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ヤマシタヘルスケアホールディングスは上値試す、24年5月期は上振れの可能性
- 2024/2/22 09:32
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ヤマシタヘルスケアホールディングス<9265>(東証スタンダード)は、経営理念に「地域のヘルスケアに貢献する」を掲げ、九州を地盤とする医療機器専門商社(山下医科器械)を中心に、継続的な収益拡大に向けてヘルスケア領域でのグループ力向上を推進している。24年5月期は特需の反動などを考慮して営業・経常減益予想としている。ただし第2四半期累計連結は医療機器販売が順調に拡大し、人件費増加などを吸収して増益だった。第2四半期累計が増益での着地となり、進捗率も高水準であることを勘案すれば、通期会社予想は上振れの可能性が高く、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。なお2月16日に自己株式取得を発表した。株価は自己株式取得も好感して急伸し、20年の最高値に接近する場面があった。その後は上げ一服の形だが、1倍割れの低PBRなど指標面の割安感も評価材料であり、利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。
■九州を地盤とする医療機器専門商社
経営理念に「地域のヘルスケアに貢献する」を掲げ、九州を地盤とする医療機器専門商社(山下医科器械)を中心に、継続的な収益拡大に向けて、ヘルスケア領域でのグループとしての収益力向上を推進している。
事業子会社の山下医科器械は九州を地盤とする医療機器専門商社で、医療機器販売・メンテナンス、医療材料・消耗品販売、IT医療構築・医療設備工事、および医療モールを展開している。イーピーメディックは整形外科領域の体内埋没材料(インプラント)の企画・製造委託・輸入・販売、トムスは人工腎臓関連分野に強みを持ち透析装置・関連消耗品を中心とする医療機器販売およびメンテナンス、アシスト・メディコは医療機関の経営支援や介護施設を含む病床転換・M&A・事業承継などのコンサルティングサービス、イーディライトは医療機関の予約サイト制作取次などのソリューションサービス、エムディーエックス(22年2月設立)はDX新技術を活用した医療・介護施設・在宅向け新製品・サービスの開発、クロスウェブ(23年7月子会社化)は医療機関向け中心にネットワークおよびシステムインフラ構築、鹿児島オルソ・メディカル(23年12月子会社化)は鹿児島県で整形外科分野に特化した医療機器販売および関連消耗品販売を展開している。また、超音波を用いた医療用機器開発・販売のマイクロソニックに出資し、持分法適用関連会社としている。
23年5月期セグメント別売上高(内部売上高含む)は、医療機器販売業が580億37百万円(一般機器分野が86億34百万円、一般消耗品分野が240億60百万円、低侵襲治療分野が138億97百万円、専門分野が100億76百万円、情報・サービス分野が13億68百万円)で、医療機器製造・販売業が2億86百万円、医療モール事業が69百万円だった。セグメント別利益(全社費用等調整前営業利益)は医療機器販売業が21億48百万円、医療機器製造・販売業が12百万円、医療モール事業が0百万円、調整額が▲10億04百万円だった。
なお医療機関の設備投資関連のため、第2四半期(9月~11月)および第4四半期(3月~5月)の構成比が高い傾向がある。
■ヘルスケア領域でのグループ力向上を推進
中期経営計画(22年5月期~24年5月期)では、基本方針を「持続成長可能な体制構築を目指し、継続的な収益拡大に向け、ヘルスケア領域でのグループ力の向上を図る」として、目標値には最終年度24年5月期売上高520億円(収益認識に関する企業会計基準第29号適用換算前ベースでは675億円)、営業利益6億20百万円、経常利益6億80百万円を掲げている。
重点施策には、グループの一体化と戦略機能の強化、重点事業領域の拡充、グループ経営管理機能の強化、ダイバーシティ環境の実現、ESG経営への取り組み、戦略的人材マネジメントの確立を掲げている。
医療機器販売業では、電子カルテなどの医療情報システム構築支援、合弁事業の医科向け会員ネットワーク「EPARK」の普及拡大、SPD(Supply Processing&Distribution)事業の推進・収益性向上を推進している。医療機器製造・販売業では、台湾の医療機器メーカーと協力して手術器械の単回使用化に取り組んでいる。
また新規商材による市場開拓として、19年7月にはアイム(福岡県福岡市)と資本業務提携し、医療機関・介護施設向けに自然落下制御式輸液装置「FLOWSIGN 03W」のレンタル事業を開始している。20年1月にはNTT東日本と協業して医療機関向けICTサービスを開始している。さらにソルブ(福岡県春日市)の注射調剤・監査支援システムの取り扱いも開始している。
■長期ビジョン「マルティプライビジョン2030」
ESG経営・SDGsへの取り組みでは、21年6月に独立行政法人国際協力機構(JICA)が発行するソーシャルボンド(社会貢献債)への投資を実施した。21年8月にはESG基本方針を策定し、地域のヘルスケアに貢献する企業として、医療機器・関連サービスの安定的な供給を通じてSDGsの目標でもある持続可能でより良い社会を目指し、社会課題の解決に貢献できるように努めるとしている。23年3月には山下医科器械が、経済産業省と日本健康会議が選定する健康経営優良法人認定制度において「健康経営優良法人2023(大規模法人部門)」に2年連続で認定された。
