【どう見るこの相場】「配当権利取り月間」は大幅増配の低PER銘柄と初配当銘柄に瞬発力と持続可能性
- 2024/3/4 08:03
- どう見るこの相場
■4万円台突入:エヌビディア祭りで日経平均が新境地へ
いよいよ3月、3月期決算会社の期末である。その期末に向け現在進行中の相場テーマがある。3月期決算会社の配当権利取りである。もちろん日経平均株価は、「やめられない、とまらない かっぱえびせん」状態の米国画像半導体トップのエヌビディアにツレ高して史上最高値を更新し、「エヌビディア祭り」一本でさらに4万円台の上値にチャレンジしようとしている。しかし、これから期末接近とともに株主還元競争に乗り遅れてはならじと配当異動を発表してくる可能性の強い上場会社と、やや買い遅れ新規出動や買い増しのタイミングを計っている個人投資家とがマッチングしてインカムゲインが増勢となるようなら、マーケットの複線化、多様化につながる総上げ相場の展開もあり得ないことではない。
■二刀流の勝算:インカムゲインとキャピタルゲインの両立を目指す
しかもこの配当権利取りは、日経平均株価4万円時代だけに従来とやや様相を異にしそうなのである。インカムゲインを主軸とする投資家は通常、やや保守的とされてきた。短期志向、キャピタルゲイン狙いを専らにするアクティブな投資家の後塵を拝することが多かった。ところがここにきての配当権利取りは、保守的どころかインカゲインに加えキャピタルゲインをともに手中に納める二刀流効果を発揮しているである。
その代表株が、前週29日の前場取引時間中に今3月期配当の大幅増配を発表した川辺<8123>(東証スタンダード)だろう。同社は、今期配当を期初予想の20円(前期実績15円)から80円に大幅増配し、株価はいきなりストップ高の300円高となり、前週末1日も大幅続伸して連日の昨年来高値更新となった。大幅増配でストップ高した銘柄は、同社株だけにとどまらない。今年1月末からでは、塩水港精糖<2112>(東証スタンダード)、KSK<9687>(東証スタンダード)、レイズネクスト<6379>(東証プライム)が、ストップ高を演じた。塩水港精糖は、年間配当を期初予想の5円(前期実績5円)から9円、KSKは同86円(同80円)から226円、レイズネクストは65円(同72円)から130円にそれぞれ大幅増配した。また初配当を発表したFFRIセキュリティ<3692>(東証グロース)、エキサイトホールディングス<5571>(東証スタンダード)もストップ高した。
このストップ高した銘柄以外にも、今年1月から前週末1日までに今3月期配当の大幅増配を打ち出した銘柄は数多い。これを年回配当利回りが3%以上となる低PER株に限定しても、100銘柄超を数える。この増配の事由は、さまざまである。最も多いのが業績の上方修正に伴う株主還元策の積極化である。また配当性向の引き上げ、DOE(株主資本配当率)、累進配当制度導入などの配当方針の変更、さらに記念配当の実施などもある。この事由が複合したフルセット銘柄も珍しくない。
■期末に向けた株主還元競争の火蓋が切られる
東証が、市場区分の変更やPBR1倍割れ会社への1倍充足要請など市場改革を進めており、上場会社側が、株主還元策競争を迫られている事情も働いた結果であり、あの1989年のバブル相場のピークとはまったく別の投資環境になっていることも示している。バブル相場では、配当利回りはいうまでもなく、PER(株価収益率)でもPBR(株価純資産倍率)でも投資採算的に箸にも棒にも掛からなかったそれこそバブル株価だったのが、足元では、一部銘柄を除きすべての投資尺度がなお上値余地を示唆しているといっても過言ではない。これから期末に向けて増配発表に踏み切ってくる銘柄も増えそうで、マークは怠れない。
もちろん期末の配当権利取りは、配当権利落ちで株価が配当額以上に下落すれば元も子もない。また記念増配は、今期一期限りで次期に剥落することになる。しかし、業績が上方修正ペースで推移する銘柄なら、次期の業績期待を高めて配当権利落ちを埋め、記念配当も、そのまま普通配当として継続する展開も想定される。3月期期末特有の「配当の再投資」の需給相場の波及で上値追いの持続可能性も大きい。(情報提供:日本インタビュ新聞社・Media-IR 株式投資情報編集部)