- Home
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
- 【アナリスト水田雅展の銘柄分析】巴工業は8月安値で底打ち、低PBRや10月末の株主優待を見直し
【アナリスト水田雅展の銘柄分析】巴工業は8月安値で底打ち、低PBRや10月末の株主優待を見直し
- 2015/9/25 07:51
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
巴工業<6309>(東1)は遠心分離機械や化学工業製品を主力としている。株価は8月の年初来安値で底打ちした可能性がありそうだ。15年10月期業期予想の下振れ懸念を織り込んで、2%台後半の配当利回り、0.6倍近辺の低PBR、そして10月末の株主優待を見直す動きが本格化しそうだ。
■機械製造販売事業と化学工業製品販売事業を展開
遠心分離機械を中心とする機械製造販売事業、合成樹脂や化学工業薬品などを中心とする化学工業製品販売事業を2本柱として、中国・深圳ではコンパウンド加工事業も展開している。
13年11月には、中国の連結子会社・星科工程塑料に対するテクノポリマーおよび日本カラリングの出資持分をすべて譲り受け、両社との資本・業務提携を解消して当社主導で収益立て直しを進めている。
■15年10月期第3四半期累計は営業減益、16年10月期の収益改善期待
9月2日発表の今期(15年10月期)第3四半期累計(11月~7月)連結業績は、売上高が前年同期比1.3%減の289億23百万円、営業利益が同12.0%減の6億80百万円、経常利益が同0.8%増の10億16百万円、純利益が同5.8%増の7億75百万円だった。
機械製造販売事業、化学工業製品販売事業とも減収だった。そして売上総利益率は19.2%で同0.4ポイント上昇したが、販管費比率は16.8%で同0.7ポイント上昇して営業減益だった。経常利益は営業外収益での為替差益、純利益は特別利益での投資有価証券売却益や、法定実効税率引き下げに伴う繰延税金資産・負債の再評価による税金費用減少が寄与した。
セグメント別にみると、機械製造販売事業は売上高が同1.3%減の64億01百万円で、営業利益が99百万円の赤字(前年同期は1億01百万円の赤字)だった。売上面では国内民需が堅調だったが、国内官公需および海外が減少した。利益面では収益性の高い海外向け案件が寄与して営業赤字がやや縮小した。
化学工業製品販売事業は売上高が同1.3%減の225億22百万円、営業利益が同10.8%減の7億80百万円だった。売上面では工業材料分野のアルミニウム合金用添加剤、電子材料分野の半導体製造用途向け搬送用トレイなどが堅調だったが、国内で合成樹脂分野や化成品分野が減少した。利益面では中国・深圳のコンパウンド加工事業の減収による採算悪化も影響した。
なお四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(11月~1月)95億72百万円、第2四半期(2月~4月)105億14百万円、第3四半期(5月~7月)88億37百万円、営業利益は第1四半期2億87百万円、第2四半期6億47百万円、第3四半期2億54百万円の赤字だった。第3四半期の売上減速に伴って営業損益が悪化した。
通期の連結業績予想は前回予想(5月29日に減額修正)を据え置いて売上高が前期比0.8%減の403億70百万円、営業利益が同0.5%増の12億80百万円、経常利益が同7.9%減の15億円、純利益が同6.6%減の10億30百万円としている。
北米におけるシェールオイル・ガス開発投資が急速に減速し、機械製造販売事業が期初計画に比べて大幅に減少する。化学工業製品販売事業については、中国・深圳のコンパウンド加工事業において新規顧客向け量産化が遅れているため売上高は計画を下回るが、営業利益は計画水準を維持する見込みとしている。
配当予想(12月11日公表)は、前期と同額の年間45円(第2四半期末22円50銭、期末22円50銭)としている。予想配当性向は43.6%となる。
通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が71.7%、営業利益が53.1%、経常利益が67.7%、純利益が75.3%である。期後半の機械販売の減速を考慮すれば下振れに注意が必要となりそうだ。ただし来期(16年10月期)は収益改善が期待される。
なお15年10月期業績予想の減額修正を真摯に受け止め、経営責任を明確にするため、役員報酬の減額(関係取締役の役員報酬月額を3%~10%の範囲で減額、対象期間は15年6月から10月まで)を実施している。
■中期経営計画で16年10月期ROE6.3%目標
13年12月に策定した中期経営計画「Target2016」では、経営目標値として16年10月期売上高475億円、営業利益25億80百万円、経常利益26億円、純利益16億円、ROE6.3%、ROA4.4%を掲げている。
重点戦略としては、北米市場、南米市場、東南アジア市場を中心とする海外売上高の拡大に加えて、機械事業ではエネルギー分野への参入、化学品事業では二次電池やパワー半導体向け商材の開拓に取り組む方針だ。
■株価は8月安値で底打ちの可能性
なお株主優待制度については、毎年10月31日現在の1単元(100株)以上保有株主に対してワイン(当社関連会社取扱商品)1本を贈呈する。
株価の動きを見ると、第3四半期累計の営業減益を嫌気して反落したが、悪地合いが影響した8月25日の年初来安値1460円まで下押すことなく切り返しの動きを強めている。15年10月期業期予想の下振れ懸念を織り込んで底打ちした可能性がありそうだ。
9月24日の終値1558円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS103円22銭で算出)は15倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間45円で算出)は2.9%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2399円53銭で算出)は0.6倍近辺である。なお時価総額は約164億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線が戻りを押さえて調整局面だが、8月の年初来安値で長い下ヒゲをつけた。底打ちを確認した形だ。また日足チャートで見ると25日移動平均線突破の動きを強めている。15年10月期業績予想の下振れ懸念を織り込んで、2%台後半の配当利回り、06倍近辺の低PBR、そして10月期末の株主優待を見直す動きが本格化しそうだ。