ヒーハイストはモミ合い煮詰まり感、25年3月期収益回復期待

 ヒーハイスト<6433>(東証スタンダード)は小径リニアボールブッシュの世界トップメーカーである。工作機械や半導体製造装置などに使用される直動機器を主力として、精密部品加工やユニット製品も展開している。成長戦略として、中長期的な自動化関連の需要増加に対応するため、直動機器の「スマート生産プロジェクト」の一環とする設備投資や開発投資を推進している。なお4月11日には奨学金返還支援制度の導入、4月15日には社員持株会の奨励金付与率引き上げ、4月19日には国際協力活動の支援を発表した。24年3月期は赤字予想としている。主力の直動機器は堅調だが、全体として需要低迷が長期化していることに加えて、減価償却費の増加なども影響する見込みだ。ただし四半期別に見ると営業赤字が縮小傾向となっている。さらに直動機器の需要は拡大基調であり、積極的な事業展開で25年3月期の収益回復を期待したい。株価はモミ合い展開だが煮詰まり感を強めている。1倍割れの低PBRも評価材料であり、出直りを期待したい。

■小径リニアボールブッシュの世界トップメーカー

 小径リニアボールブッシュの世界トップメーカーで、20年7月に商号をヒーハイスト精工から現在のヒーハイストに変更した。リニアボールブッシュは機械装置の稼働部に用いられる部品で、金属と金属の接触面を鋼球が転がりながら移動することで摩擦による影響を低減し、機械装置の寿命を延ばす役割を担っている。

 独自の球面加工技術や鏡面加工技術をコア技術として、工作機械や半導体製造装置などに使用されるリニアボールブッシュや球面軸受けなどの直動機器、レース用部品や試作部品の受託加工などの精密部品加工、液晶製造装置向けなどのユニット製品を展開している。直動機器の「スマート生産プロジェクト」の一環とする設備投資や開発投資を推進し、23年5月には埼玉工場の新工場A棟が稼働開始した。

 23年3月期の品目別売上高は、直動機器が22年3月期比12.5%減の15億25百万円、精密部品加工がレース用部品の減少で14.5%減の6億74百万円、ユニット製品がリピート需要の増加などで2.0%増の2億13百万円だった。主要販売先はTHK<6481>および本田技研工業<7267>である。収益面では産業機械・電子部品・自動車関連の設備投資動向の影響を受けやすく、設備投資関連のため四半期業績が変動しやすい特性もある。

■生産能力向上と採算性向上を推進

 中期的に目標とする経営指標としては営業利益率10%以上、ROE8%以上、自己資本比率70%以上、配当性向20~30%を掲げている。

 中期経営計画(毎期更新するローリング方式)では、24年3月期の計画として売上高24億56百万円、売上総利益5億16百万円、売上総利益率21.0%、営業利益15百万円、営業利益率0.6%、そして27年3月期の計画として売上高30億44百万円、売上総利益8億69百万円、売上総利益率28.6%、営業利益3億83百万円、営業利益率12.6%を掲げている。

 品目別売上高の計画は、24年3月期の直動機器16億47百万円、精密部品加工5億50百万円、ユニット製品2億59百万円、27年3月期の直動機器21億44百万円、精密部品加工6億円、ユニット製品3億円としている。

 基本戦略としては、17年および21年の直動機器の需要増加に対して生産が追いつかず機会損失が発生した教訓を踏まえ、21年~24年は減価償却を大きく上回る設備増強を実施し、トップライン(売上高)の向上を図っている。

 事業別成長戦略としては、直動機器についてはスマート生産プロジェクトによる安定生産・原価低減、市場シェアの低い形番の生産増強によるシェア拡大、新製品(LMHB)の原価低減と販売数増加、システム化による納期対応強化、設備投資ピークアウト・減価償却費減少やコスト削減による利益率向上などを推進する。精密部品加工についてはホンダグループのモータースポーツ参戦のレース用部品供給継続によって収益を確保する。ユニット製品については仕様標準化による設計効率化、新製品NAF HWシリーズの拡販・ラインナップ拡充、海外市場への展開などを推進する。

