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エスプールは売られ過ぎ感、24年11月期営業増益予想
- 2024/1/22 10:02
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
エスプール<2471>(東証プライム)は、障がい者雇用支援やロジスティクスアウトソーシングなどのビジネスソリューション事業、およびコールセンター向け派遣などの人材ソリューション事業を主力として、新規事業の環境経営支援サービスや広域行政BPOサービスの拡大も推進している。23年11月期は減収・営業減益だった。ビジネスソリューション事業は順調だったが、人材ソリューション事業が低調だった。24年11月期(IFRS任意適用のため前期比増減率は非記載)は23年11月期(日本基準)との単純比較で増収、営業増益、最終減益予想としている。増収増益への転換を図りながら、新たな成長に向けた基盤整備にも注力する方針だ。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。株価は決算発表を機に急落して昨年来安値を更新したが、売られ過ぎ感を強めている。目先的な売りが一巡して出直りを期待したい。
■人材サービス事業を展開
ビジネスソリューション事業(障がい者雇用支援サービス、ロジスティクスアウトソーシング、セールスサポート、採用支援など)および人材ソリューション事業(コールセンター向け派遣、販売・営業スタッフ派遣)を主力として、新規事業の環境経営支援サービスや広域行政BPOサービスの拡大も推進している。
23年11月期のセグメント別業績(セグメント間取引および全社費用等調整前)は、ビジネスソリューション事業の売上高が125億55百万円(障がい者雇用支援サービス69億04百万円、ロジスティクスアウトソーシングサービス14億70百万円、広域行政BPOサービス13億89百万円、環境経営支援サービス9億49百万円、採用支援サービスOMUSUBI7億16百万円)で営業利益が29億81百万円、人材ソリューション事業の売上高が133億10百万円(コールセンター業務110億93百万円、販売支援が14億40百万円)で営業利益が12億57百万円だった。
23年3月には、東京都が実施している「心のバリアフリーサポート企業」連携事業において、先進性、独自性、波及効果等の観点から特に優れた取り組みを行っている企業として「心のバリアフリー好事例企業」に選出された。さらに経済産業省および日本健康会議が認定する「健康経営優良法人」に4年連続で選定された。23年5月には、国際連合が提唱する国連グローバル・コンパクト(UNGC)に署名し、参加企業として登録された。併せて、UNGCに署名している日本の会員企業や団体で構成されるグローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンに加入した。
■ビジネスソリューションは障がい者雇用支援が主力
ビジネスソリューション事業は、障がい者雇用支援サービスを主力として、ロジスティクスアウトソーシングサービス(EC通販発送代行サービス)、対面型会員獲得・販売促進のセールスサポートサービス、アルバイト・パート求人応募受付代行の採用支援サービスOMUSUBIなども展開している。
障がい者雇用支援サービス「わーくはぴねす農園」は、障がい者雇用を希望する企業に対して農園を貸し出し、企業が主に知的障がい者を直接雇用する。障がい者の職業的自立および社会参加の支援を通じてノーマライゼーション社会の実現に貢献する事業である。23年11月期末時点の累計農園数は46施設、顧客数は606社、管理区画数は7549区画、就労者数は3774名(定着率92%)となった。売上高の内訳は運営管理費、設備販売、人材紹介料などである。なお24年1月には埼玉県川越市に開設を予定(全国で47施設目、埼玉県では11施設目)している。
さらに、障がい者の個性やキャリアを活かした雇用環境を構築し、それぞれのフィールドで活躍するパラスペシャリストの支援に取り組んでいる。21年12月には障がいのある芸術家(パラアーティスト)が制作活動を行う組織「COLORS」を立ち上げた。障がい者の個性を活かしたキャリア支援は「パラアスリート」に続き2事例目となる。
ロジスティクスアウトソーシングは品川センターと流山センターの2拠点において展開している。収益力向上に向けた事業基盤再構築を進めており、物流センター運営代行サービスを終了してEC通販発送代行サービスに集中する。
採用支援サービスOMUSUBIは飲食・小売業を中心に求人応募受付業務を行っている。21年2月にはオンライン接客サービス開発・提供に向けてピアズと業務提携、21年5月にはアルバイト・パートの入退職手続代行サービスを開始した。23年4月には面接代行サービスの実施件数が10万件を突破した。23年11月期の応募受付数は8.4%増の67万5192件だった。
顧問派遣サービスは23年1月に、企業のプロ人材の活用を支援するサービスの名称について、従来の「プロフェッショナル人材バンク」から新ブランド「TAKUWIL(タクウィル)」に変更した。新ブランドには「仕事の匠を活用する」という意味を込めた。23年3月には、マレーシアでショッピングモール運営や日本からの物流業務などを展開するJ-VALUE社と業務提携した。23年4月には「TAKUWIL」が、一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会が運営する副業・兼業・フリーランス人材活用の無料コンシェルジュサービス「求人ステーション」の23年度認定マッチング事業者になった。23年12月には足利銀行と業務提携した。
