ティムコは反発の動き、24年11月期も収益拡大基調

 ティムコ<7501>(東証スタンダード)はフィッシング用品およびアウトドア用品の企画・開発・販売を展開している。フィッシング用品分野ではフライフィッシングのパイオニアであり、アウトドア用品分野ではオリジナル衣料ブランドFoxfireを主力としている。23年11月期は大幅営業・経常増益予想としている。アウトドア事業が伸長し、価格改定などの効果も寄与する見込みだ。さらに24年11月期も積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価はモミ合いレンジ下限から反発の動きを強めている。1倍割れの低PBRも評価材料であり、モミ合いから上放れの展開を期待したい。なお1月19日に23年11月期決算発表を予定している。

■フィッシング用品およびアウトドア用品の企画・販売

 フィッシング用品(ルアーフィッシング用品、フライフィッシング用品)およびアウトドア用品(アウトドア衣料・用品)の企画・開発・販売事業を展開している。

 フィッシング用品の分野では、日本では歴史の浅いフライフィッシングのパイオニアであり、竿から衣料品に至るまで全てのフライ用品を取り扱う唯一の企業であることを特徴・強みとしている。アウトドア用品の分野では、自社オリジナルブランドのアウトドア衣料ブランドFoxfireを主力としている。

 22年11月期のセグメント別の売上高は、フィッシング事業が21年11月期比3.3%減の10億29百万円、アウトドア事業が同20.5%増の22億39百万円、その他(不動産賃貸収入)が同24.5%減の20百万円、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)は、フィッシング事業が同4.5%減の1億60百万円、アウトドア事業が1億25百万円の黒字(21年11月期は24百万円の赤字)、その他が同33.8%減の13百万円、営業利益の全社費用等調整額が▲1億85百万円(同▲1億91百万円)だった。

 フィッシング事業は、屋外アクティビティとして注目された釣り需要が平常に復したため、販売がやや低調だった。アウトドア事業は、22年4月以降に行動制限が発出されなかったことを背景に、登山やトレッキング等の外出機会が増加し、百貨店やショッピングセンター等の商業施設の集客も回復したため、販売が好調に推移した。

■ブランド力向上、ネット販売強化、グローバル化を推進

 中期的な重点課題としてBRAND(ブランド力を高めるための戦略強化)、NET(インターネット活用を前提とする仕組の強化)、GLOBAL(世界に通用することを目指す商品・仕組の構築)を掲げている。

 そして基本戦略としては、規模の拡大よりも内容の充実に重点を置き、フィッシング事業ではフライ用品の裾野拡大やルアー用品のユーザー層拡大、アウトドア事業ではオリジナルアウトドア衣料ブランドFoxfireや直営店舗Foxfire Storeの認知度向上・ユーザー層拡大に取り組んでいる。

 またネット通販や宣伝販売促進の更なる強化、フィッシング事業の強化、直営店フォックスファイヤーの販売チャネル見直しや不採算店舗整理による事業効率化、社内業務見直しによる販管費コントロール・経費削減なども推進している。

 なお19年4月にスノーピーク<7816>と資本業務提携し、スノーピークが第1位株主となっている。商品開発・販売などを共同展開する。21年11月にはスノーピーク、アイビック、アイビック食品、および同社の4社共同で、キャンプ・フィッシング・食を融合した体験型施設などを展開し、新たなアウトドアカルチャーの価値創造を目的とする新会社キャンパーズアンドアングラーズ(札幌市、以下C&A)を設立した。そして23年9月には、C&Aによる体験型アウトドアショップ第1号店「C&A北広島」(北海道北広島市)をオープンした。

 また23年4月には、複合リゾート「エンゼルフォレスト白河高原」内に、初となるフィッシングエリア併設直営店Foxfire白河高原を開業した。スノーピークの直営店スノーピーク白河高原とのコラボショップである。23年7月開業のスノーピーク直営キャンプフィールド「スノーピーク白河高原キャンプフィールド」において、新たなアウトドアスタイル「CAMP FISHING」を提案し、イベント共同開催なども計画している。

■スタンダード市場上場維持基準適合に向けた計画書

 なお22年11月末時点の流通株式時価総額がスタンダード市場における上場維持基準に適合しない状況となったため、23年2月24日に上場維持基準適合に向けた計画書を公表した。企業価値の向上(時価総額の増大)に向けて業績の向上を図るため、以下の施策によって収益性の強化に取り組む。

 フィッシング事業では、新製品を中心とした販売促進、販促イベントの実施、SNSプロモーションの強化、初心者向け商品の開発強化、釣り人口拡大に向けたフライフィッシングスクール&ツアーの実施などを推進する。

 プロモーション活動を強化するため22年12月より組織体制を変更し、開発およびプロモーションを担う部署と営業に特化した部署に切り分けた。体制を強化し、SNSや動画などさまざまなメディアを連携したプロモーション活動を行う。組織体制変更とともに、23年11月期はルアーカテゴリーのファン数の3割増を目標とするなど、各カテゴリーに応じた計画を立案している。スクール・イベントの強化では、釣り人口拡大がユーザー数増加と収益向上につながるため、23年11月期はスクール講師を2倍に増強して受講生増加に対応する。また販売網強化に向けて23年11月期は、得意先取引店開拓により取り扱い強化店の10%以上増加を目標とする。店頭におけるイベント開催やキャンペーン企画も強化する。

