JSPは急反発、24年3月期大幅増益予想、利益は3回目の上振れ余地

 JSP<7942>(東証プライム)は発泡プラスチック製品の大手である。成長ドライバーとして自動車部品用ピーブロックなどの拡販を推進するとともに、製品ライフサイクル全体における環境負荷軽減に貢献する製品や製造技術の開発など、サステナビリティ経営の推進も強化している。24年3月期は大幅増益予想としている。ビーズ事業が好調に推移する見込みだ。さらに利益は3回目の上振れ余地があり、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は急反発して戻り歩調の形だ。1倍割れの低PBRも評価材料であり、上値を試す展開を期待したい。

■発泡プラスチック製品の大手

 発泡プラスチック製品の大手で、押出発泡技術をベースとするポリスチレン・ポリエチレン・ポリプロピレンシートなどの押出事業(産業用包装材、食品用包装材、広告用ディスプレイ材、住宅用断熱材など)、ビーズ発泡技術をベースとする発泡ポリプロピレン・発泡ポリエチレン・発泡性ポリスチレン製品などのビーズ事業(自動車衝撃緩衝材、家電製品緩衝材、IT製品輸送用通い函など)、その他(一般包材など)を展開している。

 22年1月には、欧州における射出事業紳士湯を目的としてイタリアのGHEPI社に出資(株式35%取得)した。23年9月には、射出事業のさらなる拡大を目的としてドイツのHAPP社に出資(株式70%取得)した。

 収益は販売数量、為替、原油価格、原料価格と販売価格の差であるスプレッド、プロダクトミックスなどが影響する。23年3月期のセグメント別業績は押出事業の売上高(外部顧客への売上高)が8.6%増の424億43百万円で営業利益(全社費用等調整前)が36.5%減の17億67百万円、ビーズ事業の売上高が20.8%増の827億61百万円で営業利益が22.2%減の20億38百万円、その他の売上高が0.4%減の65億08百万円で営業利益が21.5%減の1億66百万円だった。

 なお、三菱瓦斯化学<4182>が所有していた同社株式の一部を自己株式として取得し、23年12月22日をもって三菱瓦斯化学が親会社に該当しないこととなった。今後は三菱瓦斯化学の持分法適用会社となって良好な取引関係を継続するとともに、グループ企業価値の向上を図るとしている。

■長期ビジョン

 長期ビジョン「VISION2027」では目標値に28年3月期売上高1800億円、営業利益180億円、営業利益率10%を掲げている。

 長期ビジョン達成に向けた3ヶ年中期経営計画(21年度~23年度)では、変革戦略を基本方針として、循環性の高いビジネスモデルへのシフト、組織の活性化・効率化を推進する。4つの成長エンジンについては23年度に19年度比で、自動車部品の販売数量23%増、建築住宅断熱材の販売数量12%増、FPD関連保護材の販売数量20%増、新たな事業領域の売上高30億円の達成を目指す。3年間の設備投資額は235億円の計画としている。

■自動車部品用ピーブロックなど環境に貢献する新製品を拡販

 自動車部品用発泡ポリプロピレンのピーブロック(英名ARPRO)は、自動車メーカーの軽量化要求に対応する製品として、自動車シートコア材や自動車バンパー芯材としての採用が拡大している。SDGsへの取り組みとして自動車メーカーからはリサイクル原料使用の要求が強く、原料にリサイクルポリプロピレンを用いたARPRO REの採用が拡大している。さらにピーブロックの高付加価値グレード版として、GHG排出削減を実現するピーブロックLC(LCはローカーボンの略)も開発し、国内自動車メーカーのバンパー芯材に採用された。さらに北米では競技用グランド基礎緩衝材、欧州ではHVAC(空調システム)へのARPRO採用が広がっており、中国では蓄電池用包装材としての出荷を開始した。従来の自動車シートコア材や自動車バンパー芯材にとどまらず、EV用部材、住宅用空気清浄システム構造部材、水力発電所の発電機の発熱を遮断する断熱材などにも採用が広がっており、中期成長ドライバーとして期待される。

 省エネ基準適合義務化対象拡大で需要拡大している「ミラフォーム」については、関西工場(兵庫県たつの市)の隣接地に新工場が完成(19年1月)して東西2大生産拠点体制を構築している。

 22年11月には、梱包資材用途ミラブロック(発泡ポリエチレンビーズ成形品)シリーズの新製品として、バイオマス原料を配合したミラブロック-Bioの販売を開始した。植物由来のバイオマスポリエチレンを25.0重量%以上配合するため、日本バイオプラスチック協会のバイオマスプラシンボルマークの認定を受けた。従来品ミラブロック-Eをミラブロック-Bioに切り替えることにより、環境負荷軽減や気候変動緩和に貢献できる製品として、サステナブルな社会づくりに貢献する。

 さらに、冷凍用途から電子レンジ対応でリサイクル性に優れた高性能食品容器用シートのPパールFや、アウトドア等に手軽に持ち運べるクッション用途として採用されたARGILIX、老朽化した橋梁の補強・改修に適したフォームサポート工法など、新製品の開発・拡販を推進している。

■サステナビリティ経営やコーポレート・ガバナンスを強化

 製品ライフサイクル全体における環境負荷軽減に貢献する製品や製造技術の開発などサステナビリティ経営の推進も強化するとともに、コーポレート・ガバナンスも強化している。

 21年4月にサステナビリティ推進室を新設、21年12月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に賛同を表明、22年4月にガバナンス特別委員会を設置した。22年12月には、サプライチェーン全体で持続可能な調達活動を推進するために「JSPグループ調達基本方針」の策定、および「パートナーシップ構築宣言」「ホワイト物流推進運動の自主行動宣言」をリリースした。

