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アルコニックスは調整一巡、25年3月期は収益回復基調
- 2024/5/9 09:42
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
アルコニックス<3036>(東証プライム)は商社機能と製造機能を併せ持ち、M&Aも積極活用しながら、非鉄金属の素材・部品・製品の生産から卸売まで全てをONE-STOPで提供する「非鉄金属等の総合ソリューションプロバイダー」である。24年3月期(4月23日付で下方修正)は需要回復遅れ、市況低迷、特別損失計上などの影響で減益幅が拡大する見込みとなったが、25年3月期は積極的な事業展開で収益回復基調だろう。株価は3月の年初来高値圏から反落し、下方修正も嫌気する形で水準を切り下げたが、調整一巡感を強めている。高配当利回りや1倍割れの低PBRなど指標面の割安感も評価材料であり、出直りを期待したい。なお5月15日に24年3月期決算発表を予定している。
■非鉄金属等の総合ソリューションプロバイダー
商社機能と製造機能を併せ持ち、M&Aも積極活用しながら、非鉄金属の素材・部品・製品の生産から卸売まで全てをONE-STOPで提供する「非鉄金属等の総合ソリューションプロバイダー」である。
18年12月に摩擦調整材カシューパーティクル製造販売の東北化工を子会社化、19年2月にカーボンブラシ製造販売の富士カーボン製造所を子会社化、19年7月にメキシコFUJI ALCONIXがメキシコFNA社の自動車部品用精密金属プレス部品事業を譲り受け、19年10月に香港でリチウムイオン電池材料事業の合弁会社を設立、19年11月に中国で建設用仮設資材の輸入・製造・販売の合弁会社を設立、20年3月に子会社の平和金属を完全子会社化、20年8月に子会社のアドバンストマテリアルジャパン(AMJ社)がタングステン化合物メーカーの台湾・Lianyou Metals社に出資、20年12月に空調機器向け配管部品製造販売の富士根産業を子会社化した。
21年3月にメキシコFUJI ALCONIXがメキシコFNA社から工場用地・建物を取得、22年4月に精密コネクタ金属端子部品プレス加工のジュピター工業を子会社化、商社流通セグメントに所属する国内関係子会社(平和金属、林金属、アルコニックス・三高、アルミ銅センター)の財務・経理・総務・労務等の管理業務を集約してシェアードサービスの子会社ACメタルズを設立、22年7月に各種レーザー機器・装置製造・販売の金門光波を子会社化、22年11月に金属加工メーカーでリチウムイオン電池用機構部品の製造に強みを持つソーデナガノを子会社化、DKSHマーケットエクスパンションサービスジャパンの金属製品事業(チタン展伸材の欧州向け輸出など)の全てを取得、23年7月に子会社のマークテックが粉体物性測定(微粒子)受託事業に参入するためハイテクノライズを設立した。
24年1月には子会社ソーデナカノと合弁で米国にリチウムイオン電池用部材を製造するSoode Kansas Corporationを設立、また中国にメッキ材料製造の新会社を設立(26年7月事業開始予定)した。
24年4月19日付で子会社化予定だった坂本電機製作所(金属精密機械加工部品などの製造を展開)については、システム設定変更等に時間を要することとなったため株式取得日程を延期した。新しい株式譲渡実行日については決定次第速やかに開示するとしている。
なお21年12月には、投資事業(アルコニックスグローバルイノベーション投資事業有限責任組合、21年8月設立の子会社アルコニックスベンチャーズが運用)を開始した。先端材料・高成長事業および素材・モノづくりに関連のあるベンチャー企業または事業を投資先として成長支援し、投資先が生み出すアイデアや技術を取り込んで新規事業開拓と更なる業容拡大を目指す方針だ。
■製造も収益柱に成長
報告セグメント区分は、商社流通の電子機能材事業(化合物半導体、電子材料、チタン製品、ニッケル製品、レアメタルなど)、商社流通のアルミ銅事業(アルミニウム製品、伸銅品、非鉄スクラップ、各種配管機材など)、製造の装置材料事業(非破壊検査装置、マーキング装置、カシュー樹脂、カーボンブラシなど)、製造の金属加工事業(精密機構部品、精密研削加工部品、精密金属プレス部品、金属加工部品など)としている。
23年3月期セグメント別経常利益(消去前)は、商社流通の電子機能材がIT関連の電池材料取扱数量減少などで15.7%減の36億01百万円、商社流通のアルミ銅が仕入コストの上昇などで42.4%減の11億71百万円、製造の装置材料が自動車関連材料分野や検査・試験装置分野の出荷減少で19.8%減の9億98百万円、製造の金属加工が自動車関連や半導体実装装置向けの出荷減少などで30.0%減の24億16百万円だった。レアメタル・レアアースの取り扱いが特徴とされているが、製造も収益柱に成長している。
■26年3月期ROE12%以上目標
中期経営計画(24年3月期~26年3月期、1年ごとに見直すローリング方式)では、26年3月期の目標値として売上高2230億円、営業利益122億円以上、経常利益120億円以上、当期純利益79億円以上、EBITDA160億円以上、ROE(株主資本利益率)12.0%以上、ROIC(投下資本利益率)6.3%以上、DOE(株主資本配当率)3.2%以上を掲げた。セグメント別経常利益は商社流通が48億円(電子材料30億円、アルミ銅18億円)で製造が72億円(装置材料24億円、金属加工48億円)としている。製造が全体の60%を占める計画だ。
