【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ゼリア新薬工業は8月安値で底打ちの可能性、16年3月期営業利益増額期待、9月末株主優待

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 ゼリア新薬工業<4559>(東1)は消化器分野を中心に展開する医薬品メーカーである。株価は悪地合いの影響で水準を切り下げたが、8月の年初来安値で底打ちした可能性がありそうだ。16年3月期営業利益増額期待で反発展開だろう。9月末の株主優待権利取りも注目点だ。

■消化器分野が中心の医薬品メーカー

 消化器分野が中心の医療用医薬品事業と、一般用医薬品のコンシューマーヘルスケア事業を展開している。

 医療用医薬品事業では、潰瘍性大腸炎治療剤「アサコール」、H2受容体拮抗剤「アシノン」、亜鉛含有胃潰瘍治療剤「プロマック」を主力としている。13年6月には自社開発の機能性ディスペプシア治療剤「アコファイド」を発売し、アステラス製薬<4503>と共同で早期の市場浸透を目指している。

 コンシューマーヘルスケア事業では「ヘパリーゼ群」「コンドロイチン群」および「ウィズワン群」を主力としている。

■新薬開発やグローバル展開を推進

 M&Aを活用してグローバル展開も推進し、08年10月基礎化粧品のイオナ、09年9月「アサコール」の開発会社ティロッツ社(スイス)、10年9月コンドロイチン原料のZPD社(デンマーク)を子会社化した。13年8月には、ビフォーファーマ社(スイス)と鉄欠乏症治療剤「Ferinject」の日本国内における独占的開発・販売契約を締結し、ZPD社の株式を追加取得して完全子会社化した。

 新薬開発は消化器分野を最重点領域と位置付けて、国際的に通用する新薬の創製を念頭に置き、自社オリジナル品の海外での臨床試験を積極的に推進するとともに、海外で実績のある薬剤を導入して国内での開発を進めている。

 消火器分野の「Z-206(アサコール)」は協和発酵キリンと共同で、潰瘍性大腸炎を対象に用法・用量を追加するフェーズ3を実施している。中国での開発はフェーズ3を終了して13年5月に承認申請済みだ。自社オリジナル品の「Z-338(アコファイド)」は欧州において機能性ディスペプシアを対象としたフェーズ3を実施している。

 エーザイ<4523>から導入した長時間作用型プロトンポンプ阻害剤「Z-215」は逆流性食道炎を対象としたフェーズ2を開始、子宮頸癌を対象とする「Z-100」は日本を含むアジア地域におけるフェーズ3国際共同治験を開始、膵臓癌を対象とする「Z-360」は日本を含むアジア地域におけるフェーズ2国際共同治験を開始、ビフォーファーマ社から導入した鉄欠乏性貧血治療剤「Z-213」はフェーズ1bを開始している。

 14年8月にはエーザイの新規化合物「E3710」(プロトンポンプ阻害剤:PPI)に関するライセンス契約を締結した。エーザイは当社に対して「E3710」の日本における独占的開発権、共同販促権、非独占的製造権を付与し、開発および製造販売承認は当社が行う。承認取得後は両社で共同販促を行う。

 14年9月には、日本で初めて月経前症候群の効能を取得した西洋ハーブ・ダイレクトOTC医薬品「プレフェミン」(要指導医薬品)を販売開始した。

 15年3月にはコンビニエンスストア向け滋養強壮ミニドリンク剤「ヘパリーゼ・アミノ」を販売開始した。疲労回復のための栄養補給を訴求した「ヘパリーゼ」ブランド初の指定医薬部外品である。6月には「ヘパリーゼW」シリーズの新製品として、炭酸飲料「ヘパリーゼWスパークリング」を全国のコンビニエンスストアで販売開始した。

 15年4月にはベトナムの中堅医薬品製造販売会社F.T.Pharma社の株式49.0%取得を発表した。当社グループのアジア地域における事業展開の拠点とする。

■アストラゼネカのIBD治療剤の権利を取得

 15年7月には消化器領域に特化した子会社のティロッツ社(スイス)が、アストラゼネカ社が販売している炎症性腸疾患(IBD)治療剤「Entocort」(一般名:ブデソニド)の、米国を除く全世界における権利を取得する契約を締結した。取得額は2億15百万米ドル(約265億円)である。

 炎症性腸疾患(IBD)は潰瘍性大腸炎(UC)およびクローン病(CD)を含めて、世界中に約500万人の患者が存在すると推定されている疾患である。米国を除く全世界40ヶ国以上でCDを適応として販売されているIBD治療剤「Entocort」の権利を取得することにより、IBD治療においてUCの第1選択薬として用いられている「アサコール」を補完することが可能になる。16年3月期連結業績に対する影響については精査中としている。

