【アナリスト水田雅展の銘柄分析】三洋貿易は8月の直近安値から下値切り上げ、16年9月期も増収増益基調

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 三洋貿易<3176>(東1)は自動車関連向けのゴム・化学関連商品を主力とする専門商社である。株価は悪地合いの影響を受けた8月の直近安値から下値を切り上げる動きだ。15年9月期業績再増額の可能性、16年9月期増収増益基調、そして指標面の割安感に見直し余地が大きい。調整が一巡して8月の上場来高値圏を目指す展開だろう。

■自動車向けゴム・化学関連製品が主力の専門商社

 ゴム関連商品、化学品関連商品、産業資材関連商品、科学機器関連商品、機械・資材関連商品の5分野に事業展開する専門商社である。メーカー並みの技術サポート力に加えて、財務面で実質無借金経営であることも特徴だ。

 主力の自動車関連向けは、各種合成ゴム・添加剤、タイヤ用特殊クレー、防振ゴム・ホース原料、自動車用シート部品(レザーシート、シートヒーター、ランバーサポート、シートセンサーなど)といった高付加価値品を中心に展開している。シートヒーターはカーボンファイバー仕様の市場を独占し、ランバーサポートは世界市場6割を占有している。

 飼料・エネルギー・リサイクル関連では飼料や固定燃料などを製造するペレットミルが高シェアだ。国内子会社のコスモス商事は地熱・海洋資源開発関連分野で掘削用機材の輸入販売・レンタルを手掛けている。

■重点領域への経営資源集中とM&Aも活用した業容拡大戦略を推進

 グループとして重点志向する事業領域への経営資源集中を進めるとともに、国内外でのM&Aも活用して業容拡大を図る戦略を推進している。15年3月にはエレクトロニクス関連商品卸売の連結子会社アロマンの株式をタクミ商事に譲渡した。

 そして15年9月には連結子会社のケムインターが、工業用洗剤輸入販売を手掛けるコムスタージャパンの全株式を取得して子会社化(当社の孫会社化)した。工業用洗剤市場に参入して当社既存事業とのシナジー効果を目指す方針だ。

 海外は米国、メキシコ、タイ、中国(上海、香港)、インド、ベトナム、インドネシアに展開している。そして15年7月にはアジア展開強化策の一環で、シンガポールの工業用フィルム販社であるBPS社を子会社化(シンガポール三洋貿易に社名変更)した。北米、中国に加えて、アセアン市場における当社既存事業とのシナジー効果が期待される。

■15年9月期再増額の可能性、16年9月期も増収増益基調

 前期(15年9月期)の連結業績予想(4月27日に利益を増額修正)は、売上高が前々期比5.8%増の620億円、営業利益が同16.4%増の37億円、経常利益が同10.9%増の39億円、純利益が同38.7%増の27億50百万円としている。

 配当予想(4月27日に増額修正)は同14円増配の年間48円(第2四半期末24円、期末24円)で、予想配当性向は25.0%となる。配当の基本方針は連結配当性向25%を下限の目途としている。

 主力のゴム関連商品や自動車用各種部品が好調に推移し、環境関連機械の伸長も期待される。セグメント別売上高の計画はゴム・化学品事業が同4.5%増の252億円、機械資材事業が同7.4%増の169億円、海外現地法人が同8.3%増の136億50百万円、国内子会社が同1.7%増の60億50百万円、その他が同14.5%減の2億円としている。なお売上総利益率は同0.5ポイント上昇の15.3%の計画としている。

 第3四半期累計(10月~6月)は売上高が前年同期比8.0%増の466億84百万円、営業利益が同24.9%増の31億04百万円、経常利益が同25.8%増の34億04百万円、純利益が同51.6%増の23億80百万円だった。

 主力の自動車用各種部品などが好調に推移して増収増益だった。売上総利益率は15.8%で同1.0ポイント上昇した。経常利益は営業外での為替差益の増加、純利益はアロマンの株式譲渡に伴う法人税負担額の減少も寄与した。

 セグメント別(連結調整前)の動向を見ると、ゴム・化学品事業は売上高が同2.3%減の177億89百万円だが、営業利益が同5.3%増の8億89百万円だった。主力の自動車向け合成ゴムが堅調だった。機械資材事業は売上高が同15.0%増の134億04百万円、営業利益が同36.4%増の16億09百万円だった。自動車用各種部品が好調だった。

 海外現地法人は売上高が同11.9%増の96億92百万円、営業利益が同52.5%増の3億97百万円だった。米国、上海、タイでゴム関連商品が好調だった。国内子会社は売上高が同24.9%増の56億28百万円、営業利益が同33.9%増の5億88百万円だった。コスモス商事の海洋・船舶関連が回復し、ケムインターの化学品や機械・電子部品も好調だった。

 四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(10月~12月)153億86百万円、第2四半期(1月~3月)156億16百万円、第3四半期(4月~6月)156億82百万円、営業利益は第1四半期9億82百万円、第2四半期10億54百万円、第3四半期10億68百万円だった。順調に推移している。

 通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が75.3%、営業利益が83.9%、経常利益が87.3%、純利益が86.6%である。当社の第2四半期が3月期決算企業の期末にあたるため、設備投資関連の構成比が高まる傾向があることを考慮しても、進捗率は高水準である。

 自動車関連の合成ゴム商材や自動車シート用部品など、高付加価値の主力商材が国内外で好調に推移して、第3四半期累計の売上総利益率は計画を上回る水準で推移している。また円安による輸入コスト上昇に対応して、国内市場における輸入材料の価格見直しを進める一方で、円安を利用して化学品の輸出も強化している。

 前期(15年9月期)業績の会社予想は再増額の可能性があり、さらに今期(16年9月期)も増収増益基調だろう。

■中期成長に向けて新規ビジネスやM&A戦略も推進

 中期成長に向けた戦略として、新規ビジネスのグリーンイノベーション領域(地熱発電・海洋資源開発・CO2地中貯留、木質バイオマス加工・ガス化熱電併給装置、太陽電池部材などの環境・資源エネルギー関連分野)の強化、ライフイノベーション領域(医薬中間体・原体、食品・バイオ関連向け各種分析機器、医療関連原材料などの生活関連分野)の強化、ASEAN地域や北中米地域などグローバル展開の強化、そしてM&A・アライアンス戦略の推進を強化する方針だ。

 中期目標数値として掲げていた15年9月期の売上高610億円、営業利益30億円のうち、営業利益目標は14年9月期に前倒しで達成している。中期的にも収益は拡大基調だろう。なお15年秋に次期中期経営計画を発表予定としている。

■株価は8月の直近安値から下値切り上げ、調整一巡して8月高値圏目指す

 株価の動きを見ると、8月10日の上場来高値1845円から、悪地合いの影響で8月25日の直近安値1350円まで急反落したが、その後は下値を切り上げる動きだ。

 10月1日の終値1542円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想連結EPS192円26銭で算出)は8倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間48円で算出)は3.1%近辺、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS1148円88銭で算出)は1.3倍近辺である。なお時価総額は約224億円である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線を割り込んだが、52週移動平均線がサポートラインの形となった。また日足チャートで見ると25日移動平均線突破の動きを強めている。15年9月期業績再増額の可能性、16年9月期増収増益基調、そして指標面の割安感に見直し余地が大きい。調整が一巡して8月の上場来高値圏を目指す展開だろう。

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