【アナリスト水田雅展の銘柄分析】JFEシステムズは16年3月期の3期連続増配予想を見直し

銘柄分析

 JFEシステムズ<4832>(東2)は鉄鋼向けシステム構築を主力とする情報サービス企業である。株価は悪地合いが影響して調整局面だが、下値を固める動きだ。指標面に割安感があり、16年3月期の3期連続増配予想を見直して切り返し展開が期待される。

■JFEスチール系の情報サービス企業

 川崎製鉄(現JFEスチール)のシステム部門を分離した情報サービス企業である。鉄鋼向け情報システム構築事業を主力として、ERPと自社開発ソリューションを組み合わせた一般顧客向け複合ソリューション事業や、自社開発のプロダクト・ソリューション事業も展開している。

 鉄鋼事業ではJFEグループの海外展開を支援すべく、タイCGL(溶融亜鉛めっきライン)工場向けで開発した海外製造拠点向け標準システムを、インドネシアCGL工場へ導入中だ。

 また「食の安全・安心」を支える食品業界全体の品質情報管理向上への取り組みを加速している。15年8月には自社開発・販売の原料規格書収集クラウドサービス「MerQurius Net(メルクリウスネット)原料規格書サービス」の加入企業が100社に達し、サプライヤ企業が3000社を超えた。原料規格書は食品メーカーがサプライヤから購入する原料の品質に係る情報である。そして新たに「MerQurius Net原料規格書管理サービス」を開始する。

■アライアンスも強化

 アライアンス戦略では、13年5月に大阪ガス<9532>子会社オージス総研と協業、ビジネスブレイン太田昭和<9658>と資本・業務提携した。

 15年5月にはセールスフォース・ドットコム社と、同社のクラウド・アプリケーション「Sales Cloud」およびクラウド・アプリケーション開発基盤「Force.com」に関する販売パートナー契約を締結した。

 同社の「Force.com」を利用して、親会社JFEスチール向けに「販売情報共有システム」を構築した実績を持つ。そして15年5月には、経済産業省と東京証券取引所が企画する「攻めのIT経営銘柄」(18銘柄)にJFEホールディングス<5411>が選定された。JFEスチールの「販売情報共有システム」が選考のポイントの一つとして挙げられている。

 9月16日には、ITホールディングス<3626>グループのTISと、当社のデータ分析基盤構築テンプレート「KPIMart(ケイピーアイマート)」の販売代理店契約締結を発表した。両社は今後これを核としたビジネス・インテリジェンス(BI)およびデータウェアハウス(DWH)分野での協業を開始する。

■中期計画で18年3月期EPS150円以上目指す

 16年3月期スタートの新中期計画では、目標数値として最終年度18年3月期の売上高400億円以上、経常利益20億円以上、純利益12億円以上、EPS150円以上を掲げている。

 重点課題をJFEスチール製鉄所業務プロセス改革への対応、ERPを核とした製造流通向けソリューション事業の拡大、基盤サービス事業の拡大に向けたクラウドサービスの立ち上げとして、自動車など製造業顧客基盤の拡大や、電子帳簿(e-文書保存ソリューション)など自社プロダクト拡販の推進も継続する。

 JFEスチール製鉄所の業務プロセス改革への対応で多くの技術・ノウハウを蓄積し、基盤事業やソリューション事業に活用して一般顧客向け売上拡大を目指す戦略だ。製造業向けERPなど基幹系システムやサプライチェーン計画系システムに組み合わせて拡販し、高収益な事業構造への転換を推進する。

■16年3月期は3期連続増配予想

 なお15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)77億69百万円、第2四半期(7月~9月)89億33百万円、第3四半期(10月~12月)84億38百万円、第4四半期(1月~3月)106億67百万円、営業利益は第1四半期83百万円の赤字、第2四半期5億28百万円、第3四半期4億77百万円、第4四半期7億79百万円だった。

 第4四半期の構成比が高い収益構造である。そして営業損益は改善基調である。また15年3月期の配当性向は26.3%だった。ROEは14年3月期比2.5ポイント上昇して8.4%、自己資本比率は同1.8ポイント低下して49.5%となった。

 今期(16年3月期)の連結業績予想(4月27日公表)は売上高が前期比5.6%増の378億円、営業利益が同3.0%減の16億50百万円、経常利益が同1.3%減の16億60百万円、純利益が同16.2%増の9億70百万円としている。配当予想は同2円増配の年間30円(期末一括)で、予想配当性向は24.3%となる。また3期連続の増配で配当額は上場後の最高となる。

 売上面はJFEスチール向けや製造流通向けが好調に推移して増収、営業利益と経常利益は開発労務費の増加に加えて、製鉄所業務プロセス改革対応や基盤サービス事業強化といった戦略的先行投資コストを勘案して微減益、純利益は15年度税制改正の影響で増益見込みとしている。

 事業別売上高の計画は、JFEスチールのIT投資増加で鉄鋼が同14.5億円増加の196億円、製造流通向け複合ソリューションの拡大で一般顧客が同5.5億円増加の140億円、子会社が同横ばいの42億円としている。

 第1四半期(4月~6月)は売上高が前年同期比3.1%増の80億12百万円、営業利益が56百万円(前年同期は83百万円の赤字)、経常利益が63百万円(同75百万円の赤字)、純利益が25百万円(同61百万円の赤字)だった。

 売上面では製造流通向けおよび金融向けが好調に推移し、利益面では増収効果に加えて、自社プロダクト事業の利益率改善や販管費抑制などが寄与して各利益とも黒字化した。売上総利益率は16.2%で同1.0ポイント改善、販管費比率は15.5%で同0.8ポイント改善した。

 通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は売上高が21.2%、営業利益が3.4%、経常利益が3.8%、純利益が2.6%である。低水準の形だが第4四半期の構成比が高い収益構造であり、現時点ではネガティブ要因とはならない。

 第1四半期の売上総利益率が改善したことに加えて、企業のIT投資が高水準に推移し、鉄鋼向けの案件規模拡大、複合ソリューションの収益改善なども考慮すれば、16年3月期会社予想は保守的な印象も強く増額余地があるだろう。

■株価は下値固める動き

 なお7月14日に、当社ウェブサイトがモーニングスターによる「GomezIRサイトランキング2015」において総合91位を獲得し、銅賞を受賞したと発表している。

 株価の動きを見ると、悪地合いの影響で8月25日に1060円、9月7日に1060円、8日に1039円、11日に1050円まで下押す場面があった。その後は1100円台に戻している。

 9月17日の終値1136円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS123円52銭で算出)は9~10倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間30円で算出)は2.6%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1309円13銭で算出)は0.9倍近辺である。

 週足チャートで見ると52週移動平均線を割り込んだが、安値圏で長い陽線を立てて調整一巡感を強めている。1000円台で下値を固めた形だろう。指標面には割安感があり、16年3月期の3期連続増配予想を見直して切り返し展開が期待される。

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