 23年12月には、グループ会社が製造・販売するマスバランス方式のバイオマス割当発泡ポリスチレン容器がファミリーマートの一部パスタ容器本体として採用されたとリリースしている。今後も環境に配慮した素材の使用を促進するとしている、

■24年3月期大幅増益予想、利益は3回目の上振れ余地

 24年3月期の連結業績予想(7月31日付で売上高を据え置き、利益予想を上方修正、10月31日付で売上高を上方修正、利益を2回目の上方修正)は、売上高が23年3月期比3.3%増の1360億円、営業利益が113.1%増の63億円、経常利益が102.2%増の68億円、親会社株主帰属当期純利益が97.5%増の50億円としている。配当予想は据え置いて23年3月期と同額の50円(第2四半期末25円、期末25円)としている。予想配当性向は29.8%となる。

 第2四半期累計は、売上高が前年同期比3.4%増の664億32百万円、営業利益が131.3%増の32億47百万円、経常利益が94.4%増の36億17百万円、親会社株主帰属四半期純利益が102.8%増の27億95百万円だった。

 国内販売は減少したが、ビーズ事業の海外での販売増加、製品価格改定、北米における原料価格軟化、為替の円安、コスト削減などにより大幅増益だった。なお前回予想(7月31日付で売上高を据え置き、各利益を上方修正)に対して、売上高は5億68百万円下回ったが、営業利益は2億47百万円、経常利益は4億17百万円、親会社株主帰属四半期純利益3億95百万円それぞれ超過達成して着地した。営業利益の前年同期比+18億43百万円の要因分析は、限界利益(数量減少)で▲8億95百万円、販売単価で+23億87百万円、変動費単価で+13億10百万円、固定費増加で▲11億62百万円、為替要因で+2億03百万円だった。

 押出事業は売上高が0.2%減の208億23百万円、営業利益(全社費用等調整前)が4.7%減の10億12百万円だった。全体として製品価格改定を進めたが、販売数量の減少、高付加価値製品の販売減少、ユーティリティコスト高騰などの影響で減益だった。分野別の売上状況としては、生活資材製品は食品容器用「スチレンペーパー」や広告宣伝用ディスプレイ材「ミラボード」が減少して減収、フラットパネルディスプレイ用「ミラマット」を中心とする産業資材製品は高付加価値製品、汎用製品とも減少して減収だった。押出ボード「ミラフォーム」を中心とする建築土木資材製品は、土木分野が減少、建築・住宅分野が前期並みだったが、製品価格改定や高付加価値製品の増加により増収だった。

 ビーズ事業は売上高が6.3%増の427億38百万円で営業利益が266.6%増の27億79百万円だった。全体としては販売数量が減少したが、高付加価値製品の販売増加や製品価格改定効果などで増収・大幅増益だった。主力の発泡ポリプロピレン「ピーブロック」(英名ARPRO)は非自動車分野が好調だった。

 その他は売上高が9.6%減の28億70百万円で営業利益が68.8%減の26百万円だった。一般包材が、国内では自動車部品輸送関連の需要の影響により減少、中国では各種部品関連の需要の影響により減少した。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高が320億49百万円で営業利益が12億71百万円、第2四半期は売上高が343億83百万円で営業利益が19億76百万円だった。第2四半期は第1四半期比でも大幅増益だった。

 通期見通しについては前回予想に対して売上高を10億円、営業利益を7億円、経常利益を9億円、親会社株主帰属当期純利益を7億円それぞれ上方修正した。不透明な状況が継続するものの、エネルギー市場価格が現状の価格水準で推移することを想定し、営業利益の前期比+33億44百万円の要因分析は、限界利益(数量減少)で▲6億25百万円、販売単価で+27億55百万円、変動費単価で+32億94百万円、固定費増加で▲24億35百万円、為替要因で+3億54百万円の見込みとしている。

 修正後のセグメント別計画は、押出事業の売上高が0.1%増の425億円で営業利益が3.8%減の17億円、ビーズ事業の売上高が5.7%増の875億円で営業利益が177.2%増の56億50百万円、その他の売上高が7.8%減の60億円で営業利益が40.1%減の1億円としている。押出事業はフラットパネルディスプレイ用「ミラマット」の需要回復遅れなど高付加価値製品の販売減少で減益、ビーズ事業は発泡ポリプロピレン「ピーブロック」(英名ARPRO)の非自動車分野の販売増加、北米での原材料価格軟化や価格改定効果などで大幅増益、その他は国内、中国とも需要減少の影響で減益の見込みとしている。

 修正後の通期予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が49%、営業利益が52%、経常利益が53%、親会社株主帰属当期純利益が56%となる。下期の自動車関連の需要回復基調などを勘案すれば、利益はさらに3回目の上振れ余地があり、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株主優待制度は毎年3月末対象

 株主優待制度は、毎年3月31日時点の1単元(100株)以上保有株主を対象として、一律3000円相当の社会貢献寄付金附きオリジナルクオカードを贈呈(詳細は会社HP参照)している。

■株価は急反発して戻り歩調

 株価は急反発して戻り歩調の形だ。週足チャートで見ると13週移動平均線と26週移動平均線を一気に回復した。1倍割れの低PBRも評価材料であり、上値を試す展開を期待したい。1月11日の終値は1924円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS167円74銭で算出)は約11倍、今期予想配当利回り(会社予想の50円で算出)は約2.6%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS3076円73銭で算出)は約0.6倍、そして時価総額は約604億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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