【アナリスト水田雅展の銘柄分析】日本アジアグループは下値固め完了、16年3月期業績増額余地や復配の可能性が注目点

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 日本アジアグループ<3751>(東1)は社会インフラ・環境・エネルギー関連事業に経営資源を集中して成長戦略を強化している。株価は悪地合いも影響して水準を切り下げたが下値固め完了感を強めている。16年3月期は減益予想だが増額余地があり、太陽光発電関連の収益化や16年3月期復配の可能性も注目点だ。反発展開だろう。

■社会インフラ・環境・エネルギー関連に経営資源を集中

 社会インフラ・環境・エネルギー関連にグループ経営資源を集中し、空間情報コンサルティング事業(国際航業の社会インフラ関連事業)、グリーンエネルギー事業(太陽光発電の受託および売電事業、土壌・地下水保全コンサルティング事業、戸建住宅・不動産事業)、ファイナンシャルサービス事業(日本アジア証券などの証券業)を展開している。

 防災・減災・社会インフラ更新関連、環境関連、メガソーラー関連、再生可能エネルギー関連などテーマ性は多彩である。

 再生可能エネルギー関連事業に関して、14年10月に子会社JAG国際エナジーが、東京都が創設する官民連携再生可能エネルギーファンドの運営事業者に選定された。そして15年4月には第1号案件として、当社グループが開発したメガソーラー発電所「足柄大井ソーラーウェイ」と「行田ソーラーウェイ」を運営する合同会社に投融資を実行した。

 14年12月にはシーベルインターナショナル(東京都)の経営権を取得した。アジア・アフリカ各国に事業展開している同社の流水式超低落差型マイクロ水力発電システム(商品名:ストリーム)を活用して、マイクロ水力発電事業を再生可能エネルギー関連事業の第2の柱に育成する方針だ。

 15年3月には独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「国際エネルギー消費効率化等技術・システム実証事業」の公募に対して、インドにおける「火力発電所放流渠を活用したマイクロ水力並列配置発電システム技術実証事業」が採択された。また小水力発電プロジェクトに関しては、国際連合工業開発機構(UNIDO)と「アフリカエチオピアプロジェクト」および「アフリカケニアプロジェクト」に関して正式契約を締結した。

 15年7月には流水式小水力発電装置「スモールハイドロストリーム」が湖北土地改良区(滋賀県長浜市)の中央幹線用水路に採用された。FIT(固定価格買取制度)を活用した民間企業による小水力発電事業(100kw以下)において「スモールハイドロストリーム」の採用は初となる。

 国内の太陽光発電事業に関する進捗状況は、15年6月末時点で売電事業の稼働・竣工が59.4MW、案件確保が80.6MW、交渉中が66.1MWの合計206.1MW、そして受託事業の稼働・竣工が98.0MW、案件確保が30.9MW、交渉中が4.6MWの合計133.5MWとなり、総合計339.6MWである。

 15年7月には大分県竹田市の竹田・柏原ソーラーウェイが完成、北海道釧路市のエコパワーJP/釧路音別太陽光発電所が竣工した。また農業と発電を同時に行うソーラーシェアリングの群馬県沼田市利根町太陽光発電所が竣工した。15年8月には熊本県阿蘇郡産山村の産山山鹿ソーラーエナジーファームが竣工した。

 また15年8月、国際航業が16年4月の電力自由化に対応して、電気料金プラン最適サービス「エネがえる」を紹介するウェブサイトをオープンした。

■16年3月期減益予想だが増額余地、太陽光発電関連も収益本格化

 なお15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)124億60百万円、第2四半期(7月~9月)176億00百万円、第3四半期(10月~12月)181億62百万円、第4四半期(1月~3月)276億81百万円、営業利益は第1四半期1億45百万円、第2四半期11億47百万円、第3四半期10億07百万円、第4四半期30億53百万円だった。

 空間情報コンサルティング事業は公共事業関連が主力のため第4四半期の構成比が高い収益構造である。そして営業損益は改善基調だ。また15年3月期のROEは14年3月期比3.3ポイント上昇して15.6%、自己資本比率は同1.9ポイント上昇して21.7%となった。

 今期(16年3月期)の連結業績予想(5月14日公表)は売上高が前期比4.1%増の790億円、営業利益が同21.5%減の42億円、経常利益が同33.1%減の25億円、純利益が同33.1%減の25億円としている。配当予想については未定として、具体的な配当金額について決定後速やかに公表するとしている。

 セグメント別営業利益(全社費用等調整前)の計画については、空間情報コンサルティング事業が同15.7%増の16億円、グリーンエネルギー事業が同10.4%減の15億円、ファイナンシャルサービス事業が同46.3%減の14億円としている。

