【アナリスト水田雅展の銘柄分析】エスアールジータカミヤは中期的に良好な事業環境や海外展開の本格化を見直し

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 エスアールジータカミヤ<2445>(東1)は建設用仮設機材販売・レンタルの大手である。株価は8月の年初来安値後は下げ渋る動きを強めている。調整のほぼ最終局面のようだ。中期的に良好な事業環境や海外展開の本格化を見直して反発のタイミングだろう。

■建設用仮設機材販売・レンタルの大手

 建築・土木・橋梁用仮設機材、移動昇降式足場「リフトクライマー」や、子会社ホリーの太陽光パネル架台などの販売・レンタル事業を展開している。戦略商品として作業環境改善・作業効率向上につながる次世代足場「Iq(アイ・キュー)システム」の拡販を推進している。

 グループ力強化に向けた動きも積極化し、14年4月に海洋土木・港湾分野に実績を持つ土木・建築用仮設資材のアサヒ工業(大阪市)を子会社化した。また15年4月には子会社ホリーの仮設営業部門を当社に移管し、仮設事業に関連する営業部門を統合した。グループの経営資源を集約して仮設事業におけるシナジーを高める戦略だ。

 海外展開についても本格化している。14年7月にホリーのベトナム新工場が竣工し、14年11月にはASEAN地域への事業展開に向けた地域統括会社として、タイに子会社SRGグローバル・ホールディングスを設立した。

 また15年7月には、フィリピンで建築分野のアルミ製システム型枠の販売・レンタル事業を展開するDIMENSION-ALL.INC(DAI)の全株式を取得して子会社化した。当社が保有する仮設機材や子会社ホリーが開発・製造した仮設機材を、DAI社を通じてフィリピン国内で展開する。

 さらにタイに設立したSRGグローバル・ホールディングスを中心として、ホリー・韓国、ホリー・ベトナムとも連携し、ASEAN諸国における海外事業体制の整備・販売ネットワーク構築を推進する方針だ。

■16年3月期増収増益予想

 なお15年3月期のレンタル事業のブロック別売上比率は、関東が37%、関西が34%、東北が17%、中部が8%、九州が4%だった。主要受注案件には、関東では圏央道橋梁工事、首都高橋梁修繕工事、高層マンション大規模修繕工事、関西では新名神高速道路橋梁工事、東海道新幹線橋梁修繕工事、東北では放射線除染工事、中部では原子力発電所耐震化工事などがある。

 15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)79億25百万円、第2四半期(7月~9月)84億36百万円、第3四半期(10月~12月)90億72百万円、第4四半期(1月~3月)88億28百万円で、営業利益は第1四半期4億33百万円、第2四半期11億22百万円、第3四半期8億06百万円、第4四半期7億37百万円だった。期後半にやや伸び悩んだ形だ。

 また15年3月期の配当性向は27.1%だった。ROEは14年3月期比1.7ポイント低下して19.8%、自己資本比率は同0.8ポイント上昇して26.3%だった。

 今期(16年3月期)の連結業績予想(5月8日公表)は、売上高が前期比13.8%増の390億円、営業利益が同22.7%増の38億円、経常利益が同11.3%増の37億円、純利益が同12.5%増の23億30百万円としている。

 配当予想は年間10円(第2四半期末3円50銭、期末6円50銭)で予想配当性向は19.4%となる。15年1月1日付の株式2分割を考慮して換算すると前期の年間12円50銭に対して2円50銭減配の形だが、前期の期末には東証1部指定記念配当2円50銭を含んでいるため、普通配当ベースでは前期と同額となる。

 第1四半期(4月~6月)は売上高が前年同期比1.7%減の77億91百万円、営業利益が同41.6%減の2億53百万円、経常利益が同33.1%減の3億07百万円、純利益が同30.7%減の1億75百万円だった。

