【どう見るこの相場】大型連休は谷間だけでも激変緩和を期待してGW関連株に「中くらい投資」も選択肢
- 2024/4/30 08:25
- どう見るこの相場
■GW市場動向と投資家心理
『目出度さも 中くらいなり おらが春』と詠んだのは小林一茶である。季節も時代も違うが、投資家の間でも一茶と同様に『楽しさも 中くらいなり おらがGW(ゴールデンウィーク)』と詠んでいる向きも少なくないはずだ。コロナ禍一巡後の何年ぶりかの旅行先なのに、マーケットや持ち株の動向に気を取られてバカンスをフル享受とはいかないと推察されるからだ。せめて連休中だけでもGW前の株価を上に下に乱高下させた激変展開の再来は願い下げにして「中くらい」にしてほしいとするのが、投資家心理というものである。
■国内外の市場変動と中東情勢の影響
とくにきょう30日は、大型連休の谷間にもかかわらず、マーケットがリスクオンかリスクオフか、強気か弱気か潮目を左右するカタリスト(株価材料)が目白押しとなっている。国内市場では、28日に衆議院の3選挙区でのトリプル補欠選挙での自民党の不戦敗を含めて全敗となったあとの最初の立会日となる。また為替相場も激変様相で、連休前の26日の日本銀行の金融政策決定会合で現状維持と決定されたあと、円安が加速し、29日のアジア市場で一時、1ドル=160円台となったあと155円台と乱高下し、覆面介入があったのかなかったのかのかも焦点になる。米国市場では、きょう、明日1日とFRB(米連邦準備制度理事会)のFOMC(公開市場委員会)が開催予定で、大手ハイテク株の決算発表も相次ぎ、連休前に発表した主力株では、市場予想を超えた、超えないで明暗が分かれたケースも目立った。また中東情勢では、イスラエルの重要な宗教行事である「過ぎ越しの祭」がきょう29日に最終日を迎え、攻撃再開から緊迫の度合いを強めるかもしれないとの警戒感も再燃する。
■GW需要とインバウンド効果に注目
激変必至のカタリストが押し詰まっているだけに、これを度外視して一茶流の「中くらい」を望むのには無理があるかもしれない。しかし、足元は、折角の大型連休である。今年のGWは、谷間の30日、5月1日、2日に休暇を取れば10連休となり、しかも昨年5月に新型コロナウイルス感染症が、感染症法上の分類で5類に移行されたあとの初めてのGWである。そこで今週の当コラムでは、この大型連休を手掛かりにすれば「中くらい投資」の候補株が浮上する可能性もあるとして注目することにした。
候補株は、現在只今のGW需要を享受する銘柄群である。GWの事前の旅行動向調査でも、総旅行者数は2332万人(前年比1.8%増)、総旅行消費額は9630億円(同11.2%増)となり、このうち国内旅行は、旅行者数2280万人、消費額8231億円の内訳となっている。JR各社のGW期間中の新幹線の指定席予約状況も2ケタ増となった。またインバウンド需要も、今年3月の訪日外客数が、308万人超と初めて300万人を上回り新型コロナ前の2019年3月を11.0%上回り、単月として過去最高となった。
ただテレビニュースでは、大型連休前半最終日の昨29日の高速道路の上り車線で発生した渋滞の映像が放映されたものの、GW初日の27日の交通状況は、新幹線の乗車率が80%程度、空港の混雑もコロナ前ほどではなく、円安加速回避の国内旅行回帰も伝えられた。これは人気観光地での混雑による一般市民の日常生活に支障をきたす「オーバー・ツーリズム」まで至らなかったことを示唆し、むしろ「中くらい」歓迎の条件充足となるはずである。
GW関連株の多くは、これまで業績を上方修正済みだが、これにGW需要や円安・ドル高によるインバウンド需要の上乗せが期待できることになる。この業績上方修正の代表株といえば、藤田観光<9722>(東証プライム)だろう。同社株は、客室単価の上昇と客室稼働率の向上により前2024年12月期業績を四半期決算発表のたびに合計3回も上方修正し、大幅黒字転換して5期ぶりの復配を実施した。株価は、業績上方修正のたびごとに上ぶれ、今12月期業績は減益転換予想で一時、下値調整となったが、4月12日は安定的な人材確保のために正社員約1200名に平均6%の賃上げを実施したことで上場来高値7910円へ買い進まれた。足元では6400円台へ再度の下値調整となっているが、PERは14倍台と割安であり、連休明けの5月9日に予定している今期第1四半期決算の動向が要注目となる。
藤田観光と同様に業績を上方修正した割安関連株は、ホテル株、ホテル関連株、旅行代理店株、鉄道・航空の交通機関株など幅広い。しかも、投資採算的にまだ割安水準に甘んじている小型株も少なくない。決算発表を先取りしてGW明けに向け高値予約しておくことも、「中くらい」投資の選択肢となりそうだ。(情報提供:日本インタビュ新聞社・Media-IR 株式投資情報編集部)