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加賀電子は上値試す、25年3月期は成長軌道回帰シナリオ
- 2024/2/5 09:32
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
加賀電子<8154>(東証プライム)は独立系の大手エレクトロニクス総合商社である。半導体・電子部品等の商社ビジネス、電装基板製造受託のEMSビジネスを展開し、成長に向けて収益力強化、経営基盤強化、新規事業創出、SDGs経営を推進している。24年1月には資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応方針を決議・公表した。24年3月期は一時的な需要減退により減収減益予想としているが上振れの可能性が高いだろう。さらに25年3月期は成長軌道に回帰するシナリオとしている。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は水準を切り上げて最高値を更新する場面があった。利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。なお2月7日に24年3月期第3四半期決算発表を予定している。
■独立系の大手エレクトロニクス総合商社
独立系の大手エレクトロニクス総合商社である。半導体・電子部品等の商社ビジネス、および電装基板製造受託サービスのEMSビジネスを展開している。
19年1月に富士通エレクトロニクスを子会社化(20年12月に社名を加賀FEIに変更、22年1月に完全子会社化)し、その後19年10月にパイオニアの製造子会社である十和田パイオニアを子会社化して商号を加賀EMS十和田に変更、20年4月にエレクトロニクス商社のエクセルを子会社化、20年11月に旭東電気から新設分割された新:旭東電気を子会社化、21年10月に加賀EFIが太陽誘電<6976>よりBluetoothおよびWireless LANモジュールに関わる商圏、開発・製造技術ならびに知的財産権を承継して22年1月から小型無線モジュール事業に本格参入、23年5月に加賀EFIがセルシスよりUI/UX事業を譲受(オーストリアのカンデラの100%株式、および日本における商権・知的財産権等を取得)した。
23年3月期のセグメント別売上高構成比は電子部品事業(半導体、電子部品、EMS)が89%、情報機器事業(パソコン・周辺機器、各種家電、写真・映像関連商品)が7%、ソフトウェア事業(CGアニメ映像制作、アミューズメント関連商品)が0%、その他事業(エレクトロニクス機器修理、アミューズメント機器製造販売、スポーツ用品販売など)が4%、営業利益構成比は電子部品事業が88%、情報機器事業が8%、ソフトウェア事業が1%、その他事業が3%、調整額が0%だった。
中期経営計画に沿ったセグメント区分は電子部品事業、EMS事業、CSI事業(情報機器事業)、その他事業(ソフトウェア事業、その他)としている。23年3月期の売上構成比は電子部品事業が66%、EMS事業が25%、CSI事業が7%、その他事業が3%、営業利益構成比は電子部品事業が60%、EMS事業が30%、CSI事業が8%、その他事業が2%、調整額が0%だった。
■収益力強化や新規事業創出を推進
中期経営計画2024では基本方針に、更なる収益力の強化、経営基盤の強化、新規事業の創出、SDGs経営の推進を掲げている。経営目標値(23年5月11日付で営業利益とROEを上方修正)については、25年3月期の売上高が7500億円(電子部品事業3800億円、EMS事業1500億円、CSI事業540億円、その他事業160億円、新規M&A等1500億円)、営業利益が300億円以上(前回予想は200億円)、ROEが安定的に10%以上(同、安定的に8.5%以上)としている。株主還元については連結配当性向の目安を25~35%に置き、安定的かつ継続的に充実化する。
重点アクションとして、さらなる収益力の強化では成長分野(モビリティ、通信、環境、産業機器、医療・ヘルスケア)への選択と集中、EMSビジネスおよび海外ビジネスの強化・拡大、経営基盤の強化ではコーポレートガバナンスの強化、効率的なグループ運営、人的資本への投資、新規事業の創出では新規分野への取り組み、ベンチャー投資によるオープンイノベーションの推進、非連続な成長を狙うM&Aへの挑戦を掲げている。23年8月にはメキシコにおけるEMS生産体制強化・拡充を発表した。米国市場向け四輪自動車用照明ユニット組立を中心とした生産活動を行っており、これら既存顧客からの受注増に加えて、米国市場向け空調機器用電装基盤組立の新規顧客獲得が見込まれるとしている。新工場は24年4月操業開始予定である。
SDGs経営については、サステナビリティ中長期経営計画(21年11月公表)に基づいて、持続可能な社会の実現と持続的なグループの成長の両立を目指すとしている。
23年3月には、経済産業省と日本健康会議が進める健康経営優良法人認定制度において「健康経営優良法人2023」の認定を受けた。23年9月には社員の福利厚生および健康増進を目的に、日本初導入の最新AIフィットネスマシン(ドイツのフィットネス機器メーカーEGYM製)を設置した従業員向けトレーニングルームを本社ビル内に開設した。
23年10月には、くすりの窓口およびツルハとの3社共同で国内初となる企業向け処方薬デリバリーサービスを開発し、第1号案件として本社ビル内に処方箋受付機と受取ロッカーを設置・運用開始した。成長分野の一つに掲げているヘルスケア分野において受取ロッカーの拡販を企図するとともに、従業員・取引先・近隣オフィスで働いている方などの健康を後押しすることにより地域・社会の発展にも貢献する。また23年10月には、生物多様性の保全活動に向けた取り組みとして、同社本社ビル屋上に「ビオトープ」を設置した。ビオトープとは「地域の野生生物が暮らす、あるまとまった空間」のことである。
なお、上場企業を対象とした主要なIRサイト評価機関(大和インベスター・リレーションズ、日興アイ・アール、ブロードバンドセキュリティ)において、23年度も各種の表彰を受けている。
