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エイトレッドは下値切り上げ、25年3月期も収益拡大基調
- 2024/4/9 11:19
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
エイトレッド<3969>(東証スタンダード)はワークフローシステムのリーディングカンパニーとして、大手・中堅企業向けパッケージ型AgileWorksと小規模企業向けクラウド型X-point Cloudを2本柱としている。さらに3月25日にはAgileWorksクラウド版をリリースした。なお4月24日~26日開催(東京ビッグサイト)のJapan IT Week(春)に出展する。24年3月期は2桁増収増益予想としている。主力のX-point CloudとAgileWorksが好調に推移し、積極投資による人件費や広告宣伝費などの増加を吸収する見込みだ。さらに24年7月にはX-point Cloudの価格体系変更を予定しており、積極的な事業展開で25年3月期も収益拡大基調だろう。株価は小動きだが徐々に下値を切り上げている。出直りを期待したい。
■ワークフローシステムの開発・販売
ソフトクリエイトホールディングス<3371>の連結子会社で、ワークフローシステム(ソフトウェア)の開発・販売およびクラウドサービスを展開している。
ワークフローシステムとは、企業における稟議書、経費精算申請書、各種届け出書など、稟議・申請から承認・決裁に至る事務工程(ワークフロー)を電子化(システム化)するソフトウェア製品である。ワークフローシステムを導入することにより、業務プロセスの効率化(作業工数削減や時間短縮)、ペーパーレス化によるコスト削減(用紙・印刷・郵送・保管に係るコストの削減)、内部統制の強化(意思決定プロセスや承認日時のデータ化・可視化)などのメリットが得られる。
主力製品は、大手・中堅企業向けパッケージ型AgileWorks、および小規模企業向けクラウド型X-point Cloudである。23年8月にはAgileWorksの13年ぶりとなるメジャーバージョンアップ版の出荷を開始した。また24年3月にはAgileWorksクラウド版をリリースした。AgileWorksパッケージ版は従業員数1000名~数万名といった大規模組織向けのワークフローシステムだが、AgileWorksクラウド版は従業員数500名程度の企業でも手軽に利用できるため、より幅広い企業規模のユーザーに提供することが可能になる。
なおクラウド型X-point Cloudへの移行により、以前の主力製品であった小・中規模企業向けのパッケージ型X-pointは22年3月に新規ライセンス販売を終了した。さらに25年3月には通常サポート終了、27年3月には延長サポート・追加ライセンス販売終了予定である。X-pointの新規ライセンス販売終了に伴って、AgileWorksへのアップセル、またはX-point Cloudへの移行を促進している。
23年12月にはX-point Cloudが、公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)が認証する令和3年度改正基準の「電子取引ソフト法的要件認証」を取得した。24年1月には情報セキュリティマネジメントシステムの国際規格「ISO27001/ISO27017」を取得した。
23年3月期の製品別売上高は、クラウドサービスX-point Cloudが22年3月期比17.8%増の8億71百万円、大手・中堅企業向けパッケージ型AgileWorksが1.7%減の9億69百万円、パッケージ型X-pointが15.9%減の3億26百万円だった。AgileWorksは半導体不足の影響を受けた。X-pointは22年3月に新規ライセンス販売を終了した。
ストック売上高は第1四半期が4億16百万円、第2四半期が4億26百万円、第3四半期が4億44百万円、第4四半期が4億56百万円、ストック売上比率は第1四半期が78.3%、第2四半期が81.1%、第3四半期が78.3%、第4四半期が83.8%だった。
■社内文書電子化のリーディングカンパニー
