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ケンコーマヨネーズは上値試す、24年3月期大幅増益予想、さらに上振れの可能性
- 2023/12/27 09:27
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ケンコーマヨネーズ<2915>(東証プライム)は、マヨネーズ・ドレッシング分野からタマゴ加工品やサラダ・総菜分野へと事業領域を拡大し、4つのテーマ(BtoBtoC、イノベーション、構造改革、グローバル)とサステナビリティ経営に取り組んでいる。なお、東京海洋大学に開設している「サラダサイエンス(ケンコーマヨネーズ)寄附講座」が主催する「第5回サラダシンポジウム」を、24年3月8日に開催予定としている。24年3月期は外食分野を中心とする需要回復、価格改定効果、生産性向上効果などで大幅増収増益予想としている。第2四半期累計の利益進捗率が高水準であることを勘案すれば、通期会社予想は上振れの可能性が高く、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は年初来高値圏だ。目先的な利益確定売りで一旦反落する場面があったが素早く切り返しの動きを強めている。週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインの形となって上昇基調である。1倍割れの低PBRも評価材料であり、上値を試す展開を期待したい。なお2月13日に24年3月期第3四半期決算発表を予定している。
■マヨネーズ・ドレッシング類、ロングライフサラダの大手
サラダ・総菜類、タマゴ加工品、マヨネーズ・ドレッシング類の調味料・加工食品事業、フレッシュ総菜(日配サラダ、総菜)およびグループ内生産受託の総菜関連事業等、その他(サラダカフェなど)を展開している。ロングライフサラダは国内市場シェア1位である。ショップ事業のサラダ専門店Salad Cafe(サラダカフェ)は、対面の量り売りサラダや弁当の販売を展開し、新たなブランド創出に向けて百貨店など駅近店舗戦略を推進している。
23年3月期のセグメント別売上高は調味料・加工食品事業が636億78百万円(マヨネーズ・ドレッシング類が238億03百万円、タマゴ加工品が204億46百万円、サラダ・総菜類が181億57百万円、その他が12億70百万円)、総菜関連事業が177億33百万円、その他が9億51百万円だった。セグメント別経常利益は調味料・加工食品事業が▲2億35百万円、総菜関連事業が7億20百万円、その他が14百万円、調整額が▲3億29百万円だった。販路別の売上高構成比は、外食が27.2%、量販店が27.1%、CVSが24.8%、パンが11.9%、給食が4.4%、その他が4.6%だった。23年3月期は外食向けが回復傾向となった。
収益面では、食用油、鶏卵、野菜などの原材料価格が変動要因となりやすく、プロダクトミックス、工場操業度、原燃料コストなどの影響を受ける。利益還元については連結ベースでの配当性向20%を意識し、配当の継続性に配慮しつつ、今後の成長と発展にあわせて安定配当水準を高めていくことを基本方針としている。
なお同社は8月24日を「ドレッシングの日」と制定している。ドレッシングは野菜にかけて使用することが多いため、831(やさい)にかける→8×3×1=24で24日を、またカレンダーで見ると野菜の日(8月31日)の真上にあるのが8月24日であることから、野菜にドレッシングをかける様子をイメージして8月24日を「ドレッシングの日」と制定している。また、東京海洋大学に開設している「サラダサイエンス(ケンコーマヨネーズ)寄附講座」が主催する「第5回サラダシンポジウム」を、24年3月8日に開催予定としている。
■事業環境変化に対応して変革推進
中期経営計画では、基本方針として4つのテーマ(BtoBtoC、イノベーション、構造改革、グローバル)とサステナビリティ方針に取り組み、事業環境変化に対応して企業価値向上と持続的な成長へ向けた変革を推進する。
BtoBtoCでは、デザイン変更や簡便性・調理時間短縮など利便性を高めた商品開発による消費者へのブランド認知度向上、新しい生活様式やライフスタイル多様化に対応した小容量・常温商品の拡充・リニューアル、原材料価格高騰に対応した高付加価値・機能性商品の開発強化、ドラッグストアや大手スーパーなど取り扱い店舗増加によるマーケティング強化、WEB・オンライン動画や料理教室の活用による情報発信・販促活動の強化、自社ECサイトによる販売強化、サラダカフェのブランド創出・駅近店舗戦略などを推進している。
