JPホールディングスは上値試す、24年3月期は上振れの可能性

 JPホールディングス<2749>(東証プライム)は総合子育て支援のリーディングカンパニーである。長期ビジョンに「選ばれ続ける園・施設」を掲げ、認可保育園・学童クラブ運営を中心に子育て支援の質的向上と事業を通じた社会貢献を推進するとともに、新規領域への展開も推進している。24年3月期は営業・経常増益予想としている。第2四半期累計が大幅増益だったこと、期後半に向けて児童数増加・稼働率上昇により収益が拡大する傾向があることなどを勘案すれば、通期会社予想は上振れの可能性が高く、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は利益確定売りで14年以来の高値圏から一旦反落の形となったが、自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。なお2月13日に24年3月期第3四半期決算発表を予定している。

■総合子育て支援のリーディングカンパニー

 総合子育て支援のリーディングカンパニーとして、認可保育園・学童クラブ運営を中心に子育て支援の質的向上と事業を通じた社会貢献を推進している。事業区分は認可保育園や学童クラブなどを運営する子育て支援事業、保育所向け給食請負事業、英語・体操・音楽教室請負事業、保育関連用品の物品販売事業、研究・研修・コンサルティング事業としている。

 23年10月にダスキン<4665>と業務提携契約を締結した。そして、21年1月に資本業務提携して第1位株主となっていた学研ホールディングス<9470>が保有する全株式をダスキンへ譲渡(23年11月)し、ダスキンが第1位株主となった。学研ホールディングスとの業務提携は継続する。

 23年1月には、中長期的な株主価値に対するグループ従業員のモチベーション向上を企図して、従業員持株会向けインセンティブ制度(特別奨励金スキーム)導入と第三者(ジェイ・ピー従業員持株会)割当による自己株式処分を発表した。23年9月には、今後の事業展開における資金需要に向けて機動的かつ安定的な資金調達を可能とするため、三井住友銀行をアレンジャーとして、シンジケート方式によるコミットメントライン契約(借入極度額60億円)を締結した。

■保育園は期末に向けて児童数増加・稼働率上昇

 23年3月期末時点でグループは持株会社の同社、全国で保育園・学童クラブ・児童館などの子育て支援施設を運営する日本保育サービス、保育園向け給食請負などを行うジェイキッチン、子育て支援施設向け英語・体操・音楽教室の請負、保育関連用品の企画・販売、保育や発達支援に関する研修・研究、保育所等訪問支援、子育て支援プラットフォーム「コドメル」運営などを行う日本保育総合研研究所、コンサルティングを行う子育てサポートリアルティで構成されている。

 22年4月には日本保育サービスが同じく連結子会社のアメニティライフ(横浜市で保育所5園運営)を吸収合併した。23年1月には日本総合保育所が同じく連結子会社のジェイキャストとジェイ・プランニング販売を吸収合併した。グループ再編によって経営資源の効率化、更なる子育て支援サービスの質的向上、新規事業の運営や外販対応の強化、競争優位性と事業規模拡大を目指している。24年1月末(予定)には外国人の就労支援を行うワンズウィルを子会社化する。両社の強みを活かした新たな事業展開として人材紹介・派遣事業を推進する。

 23年3月期末の運営施設数は、保育園が209園、学童クラブが89施設、児童館が11、合計が309(22年3月期末は303施設)だった。首都圏を中心に展開している。

 収益は既存施設の稼働率、新規施設の開園、保育士待遇改善に伴う人件費の増加、補助金の増減などが影響する。また新規施設の開園は概ね4月のため、期前半は各施設への保育士配置に係る費用が先行するが、児童数が増加して稼働率が上昇する期後半に向けて収益が拡大する特性がある。自治体から受け取っている保育士の借り上げ社宅に対する補助金等については、従来は補助金収入として営業外収益に計上していたが、22年3月期から売上高に計上する方法に変更した。