社内文書(申請書・稟議書)電子化のリーディングカンパニーで、22年10月にはワークフローシステムのシリーズ累計導入社数が4000社を突破した。また複数の市場調査レポートでワークフロー市場における出荷金額・売上金額実績シェア1位を獲得している。
アイ・ティ・アールの「ITR Market View:RPA/OCR/BPM市場2021」では、AgileWorksの伸長も寄与してワークフロー市場における20年度ベンダー別売上金額シェア1位、X-point CloudがSaaS型ワークフロー市場ベンダー別売上金額で16年度から6年連続シェア1位を獲得した。
デロイト トーマツ ミック経済研究所の「コラボレーション・モバイル管理ソフトの市場展望2023年度版」では、X-point CloudがSaaS・ASP型ワークフロー市場シェア(出荷金額)で11年度から12年連続シェアNO.1(22年度実績の金額シェア25.1%)となった。さらにSMB(100人未満)向けワークフロー市場シェアでも12年連続NO.1(同45.2%)となった。また、22年度のワークフロー市場全体(パッケージ+SaaS・ASP型)のベンダー別売上金額シェアでは、パッケージ型X-pointの新規ライセンス販売を終了したものの、AgileWorksの伸長も寄与して12年連続2位となった。同社は特に小・中規模企業向けを強みとしている。
テクノ・システム・リサーチの「2022年SaaSワークフロー市場データ」においては、X-point Cloudが、従業員数別メーカーシェア100人未満カテゴリーおよび100人以上1000人未満カテゴリー、売上高別メーカーシェア100億円未満カテゴリーおよび100億円以上1000億円未満カテゴリーで、それぞれシェアNO.1を獲得した。
スマートキャンプ社が、今もっとも評価されているSaaSを表彰する「BOXIL SaaS AWARD Summer 2023」ワークフローシステム部門においては、X-point CloudがGood Serviceを受賞した。
富士キメラ総研の「ソフトウェアビジネス新市場2023年版」においては、X-point CloudがSaaSワークフロー市場占有率推移(金額)で、7年連続(16年度~22年度)でシェア第1位を獲得した。
アイティクラウド「ITreview Grid Award 2024 Winter」では、AgileWorksおよびX-point Cloudが、ワークフロー部門において最高位の「LEADER」を8期連続で受賞した。
■開発特化型企業
事業戦略の基本は、日本型業務プロセスに適した製品によって他社製品との差別化を図る、導入企業ごとの個別カスタマイズを行わずに開発コストを抑制する、開発に特化して販売パートナー企業(販売代理店)を活用するとしている。販売パートナーは大手SIerなどで構成され、全国に営業網を構築している。
■ワークフローシステム「デジタル申請・稟議書」市場は拡大基調
電子文書を導入せずに、依然として紙・手書きベースで事務処理を行っている企業が多いが、今後は中堅・中小企業においても、業務効率化を実現するワークフローシステム「デジタル申請・稟議書」の導入が加速し、市場は拡大基調が予想される。こうした事業環境に対応し、AgileWorksとX-point Cloudを2本柱として、カバレッジ拡張や他社サービスとの連携を強化しながら売上拡大を推進する方針だ。
22年1月にはワークフローの認知度向上に向けて、中小企業のチカラが運営する「中小企業からニッポンを元気にプロジェクト」に参画し、同プロジェクト公式アンバサダーの郷ひろみ氏を起用したPR活動を開始した。また毎月26日を「フローの日」と定め、マーケットリサーチ等を活用した情報のマンスリー発信も開始した。
22年3月にはクラウド型のX-point Cloudについて、ウェブ上で外部のクラウドサービスと連携できる機能を公開した。顧客の利便性向上を目指すとともに、認知度向上や新たなサービス・市場創出につなげるとしている。22年6月には、SaaS事業者向け連携開発のストラテジットと業務提携、チャットボット大手のチャットプラスと業務提携した。
■24年3月期2桁増収増益予想、25年3月期も収益拡大基調
24年3月期の業績(非連結)予想は売上高が23年3月期比10.3%増の23億90百万円、営業利益が10.1%増の11億円、経常利益が10.0%増の11億円、当期純利益が11.6%増の7億48百万円としている。配当予想は23年3月期比2円増配の26円(第2四半期末13円、期末13円)としている。連続増配予想で、予想配当性向は26.0%となる。