 アウトドア事業では、Foxfire会員制度の本格稼働による国内自社オンライン販売の強化、セール品縮小による利益率の改善、店舗計画(新規出店、リニューアルなど)の推進、WEB・動画・SNS情報発信の強化、コラボレーションも活用したFoxfire認知度向上などを推進する。23年4月には、スタジオジプリ作品「となりのトトロ」とのコラボレーションアイテムの販売を開始した。

 オリジナルアウトドア衣料ブランドFoxfireの売上については、ECサイトのプロモーション強化などにより、23年11月期の自社ECサイトにおける販売2割増を計画し、さらに順次EC売上比率を高めていく方針だ。ポイント会員(21年にリニューアル)数については、23年11月期に5割増加を計画し、さらにCRM強化によってサービス向上、リピート率・セット率向上につなげる方針だ。利益率の改善については、コロナ禍による商品消化率低下を解消するため割引販売を増やして対応したが、22年秋冬以降は割引販売の実施を控えて利益率改善に努める方針としている。またFoxfireのうち釣りに関連するアイテムを強化し、釣具店等の新たな販売チャネルも拡大する。23年11月期はフィッシングギアの売上高3割増を計画している。

 これらの施策に加えて、フィッシング事業とアウトドア事業の相互の有機的連携を強化し、全社的な収益力向上に取り組むとしている。さらにIR活動をいっそう強化して、投資家や株主とのコミュニケーションを高める方針だ。なお計画期間については、23年11月期決算発表が24年1月となるため、23年11月期の業績が確定し、その評価が株価にも反映される期間を踏まえて24年11月末としている。

■23年11月期は上振れの可能性、24年11月期も収益拡大基調

 23年11月期業績(非連結)予想は売上高が22年11月期比6.1%増の34億90百万円、営業利益が31.8%増の1億49百万円、経常利益が26.7%増の1億51百万円、そして当期純利益が2.1%増の1億28百万円としている。配当予想は22年11月期と同額の12円(期末一括)で、予想配当性向は23.1%となる。

 重点施策として、フィッシング事業ではキャンプ地など他のアウトドア・アクテビティとの融合により釣り人口の拡大を促すとともに、新製品投入やSNSプロモーションを活用した販売促進を強化して収益力向上を図る。アウトドア事業では、自社アウトドア衣料ブランド「フォックスファイヤー」の認知度向上と顧客数の増加を目指し、商品開発力の強化、直営店舗の事業効率化、SNSプロモーションの強化、Foxfire会員制度の本格稼働、セール品の縮小などにより収益力向上を図る。さらに、フィッシング事業とアウトドア事業の相互の有機的連携を強化して、総合力の向上を推進する方針だ。

 第3四半期累計は、売上高が前年同期比5.2%増の25億84百万円、営業利益が43.7%増の1億12百万円、経常利益が33.7%増の1億14百万円、四半期純利益が39.0%増の1億06百万円だった。なお特別利益に投資有価証券売却益20百万円を計上した。

 フィッシング事業は苦戦したが、アウトドア事業の大幅伸長が牽引して大幅増益だった。なお22年12月からフライ関連製品、ルアー関連製品、Foxfire関連製品(一部製品は23年2月から)の価格改定を実施している。

 フィッシング事業は売上高が9.2%減の7億55百万円で営業利益(全社費用等調整前)が11.5%減の1億28百万円だった。コロナ禍におけるアクティビティとしての需要が一段落し、価格改定に伴う買い控えや記録的猛暑に伴う釣行回数減少なども影響して全体的に販売が苦戦した。

 アウトドア事業は売上高が12.7%増の18億14百万円で営業利益が90.8%増の1億20百万円だった。百貨店やショッピングセンターなど商業施設への客足が回復し、透湿防水素材(ゴアテックス)を使用した軽量ジャケットや、防虫素材(スコーロン)を使用した商品などの販売が好調だった。利益面では増収効果に加えて、滞留商品の値引き販売の減少も寄与した。

 その他(主に不動産賃貸収入売上)は売上高が0.4%減の14百万円で営業利益が1.1%減の8百万円だった。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高7億94百万円で営業利益10百万円、第2四半期は売上高10億20百万円で営業利益1億15百万円、第3四半期は売上高7億70百万円で営業利益13百万円の損失だった。

 通期予想については先行き不透明感を考慮して据え置いたが、第3四半期累計の進捗率は売上高74%、営業利益75%、経常利益75%、当期純利益83%と順調である。需要回復や価格改定(Foxfire製品の価格改定を23年8月1日出荷分より実施)などの効果を勘案すれば、通期会社予想は上振れの可能性がありそうだ。

 さらに、調達コスト上昇に対応して23年12月1日出荷分より一部フライ・ルアー用品の販売価格を改定(23年11月7日公表)した。24年11月期も積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株主優待制度は毎年11月末の株主対象

 株主優待制度は毎年11月30日現在の株主を対象として、保有株式数に応じてFoxfire Store20%OFFお買物優待券を贈呈(詳細は会社HP参照)している。

■株価は反発の動き

 株価はモミ合いレンジ下限から反発の動きを強めている。1倍割れの低PBRも評価材料であり、モミ合いから上放れの展開を期待したい。1月11日の終値は757円、前期推定PER(会社予想のEPS51円94銭で算出)は約15倍、前期推定配当利回り(会社予想の12円で算出)は約1.6%、前々期実績PBR(前々期実績のBPS1856円56銭で算出)は約0.4倍、そして時価総額は約25億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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