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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】インフォコムは16年3月期増収増益・増配予想を見直し
- 2015/9/18 06:50
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
インフォコム<4348>(JQS)はITサービスや電子書籍配信サービスを主力としている。株価はやや戻りの鈍い展開だが、悪地合いに伴う売りが概ね一巡して下値を確認した形だ。指標面に割高感はなく、16年3月期の増収増益・増配予想を見直して切り返す展開だろう。9月末の株主優待権利取りも注目点だ。
■ITサービス事業とネットビジネス事業を展開
帝人<3401>グループで、企業向けにITソリューションを提供するITサービス(ヘルスケア、エンタープライズ、サービスビジネス)事業と、一般消費者向けに電子書籍配信サービス、eコマース、各種デジタルコンテンツなどを提供するネットビジネス事業(子会社アムタス)を展開している。
06年11月開始のスマートフォン・フィーチャーフォン向け電子書籍配信サービス「めちゃコミック」は、各携帯キャリアのスマートフォン公式キャリアサービス電子書籍カテゴリーで1位を独占し、月間利用者数が500万人を記録するなど国内トップクラスの地位を強固にしている。また13年11月開始のマルチデバイス対応電子書籍配信サービス「ekubostore(エクボストア)」も拡大基調だ。
9月15日にはサービスビジネス事業分野で企業・団体向けに特化したMVNO(仮想移動体サービス事業者)サービスを開始すると発表した。格安SIMカードによるデータ通信・SMSサービスで、コストメリットをフルに活用できるサービスラインナップを取り揃えた。そして今後、スマートデバイスのレンタルサービスおよび中古スマートデバイスの買取・販売事業を開始する予定だ。
■中期成長に向けてアライアンス積極活用、ソーシャルゲームは自社開発終了
中期成長に向けて戦略的M&A・アライアンスを積極活用し、13年9月に医薬品業界CRM事業強化に向けてミュートスと合弁会社インフォミュートスを設立した。
グループ会社統合・再編も進めている。14年3月にEC事業の運営効率化に向けてアムタスグループ内で食品EC事業を展開する持分法適用関連会社のドゥマンを連結子会社化し、連結子会社イー・ビー・エスのアパレルEC事業をドゥマンに統合した。
14年9月には新規事業の発掘を目的として、米国シリコンバレーに連結子会社のコーポレートファンド(20億円規模、通称インフォコムファンド)を設立した。また15年2月に米SYSCOMの株式を譲渡した。
ソーシャルゲームについては15年4月に「ソーシャルゲームサービスの自社開発・提供を終了」する方針を発表した。12年8月にイストピカを連結子会社化してスマートフォン向けソーシャルアプリゲームの開発・提供に取り組んできたが、市場環境の変化が激しく今後の収益化を見通すことが困難と判断した。自社タイトル開発・配信を終了して経営資源を電子書籍サービスに集中する。
■ヘルスケア、GRANDIT、電子書籍配信が重点3事業
中期経営計画では、医療機関・製薬企業向けヘルスケア事業、完全Web-ERPソフト「GRANDIT」のサービスビジネス事業、そして電子書籍配信サービスなどのネットビジネス事業を重点3分野として、目標数値に17年3月期売上高550億円、営業利益50億円、21年3月期売上高1000億円、営業利益100億円を掲げている。
ヘルスケア事業の分野ではIoT事業への新規参入として米EverySense(エブリセンス)社に25%出資した。また15年3月にヘルスケア事業の一環として、アスリート支援サービス「ATHLETE STORIES(アスリートストーリーズ)」の提供を開始した。
「ATHLETE STORIES」はトップアスリートを目指す人の健康管理、コミュニティ機能、活動資金援助、さらに就職支援といった引退後のセカンドキャリアに至るまでをサポートする無料サービス(アスリートプラットフォームアプリ)だ。使用するアスリートには費用が発生せず、当社は広告事業、職業紹介事業、およびビッグデータのアスリート向け製品開発に活用する市場調査事業として展開する。15年8月にはトレーナー向けアプリの提供開始を発表した。
また15年7月には新規事業創出プログラム「デジタルヘルスコネクト」におけるアクセラレータープログラムの参加者募集を発表した。プログラム参加者に対して医師が抱える現場の課題(ニーズが明確なテーマ)を提供し、この解決策を挑戦者と一緒に考え、具体化し、現場での試行を重ねて製品化を目指す。
完全Web-ERPソフト「GRANDIT」はコンソーシアム方式で進化して採用企業数は現在800社を超えている。9月17日には東京ビッグサイトで9月30日~10月2日「GRANDIT DAYS 2015」(日経BP社主催「ITpro EXPO 2015」との同時開催展)を開催すると発表した。クラウドファースト時代に向けて進化する多彩なソリューション・活用事例を紹介する。
電子書籍配信サービスの分野では、14年10月にシフトワンと共同で次世代電子コミック「モーションコミック」の提供を開始した。15年2月にはアムタスが、中国でコミック関連事業を展開している厦門優莱柏網絡科技有限公司(ユーラボ社)、および恋愛・乙女系アプリ配信を展開しているKOYONPLETE(コヨンプリート)(東京都)と業務提携した。コヨンプリートに関しては第三者割当増資も引き受ける。
