【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ティー・ワイ・オーは8月安値で底打ち、16年7月期増収増益基調で戦略的M&Aも積極化

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 ティー・ワイ・オー<4358>(東1)はTV-CM制作の大手である。15年7月期は2桁増益となり、16年7月期も増収増益基調だ。中期成長に向けた戦略的M&Aも積極化している。株価は8月安値で底打ちして下値を切り上げる動きだ。予想PERや配当利回りは割安感を強めている。出直り展開だろう。

■TV-CM制作の大手

 TV-CM制作の大手で、広告事業(広告代理店向けのTV-CM企画・制作およびポスト・プロダクション業務、広告主向けWEB広告およびプロモーションメディア広告の企画・制作、クロスメディア広告業務)を主力として、映像関連事業(アニメーションおよびミュージックビデオなどの企画・制作)も展開している。

 15年3月には民事再生手続き中のスカイマークに対して、ブランド再生に関する業務支援を行うことが正式決定した。投融資は行わず、スカイマークのブランド再生に必要であると判断される領域のクリエイター、関連スタッフ、ノウハウなどを無償で提供する。スカイマークの再生後は広告受注に繋がると期待される。

 なお9月16日には、シンガポールで開催された広告祭Spikes Asia 2015(アジア太平洋地域の国々を対象としたクリエイティブフェスティバル)において、当社が制作に携わった広告がゴールド1作品、シルバー4作品、ブロンズ3作品を受賞したと発表している。

■戦略的M&Aを積極化

 中期成長に向けて、ブランディングやセールスプロモーションなどの分野を中心に、一定規模以上の企業を対象として戦略的M&Aを積極推進する方針を打ち出している。

 15年3月に海外事業統括管理会社としてシンガポールにTYO-ASIAを設立し、15年7月にインドネシアの広告会社The First Editionの代表Uli氏と、合弁会社TYO FIRST EDITIONを設立した。

 アジアにおける戦略的M&Aの第一弾として、The First Editionの事業を合弁会社に順次継承していく予定で、インドネシアにおける日系企業との取引拡大も目指すとしている。

 15年8月にはケー・アンド・エル社(K&L社、東京都)が実施する第三者割当増資を引き受けて連結子会社化した。K&L社はグラフィック領域を中心に大手広告主案件を長期に手掛けるクリエイティブ・エージェンシーで、中国やインドなどアジア地域へも事業進出している。そしてK&L社の有する海外を含む豊富な実績とノウハウが、当社の広告主直接取引拡大や海外事業の本格展開に寄与するとしている。

 9月1日にはグループ会社として、三浦武彦氏を代表とする100%子会社ミウラ・アンド・カンパニーを設立した。クリエイティブ機能強化を目的として、広告コミュニケーションのアイデア開発やディレクションを行うクリエイティブブティックの位置付けとしている。

 また9月25日には、サニーサイドアップのスピンオフベンチャー企業ENGAWA社(えんがわ社、東京都、15年11月設立予定)が実施する第三者割当増資を引き受けると発表した。

 ENGAWA社はジャパン・ブランド確立を目指す事業、そのテーマから派生する複数の事業を統括する会社として設立され、高いジャパンクオリティを備えた商品・サービスの発掘・広報・販路開拓などを支援するプロジェクト「OMOTENASHI SELECTION」の継続実施が決定している。新会社に対して当社グループの広告戦略・企画・制作をはじめとする事業ノウハウを提供することも検討する。

■15年7月期は2桁増益

 9月11日に発表した前期(15年7月期)連結業績(9月9日に売上高を減額、利益を増額修正)は、売上高が前々期比6.9%増の283億93百万円、営業利益が同10.0%増の18億84百万円、経常利益が同19.7%増の18億06百万円、純利益が同87.8%増の11億19百万円だった。

 電気・情報通信、車両・交通器具・工業機械、飲料、娯楽・エンターテインメントなどの分野を中心に受注が好調に推移して増収増益だった。売上総利益率は17.5%で同0.2ポイント低下したが、販管費比率は10.9%で同0.3ポイント低下した。前々期に計上した上場市場変更費用・株式売出し関連費用の一巡や、特別損益の改善も寄与した。

