【アナリスト水田雅展の銘柄分析】インフォコムは16年3月期営業利益と経常利益を増額、純利益を減額、配当を増額

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 インフォコム<4348>(JQS)はITサービスや電子書籍配信サービスを主力としている。29日に特別損失の発生、16年3月期業績予想の修正(営業利益と経常利益を増額、純利益を減額)、配当予想の修正(増額)を発表した。株価は悪地合いの影響で8月の直近安値に接近したが、16年3月期配当予想の増額を好感して反発展開が期待される。

■ITサービス事業とネットビジネス事業を展開

 帝人<3401>グループで、企業向けにITソリューションを提供するITサービス(ヘルスケア、エンタープライズ、サービスビジネス)事業と、一般消費者向けに電子書籍配信サービス、eコマース、各種デジタルコンテンツなどを提供するネットビジネス事業(子会社アムタス)を展開している。

 06年11月開始のスマートフォン・フィーチャーフォン向け電子書籍配信サービス「めちゃコミック」は、各携帯キャリアのスマートフォン公式キャリアサービス電子書籍カテゴリーで1位を独占し、月間利用者数が500万人を記録するなど国内トップクラスの地位を強固にしている。また13年11月開始のマルチデバイス対応電子書籍配信サービス「ekubostore(エクボストア)」も拡大基調だ。

 9月15日にはサービスビジネス事業分野で、企業・団体向けに特化したMVNO(仮想移動体サービス事業者)サービスを開始すると発表した。格安SIMカードによるデータ通信・SMSサービスで、コストメリットをフルに活用できるサービスラインナップを取り揃えた。そして今後、スマートデバイスのレンタルサービスおよび中古スマートデバイスの買取・販売事業を開始する予定だ。

■中期成長に向けてアライアンス積極活用、ソーシャルゲームは自社開発終了

 中期成長に向けて戦略的M&A・アライアンスを積極活用し、グループ会社統合・再編も進めている。

 13年9月には医薬品業界CRM事業強化に向けて、ミュートスと合弁会社インフォミュートスを設立した。

 14年3月にはEC事業の運営効率化に向けて、アムタスグループ内で食品EC事業を展開する持分法適用関連会社のドゥマンを連結子会社化し、連結子会社イー・ビー・エスのアパレルEC事業をドゥマンに統合した。

 14年9月には新規事業の発掘を目的として、米国シリコンバレーに連結子会社のコーポレートファンド(20億円規模、通称インフォコムファンド)を設立した。また15年2月に米SYSCOMの株式を譲渡した。

 ソーシャルゲームについては15年4月に「ソーシャルゲームサービスの自社開発・提供を終了」する方針を発表した。12年8月にイストピカを連結子会社化してスマートフォン向けソーシャルアプリゲームの開発・提供に取り組んできたが、市場環境の変化が激しく今後の収益化を見通すことが困難と判断した。自社タイトル開発・配信を終了して経営資源を電子書籍サービスに集中する。

■ヘルスケア、GRANDIT、電子書籍配信が重点3事業

 中期経営計画では、医療機関・製薬企業向けヘルスケア事業、完全Web-ERPソフト「GRANDIT」のサービスビジネス事業、電子書籍配信サービスなどのネットビジネス事業を重点3分野として、目標数値に17年3月期売上高550億円、営業利益50億円、21年3月期売上高1000億円、営業利益100億円を掲げている。

 ヘルスケア事業の分野ではIoT事業への新規参入として米EverySense(エブリセンス)社に25%出資した。また15年3月にヘルスケア事業の一環として、アスリート支援サービス「ATHLETE STORIES(アスリートストーリーズ)」の提供を開始した。

 「ATHLETE STORIES」はトップアスリートを目指す人の健康管理、コミュニティ機能、活動資金援助、さらに就職支援といった引退後のセカンドキャリアに至るまでをサポートする無料サービス(アスリートプラットフォームアプリ)だ。使用するアスリートには費用が発生せず、当社は広告事業、職業紹介事業、およびビッグデータのアスリート向け製品開発に活用する市場調査事業として展開する。15年8月にはトレーナー向けアプリの提供開始を発表した。

 15年7月には新規事業創出プログラム「デジタルヘルスコネクト」におけるアクセラレータープログラムの参加者募集を発表した。プログラム参加者に対して医師が抱える現場の課題(ニーズが明確なテーマ)を提供し、この解決策を挑戦者と一緒に考え具体化し、現場での試行を重ねて製品化を目指す。

 サービスビジネス事業では、完全Web-ERPソフト「GRANDIT」の採用企業数が800社を超えている。9月17日には東京ビッグサイトで9月30日~10月2日「GRANDIT DAYS 2015」(日経BP社主催「ITpro EXPO 2015」との同時開催展)を開催すると発表した。クラウドファースト時代に向けて進化する多彩なソリューション・活用事例を紹介する。

 電子書籍配信サービスの分野では、14年10月にシフトワンと共同で次世代電子コミック「モーションコミック」の提供を開始した。15年2月にはアムタスが、中国でコミック関連事業を展開している厦門優莱柏網絡科技有限公司(ユーラボ社)、および恋愛・乙女系アプリ配信を展開しているKOYONPLETE(コヨンプリート)(東京都)と業務提携した。コヨンプリートに関しては第三者割当増資も引き受ける。

