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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】キャリアリンクの16年2月期業績予想は増額濃厚、中期成長シナリオに変化なし
- 2015/9/24 15:19
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
キャリアリンク<6070>(東1)は「チーム派遣」を強みとする総合人材サービス企業である。16年2月期は増収増益・増配予想であり、さらに会社予想の増額が濃厚だ。中期成長シナリオに変化はなく、マイナンバー制度や改正労働者派遣法も追い風となりそうだ。株価は悪地合いの影響で8月の上場来高値から急反落したが、目先的な売りが一巡して切り返し展開だろう。なお9月30日に第2四半期累計(3月~8月)の業績発表を予定している。
■BPO関連事業が主力の総合人材サービス企業
官公庁・地方公共団体・民間企業向けBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)関連事業を主力として、企業等のコンタクトセンター(コールセンター)向けCRM(カスターマー・リレーションシップ・マネジメント)関連事業、一般事務職分野の一般事務事業、さらに製造・物流分野の製造技術系事業など、人材派遣・紹介や業務請負などの総合人材サービス事業を展開している。
なお15年2月期の事業別売上構成比は、BPO関連事業が60.3%、CRM関連事業が21.8%、一般事務事業が6.8%、そして製造技術系事業が11.1%だった。
■顧客企業の業務効率化を実現する「チーム派遣」に強み
顧客の業務効率化や品質向上などを実現する企画提案型の人材派遣および業務請負を特徴としている。特にBPO関連事業では、顧客企業の業務効率化や業務処理品質向上を実現するために「単なるスタッフ派遣」ではなく、経験豊富な社員をリーダーとして編成した「チーム派遣」を強みとしている。顧客にとっては、自社による導入時の研修や導入後の業務指導などに係る負担が軽減され、発注から短期間で大量業務処理の稼働開始が可能になるというメリットもある。
BPO事業者からの受注を含めて1000名を超える大型案件でも、稼働開始まで短期間で対応できるノウハウを有していることも強みだ。スタッフに対してはキャリアパス制度などを活用して能力、満足度、出勤率、稼働率を高める仕組みを構築しており、こうした仕組みもチーム派遣や大型案件に対する短期間での対応を支えている。
中期的な経営基盤強化に向けて、BPO関連事業における官公庁・地方公共団体関連の大型特需案件や成長市場である民間BPO案件の受注拡大、高品質で顧客満足度の高いBPOサービス提供の強化、M&Aも活用したBPO関連事業の領域拡大、CRM関連事業や製造技術系事業における高利益案件をメインターゲットとした受注活動の強化、そして業容拡大に向けた人材採用・育成の強化を推進している。
■16年2月期増収増益・増配予想、そして会社予想は増額が濃厚
15年2月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(3月~5月)28億78百万円、第2四半期(6月~8月)36億08百万円、第3四半期(9月~11月)38億41百万円、第4四半期(12月~2月)36億21百万円、営業利益は第1四半期1億15百万円、第2四半期2億94百万円、第3四半期2億71百万円、第4四半期1億51百万円だった。
また15年2月期の配当性向は20.4%だった。ROEは14年2月期比15.1ポイント上昇して24.5%、自己資本比率は同11.4ポイント低下して41.3%だった。
今期(16年2月期)の非連結業績予想(4月14日公表)は、売上高が前期比17.4%増の163億68百万円で、営業利益が同14.4%増の9億51百万円、経常利益が同14.2%増の9億38百万円、そして純利益が同15.4%増の5億62百万円としている。配当予想は同2円増配の年間18円(期末一括)で予想配当性向は20.1%となる。
主力のBPO関連事業の受注増加と、BPO大型案件における業務処理効率化の進展が牽引して増収増益基調だ。事業部門別売上の計画はBPO関連事業が約15%増収、CRM関連事業が約20%増収、一般事務事業が約5%増収、製造技術系事業が約20%増収としている。マイナンバー(社会保障・税番号)制度関連については、地方自治体・民間企業向けで若干程度の織り込みにとどめているようだ。
