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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】星光PMCは悪地合いの影響限定的、次世代素材CNFや15年12月大幅増益を評価
- 2015/9/24 08:12
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
星光PMC<4963>(東1)は製紙用薬品事業、樹脂事業、化成品事業を展開し、次世代素材セルロースナノファイバー(CNF)など成長市場・新分野開拓の戦略を推進している。株価は乱高下する場面があったが、下値を切り上げる展開で悪地合いの影響は限定的のようだ。次世代素材CNFや15年12月期大幅増益を評価して8月の年初来高値1187円を試す展開だろう。
■製紙用薬品事業、印刷インキ・記録材料用樹脂事業、化成品事業を展開
DIC<4631>の連結子会社で、製紙用薬品事業、印刷インキ用・記録材料用樹脂事業、および化成品事業(14年4月、興人フィルム&ケミカルズの化成品事業を承継したKJケミカルズを子会社化)を展開している。
中期経営目標としては18年12月期売上高350億円(既存事業245億円、海外事業70億円、新規事業35億円)、営業利益35億円、売上高営業利益率10%を掲げている。
高付加価値製品の拡販、中国事業の再構築、東南アジア市場への積極展開、そして次世代素材セルロースナノファイバー(CNF)、導電性ナノ材料(銀ナノワイヤー)、光学弾性樹脂(OCA)など、成長市場・新分野開拓の戦略を推進する。
■次世代素材CNFの事業化推進
次世代素材CNFは、すべての植物の植物細胞壁の骨格成分であるセルロースを、ナノサイズまで細かくほぐすことによって得られる繊維である。鋼鉄の5分の1の軽さで5倍以上強く、熱による変形が少ないなどの特徴がある。樹脂の補強材として機能させることで、自動車用樹脂の強度向上や金属部材からの置き換え、家電・モバイル機器の軽量化などでの需要が期待されている。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のCNF開発プロジェクトの中核企業として早期事業化を目指し、13年2月に経済産業省イノベーション拠点立地推進事業に採択された。14年6月には産官学連携型コンソーシアム「ナノセルロースフォーラム」が設立され、当社を含めて100社以上が参画した。そして14年11月には竜ヶ崎工場におけるCNF実証生産設備が完成し、本格的な変性CNFサンプルの提供を開始している。
銀ナノワイヤーは14年9月からサンプル出荷を本格開始した。直径がナノサイズ、長さがミクロンサイズの繊維状の銀を溶液中に分散させて透明導電性電極を形成し、ウェアラブル端末や大型ディスプレイへの利用が期待されている。
■15年12月期大幅増益予想
なお14年12月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(1月~3月)53億36百万円、第2四半期(4月~6月)61億68百万円、第3四半期(7月~9月)60億64百万円、第4四半期(10月~12月)64億02百万円、営業利益は第1四半期1億40百万円、第2四半期17百万円の赤字、第3四半期77百万円、第4四半期1億19百万円だった。営業損益は第2四半期をボトムとして改善基調だ。
今期(15年12月期)の連結業績予想(8月5日に売上高を減額、利益を増額修正)は、売上高が前期比2.8%増の246億30百万円、営業利益が同3.8倍の12億円、経常利益が同2.5倍の12億80百万円、純利益が9億80百万円(前期は18百万円の赤字)としている。配当予想(2月12日公表)は前期と同額の年間12円(第2四半期末6円、期末6円)で予想配当性向は37.1%となる。
国内需要が低調なため売上高は計画を下回るが、高付加価値製品の拡販、プロダクトミックスの改善、ロジンなど原材料価格上昇に対する製品価格是正のタイムラグ解消、コスト削減・合理化の進展、KJケミカルズ(化成品事業)の通期連結、KJケミカルズにおける減価償却費の減少、中国事業の収益改善などで大幅増益予想だ。
第2四半期累計(1月~6月)は、売上高が前年同期比5.2%増の121億円、営業利益が同5.0倍の6億24百万円、経常利益が同5.5倍の6億79百万円、純利益が5億32百万円(前年同期は2億65百万円の赤字)だった。コスト削減・合理化の進展、中国事業の収支改善、化成品事業の収益拡大などで大幅増益だった。売上原価率は76.9%で同3.9ポイント低下した。営業外では為替差損益が改善した。
特別利益では、KJケミカルズ子会社化に伴う負ののれん発生益3億70百万円が一巡したが、次世代素材CNFの開発で経済産業省イノベーション拠点立地推進事業に採択され、パイロットプラント完成に伴って交付された国庫補助金2億54百万円を計上した。特別損失では、パイロットプラントに係る固定資産圧縮損1億67百万円を計上したが、減損損失6億99百万円が一巡した。
製紙用薬品事業は売上高が同1.4%増の76億36百万円、営業利益(全社費用等調整前)が同59.1%増の5億13百万円だった。紙・板紙の国内生産が同2%減少する中でも差別化商品の拡販、コスト削減・合理化の進展、中国事業の収支改善で増収増益だった。
印刷インキ用・記録材料用樹脂事業は売上高が同13.4%減の26億93百万円、営業利益が同8.5倍の1億19百万円だった。印刷インキの国内生産が同3%減少し、オフセットインキ用樹脂、水性インキ用樹脂の売上も減少したが、コスト削減・合理化の進展で営業損益が大幅に改善した。
化成品事業は、売上高が17億71百万円(前年同期は第2四半期から連結して8億63百万円)、営業利益が2億19百万円(同34百万円の赤字)だった。
なお四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(1月~3月)60億25百万円、第2四半期(4月~6月)60億75百万円、営業利益は第1四半期2億45百万円、第2四半期3億79百万円だった。営業損益は改善基調だ。
通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が49.1%、営業利益が52.0%、経常利益が53.1%、純利益が54.3%と順調な水準である。通期ベースでも収益改善基調だろう。
■株価は悪地合いの影響限定的で下値切り上げ
株価の動きを見ると、次世代素材CNFを材料視して急伸した8月21日の年初来高値1187円から、利益確定売りや悪地合いの影響で乱高下する場面があったが、総じて下値を切り上げる展開だ。そして9月15日には1135円まで急伸して年初来高値に接近する場面もあった。悪地合いの影響は限定的のようだ。
9月18日の終値1017円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS32円32銭で算出)は31~32倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間12円で算出)は1.2%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS656円90銭で算出)は1.5倍近辺である。なお時価総額は約313億円である。
週足チャートで見ると一旦割り込んだ26週移動平均線を素早く回復する動きだ。また7月の年初来安値850円をボトムとして、8月安値880円、9月安値940円と下値を切り上げている。次世代素材CNFや15年12月期大幅増益を評価して8月の年初来高値1187円を試す展開だろう。