【どう見るこの相場】急落と反発の狭間で:市場の需給とファンダメンタルズのせめぎ合い

■投資家の心理を揺さぶる相場の波

 日米の高速エレベーター相場は、日替わりで上り下りと忙しい。とくに史上最高値水準にいるタワーマンション相場の下りは、加速度も重力も半端ではない。新年度相場入り直後の4月第1週は、日経平均株価は、上りが2日間、下りが3日間の2勝3敗の負け越しで週間で1377円安、3.4%の急落と連続週間下落幅を悪化させた。米国のダウ工業株30種平均(NYダウ)は1勝4敗の負け越しで、前週末5日に307ドル高と反発したものの、週間では903ドル安、2.2%の下落率とこちらも連続週間下落幅が悪化した。

 今週の4月第2週は、まだ下りが続くのかそれとも上りボタンを押してへ方向転換するのか、それとも引き続き上り下りの日替わりメニューなのか、タワーマンション相場の最上階にはアッという間の急落でハシゴを外された市場参加者も多いだけに、週明けのエレベーター始動の方向性が重要ポイントとなるのはいうまでもない。ただエレベーターの上げ下げは、需給要因によるものかファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)の変化によるものかで判断が分かれる可能性があるからだ。

 急落相場が、年度初めの機関投資家の「益出し」売りの需給要因によるもなら、1週間で売りは一巡し、機関投資家の「ドデン買い転換」やハシゴを外された投資家の粘り勝ち、引かれ玉のリバウンドも期待される。ファンダメンタルズ要因となると、なおぐずつきそうだ。米国の政策金利は、市場の期待通りに6月11日、12日開催のFRB(米連邦準備制度理事会)のFOMC(公開市場委員会)で引き下げられるのか、為替は、日米金利差縮小で円高・ドル安にトレンド転換するのか、中東の紛争緊迫化は、イランによるホルムズ海峡封鎖へのエスカレートして地政学リスクを悪化させるのかなどなど、日々ライブ配信されて市場マインドを振り回すのは間違いない。

 しかも足元のマーケット動向は、投資セオリーからはやや違和感がある。前週5日の米国市場では、安全資産の国債が売られ10年物国債利回りが上昇したのにハイテク株に買い戻しが入り、長期金利が上昇しているのに金先物価格が、1トロイオンス=2350.0ドルと連日の最高値更新となり、原油先物(WTI)価格は、1ドル=87.63ドルと5カ月ぶりの高値に買われた。コモディティ価格は、国内銅建値も史上最高値へ上昇しており、米国ではインフレ鈍化が先取りされているのに、またぞろ「インフレはモノ」の投資セオリーの復活を思わせる。ここからのフアンダメンタルズはさまざまに枝分かれしそうで、投資スタンスも「プランA」、「プランB」、「プランC」などの対応策の準備が怠れない。

 そこで今週の当コラムでは、「プランA」、「プランB」、「プランC」のいずれに該当するかは定かではないが、「別線プラン」にアプローチすることにした。あの日本銀行の黒田東彦前総裁を「ノルム」として苦しめ続けた節約志向、低価格志向、生活防衛意識のマークである。岸田文雄首相のチャッチコピーは、「賃上げと物価の好循環」でこれに6月中の定額減税が加わり、各種報道では「賃上げと定額減税と物価の好循環」をアピールして、6月解散、7月総選挙乗り切りを画策しているとの政治プランがかまびすしい。しかし、4月には2806品目の加工食品や電気料金などが値上げされ、75歳以上の後期高齢者の医療保険料も引き上げられ、原油先物価格は5カ月ぶりの高値となっているのに、円安・ドル高が収まる気配はありそうもないとアゲインストである。現に前週末5日に発表された今年2月の家計調査では、消費支出(二人以上の世帯)は、実質0.5%減と12カ月連続で前年同月を下回った。

 マーケットの方でも、節約志向・低価格志向・生活防衛関連株が動意含みである。100円ショップ株が業績を上方修正し、リユース株の月次売上高が連続プラスとなって高値追いとなっている。100円ショップ株の業績は一時、円安・ドル高の進行で調達コストが上昇し一部価格改定をしたことで伸び悩んだが、セルフレジの導入などコス削減が進み低迷脱出となったのかもしれない。リユース店も、金先物価格と国内小売り価格の最高値更新で店頭での貴金属の買い取り・再販に拍車がかかる可能性もある。株式投資もショッピングも、安値での一品の掘り出しは最上の醍醐味、楽しみであり、諺の「安物買いの銭失い」を回避しつつ、そのお買い得感に期待したい。(情報提供:日本インタビュ新聞社・Media-IR 株式投資情報編集部)

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