日本エム・ディ・エムは調整一巡、25年3月期は収益改善基調

 日本エム・ディ・エム<7600>(東証プライム)は人工関節製品など整形外科分野を主力とする医療機器メーカーである。米国子会社オーソデベロップメント(ODEV)社製品を主力として、商社機能と開発主導型メーカー機能を融合した独自のビジネスモデルを展開している。24年3月期はインフレ影響や円安影響にとって売上原価率が悪化するため減益予想としている。ただし営業利益は第2四半期がボトムとなった可能性がありそうだ。そして25年3月期は積極的な事業展開で収益改善基調だろう。株価は反発力が鈍く安値圏でモミ合う形だが、1倍割れの低PBRも評価材料であり、調整一巡して出直りを期待したい。なお4月30日に24年3月期決算発表を予定している。

■整形外科分野の医療機器メーカー、米国子会社製品が主力

 人工関節製品、骨接合材料、脊椎固定器具など整形外科分野を主力とする医療機器メーカーである。米国子会社オーソデベロップメント(ODEV)社製品を主力として、商社機能と開発主導型メーカー機能を融合した独自のビジネスモデルを展開している。海外展開として、米国では販売体制強化と人工関節分野新製品導入による2桁成長を目指し、中国では合弁会社設立による米国ODEV社製品の輸入販売拡大と中国現地生産品の製造・販売開始を目指している。

 23年3月期のセグメント別(調整前)業績は、日本国内の売上高が1.9%増の123億56百万円で営業利益が33.2%減の12億31百万円、米国の売上高が17.6%増の127億82百万円で営業利益が22.8%減の6億47百万円だった。地域別・品目別売上高(売上控除前)は、日本の人工関節が0.4%増の47億38百万円、骨接合材料が5.0%増の43億22百万円、脊椎固定器具が1.9%増の31億85百万円、その他(人工骨など)が20.9%減の3億54百万円、そして米国の人工関節が26.5%増の89億10百万円、脊椎固定器具が54.8%増の40百万円だった。自社製品比率は80.6%で1,4ポイント上昇した。

 収益面の特性として、医療機器償還価格の影響や為替変動の影響を受けるほか、整形外科医療機器の販売は下期が繁忙期となる傾向があるため、業績も下期の構成比が高い特性があるとしている。

 なお22年1月に筆頭株主が異動した。日本特殊陶業が保有する株式を三井化学に譲渡(手続として売り出しによる譲渡)し、三井化学が筆頭株主となった。日本特殊陶業との資本業務提携を解消し、新たに三井化学と資本業務提携した。

■新製品の開発・調達拡大

 新製品としては、米国ODEV社との日米共同開発による適応症例拡大に向けたインプラント開発や、新素材インプラントや手術支援システムなど外部調達によるビジネス拡大を推進している。

 21年5月には米国ODEV社が中国WASTONと、中国現地生産品の製造・販売を目的とした合弁会社WOMA社を設立した。22年7月には米国ODEV社製造の人工股関節新製品「Promontoryヒップシステム」の日本における薬事承認を取得、米国ODEV社製造の脊椎ケージ「Vusion Ti3D ARCケージ」の日本における薬事承認を取得した。22年12月には米国ODEV社がMaterialise社(ベルギー)製の患者適合型人口膝関節手術用器械BKS Total PSIを共同開発し、米国医療施設向けに供給開始した。

 23年3月には米国ODEV社が、人工関節置換手術に使用するNaviswiss社製の人工股関節置換手術用ナビゲーションシステムNaviswiss Hip および人口膝関節置換手術用ナビゲーションシステムNaviswiss Kneeを米国医療施設向けに導入すると発表した。Naviswiss Hipは24年3月期第1四半期に導入予定、Naviswiss Kneeは24年3月期後半に導入予定である。

 23年9月にはインフィックスおよび細胞応用技術研究所と販売提携契約を締結した。膝関節早期治療製品PRP-FD(Plate Rich Plasma Freeze Dry)の医療施設向け販売を開始し、再生医療分野(膝関節)に参入する。23年11月には米国THINK社が開発した新型の手術支援ロボットシステムが、米国ODEV社製の人口膝関節「Balanced Knee System」および「BKS TriMax」を使用可能とするFDA承認を取得した。

 24年2月には米国ODEV社製の人工股関節新製品「Balanced Knee System Uni」の日本国内での販売開始を発表した。

 24年3月にはODEV社製造の人口膝関節製品BKS(Balanced Knee SYstem)に関して、中国の合弁会社WOMA社が中国における薬事承認を取得し、中国での製造を本格的に開始すると発表した。また、ODEV社の人工股関節新製品「Trivicta Hip Stem」が米国食品医薬品局(FDA)薬事承認を取得し、米国での販売を開始した。

