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マーチャント・バンカーズは上値試す、収益拡大基調
- 2024/5/7 09:28
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
マーチャント・バンカーズ<3121>(東証スタンダード)はマーチャント・バンキング事業として不動産・企業投資関連などを展開している。成長戦略として、不動産投資の安定的収益源となる資産性の高い収益不動産の取得を推進するとともに、新規分野としてブロックチェーン・NFTプラットフォーム関連、娯楽TVメディア・コンテンツ関連、再生エネルギー・EV充電器関連などにも積極展開している。24年10月期は大幅黒字転換・増配予想としている。第1四半期に年間賃貸料収入11億円体制を確保しており、第2四半期以降には販売用不動産の売却も見込んでいる。やや低調だったオペレーション事業から撤退して収益性の高い不動産投資関連に集中することもプラス要因と考えられる。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は3月の安値圏から切り返して戻り歩調だ。上値を試す展開を期待したい。
■マーチャント・バンキング事業を展開
マーチャント・バンキング事業(不動産投資事業、企業投資事業、ブロックチェーン・テック事業)を展開している。成長戦略として、不動産投資の安定的収益源となる資産性の高い収益不動産の取得を推進するとともに、新規分野としてブロックチェーン・NFTプラットフォーム関連、娯楽TVメディア・コンテンツ関連、再生エネルギー・EV充電器関連などにも積極展開している。
23年10月期(決算期変更で7ヶ月決算)のセグメント別営業利益(全社費用等調整前)は、マーチャント・バンキング事業が1億82百万円、オペレーション事業が0百万円だった。成長に向けた基本戦略としては、不動産投資関連で安定的収益源となる資産性の高い収益不動産の取得を推進するとともに、新規分野への展開を積極推進している。なおオペレーション事業については、子会社であるケンテン(服飾雑貨店・ネット通販運営)の株式を譲渡(24年4月)して撤退した。
また、23年3月末時点において流通株式比率がスタンダード市場上場維持基準に適合しない状況となったため、23年6月30日付で上場維持基準への適合に向けた計画書を作成・開示した。計画期間を24年3月末までとして、一部大株主が保有する同社株式の売却による保有比率引き下げについて協議するとともに、業績の向上や積極的な情報開示などを推進する方針としている。24年1月には23年10月31日時点における計画の進捗状況をリリースし、決算期変更に伴って計画期間を24年10月末までに変更した。また24年1月には、第4位株主であるJKMTファイナンスの所有株式数が416万8000株から291万5200株に減少し、議決権数に対する割合が14.25%から9.97%に低下した。
■資産性の高い収益不動産の取得を推進
マーチャント・バンキング事業では不動産投資関連および企業投資関連を展開している。不動産投資関連は、主にネット利回り5%以上を期待できる大都市圏の賃貸用マンションを中心に、安定的収益源となる資産性の高い収益不動産の取得を推進するとともに、保有物件売却による売上利益の積み上げも推進している。
事業用賃貸マンションの直近の取得としては23年6月に3物件(埼玉県北本市、埼玉県上尾市、大阪府八尾市)、23年9月に1物件(大阪府富田林市)、23年9月に1物件(神戸市垂水区)、23年10月に1物件(川崎市麻生区)、23年11月に4物件(大阪市平野区、名古屋市熱田区、川崎市麻生区、埼玉県川口市)、23年12月に2物件(名古屋市天白区、名古屋市港区)、24年3月に1物件(大阪市港区)を取得した。保有物件数は30物件、取得価額合計は166億円程度、年間家賃収入は約11.6億円体制となり、目標に掲げていた年間家賃収入10億円体制を達成している。
また新築マンション開発事業にも取り組んでおり、第1号案件として大阪府堺市にマンション開発用地を取得し、22年5月には田中土建工業と業務提携した。23年7月には建設業への取組強化に向けて、業務提携先であるアビスジャパン(持分法適用関連会社で病院・介護施設などの内装工事等各種工事を展開、太陽光発電関連でも提携)より、1級施工管理技士の資格を持つ萩原茂氏を建築事業部の責任者として招聘した。
企業投資関連は、投資先とともに企業価値を創造するハンズオン型の投資を行い、バリューアップによるエグジットを目指す。投資実績としては、ブロックチェーンプラットフォーム開発のアーリーワークス、デジタルマーケティング支援のポイントスリー、ブライダル・ホテル運営のホロニック、見守り型介護ロボット開発のIVホールディングスなどがある。
22年2月には中小型の上場株式を対象とする投資の強化を発表し、第1号案件としてZOA<3375>の株式10万株(議決権総数に対する割合6.88%)を取得した。23年3月には、政府・軍事・航空宇宙・金融など高度な情報セキュリティニーズを持つ顧客をターゲットにセキュリティチップを開発・製造する台湾Enova Technology社に資本参加した。
23年6月には、香港のコングロマリットである新世界発展でグループの投資部門の責任者として活躍してきたチャン・チン氏を取締役として招聘し、香港子会社MBK ASIA LIMITEDを拠点にした投資関連事業を強化した。23年8月には香港の子会社MBK ASIA LIMITEDが、香港で主に法人向けに税務会計サービスを提供するCAC社と業務提携した。香港における投資事業を強化する。
■新規事業分野
新規分野としてブロックチェーン・NFTプラットフォーム関連、娯楽TVメディア・コンテンツ関連、再生エネルギー・EV充電器関連などに積極展開している。