イノベーションでは、賞味期限延長や植物性原料を中心に仕上げたプラントベース商品などSDGsを意識したメニュー・商品の開発、食品ロスの削減、地方創生・活性化につながる郷土料理の商品化や持続可能な農業支援、包装・資材の最適化、生産面でのカーボンニュートラルの実現、構造改革では業務プロセスや生産効率の改善、働きやすい職場環境づくり、人事制度改革、基幹システム再構築、コーポレート・ガバナンスの強化、グローバルでは輸出販売の強化、グローバル対応商品や輸出用長期賞味商品の拡充などを推進している。
23年7月には、フードサービス業界向けロングライフサラダの新シリーズ「FDF(ファッションデリカフーズ) Plus」の発売を開始した。ロングライフサラダで同社最長となる90日の長期賞味期限で、美味しく食品ロス削減に寄与する。
23年9月には新たなプラントベースフードとして、植物性原料を使用した「タマゴ風加工品」を展開すると発表した。プラントベース商品「HAPPY!! with VEGE」シリーズとして、植物性たまごの研究開発・販売を行うUMAMI UNITED JAPANと協業し、主力の「タマゴ加工品」の新たなカテゴリーとなる「植物性タマゴ加工品」として商品を開発・展開する。そして23年10月にはフードサービス業界向けプラントベース商品「HAPPY!! with VEGE」シリーズとして、たまご不使用のプラントベースのたまご風サラダ「まるでたまごのサラダ」の発売を開始した。
地域活性化に関しては、22年3月に、鮮魚販売や水産食料品製造販売を行う鮮冷(宮城県女川町)、およびコンサルティング業務を行うくりや(北海道上川郡)と、地方創生に向けた活動を協働していくことで合意した。地域の食材を活かした商品・メニュー開発、食を通じた地域経済活性化など地域密着型の取り組みを推進する。22年12月には子会社のダイエットクックサプライ(広島県福山市)が製造する「福山工場長シリーズ」の商品が、福山市都市ブランド戦略推進協議会主催「第8回福山ブランド」商品・サービス部門においてブランド認定された。
サステナビリティへの取り組みも強化している。21年7月に「食を通じて世の中に貢献する」という企業理念に基づいてサステナビリティ方針を公開し、加工ロス削減による廃棄物削減などの目標を設定した。21年9月には「国連食料システムサミット2021」への支持表明とコミットメント提出を発表した。
22年10月には、マヨネーズ・ドレッシング類の一部商品において環境配慮型包材(バイオマスインキ使用の包材)への切り替えや個装箱の見直しを順次拡大し、資材量とCO2削減を推進すると発表した。23年3月にはTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同を表明し、TCFD提言に基づく情報を開示した。また自社商品サイトにフードロスを減らす「食材使い切りレシピ」を公開した。
23年5月には、関東ダイエットクックが関東圏の量販店バックヤード向けに、アジアン米飯キット2点を発売すると発表した。店舗での人手不足が深刻化するなか、簡単に調理でき、食品ロス削減につながるとしている。23年10月にはCSRの取り組み(杉並区次世代育成基金への寄付を通じて次世代を担う子どもたちの健やかな成長を支援)に対して杉並区より感謝状を受領した。
■24年3月期大幅増益予想、さらに上振れの可能性
24年3月期の連結業績予想は売上高が23年3月期比6.1%増の874億円、営業利益が11.6倍の12億20百万円、経常利益が7.7倍の13億円、親会社株主帰属当期純利益が17.4%増の5億70百万円としている。配当予想は23年3月期比8円増配の25円(第2四半期末10円、期末15円)としている。予想配当性向は71.3%となる。
第2四半期累計は売上高が前年同期比7.4%増の437億63百万円、営業利益が26.2%増の7億82百万円、経常利益が31.8%増の8億47百万円、親会社株主帰属四半期純利益が12.4%増の5億42百万円だった。
原材料価格・エネルギーコスト高騰が利益圧迫要因だったが、外食分野を中心とする需要回復、価格改定効果、生産性向上効果などで大幅増益だった。価格改定については、22年10月1日出荷分(マヨネーズ・ドレッシング類、タマゴ加工品、ロングサラダ類等約1400品)および23年3月1日出荷分(たまご製品約355品)に続いて、23年7月1日納品分(ロングライフサラダ類、和惣菜等約578品)より追加価格改定を実施している。