 23年11月には、内閣府・中小企業庁並びに埼玉県などが推進する「未来を拓くパートナーシップ構築推進会議」の趣旨に賛同し、パートナーシップ構築宣言を公表した。23年12月には本社・埼玉工場のA棟建屋等に太陽光発電設備を設置した。

 なお4月8日には、世界に通用するドライバーの育成を目指しているホンダ・フォーミュラ・ドリーム・プロジェクト(HFDP)を支援し、HFDP with B―Max Racing Teamを応援すると発表した。4月11日には奨学金返還支援制度の導入を発表した。人材の確保と定着の向上につなげる。4月15日には人的資本経営の取り組みの一環、および株式市場での流動性向上を図ることを目的として、社員持株会の奨励金付与率を現行の5%から50%に引き上げると発表した。4月19日には社会貢献への取り組みの一環として、特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパンのチャイルド・スポンサーシップを通じて国際協力活動を支援すると発表した。

■資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応

 なお、23年3月末時点において流通株式時価総額がスタンダード市場の上場維持基準に適合しない状況となったため、23年6月27日付で上場維持基準適合に向けた計画書を作成・開示した。

 25年3月末までを計画期間として、中期経営計画で掲げた基本戦略および事業別成長戦略の着実な実行によって業績の向上を図るとともに、ESG経営、株主還元、IR活動も強化して企業価値の向上(株価上昇による時価総額向上)を図り、上場維持基準の適合を目指す方針としている。

 23年12月には「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」について、改善に向けた方針を決議・公表している。引き続き中期経営計画で掲げた重点施策の着実な遂行による業績の拡大、ROEの向上、生産・人的資本など成長投資の継続、株主還元の強化、IR活動の充実などを推進して企業価値の向上を目指すとしている。

■24年3月期赤字予想だが25年3月期収益回復期待

 24年3月期の連結業績予想(2月9日付で下方修正)は、売上高が23年3月期比7.5%減の22億71百万円、営業利益が1億63百万円の損失(23年3月期は5百万円の損失)、経常利益が1億60百万円の損失(同3百万円の利益)、親会社株主帰属当期純利益が1億17百万円の損失(同2百万円の損失)としている。なお配当予想については、23年3月期と同額の1円(期末一括)を据え置いたが、従来予想の普通配当1円を上場20周年記念配当1円に変更した。

 主力の直動機器は堅調だが、全体として需要低迷が長期化しているため、前回予想に対して売上高を1億85百万円、営業利益を1億79百万円、経常利益を1億76百万円、親会社株主帰属当期純利益を1億24百万円、それぞれ下方修正した。

 第3四半期累計は、売上高が前年同期比0.4%減の17億69百万円、営業利益が99百万円の損失(前年同期は0百万円の損失)、経常利益が95百万円の損失(同9百万円の利益)、親会社株主帰属四半期純利益が69百万円の損失(同1百万円の利益)だった。

 主力の直動機器は増収だったが、全体として需要低迷が想定以上に長期化していることに加えて、設備増強に伴う減価償却費の増加、原材料価格や物流費などの高止まりにより各利益は赤字だった。部門別売上高は、直動機器が生産力強化とタイムリーな納品対応により12.2%増の12億43百万円、精密部品加工がレース用部品の減少で26.2%減の3億80百万円、ユニット製品が設備投資関連の需要回復遅れで4.1%減の1億45百万円だった。

 なお全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が5億07百万円で営業利益が64百万円の損失、第2四半期は売上高が6億19百万円で営業利益が32百万円の損失、第3四半期は売上高が6億43百万円で営業利益が3百万円の損失だった。営業赤字が縮小傾向となっている。

 24年3月期は下方修正して赤字予想となったが、四半期別に見ると営業赤字が縮小傾向となっている。さらに直動機器の需要は拡大基調であり、積極的な事業展開で25年3月期の収益回復を期待したい。

■株価はモミ合い煮詰まり感

 株価は上値が重くモミ合い展開だが煮詰まり感を強めている。1倍割れの低PBRも評価材料であり、出直りを期待したい。4月24日の終値は256円、前期推定配当利回り(会社予想の1円で算出)は約0.4%、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS515円74銭で算出)は約0.5倍、そして時価総額は約16億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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