ケンコーマヨネーズは上値試す、25年3月期も収益拡大基調

 ケンコーマヨネーズ<2915>(東証プライム)は、マヨネーズ・ドレッシング分野からタマゴ加工品やサラダ・総菜分野へと事業領域を拡大し、成長戦略として4つのテーマ(BtoBtoC、イノベーション、構造改革、グローバル)とサステナビリティ経営に取り組んでいる。24年3月期はファストフード向けを中心とする売上回復、価格改定効果、生産性向上効果などにより大幅増益・増配予想としている。さらに25年3月期も積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は急伸して年初来高値を更新する場面があった。その後は地合い悪化の影響を受けて反落したが、週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインの形であり、利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。なお5月13日に24年3月期決算発表を予定している。

■マヨネーズ・ドレッシング類、ロングライフサラダの大手

 サラダ・総菜類、タマゴ加工品、マヨネーズ・ドレッシング類の調味料・加工食品事業、フレッシュ総菜(日配サラダ、総菜)およびグループ内生産受託の総菜関連事業等、その他(サラダカフェなど)を展開している。ロングライフサラダは国内市場シェア1位である。ショップ事業のサラダ専門店Salad Cafe(サラダカフェ)は、対面の量り売りサラダや弁当の販売を展開し、新たなブランド創出に向けて百貨店など駅近店舗戦略を推進している。

 23年3月期のセグメント別売上高は調味料・加工食品事業が636億78百万円(マヨネーズ・ドレッシング類が238億03百万円、タマゴ加工品が204億46百万円、サラダ・総菜類が181億57百万円、その他が12億70百万円)、総菜関連事業が177億33百万円、その他が9億51百万円だった。セグメント別経常利益は調味料・加工食品事業が▲2億35百万円、総菜関連事業が7億20百万円、その他が14百万円、調整額が▲3億29百万円だった。販路別の売上高構成比は、外食が27.2%、量販店が27.1%、CVSが24.8%、パンが11.9%、給食が4.4%、その他が4.6%だった。23年3月期は外食向けが回復傾向となった。

 収益面では、食用油、鶏卵、野菜などの原材料価格が変動要因となりやすく、プロダクトミックス、工場操業度、原燃料コストなどの影響を受ける。利益還元については連結ベースでの配当性向20%を意識し、配当の継続性に配慮しつつ、今後の成長と発展にあわせて安定配当水準を高めていくことを基本方針としている。

 なお同社は8月24日を「ドレッシングの日」と制定している。ドレッシングは野菜にかけて使用することが多いため、831(やさい)にかける→8×3×1=24で24日を、またカレンダーで見ると野菜の日(8月31日)の真上にあるのが8月24日であることから、野菜にドレッシングをかける様子をイメージして8月24日を「ドレッシングの日」と制定している。

■事業環境変化に対応して変革推進

 中期経営計画では、基本方針として4つのテーマ(BtoBtoC、イノベーション、構造改革、グローバル)とサステナビリティ方針に取り組み、事業環境変化に対応して企業価値向上と持続的な成長へ向けた変革を推進する。

 BtoBtoCでは、デザイン変更や簡便性・調理時間短縮など利便性を高めた商品開発による消費者へのブランド認知度向上、新しい生活様式やライフスタイル多様化に対応した小容量・常温商品の拡充・リニューアル、原材料価格高騰に対応した高付加価値・機能性商品の開発強化、ドラッグストアや大手スーパーなど取り扱い店舗増加によるマーケティング強化、WEB・オンライン動画や料理教室の活用による情報発信・販促活動の強化、自社ECサイトによる販売強化、サラダカフェのブランド創出・駅近店舗戦略などを推進している。

 イノベーションでは、賞味期限延長や植物性原料を中心に仕上げたプラントベース商品などSDGsを意識したメニュー・商品の開発、食品ロスの削減、地方創生・活性化につながる郷土料理の商品化や持続可能な農業支援、包装・資材の最適化、生産面でのカーボンニュートラルの実現、構造改革では業務プロセスや生産効率の改善、働きやすい職場環境づくり、人事制度改革、基幹システム再構築、コーポレート・ガバナンスの強化、グローバルでは輸出販売の強化、グローバル対応商品や輸出用長期賞味商品の拡充などを推進している。

 23年7月には、フードサービス業界向けロングライフサラダの新シリーズ「FDF(ファッションデリカフーズ) Plus」の発売を開始した。ロングライフサラダで同社最長となる90日の長期賞味期限で、美味しく食品ロス削減に寄与する。

