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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】フランスベッドHDは収益改善基調、アベノミクス「新3本の矢」の「介護離職ゼロ」関連
- 2015/10/6 06:58
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
フランスベッドホールディングス<7840>(東1)はシニア・シルバービジネス分野を中心に介護・インテリア関連事業を展開している。株価(10月1日付で株式併合実施)は悪地合いの影響で軟調展開だったが調整一巡感を強めている。16年3月期は収益改善基調で実質増配予想であり、安倍晋三首相が「新3本の矢」で掲げた「介護離職ゼロ」も追い風だ。反発のタイミングだろう。なお10月30日に第2四半期累計(4月~9月)の業績発表を予定している。
■シニア・シルバービジネスに事業展開
成長分野のシニア・シルバービジネスに経営資源をシフトして、メディカルサービス事業(介護・福祉関連用具のレンタル・販売、介護予防の通所介護施設「悠々いきいき倶楽部」運営)、インテリア健康事業(家庭用高級ベッド、医療・介護用ベッド、リハビリ商品)、その他事業(日用品雑貨販売など)を展開している。
独自の新商品・新サービスでは、医療・介護用電動リクライニングベッド・マットレス、超低床リクライニングベッド、アクティブシニア向け「リハテック」ブランドの電動アシスト三輪自転車、ハンドル型電動三輪車いす、リフトアップチェア、電動リフトアップ車いす、在宅・病院・福祉施設向けの見守りケアシステム、徘徊防止外出通報システム、超低床フロアーベッド、体位変換マットレスなどの新製品を積極投入して、介護・福祉用具レンタル市場でのシェア拡大戦略を推進している。
15年9月には、さまざまな形に変えてリラックスできる新製品「スリープバンテージ フルール」を発売した。適度な柔らかさと弾力性のある中わたの発泡ビーズと特殊な縫製の組み合わせによって、形を変えても元の形に戻らずに、そのままの形を維持するドーナツ状のクッションである。
新規販売チャネル開拓では、病院・施設向けに加えて、20年東京夏季五輪開催に向けて需要が拡大しているシティホテル向けの拡販も強化している。
■営業損益は15年3月期第2四半期をボトムに改善基調
なお15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)123億85百万円、第2四半期(7月~9月)125億64百万円、第3四半期(10月~12月)127億84百万円、第4四半期(1月~3月)141億74百万円、営業利益は第1四半期5億16百万円、第2四半期2億86百万円、第3四半期4億94百万円、第4四半期4億27百万円だった。営業損益は第2四半期がボトムとなって改善基調だ。
また15年3月期の配当性向は106.5%だった。ROEは14年3月期比1.4ポイント低下して2.4%、自己資本比率は同3.0ポイント上昇して62.7%となった。
■16年3月期収益改善基調
今期(16年3月期)の連結業績予想(5月14日公表)は、売上高が前期比3.0%増の535億円、営業利益が同27.6%増の22億円、経常利益が同23.1%増の21億50百万円、純利益が同21.5%増の11億円としている。
セグメント別の計画は、メディカルサービス事業の売上高が同4.4%増の296億50百万円、営業利益(全社費用等調整前)が同7.1%増の17億80百万円、インテリア健康事業の売上高が同1.2%増の202億40百万円、営業利益が同3.2倍の3億20百万円、その他の売上高が同2.9%増の36億10百万円、営業利益が45百万円(前期は66百万円の赤字)としている。
メディカルサービス事業では人員増強、拠点拡充、新製品投入によって、市場拡大が見込まれる介護関連レンタル市場での拡販に注力する。インテリア健康事業では魅力的なデザインの新商品投入、高機能・高付加価値製品の拡販を強化する。20年東京夏季五輪開催に向けて需要が拡大しているシティホテル向けの拡販も強化する方針だ。
第1四半期(4月~6月)は売上高が前年同期比1.3%増の125億55百万円、営業利益が同22.4%増の6億31百万円、経常利益が同20.5%増の6億19百万円、純利益が同49.7%増の3億86百万円だった。メディカルサービス事業の好調が牽引して増収増益だった。