 次世代足場「Iq(アイ・キュー)システム」は伸長したが、販売事業で国内の太陽光発電システム関連の需要が減少し、レンタル事業で地域レンタル会社が工事発注停滞の影響を受けた。売上総利益率は30.2%で同0.7ポイント上昇したが、販管費比率は27.0%で同2.9ポイント上昇した。

 セグメント別(連結調整前)に見ると、販売事業は売上高が同1.5%増の47億39百万円、営業利益が同32.9%減の3億82百万円だった。建設関連で仮設機材に対する需要が高水準に推移し、次世代足場「Iq(アイ・キュー)システム」の販売も伸長したが、環境関連は国内の太陽光発電システム関連の需要が減少した。

 レンタル事業は、売上高が同6.3%増の44億89百万円、営業利益が同7.5%減の2億62百万円だった。建設関連で建築用仮設機材の稼働が高水準に推移し、環境関連で移動昇降式足場「リフトクライマー」の出荷が本格化したが、一部地域における工事発注停滞の影響で地域レンタル会社の仮設機材の稼働が前年を大幅に下回った。

 通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は売上高が20.0%、営業利益が6.7%、経常利益が8.3%、純利益が7.5%と低水準である。第1四半期は太陽光発電関連の需要減少や一部地域での工事停滞の影響を受けた。

 ただし遅れていた土木・橋梁関連工事も足元では動き出しているようだ。期後半の構成比が高い収益構造であり、次世代足場「Iqシステム」や移動昇降式足場「リフトクライマー」などの販売が好調に推移し、レンタル資産の稼働率向上・効率的運用、レンタル価格の改善なども寄与して、通期ベースでは増収増益が期待される。

■中期計画で17年3月期営業利益43億円目指す

 なお15年3月期連結業績が計画を下回ったことに伴い、5月19日に中期経営計画(15年3月期~17年3月期)の目標数値を下方修正した。修正後の目標数値は17年3月期売上高420億円(販売事業247億60百万円、レンタル事業212億40百万円、内部消去40億円)で、営業利益は43億円、経常利益は42億円、純利益は27億60百万円とした。

 経常利益率10%以上、自己資本比率35%、ROE2桁台維持は据え置いた。販売事業では成長性を加速し、レンタル事業では収益性を追求する。3年間合計投資額は276億円としている。

 レンタル事業では収益性を追求し、営業活動の強化、価格の改善、土木関連分野での事業領域拡大、次世代足場「Iqシステム」への積極的な入れ替えを通じたレンタル機材の運用効率改善に取り組む。

 販売事業では成長性を加速する。国内仮設機材の旺盛な需要に対応して海外工場の生産能力とコスト競争力を強化する。環境関連分野では需要が一巡する太陽光パネル設置架台に続く販売事業の柱を育成するため、住宅用制震装置などの住宅関連分野、構造機材分野、さらに新たな環境関連事業の創出を図る方針だ。

 中期経営計画の目標値を下方修正したが、中期的には震災復興、社会インフラ補修・更新、都市再開発、学校や高層マンションの耐震補強、20年東京夏季五輪、リニア新幹線など建設投資は引き続き堅調に推移する。中期的に事業環境は良好だ。さらに海外展開の本格化も寄与して収益拡大基調に変化はないだろう。

■株価は調整の最終局面

 株価の動きを見ると、悪地合いも影響して700円台でのモミ合いから下放れ、8月25日の年初来安値526円まで急落したが、その後は600円近辺で下げ渋る動きだ。悪地合いに伴う売りは概ね一巡しているようだ。

 9月24日の終値590円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS51円66銭で算出)は11~12倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間10円で算出)は1.7%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS253円95銭で算出)は2.3倍近辺である。なお時価総額は約266億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線が戻りを押さえて調整局面だが、8月の急落場面で長い下ヒゲをつけて調整のほぼ最終局面のようだ。中期的に良好な事業環境や海外展開の本格化を見直して反発のタイミングだろう。

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