■長期経営ビジョンは「選ばれ続ける園・施設」

 子育て支援事業を取り巻く事業環境としては23年4月1日付で「こども家庭庁」が創設された。保育所と認定こども園の所管が同庁に移管され、少子化、こどもの貧困、虐待防止対策など幅広い分野において同庁が一元的に企画・立案・総合調整を行う。さらに政府による「異次元少子化対策」が掲げられ、さまざまな子育て支援政策が打ち出されている。また、保育園の待機児童問題は解消傾向だが、学童クラブの待機児童数増加対策が新たな政策テーマに浮上してきている。

 そして、新たな少子化対策および幼児教育・保育の質的向上対策として、親の就労を問わず生後6ヶ月から2歳を対象に誰でも保育を利用できる「こども誰でも通園制度(仮称)」の開始、保育士配置基準における対人数の変更、出産を機に退職した親が再就職する際にこどもを保育所に預けやすくする保育所「入所予約枠」制度の開始、これまで特別区で運用していた地域限定保育士の全国運用の開始、保育士不足緩和に向けた保育補助者支援金の有資格者への拡大など、24年度より保育政策が大きく転換する見込みとなっている。

 こうした事業環境を背景として、長期経営ビジョンでは「選ばれ続ける園・施設」を目指し、連結売上高1000億円(既存事業500億円、新規事業・M&A500億円)に向けて既存事業改善・拡大、新規事業、資本・業務提携を推進している。

 さらに中期経営計画(ローリング方式により年次で見直し実施)では、目標数値として26年3月期売上高383億40百万円、営業利益43億30百万円を掲げている。待機児童減少や少子化加速に伴う競争激化などの環境変化も考慮し、基本方針として成長・競争優位性の確立、収益構造改革、経営基盤改革を推進する。

 成長・競争優位性の確立では、既存事業領域の拡大・差別化(新たな学習プログラムの展開、地域連携などなど)、新規事業の開発と収益化(子育て支援プラットフォーム「コドメル」の収益化、新たな事業領域の開発など)、M&Aを推進する。収益構造改革では、システム化や人員配置適正化などによる経営効率化・コスト削減、新規受託拡大などによる収益基盤強化を推進する。経営基盤改革では人材育成・風土刷新、ガバナンス強化による経営管理高度化、節電対策によるCO2削減などの環境改善を推進する。

 23年1月には日本保育サービスが、埼玉県草加市の草加市立松原児童青少年交流センター「miraton(ミラトン)」の受託運営を開始した。30歳までのこどもと若者を中心に誰でも使える施設で、児童館の機能に加えて青少年の活動の場、多世代交流の場、さらに文化交流の振興や音楽活動の場として複合機能を有する施設である。こうした複合施設の全施設の受託運営はグループ初となる。

 23年4月には、同社グループ初となる英語に特化した新業態「バイリンガル保育園」を首都圏で3施設開設した。既に提供している英語プログラムのノウハウをもとに、首都圏で運営している認可保育園1園と東京都認証保育所2園を業態変更した。また、オリジナル課題解決型学習プログラム「STEAMS保育・学童」を新規導入した。理系・文系・リベラルアーツ・スポーツを横断して学ぶことにより、主体的な学びをサポートして「一人ひとりが主役になる力」を育む。

■子育て支援とSDGsの両立に向けた「コドメル」サービス

 子育て支援と資源の有効活用・環境保全(SDGs)の両立を目的として、会員制の子育て支援プラットフォーム「コドメル(codomel)」サービスを強化している。全国で運営する300超の子育て支援施設(保育所、学童クラブ、児童館)の園児・児童と、その保護者を会員化して、乳児期・幼児期・学童期において子育てに関する様々な商品やサービスを幅広く提供する。