メディカルサービス事業は売上高が同7.5%増の69億95百万円、営業利益(全社費用等調整前)が同52.5%増の5億39百万円だった。営業拠点の新設、新製品の積極投入、ハンドル型電動車いすなど「リハテック」ブランド商品の出張試乗会の実施など、営業強化策が奏功して増収増益だった。
インテリア健康事業は売上高が同7.0%減の46億87百万円、営業利益が同49.1%減の77百万円だった。消費増税前駆け込み需要の納品ズレ込みに伴う売上計上という特殊要因が一巡して減収減益だった。その他事業は売上高が同3.7%増の8億72百万円、営業利益が6百万円の赤字(前年同期は4百万円の赤字)だった。
通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は売上高が23.5%、営業利益が28.7%、経常利益が28.8%、純利益が35.1と高水準である。消費増税の反動影響一巡、ドル高・円安進行に伴う国産品の価格競争力回復、原材料価格上昇に伴う価格改定なども寄与して収益改善基調であり、通期業績の会社予想に増額余地がありそうだ。
なお16年3月期の配当予想は、第2四半期末が2円50銭、期末が10月1日付株式併合(5株→1株に併合)に伴って12円50銭としている。株式併合後に換算すると年間25円となり、前期の年間4円50銭を株式併合後に換算した年間22円50銭に対して実質的に2円50銭増配となる。
■中期経営計画でシルバービジネスをさらに強化
15年5月にグループ中期経営計画を発表した。基本方針としては、本格的な高齢社会で求められるニーズに対応するため、グループが保有する経営資源を集中させ、シルバービジネスのさらなる強化と積極的な展開を図ることにより「グループ総体としての企業価値の最大化」を目指すとした。
主要戦略については、得意分野の強化(主力のメディカルサービス事業における福祉用具貸与事業を中心とした介護事業の深耕と事業基盤の拡充)、新たな収益機会の獲得(介護保険制度に対する過度な依存による収益変動リスクを避けるため、介護保険給付を利用しないアクティブシニア向け「リハテック」事業の拡大)、安定的に収益を確保できるビジネスモデルへの転換(インテリア健康事業における量から質への転換、他社との差別化、多品種少量生産に対応した受注生産方式などによる安定的な収益確保)、経営基盤の強化(事業成長のための人材育成、コーポレートガバナンスの強化)としている。
経営目標数値としては18年3月期売上高578億円、営業利益34億50百万円、経常利益34億円、純利益20億円、ROE5.1%を掲げた。セグメント別にはメディカルサービス事業の売上高328億50百万円、営業利益(全社費用等調整前)29億50百万円、インテリア健康事業の売上高212億円、営業利益4億40百万円、その他事業の売上高37億50百万円、営業利益40百万円とした。
メディカルサービス事業の営業拠点は15年3月期末の74ヶ所から18年3月期末83ヶ所、レンタル・販売代理店は1500店から2000店への拡充を目指す。
株主還元については、従来同様に安定配当を維持し、毎期1株あたり25円以上の配当(15年10月実施の株式併合後)を目標として、機動的な自己株式取得の実施を検討する。
■株価は調整一巡感、収益改善基調を見直し
なお15年10月1日付で単元株式数を1000株から100株に変更し、併せて証券取引所が望ましいとしている投資単位の水準とすることを目的として5株を1株に併合した。株式併合により発行済株式総数が5分の1に減少するが、純資産等は変動しないため1株当たり純資産額は5倍となり、株式市況の変動など他の要因を除けば当社株式の資産価値に変動はない。
株価の動き(15年10月1日付で株式併合)を見ると、8月の年初来安値830円から一旦は900円台まで切り返したが、悪地合いも影響して再び水準を切り下げた。ただし8月安値を割り込むことなく、9月29日の直近安値832円から切り返す動きだ。調整が一巡したようだ。
10月5日の終値849円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS25円68銭で算出)は33倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想に株式併合を考慮した年間換算25円で算出)は3.0%近辺、前期実績連結PBR(前期実績に株式併合を考慮した連結BPS870円50銭で算出)は1.0倍近辺である。なお時価総額は約381億円である。
週足チャートで見ると26週移動平均線を割り込んで調整局面だが、850円近辺で下げ渋る形となって調整一巡感を強めている。16年3月期は収益改善基調で実質増配予想であり、安倍晋三首相が「新3本の矢」で掲げた「介護離職ゼロ」も追い風だ。反発のタイミングだろう。