■サステナビリティの取り組み強化

 サステナビリティの取り組みも強化している。22年3月にはTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同を表明するとともに、同提言に賛同する企業や金融機関からなるTCFDコンソーシアムに参画した。22年6月には国際連合が提唱する「国連グローバル・コンパクト(UNGC)」に署名し、参加企業として登録された。併せて、UNGCに署名している日本企業などで構成される「グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン」に加入した。

 23年7月にはFTSE Russellにより構築された日本株ESG指数「FTSE Blossom Japan Sector Relative Index」の構成銘柄に初めて選出された。24年2月には、国際的な環境評価の情報開示システムを運用するCDPから、環境問題によるリスクや影響を管理している企業として、スコアレベル「B-」評価として認定された。

■24年3月期は減益予想だが25年3月期は収益改善基調

 24年3月期の連結業績予想(23年10月30日付で売上高を上方、利益を下方修正)は売上高が23年3月期比10.8%増の236億円、営業利益が11.1%減の18億円、経常利益が9.5%減の18億50百万円、親会社株主帰属当期純利益が19.2%減の11億50百万円としている。下期の想定為替レートは1USドル=150円(前回予想は1USドル=135円、23年3月期実績は1USドル=134.95円)である。配当予想は23年3月期比1円増配の14円(期末一括)としている。連続増配予想で予想配当性向は32.0%となる。

 第3四半期累計は売上高が前年同期比8.8%増の169億93百万円、営業利益が21.7%減の11億83百万円、経常利益が20.6%減の12億25百万円、親会社株主帰属四半期純利益が35.6%減の7億32百万円だった。

 売上面は日本国内での獲得症例数伸長や米国での新規顧客開拓による人口膝関節製品の獲得症例数伸長などにより増収だが、利益面はサプライチェーン上の問題を回避するための外部ベンダー活用、インフレに伴う調達コストの上昇、為替の円安影響、日本国内における償還価格引き下げの影響、さらに支払手数料、人件費、販促費の増加などで減益だった。

 セグメント別(調整前)に見ると、日本は売上高が6.2%増の95億41百万円で営業利益が1.1%増の8億33百万円、米国は売上高が11.8%増の105億10百万円で営業利益が43.5%減の3億28百万円だった。なお米国の外部顧客向け売上高は、USドルベースでは6.4%増の52百万円USドル、円換算後では12.2%増の74億52百万円だった。米国売上の為替換算レートは前年同期が1USドル=135.41円、当期が1USドル=142.76円だった。

 医療機器類の品目別・地域別売上高(円換算後)は、人工関節は日本が5.3%増の36億29百万円、米国が12.3%増の74億27百万円、骨接合材料(日本)は7.1%増の33億15百万円、脊椎固定器具(日本と米国の合計)は4.6%増の24億97百万円だった。なお自社製品比率は前年同期比0.5ポイント低下して80.3%となった。

 全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高54億02百万円で営業利益3億46百万円、第2四半期は売上高55億50百万円で営業利益2億71百万円、第3四半期は売上高60億41百万円で営業利益5億66百万円だった。営業利益は第2四半期をボトムとして回復傾向である。

 通期の連結業績予想は据え置いている。売上面は、日本国内では施設限定販売している一部新製品の全国展開遅延の影響、米国では人工股関節の大型新製品のFDA承認取得遅延の影響を受けるが、全体としては獲得症例数伸長や為替の円安影響により2桁増収の見込みとしている。利益面については、研究開発費を除く販管費の圧縮などを推進するものの、下期も上期と同様に売上原価率の悪化を見込み、全体として減益予想としている。

 第3四半期累計の進捗率は売上高72%、営業利益66%、経常利益66%、親会社株主帰属当期純利益64%とやや低水準の形だが、営業利益は第2四半期がボトムとなった可能性がありそうだ。そして25年3月期は積極的な事業展開で収益改善基調だろう。

■株価は調整一巡

 株価は反発力が鈍く安値圏でモミ合う形だが、1倍割れの低PBRも評価材料であり、調整一巡して出直りを期待したい。4月22日の終値は673円、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS43円71銭で算出)は約15倍、前期推定配当利回り(会社予想の14円で算出)は約2.1%、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS880円64銭で算出)は約0.8倍、そして時価総額は約178億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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