 第1弾サービスとして22年4月より、子育て関連用品を中心とするリユース品に関する「子育て商品マッチングサービス」を開始した。今後は、第2フェーズとして子育て世代に商品や様々なサービスを提供するBtoC事業、第3フェーズとして東南アジアへのサービス展開を推進する。そして6年目に取扱高18億円を目指し、新たな事業柱を構築する方針だ。

 さらに新規領域への展開も推進している。保護者の困りごとの解決に向けた事業展開では、自宅で簡単に調理できる「夕食準備」として、東京都・神奈川県・埼玉県で運営する保育園10園において23年8月より食品のテスト販売を開始した。テスト販売の状況を確認し、販売する保育園の拡大や商品ラインナップの拡充を図り、同業他社への外販や子育て支援プラットフォーム「コドメル」を活用したWebでの販売も検討する方針としている。

■24年3月期営業・経常増益予想、さらに上振れの可能性

 24年3月期の連結業績予想は売上高が23年3月期比2.5%増の363億90百万円、営業利益が4.2%増の38億20百万円、経常利益が2.6%増の38億42百万円、親会社株主帰属当期純利益が特別利益の剥落により7.5%減の24億97百万円としている。配当予想は23年3月期と同額の6円(期末一括)としている。23年3月期の6円には記念配当1円が含まれているため、普通配当ベースでは1円増配の形となる。予想配当性向は20.5%である。

 新規施設開設は保育園1園、学童クラブ・児童館8施設の合計9施設で、このうち23年4月1日付で保育園1園、学童クラブ・児童館7施設を開設した。また、認可保育園および東京都認証保育所5園を、ネイティブ英語講師を配置したバイリンガル保育園に変更する。既存施設の構造改革や幼児学習プログラムの拡充などにより、収益拡大を図るとしている。

 第2四半期累計は売上高が前年同期比4.9%増の180億57百万円、営業利益が34.4%増の20億20百万円、経常利益が29.1%増の19億65百万円、親会社株主帰属四半期純利益が13.2%増の12億79百万円だった。

 大幅増益だった。新たな幼児学習プログラム導入など「選ばれ続ける園・施設づくり」に向けた各種取組が奏功して受入児童数が増加し、人員配置最適化など効率的な施設運営も寄与した。新規施設開設は保育所1園、学童クラブ・児童館9施設で、合計10施設、第2四半期末の子育て支援施設数は保育園209園、学童クラブ86施設、児童館11施設、合計306施設となった。なお、認可保育園および東京都認証保育所のうち5施設を、ネイティブ英語講師を配置したバイリンガル保育園に変更した。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高89億56百万円、営業利益8億68百万円、経常利益8億77百万円、第2四半期は売上高91億01百万円、営業利益11億52百万円、経常利益10億88百万円だった。なお新規施設開設が4月1日に集中するため、第1四半期(4~6月)と第4四半期(1~3月)に関連費用が発生する傾向がある。

 通期の連結業績予想は据え置いている。引き続き「選ばれ続ける園・施設づくり」に向けた各種取組、効率的な施設運営を推進して営業・経常増益予想(当期純利益は前期計上の特別損失が剥落して減益予想)としている。下期の重点施策として、構造改革・事業改革による収益性向上や新規事業(子育てプラットフォーム事業、人事紹介・派遣事業など)の早期収益化を推進する。

 不透明感を考慮して小幅増益にとどまる見込みとしているが、第2四半期累計の進捗率は売上高50%、営業利益53%、経常利益51%、親会社株主帰属当期純利益51%と順調である。第2四半期累計が大幅増益だったこと、期後半に向けて児童数増加・稼働率上昇により収益が拡大する傾向があることなどを勘案すれば、通期会社予想は上振れの可能性が高く、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株価は上値試す

 株価は利益確定売りで14年以来の高値圏から一旦反落の形となったが、自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。1月16日の終値は437円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS29円32銭で算出)は約15倍、今期予想配当利回り(会社予想の6円で算出)は約1.4%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS159円53銭で算出)は約2.7倍、そして時価総額は約384億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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