第3四半期累計は売上高が前年同期比11.6%増の18億12百万円、営業利益が4.3%増の7億52百万円、経常利益が4.3%増の7億53百万円、四半期純利益が5.2%増の5億05百万円だった。
増収増益と順調だった。主力のクラウドサービスX-point Cloud、大手・中堅企業向けパッケージ型AgileWorksが好調に推移し、積極投資による人件費や広告宣伝費などの増加を吸収した。
製品別の売上高は、クラウドサービスX-point Cloudが新規導入企業数の順調な増加やパッケージ型X-pointからの移行により22.6%増の7億81百万円、大手・中堅企業向けパッケージ型AgileWorksがメジャーバージョンアップ(23年8月4日~)に伴う買い控えの影響が解消して9.4%増の8億11百万円だった。パッケージ型X-pointはクラウドへの移行に伴う新規ライセンス販売終了(22年3月)のため10.0%減の2億18百万円だった。Cloud比率は3.8ポイント上昇して43.1%となった。全体のストック売上高比率は第1四半期が87.8%、第2四半期が77.6%、第3四半期が79.4%だった。
営業利益(+14百万円)の変動分析は、クラウドサービス売上増加で+1億44百万円、パッケージ売上増加で+45百万円、人件費増加で▲45百万円、減価償却費増加で▲41百万円、クラウドインフラコスト増加で▲29百万円、広告宣伝費増加で▲12百万円、その他で▲48百万円だったとしている。
なお全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が5億40百万円で営業利益が2億06百万円、第2四半期は売上高が6億32百万円で営業利益が2億76百万円、第3四半期は売上高が6億39百万円で営業利益が2億69百万円だった。売上高は第3四半期、営業利益は第2四半期が、四半期ベースで過去最高となっている。
通期予想は据え置いている。製品別売上高の計画は、X-point Cloudが21.6%増の10億60百万円、AgileWorksが10.6%増の10億72百万円、X-point(22年3月に新規ライセンス販売終了)が20.9%減の2億58百万円としている。
クラウドサービスが牽引し、人件費やクラウドインフラコストなどの増加を吸収して2桁増収増益予想としている。営業利益(+1億01百万円)の変動分析は、クラウドサービス売上増加で+1億88百万円、パッケージ売上増加で+34百万円、人件費増加で▲1億18百万円、減価償却費増加で▲14百万円、クラウドインフラコスト増加で▲16百万円、その他で+27百万円の見込みとしている。
第3四半期累計の進捗率は売上高76%、営業利益69%、経常利益69%、当期純利益68%である。利益進捗率がやや低水準だが、ストック収益が積み上がる収益構造であり、通期会社予想の達成は可能と考えられる。さらに24年7月にはX-point Cloudの価格体系変更を予定(2月15日公表)しており、積極的な事業展開で25年3月期も収益拡大基調だろう。
■株主優待制度は9月末と3月末の年2回
株主優待制度は年2回、毎年9月末および3月末時点の株主を対象として、保有株式数に応じてオリジナルQuoカードを贈呈(詳細は会社HP参照)する。また従来の株主優待制度に加えて、23年7月20日に長期保有株主優待制度の新設を発表した。毎年3月末時点で2年超保有株主(3月末、9月末を基準日として、それぞれの株主名簿に連続5回以上記録された株主)を対象として、保有株式数に応じてオリジナルQuoカードを贈呈(詳細は会社HP参照)する。24年3月末対象より適用開始した。
■株価は下値切り上げ
株価はやや小動きだが徐々に下値を切り上げている。出直りを期待したい。4月8日の終値は1420円、前期推定PER(会社予想のEPS99円90銭で算出)は約14倍、前期推定配当利回り(会社予想の26円で算出)は約1.8%、前々期実績PBR(前々期実績のBPS537円79銭で算出)は約2.6倍、そして時価総額は約106億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)