15年4月には「めちゃコミック」にて「週刊少年ジャンプ」や「マーガレット」など集英社コミックの提供を開始し、15年5月にはグリー<3632>のSNS「GREE」にてスマートフォン向け「めちゃコミック for GREE」を開始した。15年6月には「めちゃコミック」にて秋田書店のコミックの提供を開始し、さらに業務提携先の中国・ユーラボ社が同社の100%子会社を通じて中国全土でスマートフォン向け電子書籍配信アプリ「新漫画」の提供を開始した。
なお15年8月、震災被災地復興支援活動の一環として宮城県岩沼市に建設した岩沼「みんなの家」が地域と連携し、2015年度「新しい東北」先導モデル事業として復興庁に選定された「千年希望の丘」岩沼復興アグリツーリズムを開始した。
■16年3月期増収増益基調
15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)81億99百万円、第2四半期(7月~9月)104億98百万円、第3四半期(10月~12月)94億11百万円、第4四半期(1月~3月)122億01百万円で、営業利益は第1四半期2億26百万円の赤字、第2四半期8億16百万円、第3四半期3億99百万円、そして第4四半期26億17百万円だった。ITサービス事業は第4四半期の構成比が高い収益構造である。
また15年3月期の配当性向は23.3%だった。ROEは14年3月期比0.2ポイント低下して10.9%、自己資本比率は同4.3ポイント上昇して73.0%となった。
今期(16年3月期)の連結業績予想(4月28日公表)は売上高が前期比6.7%増の430億円、営業利益が同16.5%増の42億円、経常利益が同13.7%増の42億円、純利益が同19.7%増の26億円としている。配当予想は同1円50銭増配の年間20円(期末一括)である。予想配当性向は21.0%となる。
電子書籍配信サービスの好調が牽引して増収増益見込みだ。コンテンツ拡充の効果、テレビCMによる広告宣伝の効果、会員ポイント制度導入などサービス強化の効果で、電子書籍配信サービスの新規顧客開拓と会員稼働率向上が進展する。ITサービスでは米SYSCOM社の株式譲渡に伴う減収分を、ヘルスケア事業と「GRANDIT」サービスビジネス事業でカバーする。
セグメント別の計画を見ると、ITサービス事業は売上高が同2.1%増の255億円、営業利益が同4.6%増の25億円、ネットビジネス事業は売上高が同14.2%増の175億円、営業利益が同41.7%増の17億円としている。ネットビジネスのうち電子書籍配信サービス売上高は同22.0%増の150億円を目指し、利益面ではソーシャルゲーム事業の自社開発終了も寄与する。
第1四半期(4月~6月)は売上高が前年同期比6.0%増の86億88百万円、営業利益が1億54百万円(前年同期は2億26百万円の赤字)、経常利益が1億73百万円(同2億16百万円の赤字)、純利益が86百万円(同2億49百万円の赤字)だった。
ITサービス事業は前期第4四半期に子会社を譲渡した影響で減収だが、ヘルスケアの売上が回復して営業赤字が縮小した。ネットビジネス事業は電子書籍配信サービスが好調に推移し、ソーシャルゲーム事業の自社開発終了も寄与して大幅増益だった。
通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は売上高が20.2%、営業利益が3.7%、経常利益が4.1%、純利益が3.3%と低水準だが、ITサービス事業は第4四半期の構成比が高い収益構造であることを考慮すれば、現時点ではネガティブ要因とはならない。通期ベースで増収増益基調に変化はないだろう。
中期的にも、医療機関・製薬企業向けヘルスケア事業、Web-ERPソフト「GRANDIT」サービスビジネス事業、そしてネットビジネス事業の重点3分野の成長が加速し、eコマース分野の構造改革効果も寄与して収益拡大基調が期待される。
■株価は下値確認、16年3月期増益・増配予想を見直し
なお15年5月に厚生労働省東京労働局から、子育てサポートに積極的に取り組む企業として認定マーク「くるみん」を取得した。出産・育児の他にも、配偶者の看護や両親の介護などによって、一時的に就業が困難になるような事態を想定し、社員の活躍機会をできるだけ損なわず、より柔軟な働き方ができるように制度の導入・改善に取り組んでいる。
株主優待制度については毎年9月30日現在で1単元(100株)以上保有株主を対象として、連結子会社ドゥマンが運営する食品通信販売サイト「オーガニックサイバーストア」で利用可能なポイント(1ポイントを1円として利用)を保有株数と保有年数に応じて贈呈する。たとえば保有株数1000株以上で保有年数3年以上の場合は6000ポイントを贈呈する。
自己株式取得については、必要に応じて機動的に実施予定としている。
株価の動きを見ると、悪地合いの影響を受けた8月25日の直近安値981円から9月1日の1234円まで一旦切り返したが、その後は戻りが鈍い展開で17日には1063円まで調整する場面があった。ただし終値では1100円台に戻している。悪地合いに伴う売りは概ね一巡したようだ。
9月17日の終値1107円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS95円10銭で算出)は11~12倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間20円で算出)は1.8%近辺、そして前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS762円15銭で算出)は1.5倍近辺である。
週足チャートで見ると26週移動平均線を割り込んだが、8月の直近安値を割り込むことなく、52週移動平均線がサポートして1100円台で下げ渋る動きだ。下値を確認した形のようだ。指標面に割高感はなく、16年3月期の増収増益・増配予想を見直して切り返す展開だろう。9月末の株主優待権利取りも注目点だ。