経常利益+2億05百万円の要因分析は価格改定効果で+47億48百万円、固定経費等で+99百万円、製造原価で▲25百万円、原材料影響で▲43億46百万円だったとしている。なお原材料の影響額は鶏卵、その他原料、食用油の順で大きかったとしている。
調味料・加工食品事業は、売上高が8.1%増の342億20百万円、セグメント利益(調整前経常利益)が42.8%増の3億92百万円だった。売上高の内訳は、マヨネーズ・ドレッシング類が17.7%増の136億54百万円、タマゴ加工品が16.9%減の89億51百万円、サラダ・総菜類が25.2%増の108億88百万円、その他が23.7%増の7億25百万円だった。タマゴ加工品は高病原性鳥インフルエンザ感染拡大に伴う供給制限の影響が残り減収だが、マヨネーズ・ドレッシング類は価格改定効果や量販店向けマヨネーズの拡販、サラダ・総菜類は価格改定効果や小容量サラダ・ポテトサラダの好調、その他は冷凍畜肉製品や冷凍ポテトの伸長などにより、いずれも大幅増収だった。
総菜関連事業等は売上高が5.6%増の90億90百万円、利益が19.8%増の4億51百万円だった。価格改定、高単価品の開発・販売、販売カテゴリー・販売チャネルの拡大などの効果で増収増益だった。なお、その他(サラダカフェ等)は売上高が7.5%減の4億53百万円、利益が157.7%増の15百万円だった。
四半期別に見ると、第1四半期は売上高214億02百万円で営業利益1億99百万円、第2四半期は売上高223億61百万円で営業利益5億83百万円だった。
通期の連結業績予想は据え置いている。原材料価格・エネルギーコストの高止まりを見込むが、価格改定、新製品投入・商品統廃合、生産性向上などを推進して収益性改善を目指す方針だ。なおタマゴ加工品の供給制限については、23年9月時点ではほぼすべてが制限解除となったが、顧客のメニューに使用されるまでに時間を要する見込みとしている。
通期のセグメント別売上高の計画は、調味料・加工食品事業が7.2%増の682億89百万円(マヨネーズ・ドレッシング類が19.1%増の283億38百万円、タマゴ加工品が16.4%減の170億96百万円、サラダ・総菜類が17.1%増の212億58百万円、その他が25.7%増の15億96百万円)、総菜関連事業等が2.3%増の181億36百万円、その他(サラダカフェ等)が2.5%増の9億75百万円としている。
経常利益+11億31百万円の要因分析(計画)は、価格改定効果で+82億70百万円、販売数量減少で▲7億34百万円、製造原価で▲11億31百万円、固定経費等で▲1億85百万円、原材料影響で▲50億89百万円としている。なお、老朽化した関東ダイエットエッグ日高工場を23年8月末に生産終了・閉鎖したが、自社および連結子会社に生産移行するため業績への影響は軽微としている。
第2四半期累計の進捗率は売上高50%、営業利益64%、経常利益65%、親会社株主帰属当期純利益95%だった。第2四半期累計の利益進捗率が高水準であることを勘案すれば、通期会社予想は上振れの可能性が高く、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株主優待制度は毎年3月末の株主対象
株主優待制度(詳細は会社HP参照)は毎年3月末日現在の株主を対象として、保有株式数に応じて当社商品を贈呈している。
■株価は上値試す
株価は年初来高値圏だ。目先的な利益確定売りで反落する場面があったが素早く切り返しの動きを強めている。週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインの形となって上昇基調である。1倍割れの低PBRも評価材料であり、上値を試す展開を期待したい。12月26日の終値は1673円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS35円05銭で算出)は約48倍、今期予想配当利回り(会社予想の25円で算出)は約1.5%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2281円75銭で算出)は約0.7倍、そして時価総額は約276億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)