ブロックチェーン関連では、STO(Security Token Offering)を活用したサービスとして、20年2月にサービス開始したエストニア暗号資産交換所ANGOO FinTech関連、海外投資家向けを中心とする日本不動産プラットフォームなどの不動産テック関連、医療エコシステムのメディテックプラットフォーム関連、NFT(Non―Fungible Token=非代替性トークン)プラットフォーム関連、娯楽TVメディア・コンテンツ関連などを展開している。
海外(欧州)では20年10月に子会社BFHへANGOO FinTech運営を移管してエストニアでの事業統括会社と位置付けた。23年7月にはエストニアの子会社EJTCについて、バルト3国で運営する証券取引所Nasdaq Baltic上場(21年3月上場)のメリットを活かし、エストニアを拠点とするEUでの事業展開により、企業価値向上に向けた取組を強化する方針とリリースした。
子会社のMBKバイオテック(MBKブロックチェーンが22年4月に商号変更)は、21年3月にブロックチェーン不動産取引プラットフォーム「MBK Realty」を発表、21年4月にお宝グッズNFT化・売買プラットフォーム「NFTバンカーズ」を発表(21年11月にリニューアル)した。
22年8月には、娯楽TVが設立した円谷メディア・コンテンツの株式を譲り受けて子会社化し、商号を娯楽TVメディア・コンテンツに変更(22年9月に娯楽TVメディア・コンテンツの株式をエストニアの子会社EJTC社に譲渡し、娯楽TVメディア・コンテンツを孫会社化)し、キャラクターおよびコンテンツビジネスへの展開を開始した。
23年7月にはEV充電器設置事業への取組を開始した。第1弾として、自社保有するマンションの駐車場や投資先であるホロニックが運営するホテルの駐車場への設置から着手し、新たな設置場所を確保しながら事業拡大を目指す。また23年7月には太陽光パネル設置事業への取組を開始した。自社保有マンションの屋上などへ太陽光パネル設置し、蓄電や売電によって収益確保を目指す。23年8月には、法人のITサポートを展開し、セコムの防犯カメラ設置実績も豊富なDコーポレーションと、防犯カメラ設置ならびにIT関連事業の分野で業務提携した。
23年12月には、プラスチック循環再生事業を手掛ける循環資源ホールディングスと資本業務提携(第三者割当増資により5.77%出資)した。関東圏に再生油生成プラントを設置する。また23年12月にはオリエントコーポレーションと加盟店契約を締結した。ホームセキュリティ事業、建設業、EV充電器設置事業、太陽光パネル設置事業、プラスチック循環再生事業などの分野において、オリエントコーポレーションの多彩な金融サービスを活用する。
なおMBKハウスマネジメント(23年1月に子会社MBKバイオテックがMBKハウスマネジメントに商号変更)については、3月15日に解散(24年5月下旬に清算決了予定)を発表した。事業継続に必要な人員の確保が困難なためハウスクリーニング・メンテナンス事業から撤退した。
■24年10月期大幅黒字転換予想
24年10月期(12ヶ月決算、23年10月期は決算期変更で7ヶ月決算)の連結業績予想は、売上高が30億円、営業利益が6億円、経常利益が4億円、親会社株主帰属当期純利益が2億60百万円としている。配当予想は23年10月期比1円増配の2円(期末一括)としている。
第1四半期(23年11月~24年1月)は売上高が3億63百万円、営業利益が68百万円の損失、経常利益が1億11百万円の損失、親会社株主帰属四半期純利益が1億12百万円の損失だった。なお23年10月期第1四半期は売上高が3億01百万円、営業利益が62百万円の損失、経常利益が86百万円の損失、親会社株主帰属四半期純利益が82百万円の損失だが、23年10月期は決算期変更で7ヶ月決算だったため第1四半期が23年4月~6月となり、比較期間が異なっている。
投資用不動産取得費用(1億29百万円)の影響で赤字だが概ね計画水準で順調だった。なお新たに投資用不動産6物件を取得(税抜取得価額合計37億20百万円)して年間家賃収入11億円体制を確保した。マーチャント・バンキング事業は売上高が3億37百万円でセグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が35万円、オペレーション事業は売上高が25百万円で利益が2百万円だった。
通期の大幅黒字転換予想を据え置いている。第1四半期に年間賃貸料収入11億円体制を確保したことに加え、販売用不動産の売却については4物件以上(上期2物件以上、下期2物件以上)の売却を見込んでいる。3月15日には名古屋市中区の共同住宅・事務所の売却(決済・引渡日3月26日、売上高および売却益1億円程度)をリリースした。また子会社ケンテンの株式譲渡に伴い、第2四半期に93百万円程度の特別利益(関係会社株式売却益)を計上予定である。やや低調だったオペレーション事業から撤退して収益性の高い不動産投資関連に集中することもプラス要因と考えられる。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株価は上値試す
3月15日付で24年10月期末に株主優待を実施すると発表した。24年10月31日時点で3単元(300株)以上保有株主を対象としてクオカード3000円分を贈呈する。また4月8日付で株主優待の追加実施を発表した。24年10月31日時点で10単元(1000株)以上保有株主を対象として、ラファンが運営するショッピングサイト「LaFan(本店)」で販売する1万円相当分の商品を贈呈する。
株価は3月の安値圏から切り返して戻り歩調だ。上値を試す展開を期待したい。5月2日の終値は311円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS8円88銭で算出)は約35倍、今期予想配当利回り(会社予想の2円で算出)は約0.6%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS137円64銭で算出)は約2.3倍、そして時価総額は約92億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)