 15年4月には「めちゃコミック」にて「週刊少年ジャンプ」や「マーガレット」など集英社コミックの提供を開始し、15年5月にはグリー<3632>のSNS「GREE」にてスマートフォン向け「めちゃコミック for GREE」を開始した。15年6月には「めちゃコミック」にて秋田書店のコミックの提供を開始し、さらに業務提携先の中国・ユーラボ社が同社の100%子会社を通じて中国全土でスマートフォン向け電子書籍配信アプリ「新漫画」の提供を開始した。

 9月24日には、中国およびアジア地域でのアニメ・マンガ版権の保護や産業の良質な発展の促進を目的として、アムタス、少年画報社(東京都)、業務提携先の中国・ユーラボ社、および中国通信事業者のアニメ・マンガ関連部門、中国政府機関などと共同で、アジア版権保護連盟を設立したと発表した。

 中国政府機関も参画することで、版権侵害行為の取り締まりから法的手続きまで行うことができ、出版・版権元および運用企業の利益と権利を守ることが可能になる。中国アニメ・マンガ市場における版権保護と市場育成を進め、将来的には加盟企業・団体を増やすとともに、対象地域を拡大する予定としている。

■16年3月期営業利益と経常利益を増額、純利益を減額、配当を増額

 15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)81億99百万円、第2四半期(7月~9月)104億98百万円、第3四半期(10月~12月)94億11百万円、第4四半期(1月~3月)122億01百万円で、営業利益は第1四半期2億26百万円の赤字、第2四半期8億16百万円、第3四半期3億99百万円、そして第4四半期26億17百万円だった。ITサービス事業は第4四半期の構成比が高い収益構造である。

 また15年3月期の配当性向は23.3%だった。ROEは14年3月期比0.2ポイント低下して10.9%、自己資本比率は同4.3ポイント上昇して73.0%となった。

 9月29日に今期(16年3月期)の連結業績予想および配当予想の修正を発表した。中長期視点での事業構造改革の一環として、新横浜データセンター(DC)によるサービス提供を17年6月末までに終了する。

 これに伴って事業構造改革費用として27億16百万円を特別損失に計上するため、前回予想(4月28日公表)に対して純利益を17億50百万円減額した。ただしITサービス事業における売上構成改善や電子書籍サービスの好調が寄与するため、営業利益と経常利益を各々2億円増額した。

 また配当予想を2円増額した。16年3月期は特別損失計上という一過性要因で大幅減益となるが、営業利益と経常利益は期初計画を上回る増益見込みであり、株主還元の一層の充実を図るため配当予想を増額した。

 修正後の今期(16年3月期)連結業績予想は売上高が前期比6.7%増の430億円、営業利益が同22.0%増の44億円、経常利益が同19.2%増の44億円、純利益が同60.8%減の8億50百万円とした。配当予想は同3円50銭増配の年間22円(期末一括)で予想配当性向は70.8%となる。

 なお新横浜DCによるサービス提供終了によって、運用コスト低減や、固定資産である建物・設備劣化に対する改修・新規投資の抑制など、10年間で約40億円の費用削減効果が得られる見込みとしている。

 第1四半期(4月~6月)は売上高が前年同期比6.0%増の86億88百万円、営業利益が1億54百万円(前年同期は2億26百万円の赤字)、経常利益が1億73百万円(同2億16百万円の赤字)、純利益が86百万円(同2億49百万円の赤字)だった。

 ITサービス事業はヘルスケアの売上が回復して営業赤字が縮小した。ネットビジネス事業は電子書籍配信サービスが好調に推移し、ソーシャルゲーム事業の自社開発終了も寄与して大幅増益だった。

 中期的にも、医療機関・製薬企業向けヘルスケア事業、Web-ERPソフト「GRANDIT」のサービスビジネス事業、そしてネットビジネス事業の重点3分野の成長が加速し、eコマース分野の構造改革効果も寄与して収益拡大基調が期待される。

■株価は悪地合いで8月の直近安値に接近だが、16年3月期配当増額を評価

 なお15年5月に厚生労働省東京労働局から、子育てサポートに積極的に取り組む企業として認定マーク「くるみん」を取得した。出産・育児の他にも、配偶者の看護や両親の介護などによって、一時的に就業が困難になるような事態を想定し、社員の活躍機会をできるだけ損なわず、より柔軟な働き方ができるように制度の導入・改善に取り組んでいる。

 株主優待制度については毎年9月30日現在で1単元(100株)以上保有株主を対象として、連結子会社ドゥマンが運営する食品通信販売サイト「オーガニックサイバーストア」で利用可能なポイント(1ポイントを1円として利用)を保有株数と保有年数に応じて贈呈する。たとえば保有株数1000株以上で保有年数3年以上の場合は6000ポイントを贈呈する。

 自己株式取得については、必要に応じて機動的に実施予定としている。

 株価の動きを見ると、8月の直近安値981円から一旦は1200円台まで戻したが、悪地合いの影響で反落し、9月29日は1005円まで調整して8月の直近安値に接近した。

 9月29日の終値1008円を指標面(業績・配当予想修正後)で見ると、今期予想連結PER(会社予想連結EPS31円09銭で算出)は32~33倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間22円で算出)は2.2%近辺、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS762円15銭で算出)は1.3倍近辺である。なお時価総額は約290億円である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線を割り込んで調整局面だが、52週移動平均線がサポートラインとなりそうだ。16年3月期配当予想の増額を好感して反発展開が期待される。

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