第1四半期(3月~5月)は売上高が前年同期比34.6%増、営業利益は同63.6%増、経常利益は同62.6%増、純利益は同72.9%増だった。BPO関連事業の好調が牽引して大幅増収増益だった。売上総利益率は20.0%で同0.5ポイント低下したが、販管費比率は15.2%で同1.3ポイント低下した。
事業部門別売上は、BPO関連事業が稼働中の大型案件の新規業務拡大や新規案件の受注などで同51.7%増収、CRM関連事業が新規案件の獲得などで同11.4%増収、製造技術系事業が製薬・機械部品・自動二輪メーカーからの業務量増加などで同25.4%増収、一般事務事業が福岡地区における通販系案件などの新規案件獲得で同8.2%増収だった。
通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は売上高が23.7%、営業利益が19.9%、経常利益が19.6%、純利益が20.6%である。やや低水準の形だが、既存案件の業務量拡大や新規案件の受注は好調に推移している。
また業務効率化に向けた企画提案力、1000名以上の大型案件でも稼働開始まで短期間で対応できるノウハウ、官公庁向け大型BPO案件の受注実績などから、マイナンバー制度関連の受注が期待される。さらに9月30日施行の改正労働者派遣法も追い風として期待される。
新規案件の稼働で期後半に向けて収益が積み上がることや、業務効率化が一段と進展することなども考慮すれば、16年2月期業績の会社予想は増額が濃厚だろう。
■BPO関連事業が成長エンジン、M&Aによる領域拡大も推進
中期経営計画(16年2月期~18年2月期)では、目標値に18年2月期の売上高250億90百万円、営業利益15億20百万円、経常利益15億10百万円、純利益9億40百万円を掲げた。
BPO関連事業を成長エンジンとした成長戦略を加速させる方針で、BPO関連事業の売上規模拡大、企画提案力・運用力の強化、M&Aによる領域拡大を重点戦略としている。
特にBPO関連事業の拡大に向けて、BPOベンダー等との関係強化を推進するための営業推進部、人材育成を強化するための研修センター、人材採用・開発力を強化するための人材開発部を設置するなど新たな体制を構築した。またキャリアパス制度による社員登用増、無期雇用社員の採用増、高スキル・高スペック人材の確保などで「チーム派遣」を一段と強化する方針だ。
事業部門別売上高の計画としては、BPO関連事業が高品質運用やIT分野を含めた事業領域拡大などで15年2月期比2.0倍の171億円、CRM関連事業が高利益案件をメインターゲットとして同42.0%増の43億円、製造技術系事業が製造業や流通業の高利益案件への戦略展開などで同64.2%増の25億円、一般事務事業が無期雇用・長期雇用を軸に高利益ビジネスモデルへの変革を目指して同11.2%増の10億円を掲げている。
中期的に事業環境は良好だ。官公庁・地方公共団体関連では財政健全化に向けた費用抑制の流れ、サービス向上や業務効率化のニーズ増大も背景として、官から民間への業務委託・移管の増加が予想されている。民間企業関連ではコア事業への経営資源集中や固定費の変動費化の流れも背景として、業務のアウトソーシング化が一段と増加すると予想されている。BPO関連事業における優位性を発揮して中期的に収益拡大基調だろう。
■株価は悪地合いで急反落したが売られ過ぎ感
株主優待制度については毎年8月31日現在の1単元(100株)以上保有株主に対して実施している。100株以上300株未満保有株主に対してオリジナルQUOカード1000円相当、300株以上保有株主に対してオリジナルQUOカード2000円相当を贈呈する。株主還元については現金配当と株主優待を合算した総合利回りの向上を目指している。
株価の動きを見ると、8月18日の上場来高値2640円から悪地合いの影響で急反落し、9月8日には1681円まで調整した。その後は1700円~1800円近辺で推移して下げ渋る動きだ。悪地合いに伴う目先的な売りは一巡したようだ。
9月18日の終値1750円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS89円80銭で算出)は19~20倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間18円で算出)は1.0%近辺、前期実績PBR(前期実績のBPS349円63銭で算出)は5.0倍近辺である。なお時価総額は約110億円である。
日足チャートで見ると25日移動平均線に対するマイナス乖離率が15%程度と売られ過ぎ感を強めている。また週足チャートで見ると26週移動平均線を割り込んで調整局面だが、52週移動平均線近辺で下げ渋る動きだ。サポートラインを確認した形だろう。16年2月期増収増益・増配予想で会社予想は増額が濃厚だ。中期成長シナリオに変化はなく、目先的な売りが一巡して切り返し展開だろう。