■人材ソリューション事業はコールセンター派遣が主力
人材ソリューション事業はコールセンター業務の派遣を主力として、販売支援業務や介護系業務の派遣・紹介なども展開している。23年4月には熊本県熊本市とカスタマーサポート業務を行うBPOセンター新設に向けた立地協定を締結した。23年10月に新センター開設を予定している。
■環境経営支援サービス
環境経営支援サービスについては、市場拡大が期待できる環境ビジネス分野での新たな収益柱の構築を目指し、20年6月にエコノス<3136>からカーボンオフセット事業を展開するブルードットグリーンの株式を取得して子会社化(22年4月に株式追加取得して完全子会社化)した。CO2排出量算定支援から、CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)関連の排出量削減コンサルティング、クレジット仲介支援まで、ワンストップサービスの展開を推進する。
ゼロカーボンシティ実現に向けた包括的連携協定は、22年7月に宮崎県日南市、23年3月に宮崎県高鍋町、広島県北広島町、23年4月に宮崎県日之影町、23年7月に宮崎県高千穂町、宮崎県西都市、23年8月に宮崎県門川町、23年9月に宮崎県日向市、23年10月に福島県浅川町、北海道木古内町、23年11月に栃木県塩谷町、三重県桑名市と締結し、全国で12件となった。
■広域行政BPOサービス
広域行政BPOサービスは、人口10万人以下の地方都市を中心に隣接する複数の自治体業務を受託する地方自治体向けシェアード型BPOサービスを全国展開している。23年11月期末時点のBPOセンターは20センター(うちスマートカウンター併設15センター)となった。
22年10月には、全国の自治体向けにスマート見守りプラットフォーム「otto見守りサービス」を開発・運営するotta(福岡県)に出資した。23年10月には、福島県いわき市、およびMONET Technologiesとの3者で、同市の出張行政サービスにおける実証実験を開始した。
■その他分野
その他分野では、21年10月に宮崎県日南市およびココホレジャパン(岡山県岡山市)と3者包括連携協定を締結し、日南市内の後継者不在事業者の調査、移住者とのマッチング、事業再生支援等による後継者課題解決に取り組むと発表した。第一弾として、ココホレジャパンが運営するプラットフォームを活用した「宮崎県日南市継業バンク」を開設して地域の維持活性化を図る。
1月18日にはオルタナとの業務提携を発表した。オルタナは07年からサステナビリティをテーマとした日本初のビジネス情報誌「オルタナ」を発行し、現在はサステナブルな経営に関する知識とスキルを評価する「サステナ経営検定」も運営している。同社が展開しているオンライン研修動画サービス「PivottAサステナ」をオルタナが運営する「サステナ経営検定」に提供する。
■新中期経営計画を策定予定
中期経営計画については、人材派遣サービスの成長鈍化を踏まえて、従来の中期経営計画(目標値、25年11月期の売上高410億円、営業利益50億円、連結配当性向30%以上、高水準のROE維持)を一旦取り下げ、25年11月期を初年度とする新中期経営計画を策定する予定としている。新中期経営計画では事業ポートフォリオを再編し、障がい者雇用支援、サステナビリティ支援、地方創生支援を重点事業領域とする成長戦略を打ち出す見込みとしている。
■23年11月期は営業減益、24年11月期は営業増益(下期偏重)予想
23年11月期連結業績は売上高が22年11月期比3.3%減の257億84百万円、営業利益が15.4%減の26億16百万円、経常利益が13.9%減の26億84百万円だった。減収、営業・経常減益だった。売上面では、ビジネスソリューション事業は順調だったが、人材ソリューション事業が低調だった。利益面では事業拡大に向けた先行投資に加えて、採用費・人件費・家賃の増加なども影響した。親会社株主帰属当期純利益は特別損失や法人税等の減少により12.0%増の20億26百万円だった。配当は22年11月期比2円増配の10円(期末一括)とした。配当性向は39.0%となる。
セグメント別(内部取引、全社費用等調整前)に見ると、ビジネスソリューション事業は売上高が23.1%増の125億55百万円、営業利益が2.0%増の29億81百万円だった。
障がい者雇用支援サービスの売上高は19.8%増の69億04百万円だった。設備販売は計画1440区画に対して1446区画(22年11月期比130区画増)と順調だった。期末時点の顧客数は606社(新規43社、解約3社)で、管理区画数は7549区画、就労者数は3774名(定着率92%)となった。
ロジスティクスアウトソーシングサービスの売上高は9.6%増の14億70百万円(内訳はEC通販発送代行が10.5%増の13億46百万円、物流センター運営が0.9%増の1億24百万円)だった。利益面は新センター(千葉県流山市)開設に伴う一時的費用の発生などにより減益だった。
広域行政BPOサービスの売上高は52.7%増の13億89百万円だった。取引自治体数が順調に増加して大幅増収だが、利益面は新センターの稼働率が計画を下回り、収益化が遅れた。BPOセンターは開設10センター、閉鎖1センターで、累計20センター(うちスマートカウンター併設15センター)となった。
