9月11日、投資信託協会が「投資信託の主要統計ファクトブック」を公表しました。中身は投資信託協会のホームページから見られますので、関心のある方は一度、ご覧になって下さい。
いくつか興味深い数字がありました。たとえば「契約型公募投信の新規設定・償還・運用中ファンドの本数」。運用中ファンドの本数が年々増加傾向を辿っているのは、当コーナーでも幾度か説明しましたが、今回注目したいのは「新規設定ファンドの本数」です。
ここに掲載されている統計では、2000年からの推移を見ることができます。このうち新規設定ファンドの本数を見ると、2000年が429本、2001年が555本と増え、2002年には329本に減少。2004年まで300本台が続き、そこから徐々に増え始めましたが、2012年までは400~500本程度で推移していました。
それが急増したのが2013年で、890本にもなり、2014年は702本、2015年は6月時点で385本ですから、12月までを考えると、その倍近くまではいくでしょう。ここ数年、投資信託の新規設定本数は、かなりのペースで増え続けているのです。当然、運用中ファンドの本数も増えるわけです。
新しい投資信託を買いたがる投資家がいるから新規設定ファンドが増えるのか、新味のある投資信託を設定して投資家に買わせているのか。恐らく実態は後者だと思いますが、投資家は今一度、新規設定ファンドを買う意味を考えた方が良いでしょう。正直、新規設定ファンドを買う理由はほとんどありません。
投資信託は将来のリターンが確約された商品ではありません。だからこそ、過去の運用実績が重要になります。といっても、過去の運用実績が将来も続くという意味ではありません。基準価額がどの程度の幅で動くのかを知ることで、自分のポートフォリオが負っているリスクを把握できるからです。新規設定ファンドはこれまで運用されていないので、肝心のリスク度を把握できません。
また、繰上償還リスクを考えると、資金が流入しているファンドを選びたいところです。それも、ある程度の運用期間を経てみないことには分かりません。
誰も新規設定ファンドを買わなければ、販売金融機関も新規設定ファンドを投資家に売ろうとは考えなくなるでしょう。結局、販売金融機関が新規設定ファンドを中心に投資信託を売ろうとするのは、それを買う投資家がいるからです。まずは新規設定ファンドを買うのは止めること。そこから投資信託販売の正常化が始まるのです。