24年1月には、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応方針を決議・公表した。ROEについては、直近の実績が22年3月期15.7%、23年3月期19.6%となり、凡そ7~8%と認識している株主資本コスト(22年3月期7.5%、23年3月期8.1%)を優に超える水準で推移している。今後も資本コストを上回る収益性でROEを持続的に向上させ、事業や成長性に対して株式市場から正当な評価を受けることでPBRを改善し続けるために、中期経営計画2024で定めた諸施策の着実な実行による事業成長と収益性の維持・向上、配当による株主還元や機動的・戦略的な自己株式取得などによる株主満足度の向上、サステナビリティ経営の推進、積極的なIR活動の維持・強化に取り組む方針としている。
■24年3月期減益予想だが上振れの可能性、25年3月期は成長軌道回帰
24年3月期の連結業績予想は、売上高が23年3月期比9.5%減の5500億円、営業利益が22.5%減の250億円、経常利益が23.6%減の250億円、そして親会社株主帰属当期純利益が22.0%減の180億円としている。配当予想は23年3月期と同額の220円(第2四半期末110円、期末110円)としている。23年3月期には特別配当70円および創立55周年記念配当10円が含まれているため、普通配当ベースでは80円増配の形となる。予想配当性向は32.1%となる。
第2四半期累計は売上高が前年同期比7.9%減の2750億44百万円、営業利益が24.4%減の138億76百万円、経常利益が26.3%減の139億45百万円、親会社株主帰属四半期純利益が15.0%減の114億04百万円だった。
電子部品事業における前期のスポット需要の反動、顧客の在庫調整、第1四半期に計上した特定取引先の民事再生申請に伴う貸倒引当などの影響で減収減益だった。ただし社内計画を大幅に上回る水準(売上高は約150億円、営業利益は約38億円、それぞれ上振れ)で着地した。営業外では為替差損益が悪化(前年同期は為替差益3億59百万円、当期は為替差損2億91百万円)した。特別利益には投資有価証券売却益10億74百万円、負ののれん発生益4億81百万円、関係会社清算益4億80百万円を計上した。
営業利益の前年比44億85百万円減益の要因分析は、販売数量・販売ミックスで▲12億47百万円、スポット販売解消で▲35億92百万円、販管費で+3億54百万円、為替影響(ネット)で+1億94百万円だった。また、営業利益の社内計画(100億円)比38億76百万円上振れの要因分析は、販売数量・販売ミックスで+31億61百万円、スポット販売解消で+0百万円、販管費で+7億15百万円、為替影響(ネット)で72百万円だった。
電子部品事業は売上高が9.6%減の2425億64百万円、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が29.1%減の117億85百万円だった。減収減益だった。部品販売ビジネスでは前期のスポット需要解消、顧客全般における在庫調整顕在化、貸倒引当、EMSビジネスでは医療機器・産業機器関連の顧客における在庫調整顕在化などが影響した。
情報機器事業は売上高が5.7%増の207億15百万円、利益が32.7%増の12億80百万円だった。教育機関向けパソコン販売が好調に推移し、LED設置ビジネスの大口案件も寄与した。
ソフトウェア事業は売上高が6.3%減の12億25百万円で利益が18.2%増の1億12百万円、その他事業(エレクトロニクス機器修理・サポート、アミューズメント機器製造・販売、スポーツ用品販売など)は売上高が12.2%増の105億39百万円で利益が5.3%減の6億23百万円だった。
なお会社別の営業利益(連結調整前)は加賀電子が13.6%減の105億68百万円、加賀EFIが53.5%減の24億22百万円、エクセルが0.1%減の8億65百万円で、中計セグメント別の営業利益(連結調整前)は電子部品が31.5%減の80億02百万円、EMSが22.0%減の41億43百万円、CSI(コンシューマー&システムインテグレーター)が32.7%増の12億80百万円、その他が1.6%増の3億75百万円だった。
全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が1376億94百万円で営業利益が69億94百万円、第2四半期は売上高が1373億50百万円で営業利益が68億82百万円だった。
通期の連結業績予想は据え置いている。一時的な需要減退により減収減益予想としている。営業利益72億49百万円減益の要因分析は、販売数量・販売ミックスで▲52億05百万円、スポット販売解消で▲43億09百万円、販管費減少で+22億65百万円、為替影響で±0百万円の見込みとしている。
セグメント別の計画は、電子部品事業の売上高が12.6%減の4715億円で利益(全社費用等調整前営業利益)が26.9%減の207億円、情報機器事業の売上高が3.0%増の450億円で利益が2.1%増の25億円、ソフトウェア事業の売上高が50.1%増の45億円で利益が4.6%増の3億円、その他事業の売上高が31.6%増の290億円で利益が36.1%増の15億円としている。
第2四半期累計の進捗率は売上高50%、営業利益56%、経常利益56%、親会社株主帰属当期純利益が63%と順調だった。不透明感を考慮して通期会社予想を据え置いているが、第2四半期累計が社内計画を大幅に上回る水準で着地したことなどを勘案すれば、通期会社予想は上振れの可能性が高いだろう。さらに25年3月期は成長軌道に回帰するシナリオとしている。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株価は上値試す
なお23年8月には、JPX総研および日本経済新聞社が共同で算出する「JPX日経インデックス400」の構成銘柄として新規選定された。
株価は水準を切り上げて最高値を更新する場面があった。利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。2月2日の終値は6760円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS685円42銭で算出)は約10倍、今期予想配当利回り(会社予想の220円で算出)は約3.3%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS4935円36銭で算出)は約1.4倍、そして時価総額は約1940億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)