 セグメント別に見ると、広告事業は売上高が同7.0%増の269億06百万円、営業利益(全社費用等調整前)が同7.3%増の35億10百万円だった。

 内訳は広告代理店取引の売上高が同3.4%増の204億61百万円、営業利益が同0.1%減の33億40百万円、そして広告主直接取引の売上高が同20.2%増の64億44百万円、営業利益が同2.1倍の3億09百万円だった。広告主直接取引では、人員拡充や人材戦力化による営業力向上などの結果として、案件受注規模が拡大しているようだ。

 映像関連事業は、売上高が同5.0%増の14億87百万円、営業利益が同12.1%減の1億51百万円だった。ライブ映像・演出映像案件などが増加して増収だったが、アニメ制作案件の外部委託作業が増加して減益だった。

 配当予想(7月21日に増額修正)は年間5円(期末一括)で予想配当性向は27.8%となる。前々期との比較では1円減配の形だが、前々期の年間6円には上場市場変更記念配当3円を含んでいるため、普通配当ベースでは2円増配となる。

 四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(8月~10月)52億99百万円、第2四半期(11月~1月)72億97百万円、第3四半期(2月~4月)69億11百万円、第4四半期(5月~7月)88億86百万円、営業利益は第1四半期3億38百万円、第2四半期3億83百万円、第3四半期6億65百万円、第4四半期4億98百万円だった。

■16年7月期も増収増益基調

 今期(16年7月期)の連結業績予想(9月11日公表)は売上高が前期比12.7%増の320億円、営業利益が同14.1%増の21億50百万円、経常利益が同10.7%増の20億円、純利益が同7.2%増の12億円としている。配当予想は前期と同額の年間5円(期末一括)としている。予想配当性向は26.0%となる。

 引き続き広告需要が高水準に推移して、売上高は8期ぶりに過去最高を更新する。また原価管理徹底効果も一段と進展して、営業利益、経常利益は連続で過去最高を更新する見込みだ。

 なお採用活動を積極的に展開し、M&Aによる連結子会社の増加も含めて、グループ人員数は15年7月期末の802人から、16年7月期末には900人規模へ増加する見込みだ。そして定着率向上に向けて福利厚生制度の拡充も推進するが、人件費の増加などを吸収して増収増益予想だ。

■中期経営計画で17年7月期営業利益27億円目標

 中期経営計画では目標数値として17年7月期売上高400億円、営業利益27億円を掲げ、株主還元として配当性向25%以上目標と株主優待の継続実施の方針を示している。

 広告市場は拡大基調であり、国内TV-CM制作業界では当社を含む大手制作3社による寡占化傾向を強めている。国内景気回復や20年東京夏季五輪開催も追い風となるため、事業環境は中期的に良好だろう。戦略的M&Aや海外展開本格化も寄与して中期的に収益拡大基調が期待される。

■株価は8月安値で底打ちして下値切り上げ

 なお14年10月に株主優待制度の拡充を発表している。15年7月期については、通常株主優待であるクオカード贈呈(毎年1月31日現在500株以上保有株主に対してクオカード1000円相当、2500株以上保有株主に対してクオカード3000円相当、5000株以上保有株主に対してクオカード5000円相当を贈呈)に加えて、当社オリジナル株主優待を継続した。

 オリジナル株主優待の内容(14年12月発表)は、15年1月31日現在500株以上保有株主を対象として、応募者の中から抽選で3名にオリジナルミュージックビデオ「株主様!あなたがアーティスト」を制作して贈呈した。

 株価の動きを見ると、悪地合いの影響で8月25日に年初来安値161円まで急落する場面があったが、その後は190円近辺に戻して下値を切り上げている。8月の年初来安値で底打ちした形だ。

 9月25日の終値188円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS19円24銭で算出)は9~10倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間5円で算出)は2.7%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS89円31銭で算出)は2.1倍近辺である。なお時価総額は約117億円である。

 週足チャートで見ると8月の急落場面で長い下ヒゲをつけ、その後は下値を切り上げて52週移動平均線回復の動きを強めている。16年7月期増収増益基調で予想PERや配当利回りは割安感を強めている。出直り展開だろう。

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