基本戦略として財務体質の強化、人的資本の強化、ガバナンスの強化を推進する。注力する事業領域を自動車、半導体、電子材料・電子部品として、既存事業における営業収益力の強化、投資案件の再構築、インフラ整備および内部統制の充実・強化を推進する。またサステナビリティ経営への取り組みも強化する方針だ。
23年2月には、非鉄リサイクル事業を展開するグループ会社の移転および拡充を目的として土地取得(北九州市若松区)を発表した。本件土地取得を契機にグループを横断した総合リサイクルセンターを建設し、環境配慮型企業グループの実現を目指すとしている。
23年7月には気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への賛同を表明した。また人的資本投資の一環として、職種統合による新人事制度(キャリア職とプロフェッショナル職の区分を廃止・統合し、名称を総合職とした上で職群を一本化)を導入するとともに、従業員の賃金改定(職種統合による昇給分は含まず、ベースアップ4%、定期昇給2%、合計6%の増加)も実施した。管理職(年俸制)のベースアップも実施した。23年8月には、グループ全体としての内部統制体制の在り方をより明確にするため、内部統制システムの基本方針を改定した。24年3月には経済産業省が定める健康経営優良法人認定制度において健康経営優良法人2024(大規模法人部門)に認定された。24年7月には新卒初任給22%引き上げを実施する。
■24年3月期減益幅拡大だが25年3月期は収益回復基調
24年3月期の連結業績予想(23年11月7日付で下方修正、24年4月23日付で2回目の下方修正)は、売上高が23年3月期比2.4%減の1740億円、営業利益が35.7%減の54億円、経常利益が34.0%減の54億円、親会社株主帰属当期純利益が72.7%減の15億16百万円としている。配当予想は23年3月期と同額の54円(第2四半期末27円、期末27円)としている。
第3四半期累計は、売上高が前年同期比3.6%減の1308億46百万円、営業利益が41.2%減の42億63百万円、経常利益が41.5%減の44億76百万円、親会社株主帰属四半期純利益が45.0%減の28億01百万円だった。なおEBITDA(参考)は16.9%減の78億12百万円だった。自動車関連が回復基調となったものの、IT端末機器の需要低迷が続いたため全体として減収・減益だった。
セグメント別利益(セグメント間利益消去前経常利益)は、商社流通が56.0%減の20億56百万円(電子機能材が50.7%減の16億63百万円、アルミ銅が69.8%減の3億92百万円)で、製造が19.2%減の24億16百万円(装置材料が59.1%減の4億53百万円、金属加工が4.2%増の19億63百万円)だった。
商社流通ではアルミ、銅、ニッケルの市況下落が継続した。需要面では自動車関連のアルミ原料の取扱高が増加したものの、IT端末機器の需要低迷が続いたため電子・電池材料や伸銅品の取扱量減少を補えなかった。利益面は減収影響に加え、販管費の増加も影響した。製造では自動車生産の回復に伴って自動車関連製品の出荷が増加し、新規連結した子会社の収益も加わったため増収だが、利益面は原材料価格高騰に伴う仕入コスト上昇により減益だった。
全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が423億70百万円で経常利益が15億30百万円、第2四半期は売上高が413億87百万円で経常利益が15億03百万円、第3四半期は売上高が470億89百万円で経常利益が12億58百万円だった。
通期は前回予想(23年11月7日付下方修正値)に対して売上高が30億円、営業利益が8億円、経常利益が8億円、親会社株主帰属当期純利益が15億円、それぞれ下回る見込みとした。スマホ向け等の需要回復遅れ、ニッケルや銅原料等の市況低迷、一部取引における製造原価増加分の販売価格への転嫁遅れなどに加え、特別損失計上(中国の子会社における貸倒引当金繰入額12億14百万円、子会社の冨士カーボン製造所における中国拠点再編費用7億85百万円)などの影響で減益幅が拡大する見込みとなった。ただし25年3月期は積極的な事業展開で収益回復基調だろう。
■株主優待制度は3月末の株主対象
株主優待制度(詳細は会社HP参照)は、毎年3月末時点の株主を対象として、保有株式数および保有期間に応じて優待商品を贈呈する。
■株価は調整一巡
株価は3月の年初来高値圏から反落し、下方修正も嫌気する形で水準を切り下げたが、調整一巡感を強めている。高配当利回りや1倍割れの低PBRなど指標面の割安感も評価材料であり、出直りを期待したい。5月8日の終値は1369円、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS49円77銭で算出)は約28倍、前期推定配当利回り(会社予想の54円で算出)は約3.9%、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS2075円25銭で算出)は約0.7倍、そして時価総額は約425億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・Media-IR 株式投資情報編集部)