- Home
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
- マルマエは急伸して昨年来高値更新、24年8月期は下期回復基調
マルマエは急伸して昨年来高値更新、24年8月期は下期回復基調
- 2024/3/5 10:37
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
マルマエ<6264>(東証プライム)は半導体・FPD製造装置向け真空部品などの精密切削加工を展開し、成長戦略として消耗品の拡大による受注安定化、市場シェア拡大に向けた能力増強投資、ESG経営などを推進している。24年8月期は半導体市場停滞長期化の影響により減益予想としている。ただし、半期別に見ると上期は厳しい状況が継続するものの、下期は回復基調に転じる見込みとしている。積極的な事業展開で収益回復基調を期待したい。株価は急伸して一気に昨年来高値を更新した。上値を試す展開を期待したい。なお3月28日に24年8月期第2四半期決算発表を予定している。
■半導体・FPD製造装置向けの精密切削加工を展開
半導体・FPD(フラットパネルディスプレー)製造装置に使用される真空部品や電極などの精密切削加工、および電子ビーム溶接(EBW)を展開し、半導体・FPD製造装置の真空パーツを作るノウハウ、同業他社に比べて高い生産性・低コスト、急変動する半導体・FPD市場に柔軟に対応できる設備力、ワンストップ受注に対応する多工程生産能力などを強みとしている。なお作業補助・介護ロボットの開発(鹿児島大学と共同研究)では、18年7月第二種医療機器製造販売業の許可を取得し、医療機器製造業の登録を行った。
23年8月期の全社合計受注高は22年8月期比43.8%減の51億67百万円(半導体分野が52.4%減の33億46百万円、FPD分野が47.9%減の7億61百万円、その他分野が51.3%増の10億59百万円)で、全社合計売上高は20.0%減の68億68百万円(半導体分野が29.0%減の45億34百万円、FPD分野が49.8%減の7億74百万円、その他分野が208.7%増の13億74百万円)だった。半導体分野とFPD分野は市場停滞の影響で受注・売上高とも減少した。その他分野は太陽電池製造装置用部品が受注・売上高とも急拡大した。
■シェア拡大やESG経営を推進
長期ビジョンとして「幅広い分野の総合メーカーを支える部品加工のリーディングカンパニー」を目指し、中期事業計画では成長戦略として消耗品拡大による受注安定化、市場シェア拡大に向けた能力増強投資、ESG経営などを推進している。
なお中期事業計画の目標値については、市場環境変化に伴って最終年度を26年8月期(従来は25年8月期)に変更し、最終年度26年8月期売上高140億円、営業利益42億円、資産ベースROIC21%、負債ベースROIC18%、配当性向35%以上、年間最低配当額20円(最終損益が赤字となる場合は見直し)を掲げている。
売上拡大(22年8月期85.9億円から26年8月期140億円へ+54.1億円)戦略として、半導体分野は既存顧客からの受注拡大で+22.8億円、新規顧客獲得(獲得済の新規顧客2社からの量産受注拡大など)で+27.5億円、FPD・その他分野(FPD分野はEBW拡大、その他分野は太陽光発電関連や人工衛星関連の拡大など)で+3.8億円を目指す。なお23年8月期の消耗品売上比率は半導体分野が62.2%、FPD分野が19.6%だった。
設備投資計画(CFベース)については、増産投資およびカーボンニュートラルに向けた太陽光発電投資などにより、24年8月期が10億円、25年8月期が24億円、26年8月期が18億円としている。主な投資は、24年8月期は開発投資やES向上に向けた社員食堂への投資、25年8月期と26年8月期は新工場建設(総額約15億円)としている。減価償却費(製造原価)の見込みについては、24年8月期が8.97億円、25年8月期が約10.4億円、26年8月期が約11.8億円としている。
また中長期的な取り組みとしてESG経営を推進する。自社の再生可能エネルギー活用によってCO2削減を推進し、2030年に50%削減、2050年に100%削減を目指す。さらに人材力最大化に向けて、6つの向上施策(多様化の推進、人材戦略の推進、誰もが働ける職場環境の整備、人事制度改善、育成プラン作成、育成計画推進)を推進する方針だ。そして21年12月には気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に賛同を表明し、23年4月には統合報告書「マルマエレポート」を発表している。
■24年8月期減益予想だが下期回復基調
24年8月期の業績予想(非連結)は売上高が23年8月期比1.9%増の70億円、営業利益が20.9%減の6億80百万円、経常利益が28.8%減の5億62百万円、当期純利益が43.4%減の4億円としている。配当予想は23年8月期比6円減配の30円(第2四半期末10円、期末20円)としている。予想配当性向は94.8%となる。
第1四半期は、売上高が前年同期比55.1%減の11億17百万円、営業利益が22百万円の損失(前年同期は6億68百万円)、経常利益が49百万円の損失(同6億63百万円)、四半期純利益が39百万円の損失(同4億67百万円)だった。半導体分野の市場停滞の影響を受けて大幅減収・赤字だった。
受注高は47.9%減の9億46百万円(半導体分野が51.1%減の6億39百万円、FPD分野が102.9%増の2億77百万円、その他分野が92.2%減の28百万円)で、分野別の売上高は半導体分野が58.9%減の7億69百万円、FPD分野が35.7%増の3億03百万円、その他分野が96.4%減の12百万円だった。半導体分野は底打ち感があるものの、在庫調整が継続して大幅減収だった。FPD分野はG6・G8、OLED向けが回復基調となった。その他分野は太陽電池製造装置部品の需要が急減した。利益面は売上減少と稼働率低下で赤字での着地となった。
通期も半導体市場停滞長期化の影響により減益予想としている。分野別売上高の計画は半導体分野が13.8%減の39億09百万円、FPD分野が19.3%増の9億23百万円、その他分野が41.7%増の19億47百万円としている。半導体分野の在庫調整は、消耗品については不透明だが、製造装置向けについては解消の目途が付いたとしている。また開発品および転注評価用の試作品の受注が増加している。FPD分野ではOLED G6・G8向けの設備投資計画が増加している。その他分野では太陽電池製造装置部品の受注が活発である。
ただし半期別に見ると、上期(売上高24億円、営業利益82百万円の損失、経常利益1億60百万円の損失、四半期純利益1億13百万円の損失)は厳しい状況が継続するものの、下期(売上高46億円、営業利益7億92百万円、経常利益7億22百万円、四半期純利益5億13百万円)は回復基調に転じる見込みとしている。設備投資については増産投資を先送りし、開発投資と社員満足度向上投資を優先する方針としている。積極的な事業展開で収益回復基調を期待したい。
■株主優待制度は毎年8月末時点で6ヶ月以上継続保有株主対象
株主優待制度(詳細は会社HP参照)については、毎年8月末日現在で6ヶ月以上継続1単元(100株)以上保有株主を対象としてクオカードを贈呈している。
■株価は急伸して昨年来高値更新
株価は急伸して一気に昨年来高値を更新した。上値を試す展開を期待したい。3月4日の終値は2300円、今期予想PER(会社予想のEPS31円64銭で算出)は約73倍、今期予想配当利回り(会社予想の30円で算出)は約1.3%、前期実績PBR(前期実績のBPS591円25銭で算出)は約3.9倍、そして時価総額は約300億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)