工事高52億43百万円、不動産売上高6億20百万円、共同事業収入39百万円、その他37百万円(前年同期は完成工事高43億45百万円、不動産売上高0百万円、共同事業収入69百万円、その他3億15百万円)だった。

 セグメント別には、建設事業が売上高52億43百万円で利益(全社費用等調整前営業利益)4億71百万円、不動産事業が売上高6億59百万円で利益25百万円、その他が売上高37百万円で利益53百万円の損失だった。

 なお受注高は23年10月31日時点で4件合計148億02百万円となった。また11月16日には販売用不動産の取得(24年5月期連結業績予想に織り込み済)を発表した。

 通期連結業績予想は据え置いている。通期ベースでも大型案件の本体工事進捗などで大幅増収だが、造注による特命工事の減少や建築資材価格の上昇による売上総利益率低下を見込み、減益予想としている。ただし保守的な印象が強く上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。

■株主優待制度は毎年11月末の株主対象

 株主優待制度は、毎年11月末現在の株主を対象として、保有株式数および保有期間に応じてクオカードを贈呈(詳細は会社HP参照)する。

■株価は調整一巡

 株価は反発力が鈍く安値圏だが、低PERや高配当利回りなど指標面の割安感も評価材料であり、調整一巡して出直りを期待したい。12月25日の終値は711円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS103円18銭で算出)は約7倍、今期予想配当利回り(会社予想の31円で算出)は約4.4%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS664円54銭で算出)は約1.1倍、そして時価総額は約95億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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