22年7月にはサステナブルな成長の実現に向けて、2030年度を目標年度とする長期ビジョン「マルティプライビジョン2030」を策定した。既存の中核事業との連携を図りながら新たな事業ポートフォリオを構築し、企業価値の持続的成長および価値創出を目指すとしている。
22年9月には、乳がん検査デバイスとなるマンモエコーシステムなど超音波を用いた医療用機器の開発・販売を行うマイクロソニック(東京都国分市)に出資した。ESG活動の一環として、超音波を用いた社会性の高い製品の実現化に寄与することを目的に、マイクロソニックが持つ知財や研究開発を支援する。
■24年5月期2Q累計の進捗率高水準で通期上振れの可能性
24年5月期連結業績予想は、売上高が23年5月期比6.8%減の542億15百万円、営業利益が44.5%減の6億41百万円、経常利益が43.4%減の6億82百万円、親会社株主帰属当期純利益が111.8%増の4億64百万円としている。配当予想は23年5月期比7円増配の55円(期末一括)としている。予想配当性向は30.3%となる。
第2四半期累計は売上高が前年同期比4.5%増の288億99百万円、営業利益が3.5%増の6億18百万円、経常利益が3.3%増の6億45百万円、親会社株主帰属四半期純利益が4億80百万円(前年同期は特別損失計上により2億01百万円の損失)だった。
医療機器販売が順調に拡大し、人件費増加などを吸収して増益だった。営業利益の前年比+20百万円の増減分析は、売上総利益増加+1億99百万円、人件費・求人費等の増加▲1億円、発送運賃・旅費交通費等の増加▲12百万円、保守料・車両費等の増加▲67百万円としている。
医療機器販売業は売上高が4.5%増の288億44百万円、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が6.0%増の11億04百万円だった。売上高の内訳は一般機器分野(画像診断機器、放射線診断装置など)が16.3%増の38億01百万円、一般消耗品分野(手術関連消耗品など)が4.0%増の123億51百万円、低侵襲治療分野(内視鏡、サージカル備品など)が1.7%増の69億30百万円、専門分野(整形、理化学、透析など)が1.5%増の51億06百万円、情報・サービス分野(設備保守メンテナンスなど)が8.9%増の6億54百万円だった。
医療機器製造・販売業は、売上高が4.6%増の1億46百万円で利益が6百万円(前年同期は3百万円)だった。医療モール事業は、売上高が8.5%増の36百万円で利益が2百万円(同0百万円)だった。
なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が140億21百万円で営業利益が1億96百万円、第2四半期は売上高が148億78百万円で営業利益が4億22百万円だった。
通期連結業績予想は据え置いている。特需の反動や不透明感などを考慮して減収、営業・経常減益、親会社株主帰属当期純利益は特別損失一巡して増益、配当は増配予想としている。重点施策として、重点事業領域(新型輸液装置レンタル、医療機関向けICTインフラサービス、注射調剤・監査支援システム、乳がん検査デバイス等)の拡充、人的資本経営(グループ8社の人材情報を統合的にマネジメントする体制構築、戦略的な人事管理体制の推進、人材育成、職場環境整備や健康経営等)の実践、物流体制の更なる強化、DX推進による業務プロセス改革、ガバナンスと内部統制の強化、ESG・SDGs視点での経営基盤の強化を推進する方針だ。
第2四半期累計の進捗率は売上高53%、営業利益96%、経常利益95%、親会社株主帰属当期純利益103%だった。第2四半期累計が増益での着地となり、進捗率も高水準であることを勘案すれば、通期会社予想は上振れの可能性が高く、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株主優待制度は5月末の株主対象
株主優待制度は毎年5月31日現在の1単元(100株)以上保有株主を対象に、保有株式数および継続保有期間に応じてオリジナルクオカードを贈呈(詳細は会社HP参照)している。
■株価は上値試す
なお2月16日に自己株式取得を発表した。上限は13万3000株・3億50百万円で取得期間は24年2月19日~24年8月23日としている。
株価は自己株式取得も好感して急伸し、20年の最高値に接近する場面があった。その後は上げ一服の形だが、1倍割れの低PBRなど指標面の割安感も評価材料であり、利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。2月21日の終値は2402円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS181円78銭で算出)は約13倍、今期予想配当利回り(会社予想の55円で算出)は約2.3%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS3097円34銭で算出)は約0.8倍、そして時価総額は約61億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)