 23年9月には新たなプラントベースフードとして、植物性原料を使用した「タマゴ風加工品」を展開すると発表した。プラントベース商品「HAPPY!! with VEGE」シリーズとして、植物性たまごの研究開発・販売を行うUMAMI UNITED JAPANと協業し、主力の「タマゴ加工品」の新たなカテゴリーとなる「植物性タマゴ加工品」として商品を開発・展開する。そして23年10月にはフードサービス業界向けプラントベース商品「HAPPY!! with VEGE」シリーズとして、たまご不使用のプラントベースのたまご風サラダ「まるでたまごのサラダ」の発売を開始した。

 地域活性化に関しては、22年3月に、鮮魚販売や水産食料品製造販売を行う鮮冷(宮城県女川町)、およびコンサルティング業務を行うくりや(北海道上川郡)と、地方創生に向けた活動を協働していくことで合意した。地域の食材を活かした商品・メニュー開発、食を通じた地域経済活性化など地域密着型の取り組みを推進する。

 サステナビリティへの取り組みも強化している。21年7月に「食を通じて世の中に貢献する」という企業理念に基づいてサステナビリティ方針を公開し、加工ロス削減による廃棄物削減などの目標を設定した。21年9月には「国連食料システムサミット2021」への支持表明とコミットメント提出を発表した。

 22年10月には、マヨネーズ・ドレッシング類の一部商品において環境配慮型包材(バイオマスインキ使用の包材)への切り替えや個装箱の見直しを順次拡大し、資材量とCO2削減を推進すると発表した。23年3月にはTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同を表明し、TCFD提言に基づく情報を開示した。また自社商品サイトにフードロスを減らす「食材使い切りレシピ」を公開した。

 23年5月には、関東ダイエットクックが関東圏の量販店バックヤード向けに、アジアン米飯キット2点を発売すると発表した。店舗での人手不足が深刻化するなか、簡単に調理でき、食品ロス削減につながるとしている。24年2月には、国際的な環境非政府組織(NGO)であるCDPが公表した「気候変動レポート2023」において、8段階評価のうち上位から3番目の「B」スコアに初めて認定された。

■24年3月期大幅増益・増配予想

 24年3月期の連結業績予想(2月13日付で上方修正)は、売上高が23年3月期比6.2%増の874億90百万円、営業利益が26.7倍の28億円、経常利益が17.2倍の29億円、親会社株主帰属当期純利益が4.9倍の23億90百万円としている。配当予想(2月13日付で期末5円上方修正)は23年3月期比13円増配の30円(第2四半期末10円、期末20円)で、予想配当性向は20.2%となる。

 第3四半期累計は売上高が前年同期比7.2%増の671億03百万円、営業利益が5.3倍の23億26百万円、経常利益が5.2倍の24億26百万円、親会社株主帰属四半期純利益が5.8倍の16億51百万円だった。

 コスト面では原材料価格・エネルギーコストが引き続き高い水準で推移したが、ファストフード向けを中心とする売上回復、価格改定効果、生産性向上効果などにより大幅増益で着地した。

 調味料・加工食品事業は売上高が8.3%増の523億45百万円、セグメント利益(調整前経常利益)が16億10百万円(前年同期は1億16百万円の損失)だった。サラダ・総菜類は価格改定効果や小容量サラダの増加などにより、マヨネーズ・ドレッシング類は価格改定効果や量販店向けマヨネーズの増加などにより、いずれも好調だった。タマゴ加工品は高病原性鳥インフルエンザ感染拡大に伴う供給制限を解除して回復基調だが、累計ベースでは減収だった。

 総菜関連事業等は売上高が4.0%増の140億63百万円、利益が30.9%増の8億06百万円だった。価格改定、生鮮売り場向け商品など販売カテゴリー拡大、宅配など販売チャネルの拡大などの効果により順調だった。

 なお全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が214億02百万円で営業利益が1億99百万円、第2四半期は売上高が223億61百万円で営業利益が5億83百万円、第3四半期は売上高が233億40百万円で営業利益が15億44百万円だった。第3四半期は価格改定効果などが本格化した形だ。

 通期は前回予想に対して売上高を90百万円、営業利益を15億80百万円、経常利益を16億円、親会社株主帰属当期純利益を18億20百万円、それぞれ上方修正して増収増益幅が拡大する見込みとした。第3四半期累計が大幅増益だったことに加え、高病原性鳥インフルエンザの発生状況、食用油・鶏卵価格の落ち着きなども考慮した。さらに25年3月期も積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株主優待制度は毎年3月末の株主対象

 株主優待制度(詳細は会社HP参照)は毎年3月末日現在の株主を対象として、保有株式数に応じて当社商品を贈呈している。

■株価は上値試す

 株価は急伸して年初来高値を更新する場面があった。その後は地合い悪化の影響を受けて反落したが、週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインの形であり、利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。4月19日の終値は2187円、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS148円44銭で算出)は約15倍、前期推定配当利回り(会社予想の30円で算出)は約1.4%、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS2281円75銭で算出)は約1.0倍、時価総額は約360億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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