 第1四半期(4月~6月)は、売上高が前年同期比24.5%増の155億14百万円、営業利益が同97.7%減の3百万円、経常利益が3億77百万円の赤字(前年同期は2億90百万円の赤字)、純利益が7億79百万円の赤字(同3億44百万円の赤字)だった。ファイナンシャルサービス事業の減益が影響したが、グリーンエネルギー事業が収益化してきた。

 セグメント別の動向を見ると、空間情報コンサルティング事業は売上高が同16.9%増の70億66百万円、営業利益(全社費用等調整前)が8億47百万円の赤字(同8億11百万円の赤字)だった。東北地方の大型案件などが寄与したが、体制強化に向けた人件費の増加で営業赤字がやや拡大した。なお受注高は同9.5%増の174億56百万円と好調だった。

 グリーンエネルギー事業は売上高が同55.2%増の59億64百万円、営業利益が同39.4%増の4億46百万円だった。太陽光発電所の売電事業が収益化してきた。稼働済み発電所は20ヶ所以上で合計50MWを超える規模となった。受託事業も堅調だった。

 ファイナンシャルサービス事業は、売上高が同3.7%減の24億72百万円、営業利益が同32.7%減の4億80百万円だった。外国株関連の収益が減少した。

 16年3月期は、株式市場の影響を受けるファイナンシャルサービス事業、連結範囲変更の影響を受けるグリーンエネルギー事業で減益を見込んでいるため全体として減益予想だ。しかし空間情報コンサルティング事業の収益が改善基調であり、グリーンエネルギー事業も太陽光発電所開発関連は拡大基調である。株式市場が引き続き活況であることも考慮すれば増額余地があるだろう。

■中期経営計画では非金融事業の成長戦略を強化

 中期計画では目標値に17年度売上高980億円、営業利益77億円、そして20年度売上高1500億円(G空間×ICT700億円、エネルギー分野600億円、金融/新規ビジネス200億円)、営業利益120億円を掲げている。

 グループ組織再編を実施して成長の加速と株主還元の早期化を図る方針だ。特に「G空間×ICT」取り組み強化や、エネルギーマネジメント分野における新サービス開始などで、非金融事業の成長戦略を強化する。ファイナンシャルサービス事業では預かり資産の増大を優先する戦略を推進する。また「グリーン・コミュニティ」化プロジェクトを推進する。

■株主還元実施に向けて単体の資本準備金の額の減少

 なお15年5月に「資本準備金の額の減少および剰余金処分に関するお知らせ」を発表し、6月開催の定時株主総会で承認された。今後の機動的かつ効率的な経営および株主還元施策を可能とすることを目的として、単体の資本準備金の額を減少して欠損の填補を行った。発行済株式総数は変更せずに資本準備金の額のみを減少するものであり、総資産の額に変動はなく1株あたりの純資産額に変更は生じない。

 この処理によって株主還元施策を行うことが可能な状態になるためグループ組織の再編を実施し、当社が15年7月1日付で中間持株会社2社(日本アジアホールディングスおよび国際航業ホールディングス)を吸収合併して中間持株会社体制を解消した。

 また太陽光発電事業にかかる子会社事業を統合し、グリーンエネルギー事業のJAG国際エナジーとグリーンプロパティ事業の国際ランド&ディベロップメントが合併(15年7月1日付、新JAG国際エナジー)した。また日本アジア証券にファイナンシャルサービス部門の子会社を集約してファイナンシャルサービス事業の強化を図る。

■株価は下値固め完了

 なお8月27日に決算発表資料の追加として、第1四半期末の自己株式数の減少についてリリースした。当社の子会社である国際航業ホールディングス、日本アジアホールディングス、国際航業、おきなわ証券が、各社が保有する当社株式を長期保有が見込める投資家に証券会社を介して売却したことによるもので、処分株式数は合計121万8400株、処分時期は15年5月26日としている。

 株価の動きを見ると、第1四半期の減益や悪地合いの影響で8月25日の年初来安値396円まで急落したが、その後は400円台前半で推移して下値を固める動きだ。

 9月28日の終値425円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS94円62銭で算出)は4~5倍近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1000円90銭で算出)は0.4倍近辺である。なお時価総額は約118億円である。

 週足チャートで見ると600円近辺でのモミ合いから下放れて水準を切り下げたが、400円近辺で下値固め完了感を強めている。16年3月期は減益予想だが増額余地があり、太陽光発電関連の収益化や16年3月期復配の可能性も注目点だ。反発展開だろう。

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