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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】セーラー万年筆は人気一巡したが収益改善基調を評価
- 2015/9/25 08:38
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
セーラー万年筆<7992>(東2)は万年筆の老舗でロボット機器事業も展開している。株価は急伸した7月下旬の年初来高値圏から反落して人気一巡の形だが、一段と下押す動きも見られない。収益改善基調を評価して切り返し展開だろう。ロボット関連のテーマ性も注目材料だ。
■文具事業やロボット機器事業を展開
文具事業(万年筆、ボールペン、電子文具、景品払出機、ガラスCD、窓ガラス用断熱塗料など)、およびロボット機器事業(プラスチック射出成形品自動取出装置・自動組立装置など)を展開している。なお中国の写楽精密機械(上海)については15年中に清算結了予定としている。
文具事業はブランド力の高い万年筆を主力として、中期成長に向けて電子文具への事業展開も加速している。また熱を逃がす“冷めやすい塗料”の屋根・壁用太陽光反射・遮熱塗料「アドグリーンコート」の拡販も強化している。
15年6月には、15年4月発売の新しい超微粒子顔料ボトルインク「STORiA(ストーリア)」が「第24回日本文具大賞2015」デザイン部門・優秀賞に選出された。
なお9月24日には「有田焼創業400年記念万年筆」の受注生産受付を9月30日から開始すると発表した。07年に有田焼窯元の「香蘭社」「源右衛門窯」と当社万年筆のコラボレーションを実現している。そして16年の有田焼創業400年を記念して新たに合計16種類の有田焼万年筆を受注生産する。
ロボット機器事業は1969年に開発に着手した歴史を持ち、09年にはプラスチック射出成形品用自動取出ロボットで世界初の無線ハンディコントローラ搭載RZ-Σシリーズを開発した。
15年7月には、高速・高精度取出機RZ-ΣⅢシリーズが、日刊工業新聞社主催第45回機械工業デザイン賞において日本ロボット工業会賞を受賞したと発表している。
■15年12月期収益改善基調
今期(15年12月期)の連結業績予想(2月16日公表)は、売上高が前期比2.1%増の63億円、営業利益が1億10百万円(前期は91百万円の赤字)、経常利益が85百万円(同2億38百万円の赤字)、純利益が80百万円(同2億09百万円の赤字)の黒字化としている。配当予想は無配継続としている。
ロボット機器事業の好調が牽引して営業黒字化見込みだ。ロボット機器事業は前期末から受注が回復傾向を強めており、高価格の上位機種の拡販や中国子会社の撤退で売上原価率改善も期待される。また国内文具事業では前期末に発売した新機能ボールペン「G-FREE」が好評であり、消費増税の影響一巡も期待される。
第2四半期累計(1月~6月)は、売上高が前年同期比0.5%減の30億85百万円、営業利益が同92.5%増の41百万円、経常利益が34百万円(前年同期は86百万円の赤字)、純利益が72百万円(同86百万円の赤字)だった。
文具事業の低迷で売上高、営業利益、経常利益が計画を下回ったが、前年同期との比較でロボット機器事業の好調が牽引して営業増益となり、経常利益と純利益も黒字化した。売上原価率は71.6%で同1.8ポイント低下した。営業外では受取配当金が減少し、為替差損益が悪化したが、持分法投資利益が増加し、株式交付費用の一巡も寄与した。特別利益では投資有価証券売却益や固定資産売却益も寄与した。
セグメント別に見ると、文具事業は法人ギフト事業市場が低調で、売上高が同4.1%減の21億16百万円、営業利益が48百万円の赤字(同29百万円の利益)だった。ロボット機器事業は射出成形用取出ロボットが好調で、売上高が同8.3%増の9億69百万円、営業利益が89百万円(同8百万円の赤字)だった。
なお四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(1月~3月)16億07百万円、第2四半期(4月~6月)14億78百万円、営業利益は第1四半期29百万円、第2四半期12百万円だった。
通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が49.0%、営業利益が37.3%、経常利益が40.0%、純利益が90.0%である。収益改善基調であり、通期ベースでも黒字化が期待される。
■中期計画で文具の新製品開発やロボット機器の拡販を推進
なお14年12月期実績が計画を下回ったため、14年4月発表の中期経営計画(14年12月期~16年12月期)の最終目標達成年度を1年延長するととともに、新たな数値目標を設定して17年12月期の売上高70億70百万円、営業利益2億円、経常利益1億80百万円、純利益1億35百万円、売上高経常利益率2.5%以上、有利子負債11億円以下とした。
基本戦略としては、文具事業ではターゲットを絞った特徴ある製品の開発、新規販売チャネルの開拓、海外市場の再構築、音声ペンや水処理機器など新規事業の推進、ロボット機器事業では射出成型機用取出ロボットの拡販、海外市場への取り組み強化を推進する方針だ。
なお15年12月期第1四半期で営業黒字化したが、14年12月期まで数期連続して当期純損失を計上しているため、継続企業の前提に疑義の注記が付されている。
■株価は人気一巡したが、収益改善基調を評価して切り返しのタイミング
株価の動きを見ると、急伸した7月下旬の年初来高値圏80円近辺から反落し、8月下旬以降は悪地合いも影響して40円近辺でモミ合う展開だ。人気一巡して急伸前水準に回帰した形だ。ただし一段と下押す動きも見られない。
9月24日の終値39円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想連結EPS64銭で算出)は61倍近辺、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS15円35銭で算出)は2.5倍近辺である。なお時価総額は約49億円である。
週足チャートで見ると26週移動平均線を割り込んだが、52週移動平均線近辺で下げ渋る動きだ。サポートラインを確認したようだ。一旦は人気一巡したが収益改善基調を評価して切り返し展開だろう。ロボット関連のテーマ性も注目材料だ。