■16年3月期第2四半期累計の利益予想を増額修正

 なお15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)147億15百万円、第2四半期(7月~9月)154億21百万円、第3四半期(10月~12月)156億46百万円、第4四半期(1月~3月)152億30百万円、営業利益は第1四半期8億58百万円、第2四半期14億21百万円、第3四半期10億61百万円、第4四半期6億62百万円の赤字だった。

 また15年3月期の配当性向は62.3%だった。ROEは14年3月期比6.9ポイント低下して4.2%、自己資本比率は同6.0ポイント上昇して65.0%となった。

 今期(16年3月期)の連結業績予想(5月8日公表)は、売上高が前期比6.5%増の650億円、営業利益が同49.3%増の40億円、経常利益が同26.3%増の35億円、純利益が同17.3%増の30億円としている。配当予想は前期と同額の年間30円(第2四半期末15円、期末15円)で予想配当性向は53.1%となる。

 コンシューマーヘルスケア事業が引き続き好調に推移し、医療用医薬品事業では潰瘍性大腸炎治療剤「アサコール」の国内外での伸長、機能性ディスペプシア治療剤「アコファイド」の市場浸透を見込んでいる。研究開発費や広告宣伝費が増加するが、増収効果で吸収して大幅増益見込みだ。

 第1四半期(4月~6月)は売上高が前年同期比0.1%増の147億25百万円となり、営業利益が同19.7%増の10億27百万円、経常利益が同36.9%減の5億94百万円、純利益が同15.0%減の8億91百万円だった。

 15年1月のスイス中央銀行によるスイスフランの対ユーロ為替上限レート撤廃に伴い、グループ会社において為替差損(5億54百万円)を計上したため経常利益と純利益は減益だったが、収益性の高い主力製品の好調が牽引して営業増益だった。営業損益は改善基調だ。なお特別利益に有価証券売却益10億06百万円を計上(前年同期は7億71百万円計上)した。

 そして8月5日に第2四半期累計(4月~9月)利益予想を増額修正した。前回予想(5月8日公表)に対して、売上高は据え置いて前年同期比2.9%増の310億円、営業利益は1億円増額して同29.8%減の16億円、経常利益は1億円増額して同50.9%減の11億円、純利益は3億円増額して同48.0%減の11億円とした。

 売上高は概ね想定水準だが、収益性の高い主力製品の伸長や経費の効率的使用により、各利益は減益幅が縮小する見込みとなった。純利益は第1四半期に計上した投資有価証券売却益も寄与する。

 通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は売上高が22.7%、営業利益が25.7%、経常利益が17.0%、純利益が29.7%である。営業外費用での為替差損の計上、特別利益での有価証券売却益の計上で、経常利益と純利益はイレギュラーな形だが、営業利益の進捗率は順調な水準だ。第2四半期累計に続いて、通期営業利益についても増額期待が高まる。

 15年3月期は薬価改定や後発品使用促進の影響、機能性ディスペプシア治療剤「アコファイド」の市場構築遅れ、ライセンス収入やロイヤリティ収入の減少、広告宣伝費の増加、成長戦略に欠かせない新薬パイプラインの充実を図るため当初予定していなかった新規開発テーマの導入費用の発生、ヨーロッパとアジア地域で実施している治験の進捗による研究開発費の想定以上の増加などで大幅減益だったが、16年3月期の収益は改善基調だろう。IBD治療剤「Entocort」の寄与も期待される。

■株価は8月安値で底打ちの可能性

 株主優待については毎年9月末および3月末現在の株主に対して自社グループ商品を贈呈している。1000株以上所有株主に対してはA・B・C・D・Eコースの中からいずれか1コース選択、100株以上~1000株未満所有株主に対してはFコースを贈呈する。

 株価の動きを見ると、悪地合いの影響で1800円~1900円近辺でのモミ合いから下放れ、8月25日の年初来安値1497円まで調整した。ただしその後は1600円近辺で推移して売り一巡感を強めている。

 9月18日の終値1591円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS56円48銭で算出)は28~29倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間30円で算出)は1.9%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1178円00銭で算出)は1.4倍近辺である。なお時価総額は約845億円である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線が戻りを押さえる形となって水準を切り下げたが、8月の年初来安値で下ヒゲをつけ、その後は下げ渋る形だ。底打ちした可能性があり、16年3月期営業利益増額期待で反発展開だろう。9月末の株主優待権利取りも注目点だ。

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