環境経営支援サービスの売上高は30.7%増の9億49百万円(コンサルティングサービスの売上比率が9割超)だった。コンサルティングサービスの拡大により、売上高・利益とも大幅に伸長した。事業拡大に合わせてコンサルタントを中心に積極採用を行い、人員は前期から倍増の74名となった。
採用支援サービス(OMUSUBI)の売上高は18.5%増の7億16百万円だった。応募受付数は8.4%増の67万5192件だった。サービス業を中心に需要が拡大し、センター稼働率上昇により利益率も改善した。
人材ソリューション事業は、売上高が19.7%減の133億10百万円で、営業利益が24.7%減の12億57百万円だった。主力のコールセンター業務の売上高は23.3%減の110億93百万円だった。前期の新型コロナ関連案件の反動で大幅減収だった。販売支援の売上高は15.1%増の14億40百万円だった。インバウンド関連を中心に回復傾向となった。
四半期別にみると、第1四半期は売上高が60億89百万円で営業利益が4億52百万円、第2四半期は売上高が70億43百万円で営業利益が10億40百万円、第3四半期は売上高が62億19百万円で営業利益が5億63百万円、第4四半期は売上高が64億31百万円で営業利益が5億59百万円だった。第2四半期の営業利益は四半期ベースで過去最高だった。
24年11月期の連結業績予想(IFRS任意適用のため前期比増減率は非記載)は、売上収益が270億60百万円、営業利益が27億50百万円、親会社株主帰属当期純利益が18億29百万円としている。23年11月期(日本基準)との単純比較で見ると売上高は4.9%増収、営業利益は5.1%増益、親会社株主帰属当期純利益は9.7%減益の形となる。配当予想は22年11月期と同額の10円(期末一括)としている。予想配当性向は43.2%となる。
なお半期別に見ると、上期は売上収益124億87百万円、営業利益5億42百万円、下期は売上収益145億72百万円、営業利益22億07百万円で、下期偏重の計画としている。ビジネスソリューション事業の広域行政BPOサービス、および人材ソリューション事業のコールセンター業務について、下期からの需要回復・収益改善を計画している。
セグメント別(内部取引、全社費用等調整前)に見ると、ビジネスソリューション事業は売上高が19.7%増の150億23百万円、営業利益が17.3%増の34億97百万円としている。売上高の内訳は障がい者雇用支援サービスが15.9%増の80億円(運営管理費が27.8%増の49億92百万円、設備販売が5.2%増の24億60百万円、人材紹介料が16.5%減の5億47百万円)で、ロジスティクスアウトソーシングサービスが10.6%増の16億26百万円、広域行政BPOサービスが7.6%増の14億95百万円、環境経営支援サービスが50.6%増の14億30百万円、採用支援サービス(OMUSUBI)が11.7%増の8億円としている。
障がい者雇用支援サービスは新規開設が8農園(屋外4、屋内4)で、設備販売は1450区画(第1四半期175~225区画、第2四半期430~480区画、第3四半期360~410区画、第4四半期385~435区画)の計画としている。需要は高水準だが、より丁寧な採用・教育に取り組んでいるため販売目標は一旦抑制する方針だ。ロジスティクスアウトソーシングサービスは、上期に複数の大型案件の受注を見込み、全センターの満床・安定稼働により収益改善を推進する。なお物流センター運営代行サービスを終了し、今後はEC通販発送代行サービスに集中する。広域行政BPOサービスは、スポット業務の縮小により上期の売上高が落ち込むが、既存センターの稼働率向上に向けて営業を強化し、下期からの反転を見込んでいる。環境経営支援サービスは、企業向けの支援ノウハウを活用して自治体向けの脱炭素支援サービスの拡大を推進する。なおCDPの回答期限変更に伴い、売上のピークが第3四半期から第4四半期にシフトする見込みだ。採用支援サービス(OMUSUBI)は人手不足を追い風に着実な成長を目指す。
人材ソリューション事業は売上高が7.4%減の123億25百万円、営業利益が10.9%減の11億20百万円の計画としている。売上高の内訳はコールセンター業務が7.7%減の102億43百万円、販売支援が23.8%増の17億82百万円、その他が61.4%減の3億円の計画としている。コールセンター業務の需要回復などにより売上の底打ちを目指す方針だ。なお、売上回復に向けて下期に2支店の出店を計画している。
24年11月期は増収増益への転換を図りながら、新たな成長に向けた基盤整備にも注力する方針としている。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。
■株価は売られ過ぎ感
株価は決算発表を機に急落して昨年来安値を更新したが、売られ過ぎ感を強めている。目先的な売りが一巡して出直りを期待したい。1月19日の終値は308円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS23円16銭で算出)は約13倍、今期予想配当利回り(会社予想の10円で算出)は約3.2%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS111円78銭で算出)は約2.8倍、そして時価総額は約243億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)